鉄骨梁の設計・施工を合理化できる「薄肉ウェブ梁座屈補剛工法」の適用範囲を拡大

2024/07/22  JFEホールディングス 株式会社 

2024年7月22日
JFEスチール株式会社

鉄骨梁の設計・施工を合理化できる「薄肉ウェブ梁座屈補剛工法」の適用範囲を拡大

当社はこのたび、お客様との一体型ソリューション提案活動『JFESCRUM® 』(※1)の一環として、鉄骨梁(H形断面梁)の端部を縦スチフナで補剛することでウェブを薄くし、高い変形性能(※2)を確保しつつ鋼材重量を削減することが可能な「薄肉ウェブ梁座屈補剛工法」の適用範囲を拡大した第三者認証を取得しました。本工法を梁に適用することで、鋼重低減による建設費のコスト削減や施工時のCO2 排出量の削減が可能となります。

鉄骨梁には構造部材としての高い変形性能が求められており、そのためには局部座屈(※3)を適切に抑制する必要があります。局部座屈の生じやすさの指標として、建築基準法では梁のフランジとウェブの幅厚比に応じた部材ランクがFA~FD(FDに近いほど局部座屈しやすい)の範囲で定められています(※4)。通常、局部座屈を抑制し、変形性能を担保するように設計すると、梁全長に亘ってウェブを厚くする必要があり、梁の鋼重が大きくなってしまいます。一方で、鋼重を削減するためにウェブを薄くすると、地震時に梁端部で早期に局部座屈が生じ、十分な変形性能が得られません。梁を合理的に設計するためには、梁の優れた変形性能を確保しつつ、ウェブを薄くすることが求められます。

「薄肉ウェブ梁座屈補剛工法」は、局部座屈に対する部材ランクがFDの梁(ウェブがFDでフランジがFAランクの梁)を対象に、梁の端部を縦スチフナで補剛することで、早期の局部座屈の発生を抑制し、変形性能を担保することで、梁の部材ランクをFAもしくはFBランクまで向上させることができます(図1)。また、当社では補剛の仕様として、ウェブの幅厚比が120以下の梁(極めて座屈しやすく、ウェブの幅に対して板厚が極薄の梁:以下、W120タイプ)、ウェブの幅厚比が90以下の梁(座屈しやすく、ウェブの幅に対して板厚が薄い梁:以下、W90タイプ)のそれぞれに対応した2種類の仕様を提供しています。

2019年5月に認証を取得したW120タイプは、今回梁せいや梁長さなどの適用範囲を拡大し、より使いやすい内容に改定しました。また、新たに認証を取得したW90タイプは、適用できる梁の幅厚比を限定することにより、縦スチフナの施工のさらなる省力化が可能となっています。いずれのタイプも、それぞれの仕様に応じた補剛を施すことで、優れた梁の変形性能を得られることを載荷実験とFEM解析(※5)により実証し、良好な構造安全性とスチフナの設計法の妥当性について第三者評価機関による性能証明を取得しております(※6)。本工法の適用により、ウェブの鋼材重量を最大14%低減することができます。

また、本工法と「鉄骨梁横座屈補剛工法」(※7)を併用することで、梁の鋼重削減と横補剛材の省略が可能になり、コスト削減と工期短縮化により、更なる鉄骨工事の合理化が見込めます。

当社は、今後もお客様のさまざまなニーズにお応えできる付加価値の高い建築建材商品の提供とその利用技術の開発を通して、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

(※1)当社が取り組んでいる建設分野におけるお客様との一体型ソリューションブランドです。昨今の社会環境の大きな変化に伴って、建設業界に要望されるさまざまな課題の解決のため、JFEスチールグループの技術力を結集し、研究・開発・製造から技術サポートまでワンストップで迅速に支援していきます。
JFESCRUM® ホームぺージURL: https://www.jfe-steel.co.jp/products/infrastructure/jfescrum/

(JFESCRUM® のロゴマーク)

(※2)地震時のエネルギー吸収性能を示す指標。変形性能が高いほどエネルギー吸収性能が高い。

(※3)地震時に梁のウェブやフランジが面外に変形し、梁の耐力が低下する現象

(※4)局部座屈の生じやすさを示す指標であり,梁のウェブとフランジについて,それぞれ次の式で表される。下表のように,幅厚比に応じて部材ランクがFA~FDで与えられ,幅厚比が大きくFDランクに近いほど梁は局部座屈しやすく,変形性能は小さくなる。

フランジの幅厚比= B/(2tf) √(235/F) ,ウェブの幅厚比= (H-2tf)/tw √(235/F)

ここに,B:梁幅,tw:ウェブ厚,F:梁の基準強度(=F値),H:梁せい,tf:フランジ厚

表 幅厚比と部材ランクの関係

部位 幅厚比
フランジ ≦9 ≦11 ≦15.5 15.5<
ウェブ ≦60 ≦65 ≦71 71<
部材ランク FA FB FC FD

(※5)有限要素法(Finite Element Method)による数値解析

(※6)
W90タイプ:(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第23-19号)
W120タイプ:(一財)日本建築センターの工法評定(BCJ評定-ST0278-02)。
W120タイプは株式会社日建設計と共同研究により開発

(※7)鉄骨梁横座屈補剛工法:
(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第17-08号 改訂2)
床スラブによる梁の上フランジの拘束効果(変形しにくくする効果)を考慮することで、従来必要とされた横補剛材を省略可能。

【図1】「薄肉ウェブ梁座屈補剛工法」の概要

【図2】工法を適用した梁の変形性能の確認

【図3】鉄骨梁横座屈補剛工法

本件に関するお問い合わせは、下記にお願い致します。

JFEスチール(株) 総務部広報室 TEL 03(3597)3166

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