廃石膏ボードを利用した土壌改質材の開発に成功

2024/02/21  住友大阪セメント 株式会社 

2024 年 2 月 21 日
住友大阪セメント株式会社
学校法人福岡大学
中央環境開発株式会社

「廃石膏ボードを利用した土壌改質材の開発に成功」

住友大阪セメント株式会社(社長:諸橋央典、本社:東京都港区)は、学校法人福岡大学(学長:永田潔文、所在:福岡県福岡市)、中央環境開発株式会社(社長:太田敏則、本社:神奈川県横浜市)と共に、廃石膏ボードを利用した革新的な土壌改質材の開発に成功し、社会実装に向けた製造拠点の整備を開始したことをお知らせします。

【開発の背景】

国内の廃石膏ボードの排出量は年々増加し、2023 年には 150 万 t の発生、更に解体系廃材の廃石膏ボードを中心に大幅な排出量の増加が見込まれ、2050 年には 300 万 t が発生するとも予測されています。また、解体系廃材の廃石膏ボードについては、リサイクル処理技術が十分に確立していないことから、再資源化されずに最終処分される割合が高く、埋め立て処分場を圧迫するという課題があり、廃石膏ボードの再利用方法の開発が社会的な急務となっています。

【開発品について】

今回開発した土壌改質材は、解体系廃材の廃石膏ボードをリサイクルした『再生二水石膏(CaSO4・2H2O)』が構成成分の 80%以上を占めることを特徴とし、優れた再泥化耐性を有しながら改質後の pH を中性に保つ土壌改質材です。土壌改質材とは、ヘドロ状の泥土に添加することで、トラック運搬や埋立地での路盤形成のための締固めが可能な状態になるまで『泥土の性状を改質する材料』のことで、特に改質後の土に植物が生育可能なものを中性改質材といいます。

従来の中性改質材は『半水石膏(CaSO4・1/2H2O)』を主成分とし、製造段階で水を飛ばすための焼成処理が必要なため、そこに焼成エネルギー由来の CO2 が発生します。半水石膏は石膏細工の材料であり、水と練り混ぜることで硬化します(水硬性)が、この硬化する力を利用して土壌を改質する材料がこれまでの主流でありました。二水石膏は水硬性がありませんが、当社と福岡大学、中央環境開発の3者は独自の硬化メカニズムを用い、水硬性を持たない再生二水石膏を主原料とする中性改質材の開発に成功しました。この製造段階では、廃石膏ボードからの紙類分離と破砕工程に係るわずかなエネルギーのみで済むため、製造段階から使用段階すべてにおいてCO?の発生量が少なくなります。

製造段階での CO2 発生量が少ないことに加え、本中性改質材は

①単位添加量あたりの強度発現性に優れる
②高い再泥化耐性
③従来の中性改質材と同等性能を得るための必要量が 1/5 と圧倒的に少ない
④中性改質ならではの特長として植生・緑化が可能

という 4 つの特長を併せ持ち、これらの複合機能を同時に発現可能なことから、製造・施工・使用段階までの全てのプロセスを含めて、従来比 85%ものCO?排出量削減が達成可能です。

【開発品の特長説明】

①単位添加量あたりの強度発現性に優れる

単位添加量あたりの強度発現性とは、土壌改質の目安となる改質後強度、すなわち土壌 1m3 に対して添加する改質材の量に比例して改質後土壌の強度(kN/m2)が高まる『比率』のことです。本改質材は本来水と接触しても改質効果を示さない再生二水石膏(CaSO4・2H2O)を主成分としているにも関わらず、独自の硬化メカニズムを利用することで従来比 8 倍以上の強度発現性を有しており、土壌改質工事の配合設計や品質管理でも極めて有利な製品となっています。

②高い再泥化耐性

半水石膏を用いた改質土壌は、一旦改質されて固化・搬送可能な状態となっても、例えば埋立後に降雨や河川など外部から供給される水と接触すると徐々に自立性を失い、再び流動性のある泥状になってしまう、すなわち『再泥化』が問題になることがあります。本中性改質材は、この問題点に特化した材料設計としているため、再泥化耐性が極めて高く、その性能の高さは多くの土質種の中で特に再泥化が起こりやすいとされる砂質土においても検証されています。

③従来の中性改質材と同等性能を得るための必要量が 1/5 と圧倒的に少ない

砂質土に対しては、従来の半水石膏(CaSO4・1/2H2O)系中性改質材に対し、わずか 5 分の 1 の添加量で同等強度まで改質可能な性能を有しています。この性能は、搬出を目的とする場合の改質後土の体積を大幅に抑えることができるのに加え、施工・供用段階での CO2排出削減にもつながります。

本中性改質材は製造時の CO2 排出原単位が半水石膏に対し約 23%少ない上、前述の通り改質対象土壌に対する添加量も圧倒的に少なく済むことから、原料・製造・施工・供用段階全体を通し、同一の機能を発揮する場合で比較してCO?排出量を約 85%削減できます。

④植生・緑化が可能

中性改質材を使用して改質した土に直接播種を行い、発芽や成長に影響が無いことが検証されています。覆土等の対策を必要とせず、沿道の整地や、緑化造成の材料としても適しています。

①砂質土に対する強度発現例(7 日) ②再泥化性能例 砂質土 30kg/m3 添加

③施工時の CO2削減例 ④植生試験状況 砂質土・黒ぼく土

主な使用用途:土壌改質工事
対象:建設発生土、汚泥、浚渫土、湖沼・河川付近の改質、シールド発生土
改質後:搬出、埋立材、埋戻し材、盛土材

住友大阪セメント社、福岡大学、中央環境開発社の三者で、現在この革新的な耐再泥化型・中性改質材の製造拠点整備を進めており、2024 年には市場への供給を開始、初年度売上高 5 億円/年を見込んでいます。

当社は『環境解決企業』として業界トップクラスの環境・材料技術を結集し、当社グループの掲げる2050 年カーボンニュートラルに向けた取組み方針「SOCN2050」のロードマップに基づいた多様な排出削減への施策の遂行と、中長期経営計画 「SOC Vision2035」の達成の為、新たな「SOC カーボンビジネス」の創出を継続的かつ 着実に実行していきます。

以上

<本件に関する問い合わせ先>

住友大阪セメント株式会社
セメント・コンクリート研究所
植田 竜也
TEL:047-457-0751
e-mail:tueda@soc.co.jp

福岡大学
工学部社会デザイン工学科
道路・土質研究室
佐藤 研一
TEL:092-871-6631
e-mail:sato@fukuoka-u.ac.jp

中央環境開発株式会社
代表取締役
太田 敏則
TEL:045-773-6030
e-mail:t.oota@lily.ocn.ne.jp

<報道関係者からの問い合わせ先>

住友大阪セメント株式会社 企画部
TEL:03-6370-2725
e-mail:sockikakukaitou@soc.co.jp

福岡大学 企画総務部広報課
TEL:092-871-6631(代)
e-mail:fupr@adm.fukuoka-u.ac.jp

中央環境開発株式会社
TEL:045-773-6030
e-mail:t.oota@lily.ocn.ne.jp

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