コロナ禍に「顔のシミが気になるようになった」、58.4% 外出自粛で紫外線を浴びていないのに…シミが気になるようになったのはなぜ? 皮膚科医が解説:コロナ禍のシミの意外な原因と対策

2021/04/19  株式会社 資生堂 


 コロナ禍も2年目に突入。夏に向け、マスク擦れのダメージに加え紫外線による肌ダメージも加わり、シミのリスクがますます上がってしまう季節がやってきます。
 資生堂は、2021年3月、コロナ禍におけるシミケアに対する対策や悩みの実状を詳らかにするための意識調査を実施。調査結果から、自粛生活で紫外線を浴びていないはずが、実はシミが気になる人が増えているという現状が明らかになりました。これは一体どうしてでしょうか?資生堂の新知見とともに、シミに対する正しいケア方法を皮膚科医の日比野佐和子先生に伺いました。

《調査概要》
実施時期:2021年3月 手法:インターネット調査
対象:「皮膚科やエステ等でシミや肝斑対策の施術を受けたことがある」25歳~59歳の女性700名

【監修者】 皮膚科医 日比野 佐和子(ひびのさわこ) 先生


医療法人社団康梓会 Y'sサイエンスクリニック広尾統括院長、大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学特任准教授、医学博士。内科医、皮膚科医、眼科医、アンチエイジングドクター(日本抗加齢医学会専門医)。同志社大学アンチエイジングリサーチセンター講師、森ノ宮医療大学保健医療学部准教授、(財)ルイ・パストゥール医学研究センター基礎研究部アンチエイジング医科学研究室室長などを歴任。中医学、ホルモン療法、プラセンタ療法、植物療法(フィトテラピー)、アフェレーシス療法(血液浄化療法)などを専門とする。アンチエイジングの第一人者として国際的に活躍するほか、テレビや雑誌などにも数多く出演。

■「コロナ禍以降、シミ・肝斑に対する意識が変わった」=42.6%



コロナ禍以降、シミや肝斑に対する意識が変わったと感じている人42.6%と全体の半数弱を占めました。具体的な意識の変化としては「より顔のシミ・肝斑が『気になるように』なった」(58.4%)という人が多く、「シミ・肝斑ケアのために新しく美白化粧品を取り入れた」という人も27.5%を占めています。
「『肝斑=両頬の高い位置に出来る左右対称のシミ』もシミの一種ですが、マスク着用により肝斑が目立つようになったと悩む人も。」(日比野先生)



長い自粛期間が続き、外出する機会が減少したことからシミの原因となりうる紫外線を浴びる機会は少なくなっていると想定される中、なぜ、シミが気になる人が増えるのでしょうか?


■コロナ禍におけるライフスタイルの変化もシミを助長している可能性あり



コロナ禍でライフスタイルが変化したかを聞いたところ、「メイクをする頻度が減った」(43.1%)、「座りっぱなし、あまり歩かないなど運動不足になった」(38.0%)、「コロナ前に比べ、精神的なストレスを感じるようになった」(29.7%)が上位に。

「マスクの摩擦がシミ原因になっているほかに、運動不足や精神的ストレスはシミの出現の一因となり得ます。また、外出をしない時も下地やファンデーションをしていることでうるおいケアやUVカットなどの効果が期待できます。しかしメイクをしないことで、日中の乾燥や紫外線対策が疎かになってしまっているとも捉えられます。」(日比野先生)

■コロナ禍のシミ対策ケアへの意欲は高まっている


コロナ禍において、ホームケア全般への意欲は高まっており、「コロナ禍になって、おうちでの美容ケアへの意欲は上がったか?」の問いには66%が「上がった」と回答。
具体的に意欲が上がった点に関しては、そのうちの半数が「より効果の高いコスメを探す・買うようになった」(49.4%)と回答していました。

■皮膚科やエステの施術と”併行してシミのセルフケアを行う”という人は58.3%。
理由は、「キープしたい」・「早く効果が出ると思うため」・「元の状態に戻りやすいと思うため」。


美容皮膚科などでシミケアをしながら、併行しておうちでのシミケアを行っている割合も多いといえます。日ごろのケアとして継続的に「皮膚科やエステなどの施術を受ける*」という人353人のうち、併行しておうちでの”セルフケア”を行っている人が206人(58.3%)いました。
*「皮膚科・美容皮膚科で施術を受ける」(253人)と「エステで施術を受ける」(100人)の合計

