日本とルーマニアの高校生チームが、コロナ禍のメンタルケアのウェアラブルデバイスを共同開発。成果報告会を10/17(日)に開催。

2021/09/09  特定非営利活動法人 青少年科学技術振興会 

高校生対象の科学の国際大会で、日本代表チームは世界1位を目指し社会実装に向けたプロジェクトを海外チームと開発中!

世界の高校生の科学のオリンピック「FIRST Global Challenge(FGC)」で日本代表チームは、コロナ禍で急増した女性の自殺を科学技術で防ぐ研究プロジェクトをルーマニア代表チームと取り組んでいます。オンラインでメンタルケアを提供するプラットフォームや体調をリモートで確認できるウェアラブルデバイスを開発中です。




FIRST Global Challenge(FGC)とは
FGCは、世界160ヵ国が参加する高校生対象の科学の国際大会です。各国から国を代表する1チームが招待され、12週間にわたる活動に参加します。
大会では世界が直面する社会問題が大会テーマとして掲げられ、全チームは大会テーマにちなんだ科学・ロボットのプロジェクトに挑戦します。FGCでは「国際コミュニケーション」と「協力」が重視され、他国のチームと共同してミッションに取組み、科学やテクノロジーで世界の課題を解決する体験をしていきます。
2021年の大会テーマは「DISCOVER & RECOVER」で、コロナで大きくダメージを受けた世界に発生した諸問題を「教育」「環境」「健康」「経済」の中から特定し、STEMの力で解決を目指すプロジェクトになっています。
FGCの日本の事務局はNPO法人青少年科学技術振興会が担当し、チームの選出から日本代表チームのメンタリングまで関わっています。
*STEMとは、Science(科学)Technology(技術)Engineering(工学)Mathematics(数学)の頭文字を取った各分野を融合させた教科横断的な教育を指す。
FIRST Global Challenge : https://first.global/


日本代表チーム「Team Japan」
Team Japanは公募で選出された3チームで編成された新チームです。渋谷教育学園渋谷高等学校、江戸川学園取手高等学校、FRCロボットチーム「SAKURA Tempesta」の3団体の男子7名、女子7名の14名の生徒で構成されています。出身が日本・中国・フィリピン・パキスタンという多国籍なメンバーで、高い技術力、幅広い興味・関心、意欲を持った創造的で国際的なチームです。
しかしチーム活動は困難の連続でした。学校や居住エリアがバラバラでしかも初顔合わせの大人数のチーム。そしてコロナ禍による活動の制限がある中で、大会から提示されるチャレンジタスクを仕上げていく必要がありました。それでもチームは「世界1位」になることを目標に掲げ、新たにプロジェクト管理やチームワークを学び、ITを駆使して活動を軌道に乗せていきました。
活動場所、チームラボ社でのMTG風景
Team Japanのプロジェクトテーマ
Team Japanはプロジェクトテーマの中から「健康」を選択しました。
コロナ後の世界で発生した社会的な問題の中で、特にコロナ禍における女性の自殺の増加に着目したからです。女性の自殺の増加は先進国の中で特に日本で顕著な現象であることを知り、日本が真摯に取り組むべき喫緊な課題であるとチームで特定しました。シングルマザーの貧困問題を扱うNPO団体やメンタルサポートに取組む精神科医へのインタビューを行う中で、コロナ禍で経済が停滞し雇用や収入面で直接影響を受けた女性がメンタルヘルスの不調から、うつ病や統合失調症を患うケース増えていることを知り、それが自殺の増加の大きな要因の1つであることを学びました。チームは精神的な不安を感じた女性が気軽に相談できる環境の整備が必要と考え、オンライン上でメンタルサポートができるプラットフォームの構築と健康状態を常時測ることができるウェアラブルデバイスの開発を考えました。

