共同倉庫を用いた医療材料物流効率化の仕組みを構築[帝人]

2023/01/17  帝人 株式会社 

2023年 1月17日
帝 人 株 式 会 社

国家プロジェクトの成果として医療物流改革を実現
共同倉庫を用いた医療材料物流効率化の仕組みを構築


帝人株式会社(本社:大阪市北区、社長:内川 哲茂)は、内閣府が主導する国家プロジェクト「スマート物流サービス」に聖路加国際病院、東京医科歯科大学病院、小西医療器株式会社、株式会社ホギメディカルらと共同して参画し、医療機関で使用される医療材料に関する物流データの一元的な管理、共同院外倉庫の設置および RFID(*1)の活用による業務効率化の仕組み構築を実現し、2023 年 1 月から本格稼働しました。

(*1)RFID:Radio Frequency Identification の略。電波による個体識別技術のこと。

1.背景・経緯

(1)近年、物流業界においては、生産年齢人口の減少による担い手の不足、EC および個人間売買の拡大や取引方法の多様化による配送の多品種・少量・多頻度化、業界ごとにある独特の非効率な商習慣などにより、サービスの低下や費用高騰が引き起こされる「物流クライシス」が社会問題となっています。さらに、医療に不可欠な医療材料の物流においては、新型コロナウイルス感染症の流行によって医療材料の偏在や欠品が発生・常態化し、デジタル化の遅れが原因で物流データの一元的な管理が不十分であるという課題が浮き彫りとなりました。

(2)このような中、内閣府は、日本経済再生のために社会課題の解決に取り組む国家プロジェクトとして「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を創設し、解決すべき重要な課題のひとつに「データを活用したサプライチェーン全体の生産性向上」を掲げ、その達成のためのプログラムとして「スマート物流サービス」を採択して活動の支援を行ってきました。

(3)当社はこれまで、独自技術である二次元通信による RFID 管理技術を活用した物品管理システムである「レコピック」(*2)および「レコファインダー」(*3)の「Reco(レコ)シリーズ」を展開してきました。特に医療機関において RFID を用いた医療材料の物流効率化を図り、コスト削減や労働時間短縮に向けたソリューションを提供しています。

(*2)「レコピック」:ICタグが貼付された管理対象物の入出庫やロケーションを、シート状のアンテナで正確に検知する常時監視システム。

(*3)「レコファインダー」:当社独自の電波を制御する技術を活かし、目的外の対象物の誤検知を回避しながら、 管理対象物に貼付されたICタグの通過を正確に検知する通過検知システム。

(4)今回当社は、これまで培ってきた物流効率化の技術やノウハウをサプライチェーンのさらに上流から適用することが物流の課題解決につながると考え、「スマート物流サービス」プログラムに研究代表者として参画しました。2021 年10 月から2022 年12 月まで医療機関をはじめ、医療材料メーカーや卸、物流企業などのサプライチェーンの各プレイヤーと共同して効率的な物流の仕組み作りを進め、実証実験において効果が確認できたことから、このたびの本格稼働に至りました。

2.今般の医療材料物流効率化の仕組み

(1)現状、メーカーから出荷された医療材料は複数の卸を通して各病院へそれぞれ納品されること、また、病院内の在庫スペースが限られており納品量を少なくする必要があることから、積載効率が悪く配送回数が多い、非効率な状況となっています。

(2)このような課題の解決のため、今回、以下のような仕組みづくりを行いました。

①複数病院で使用される医療材料を一括で保管する共同院外倉庫を、各病院から近い佐川グローバルロジスティクス株式会社東京 SRC(東京都品川区)に設置しました。

広い在庫スペースを確保することで一度に納品できる量を増やし、積載効率の向上と配送回数の削減が可能となりました。さらに、共同院外倉庫内で各病院の使用部署ごとの仕分けを行い、各病院内で行う仕分け作業の手間を削減しました。

②共同院外倉庫内の在庫管理および出荷、さらには病院内での検品や在庫管理作業には「Reco シリーズ」を活用して RFID による一元管理の仕組みを構築し、手間と時間がかかるバーコードでの読込作業を撤廃することで業務効率の向上を実現しました。

③「Reco シリーズ」で読み取られたそれぞれの入出荷情報や発注情報、各病院内での使用実績などの情報は、共通のデータプラットフォームに集め、物流状況の可視化による一元的な管理を行います。

(3)約半年間にわたる実証実験の結果、聖路加国際病院においては院内物流業務の約60%削減、東京医科歯科大学病院においては手術材料の使用実績登録業務の約 95%の業務削減、また医療材料メーカー側においても約 30%の配送回数削減の目途がついています。

3.今後の展開

(1)今回の本格稼働を機に、実証実験に参加した2病院の他にも参加病院を募り、東京都内での共同院外倉庫を中心とした物流システムの規模を拡大していきます。

(2)共同院外倉庫モデルが有効であるのは病院内の保管スペースが限られ、病院の所在が密接しており、取引物量の多い都市圏の大病院であることから、2025 年までに他の大都市への展開拡大を目指していきます。

(3)当社は、共同院外倉庫モデルに参画する医療機関に「Reco シリーズ」による RFIDソリューションを提供し、その普及を図ります。

(4)これらの取り組みを通じて、医療材料のサプライチェーン効率化を図り、喫緊の課題である「物流クライシス」の解決によるサステナブルな社会実現への貢献を目指していきます。

【 当件に関するお問合せ先 】
帝人株式会社 広報・IR 部 TEL:(03)3506-4055
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