具体的なケアとしては多い順に、「市販のシミ用美容液(美白美容液)を使う」(124人)、「皮膚科で処方される薬を付ける」(104人)、「皮膚科で処方される内服薬を飲む」(86人)「皮膚科・美容皮膚科でドクターズコスメを購入して使う」(58人)、となっています。
皮膚科やエステの施術にプラスしてセルフケアを取り入れている理由としては、「施術できれいになった肌をキープしたい」(206人中93人)、「早く効果が出ると思うため」(89人)、「皮膚科やエステの施術だけだと元の状態に戻りやすいと思うため」(85人)がトップ3でした。
施術効果の維持やサポートの目的以外に、「施術を受けても元に戻ってしまう」という認識ゆえにセルフケアを取り入れていることがわかります。



■7割以上の人が、「施術を受けても元に戻ってしまった」と感じたことがある

シミや肝斑対策の施術を受けた後、「シミや肝斑が元の状態に戻ってしまった(再び濃くなる・増えるなど)」と感じたことがあるかという問いには、「ある(41.0%)」、「どちらかといえばある(31.3%)」と7割強(72.3%)の人が施術後の”戻りジミ”を実感していることがわかります。


《医師解説》 コロナ禍にシミが気になるのはなぜ?

■新知見…シミの原因は、血管の異常な増殖!
「気になるシミケアのために、レーザー治療やスキンケアは有効です。しかし、それらのケアをやめた後に再びシミが復活してしまったと訴える人は少なくありません。実は、これは必然的に起こり得ること。
肌に与える刺激の要素としては、紫外線はもちろんのこと、レーザー治療やスキンケア製品の誤った使い方など様々なものがあげられます。このような刺激をうけてしまうと、肌の内部の血管新生は促進されることがあり、シミの原因となるメラニン産生を活性化させる物質が放出されやすい状態になってしまうことが資生堂の研究により新たに分かりました。」(日比野先生)

《資生堂新知見:血管の異常増殖とシミが増えるメカニズム》



肌がダメージを受けると、血管内皮細胞から「ウロキナーゼ」という酵素が分泌され、この酵素が血管内皮を増殖させる因子(血管内皮増殖因子:VEGF-A)と協調して血管の新生を促進します。
この「ウロキナーゼ」の活性が高まると、メラニン生成の引き金となる酵素「チロシナーゼ」の活性も高まり、メラニンを増やしてしまうことがわかっています。

参考:資生堂 シミ予防研究
https://www.shiseido.co.jp/haku/laboratory/?rt_pr=tri57

「レーザー治療では、皮膚にレーザーを照射して、かさぶたにしてそれが剥がれることでシミを薄くしますが、これは皮膚に傷をつけることでもあり、ダメージを受けた皮膚を修復するためにその過程で新しい血管が生まれます。もっともよく知られる、紫外線でシミが増えることの原因の1つも、血管増殖です。紫外線を浴びることも軽度の火傷のようなもので、肌を修復するために血管が新生することに繋がります。」(日比野先生)

■コロナ禍には血管の異常増殖の要因が複数ひそんでいる
「コロナ禍にシミが気になる原因としてはマスクの摩擦、運動不足による代謝の低下、精神的なストレス、紫外線対策の手薄さも関与していると考えます。
特にマスクの着脱時に起こる擦れなどは、血管の異常増殖の要因になり得ます。マスク擦れによる肌のダメージを修復しようとして血管の新生が促され、マスクの縁が当たる位置にシミが現れてしまうことがあります。

また、肝斑は外的刺激などの要因よりも、女性ホルモンのバランスが崩れることが原因となり、30代から50代の女性に出現しやすいといわれていますが、肝斑も、物理的なダメージによって繰り返してしまう恐れがあります。」(日比野先生)


■繰り返す「シミ」を断ち切るためには、異常な血管へのケアも重要

●異常な血管新生を抑えるには、活性酸素の発生を避け、細胞をつくること
「血管は、ダメージを受けたり栄養が不足している場所へ酸素や栄養を届ける器官。
活性酸素(フリーラジカル)の影響で酸化が進んでしまっているところや栄養が不足しているところへ伸びていく習性がありますが、大きなダメージを受けたり、ホルモン異常などによって身体のコントロールが崩れると異常な血管が発生するリスクに。

異常な血管新生を防ぐためには、活性酸素を発生させやすい習慣を避け、また、血管内壁をはじめ、血管の健康状態を維持することを目指す対策をしましょう。」(日比野先生)

