衛星レーザ測距を用いた低軌道超小型衛星の軌道把握に関する共同研究契約の締結および軌道上実証の実施について

2022/08/09  宇宙航空研究開発機構(JAXA) 

衛星レーザ測距を用いた低軌道超小型衛星の軌道把握に関する
共同研究契約の締結および軌道上実証の実施について

2022年(令和4年)8月9日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
一般社団法人e-kagaku国際科学教育協会

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長:山川宏、以下、JAXA)と一般社団法人e-kagaku国際科学教育協会(※1)(京都府京都市、代表理事:北原達正、以下e-kagaku)は、2024年度に打上げ予定の”e-kagakuジュニア衛星”に“mini-Mt.FUJI”を搭載し、軌道上実証実験を実施するという共同研究契約書を6月16日に締結しました。

 mini-Mt.FUJIは、JAXAが開発した衛星レーザ測距(SLR:Satellite Laser Ranging)用の超小型反射器です。人工衛星に取り付けられたSLR反射器に向けて地上のSLR局からレーザを照射し、反射して返ってきた光を再び検知するまでの往復時間を計測することで、SLR局と人工衛星との距離を高精度(mmオーダ)に測定することができます。

 e-kagakuジュニア衛星は、e-kagakuにおいて中高生と大学生が中心となり進めているプロジェクトです。衛星は、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」から放出し、その衛星の軌道をSLR技術により高精度に把握する世界初の試みとなります。

 JAXAはmini-Mt.FUJIの技術情報を提供し、軌道決定情報を提供します。

 e-kagakuはmini-Mt.FUJIの設計・製造・試験及び打上げ、運用を行います。
 また、衛星が大気圏に再突入するところまで観測を行います。e-kagakuジュニア衛星は小型人工衛星CubeSat(キューブサット、10×10×10cmサイズ、重量1kg)サイズですが、地球上から光学観測できるほぼ限界の大きさとなります。

 本共同研究の結果は、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の軌道解析にも貢献できると考えています。

■JAXA追跡ネットワーク技術センター長 井上 浩一 コメント
近年、人工衛星や宇宙ゴミの増加により、運用中衛星と宇宙ゴミとの衝突の危険性が高まっています。ひとたび衝突が発生すると人工衛星を失うだけではなく、膨大な数の宇宙ゴミを発生させます。宇宙の安定的利用のため宇宙状況把握(SSA)が重要となってきました。SSAは観測センサーの向上も重要ですが、観測される側の視認性を上げる事も重要と考え、mini-Mt.FUJIを開発しました。e-kagakuジュニア衛星が、mini-Mt.FUJI効果実証のチャンスを与えてくれました。JAXAは、e-kagakuジュニア衛星がきっかけとなり、全ての宇宙物体がSLR反射器を搭載する日が来てほしいと考えています。そのためにJAXAの観測システム、解析技術を活用して本プロジェクトに取り組みます。

■(一社)e-kagaku国際科学教育協会 北原 達正代表のコメント
e-kagakuは今回のプロジェクトで、「宇宙をジュニアたちの実践教育の場とできること」「どこに住んでいても最先端のプロジェクトに参加できること」「10年以内に実現する産業にいち早く取り組める人材を育成すること」「ハードとソフトとデザインすべてを小学生から学べること」を証明したいと考えています。アポロが月に行ってすでに50年。もはや小学生の自由研究の課題にしなければなりません。一方月に基地ができるまであと10年。小学6年生が大学を卒業するときに必要なグローバルSTEAM教育を、すぐに実現したい。そのことを全国に広める起爆剤にしたいと考えています。

※1(一社)e-kagaku国際科学教育協会について:
2014年6月設立。Space Robot Contestのほか、小中学校等におけるロボット/サイエンス体験教室や合宿を全国各地で開催。
「スポーツやピアノと同様に、大人が使う本物の道具(ロガーやアプリケーション)と本物のスキル(知識やプログラミング)を使ったSTEAM教育を、小学生からどこでも行う」ことをコンセプトに、子どもから大人向けのSTEAM教育、ICT教育を全国で行い、科学を通じた人間育成と、教育格差のない社会の実現のための環境整備を行っている。

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