6704岩崎通信機における第115回定時株主総会に対しての意見表明

2024/06/20  株式会社 スノーボールキャピタル 

ペニンシュラロックリミテッド(以下「PR」)及び株式会社スノーボールキャピタル(以下「SBC」)は、現在、直接又は間接に、岩崎通信機(6704)(以下「岩通」)の株式を18.69%保有しています。

PR及びSBCは長期投資の方針に基づき投資をしており、岩通には、約7年前に投資を開始し、その後保有を継続しています。岩通においては過去数度赤字の決算がありましたが、その際も、PR及びSBCは、取締役の選任を含めて株主総会の議案には賛成票を投じてきました。長期的に企業価値を向上させて頂きたいという考えのもと、そのように行動をしてきました。

しかしながら、PR及びSBCは、今般、2024年6月27日に開催される第115回定時株主総会において、全ての決議事項に反対することを表明します。

反対票を投じるとの判断に至った経緯及び理由は以下のとおりです。

1.2023年11月30日に公表された第三者割当増資の不当性

2023年3月末時点で、簿価で純資産額24,176百万円、発行済株式数約10百万株、一株当たり純資産約2,400円であった岩通は、2023年11月30日に、37億円の増資を受け入れ、490万株を一株あたり740円で発行する第三者割当増資の決議を行いました。(2023年3月末時点で現預金は48億円、有利子負債は0.80億円)

PBRが0.4倍で実質無借金の会社が、割安な株価で第三者割当増資をするという前代未聞の第三者割当増資です。それまで、既存株主は、岩通の約240億円の純資産を、約1,000万株で所有していました。しかし、この第三者割当増資により、引受先企業はわずか37億円の投資で、所有権の約30%(簿価純資産で72億円に相当)を取得したのであり、これに伴い既存株主は不利益を被ったのです。

この行為は、既存株主を軽視し、恣意的かつ不当に当該引受先企業1社のみを優遇するものであり、株主平等の原則に反するとともに既存株主の株式価値を毀損する行為であると考えています。PBRが1倍を大きく下回る状態のまま長年放置されている会社が、株式価値の増加を生まない第三者割当増資をすることは、上場企業として許されないと考えます。
今回の株式交換の相手方企業は、第三者割増資の引受先企業と同一であり、第三者割当増資により不当な利益を得た上で、さらに株式交換により不当な条件で岩通を非上場化しようとしているのです。

2.中期経営計画の大幅な未達成

現経営陣は、2022年5月13日に中期経営計画「REBORN」を発表しました。
2年間経過しましたが、営業利益累計1億円の計画に対して2期連続累計14億円の赤字です。また、当該中期経営計画では第三者割当増資を行った後の今期は11億円の黒字の計画ですが、岩通は今期の業績予想を非開示としています。(2024年6/17時点) また、上記中期経営計画における来期の計画は21億円の黒字の計画でありましたが、現状を考えると達成する見込みは無いと考えております。
資本業務提携のために既存株主に希薄化の不利益をもたらす第三者割当増資を実施したからには、本来、業績目標を達成することによって、その正当性を証明するべきです。然しながら約30%の議決権を譲り渡したにもかかわらず、岩通は、今期の業績予想を非開示とするなど、第三者割当増資の正当性を証明することから逃避しており、許されざる行為であると考えます。

なお、我々は中期経営計画が開示された2022年時から、数度にわたり、木村社長含め岩通の経営陣に対し、「目標が高すぎるのではないか」、「短期的に無理をすると本質的な価値が毀損されかねないため必要であれば計画の見直しをしてください」と説明してきました。しかしながら現経営陣はそれを拒み、中期経営計画の達成の為という錦の御旗を掲げて強硬に第三者割当増資を実行しておきながら、その後、中期経営計画との乖離について何ら説明もせず、かつ業績予想さえ公表しないという態度をとってきたのであります。

3.株式交換の交換比率(価格)の不公正

岩通は2024年5月30日に株式交換契約の締結を発表しました。株主総会で株式交換契約の議案が承認可決されれば岩通は上場廃止になります。相手方企業との株式交換比率は1:0.6とされており、シンプルに言えば、岩通の株式を約1,400円程度の価値の株式に置き換えるという内容の提案です。
本件株式交換は、上記1.の第三者割当増資後約半年程度の期間で提案されており、我々としては、実質的には、第三者割当増資と一体となった、一連の取引であると理解しています。

すなわち、岩通は、2023年の第三者割当増資の際も、本当は株式交換を強行したかったのです。しかし、第三者割当増資前は、我々が約27%の株式を保有していたため、株主総会において特別決議に必要な3分の2の賛成を得られる見込みがなかったことから、第三者割当増資を実施したものと考えられます。これは第三者割当増資が正当性を欠くことを示す重要な問題だととらえています。仮に第三者割当増資が株式交換を実施するために行われたものではないのであれば、岩通は、まず第三者割当増資の結果、それにより企業価値が向上しているのか否かについて説明責任を果たすべきであると考えます。

結局、岩通が行っていることは、第三者割当と株式交換の組合せによる一連の取引でもって、岩通を非公開化することです。そして、その条件を見れば、1株あたり純資産が約2,400円の会社を、1株あたり約1,400円で非公開化する提案となっております。株主の立場からみれば、実質的には、PBR0.58倍の価格でTOBをして非公開化するのと変わりません。

株主は株式交換比率の交渉を直接行うことはできません。株主にできることは、取締役会が合意した株式交換比率が不当であれば、これに反対することです。取締役には、株主総会に上程する前に、株主利益に資する交換比率を実現するよう交渉を行う義務があります。にもかかわらず、岩通の取締役は、特別委員会を含め、そのような義務を放棄しているのです。特別委員会や取締役会は、簿価純資産額さえも大きく下回る価値の対価を株主に提供する株式交換契約の締結をなぜ認めたのでしょうか。本件株式交換は、プロセスや検討過程も恣意的かつ不公正であることに加え、交換比率(価格)に関する判断の内容も、著しく不合理というほかありません。

従いまして、1.第三者割当増資の不当性、2.中期経営計画の大幅な未達成、3.株式交換比率(価格)の不公正の3点をもって、岩通の現取締役会は、既存株主をないがしろにしており、岩通を低く評価している証左だと考えます。本来であれば中期経営計画の大幅な未達が判明した時点で潔く責任をとるべきです。会社にしがみつき友好的な第三者に破格の割安条件で株式を譲り渡そうとすることは、自己保身そのものであり、株主軽視も甚だしいものと評価せざるを得ず、強く反対の意を表明します。

よって、PR及びSBCは、第115回定時株主総会において全ての決議事項に「反対」をします。

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