ルーマニアチームとの共同開発

ルーマニアチームとのオンラインミーティング
FGCのプロジェクトは他国と共同で行う必要があり、パートナーとなるアライアンスチーム探しに奔走しました。同じ「健康」をテーマとする国のチームとオンライン上で意見交換を繰り返し、共通した方向性を持つルーマニアチームと出会いました。ルーマニアチームは、コロナ患者と介護が必要な老人のケアをアプリケーションで解決する構想を持っており、日本チームはメンタルヘルスに不安のある方をウェアラブルデバイスを活用してサポートするプロジェトを進めていました。ルーマニアのアプリケーションと日本のウェアラブルデバイスを連携させることで、対象の幅を広げより効果が高いケア・サポートシステムが構築できると考えが一致し共同開発が始まりました。また日本チームはメンタルヘルスに不安がある方が気軽にアクセスできるポータルサイトの開発にも着手しており、そのサイトを窓口にして様々なケア・サポートを受けられるサービスの仕組みを考えており、ルーマニアとの連携でワンストップのサービスを提供できる構想が固まりました。以下の2つが現在開発中のサービスです。

1.メンタルケア・オンラインプラットフォーム「amayadori」

amayadoriのロゴ
精神的に不安や悩みを抱える女性が気軽のアクセスできるポータルサイトです。自殺の防止には初期のメンタルケアが重要であると言われていますが、専門機関に相談に通う人は少ない現状から、オンラインで相談できるメンタルケアサイトを構築しました。ロゴデザインには「どんな状況においてもサポートをしてくれる人が近くにいる」というメッセージが込められています。来訪者はログイン後、メンタルの状況を診断するテストを受け、現状のメンタルの健康状態を確認します。その後カウンセラーや精神科医のカウンセリングを受け、個別のサポートプランが作成されます。関連組織や臨床心理士・精神科医からのサポート体制を持ち、個々の状態に適したケアを受けることができていきます。またサポートにはメンタル面だけでなく、経済的・社会的な悩みへのサポートも含まれます。

2.ウェアラブルデバイスとアプリケーション「remote patient monitoring system」

ウェラブルデバイス
amayadoriに連携したウェアラブルデバイスとアプリケーションを開発しています。
ウェアラブルの着用で利用者の体温、動き、睡眠の質、心拍数、酸素飽和度、GPS、皮膚コンダクタンスを測定しその情報がオンライン上のデータベースに保存されます。リモートでデータ上の体調の変化を見守れるため、極端なデータ上の変調が生じた時は本人への注意アラートや人的なサポートが受けられる仕組みになっています。精神科医が利用者のデータを分析し精神状態を遠隔モニタリングできることで自殺を防ぎ、ユーザーの精神状態に適応したセラピーやカウンセリングを提供できるようになります。

開発段階ではありますが、日本とルーマニアの高校生チームはこのようにテクノロジーを利用してメンタルケアが必要な人々に対して、相談からケア・サポートまでをワンストップで提供できるサービス環境を構想し、プロトタイプを作りあげました。この精神的に不安を抱える女性を守り、自殺者の減少につながることを願う社会実装の研究をFGC大会で提案し入賞を目指します。

FGC2021は9月28日(火)に閉幕となり日本とルーマニアの高校生チームによる共同開発は終了となります。
Team Japanは活動成果の発表を行うため、10/17(日)にFGC2021活動報告会を実施する予定です。
報告会はYouTube LIVEで配信され一般の方もご視聴頂けます。多くの方のご参加をお待ちしています。
お申込みはこちらの申込みフォームからお願いいたします。
https://forms.gle/f7z4vfASmrr37Qo7A
※時間や内容は変更されることがございます。



【お問い合わせ先】
NPO 法人青少年科学技術振興会FIRST Japan
TEL:045-479-3327
e-mail:info@firstjapan.jp

NPO 法人青少年科学技術振興会FIRST Japanについて
日本の未来を創る科学人材・グローバル人材の育成に貢献していくことを目的に2004年に設立されました。主な活動として教育NPO組織FIRST(R)が世界で展開する「FLL」「FGC」「FRC」といった国際的なロボット競技会の日本大会の主催・運営しています。また、学校や科学館と連携しSTEAM教育の普及活動を行い、科学の楽しさを体感できるイベントやカリキュラムの提供、世界の青少年と交流をはかる場を提供しています。
ウェブサイト:https://firstjapan.jp/

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