IBMがフェルミ国立加速器研究所のSQMSセンターと提携し、重要な量子情報科学を推進

2024/07/22  日本アイ・ビー・エム 株式会社 

IBMは、フェルミ国立加速器研究所のSQMSセンターに加わり、超伝導量子システムの重要なテクノロジーや応用をさらに加速し、量子人材開発プログラムを拡大する計画

米国立量子情報科学研究センター の1つで、フェルミ国立加速器研究所に設置されているSuperconducting Quantum Materials and Systems Center(SQMSセンター)に、IBMが新たなパートナーとして加わることが、米国エネルギー省科学・科学プログラム局によって承認されました。米国内だけでなく国際的にも主要な研究センターとして、SQMS超伝導量子システムに焦点を当て、重要な量子技術の発展に尽力しています。IBMは、超伝導量子コンピューティング技術の開発における業界リーダーです。今回の協業は、この2つの組織の強みを活用し、量子コンピューティング、通信、超伝導量子プラットフォームの大規模展開における重要な課題に対処することを目的としています。





SQMS センターのディレクターであるアンナ・グラッセリーノ(Anna Grassellino)氏は、次のように述べています。「超伝導材料、デバイス、量子システムの世界トップ・レベルの専門家が集結しているSQMSでの協業に、IBMが加わることを歓迎します。今回の協業は、私たちの補完的な技術的強みを活かし、共通の目標を持ち、フォールト・トレラントな量子コンピューターに向けて超伝導量子システムを進化させることを目的としています」

SQMSセンターには、国立研究所、産業界、学界を代表する30以上のパートナー機関が結集しています。多様な協業により、世界中の500人以上の専門家が連携し、量子情報科学の革新的な進歩をもたらします。

IBMは、今回の協業の一環として、大規模極低温技術、超伝導量子ビットのノイズ・ソース、量子インターコネクト、基礎物理学向けの量子コンピューティング・アプリケーション、量子人材開発という5つの重要分野に注力する意向です。

フェルミ国立加速器研究所のディレクターであるリア・メルミンガ(Lia Merminga)氏は、次のように述べています。「フェルミ国立加速器研究所とSQMSセンターは、これらの重要な技術を開発し、大規模に生産するうえで理想的な場所です。私たちは、加速器用の大規模で複雑な超伝導低温システムを構築し、科学的使命を推進するために、先進的な機器を導入してきた数十年の経験を有しています。量子情報科学の進歩は国家的な優先事項であり、フェルミ国立加速器研究所はその進展に深く関与しています」

大規模極低温技術
SQMSとIBMは、量子コンピューターを大規模データセンターへと拡張するために不可欠な技術を進展できるように協力する予定です。SQMSはすでにフェルミ国立加速器研究所において、より高効率で大規模なミリケルビン極低温技術のための新しいソリューションを提案しています。これらの低温技術の開発には、「Colossus」と呼ばれる3D超伝導高周波 (SRF) ベースの量子コンピューティングおよびセンシング・プラットフォームをホストする世界最大の希釈冷凍機が含まれます。IBMは、Colossusの影響を拡大するための実用的な情報および仕様を提供します。これには、IBMの将来の大規模商用量子コンピューティング・システムに適した液体He/N2プラントをベースとした大規模冷却システムの開発が含まれます。

高品質・高密度量子インターコネクト
SQMSは、フェルミ国立加速器研究所で開発中の量子コンピューティング・プラットフォーム向けに、3D SRFプラットフォームをベースとした高品質・高密度量子インターコネクトの設計と試作を行っています。これらの開発は、チップ・ベースのモジュラー・システムのスケールアップにも適用できます。フェルミ国立加速器研究所とIBMは、高品質なマイクロ波ケーブルに焦点を当て、商用量子システムの一部として、量子リンクの実現可能性と利用可能性を探求することを目指しています。

量子ビットとプロセッサーのノイズ低減
SQMSセンターの一環として、IBMとSQMSのパートナーは、超伝導量子ビットの性能を制限するメカニズムの科学的理解を深め、いわゆる「1/fフラックス・ノイズ」を低減する実用的なスキームを開発するために協力する予定です。

量子コンピューティング・システムの科学的応用の開発
SQMSのパートナーとIBMは、量子コンピューティング・システムの物理ベースの応用研究を推進する計画です。例えば、物性物理学では、研究者はIBMのユーティリティー・スケール(実用規模)のプロセッサーを使用して、複雑さが量子アドバンテージ領域に近づく量子多体動力学シミュレーションをサポートすることを目指しています。高エネルギー物理学では、パートナーは格子量子場理論のシミュレーションを探求します。

量子人材開発プログラム
SQMSは、次世代の多様な量子人材を惹きつけ、育成するために、米国エネルギー省が資金提供する4つの国立量子情報科学研究センター (NQISRC) と共同で設立したU.S. Quantum Information Science Schoolなど、いくつかの人材開発プログラムを設立し、成功を収めています。IBMは、世界中の何百万人もが学習に使用する量子教育プログラムを所有しており、また、IBM Quantum Network内のFortune 500企業、大学、研究所、スタートアップ企業に対して量子人材を育成するためのツールを提供し、業界や領域の専門性を高める支援をしています。SQMSとIBMは、協力して米国の量子人材開発プログラムを強化する計画です。

IBMフェロー 兼 IBM Quantum バイス・プレジデントのジェイ・ガンベッタ(Jay Gambetta)は、次のように述べています。「大規模でフォールト・トレラントな量子コンピューターの構築を加速するためには、効率的で大規模な冷凍機や高密度で低損失の量子インターコネクトなど、複雑な課題を解決し、ノイズ源とその低減方法に関する理解を深める必要があります。SQMSの研究へ参加するという計画は、大規模量子コンピューティングに向けたロードマップを前進させる柱となります。また、量子ハードウェアにおける障壁の打破に向けた協力と並行して、IBMとフェルミ国立加速器研究所は量子コンピューティングの科学的応用を推進し、量子に対応できる人材を育成するために協力していきます」

この協業は、IBMとFermi Research Alliance, LLC間における法的合意の最終承認後に開始されます。

フェルミ国立加速器研究所のSuperconducting Quantum Materials and Systems Centerは、米国エネルギー省科学局の支援を受けています。

Superconducting Quantum Materials and Systems Centerは、米国エネルギー省の5つの国立量子情報科学研究センターの一つです。フェルミ国立加速器研究所が主導するSQMSは、30を超えるパートナー機関 (国立研究所、学界、産業界)が集結し、量子情報科学の分野に変革的な進歩をもたらすために協力しています。SQMSセンターでは、複雑な粒子加速器の構築に関するフェルミ国立加速器研究所の専門知識を活用して、最先端の量子ビットと超伝導技術に基づくマルチ量子ビット量子プロセッサー・プラットフォームを設計します。組み込み業界のパートナーと協力して、フェルミ国立加速器研究所において量子コンピューターと新しい量子センサーを構築しています。詳細は、sqmscenter.fnal.govをご参照ください。

フェルミ国立加速器研究所 (Fermi National Accelerator Laboratory) は、素粒子物理学研究における米国随一の国立研究所です。米国エネルギー省科学局の研究所であるフェルミ国立加速器研究所は、イリノイ州シカゴ近郊に位置し、Fermi Research Alliance, LLCの契約に基づいて運営されています。

当報道資料は、2024年7月18日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳をもとにしています。原文はこちらを参照ください。

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