《1)異常な血管新生を抑えてくれる成分》

「おうちでできるセルフケアにおいて注目されているのが、市販のシミケア品にも使用されているオトギリ草抽出液
オトギリ草抽出液は、収れん、抗菌、利尿作用、育毛、火傷や口腔炎にも効果があるとされていますが、資生堂の研究により血管の異常増殖を抑制する効果があることが新たにわかりました。」(日比野先生)

《2)活性酸素を低減してくれる食品・血管の細胞を育んでくれる食品》

「細胞を正常に作ってくれる栄養素の代表格はタンパク質
肉・魚・大豆・卵など、良質なタンパク質を十分な量を摂りましょう。1日の成人女性における推奨される摂取量は50gといわれますが、たんぱく質そのものを50g摂取するにはかなり積極的にタンパク質をおかずに取り入れるべきでしょう。エネルギーの代謝に働くビタミンB2をはじめ、我々の生命活動に必要なエネルギー代謝に関係しているビタミンB群は代謝ビタミンとも言われており重要です。」(日比野先生)

ビタミンB群に属する栄養素としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸など。

ビタミンB2は「肌とエネルギー代謝のビタミン」とも言われ、脂肪の代謝や細胞の再生をサポートし、皮膚や粘膜を健やかに守る働きがあるので、特に重要です。
また、アミノ酸を再合成して細胞の材料にしてくれる補酵素としてはたらくビタミンB6も重要。
赤身の魚や、ヒレ肉やささみなどの脂が少ない肉類、植物性の食品では、バナナ、さつまいも、玄米などにも比較的多く含まれます。
ビタミンB12もタンパク質の合成やアミノ酸の代謝を促進してくれる、細胞を作るうえで重要な栄養素。ビタミンB12は微生物から作られることが多く、牡蠣、あさり、ほたてなどの貝類に多く含まれます。その他、サバ、アジからも摂ることができます。」(日比野先生)
ビタミンB1:糖質の分解を助ける
ビタミンB2:脂質の代謝を促す
ビタミンB6:健康な肌や髪、歯を作る
ビタミンB12:血液を作る
ナイアシン:皮膚や粘膜の健康維持を助ける
パントテン酸:脂質・糖質・たんぱく質の代謝に役立つ
葉酸:貧血を防ぐ
ビオチン:皮膚や粘膜の健康維持を助ける
抗酸化作用といえばナッツに含まれるビタミンEです。
「体内の活性酸素を中和してくれる働きもあり、コレステロール過多の予防、さらには、血糖値を緩やかに上昇させてくれるので(抗糖化作用)、ダイエット効果も。血液中のコレステロール過多は、血管の内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を進行させ、体内へ必要な酸素や栄養を届けることを阻害する一因となり、異常な血管新生に繋がる可能性があります。また、そのほか、抗酸化成分を多く含むカラフルなフルーツ全般を積極的に摂ることもおすすめ。

ジャンクフードなどで使用されがちな酸化したオイルは避けましょう。そしてスナック菓子には動脈硬化の原因になると言われているトランス脂肪酸が使用されているので要注意。
魚やアマニ油、えごま油に豊富に含まれるオメガ3オイルなどの良質なオイルを積極的に摂取すると、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を下げ、動脈硬化を予防してくれるといわれています。

肝斑が気になる場合には、女性ホルモンバランスを整えてくれる大豆イソフラボンを。
大豆イソフラボンとは女性ホルモン「エストロゲン」と似た働きをする、大豆の胚芽(胚軸:生長すると芽になるところ)部分に含まれる抗酸化物質。イソフラボンも分子量の大きい”グリコシド型”と分子量が小さく吸収されやすい”アグリコン型”の二種類があり、納豆、豆腐、油揚げ、きなこなどの大豆食品に含まれているイソフラボンの多くは、吸収されにくいグリコシド型です。醤油や味噌などに含まれる吸収されやすいアグリコン型を、塩分の取りすぎには注意しながら積極的に摂りましょう。」(日比野先生)

《3)コロナ禍においてシミを増やさないための生活習慣》

コロナ禍においては、生活リズムの乱れ、運動不足、栄養の偏り、長い外出自粛生活による紫外線への油断、精神的ストレス、とシミの発生しやすい条件が揃ってしまっています。


活性酸素を増やさず、元気な細胞を作るための生活習慣は…

・ゆっくり湯船に浸かり、身体の代謝能力をアップさせる。
・寝る前にマッサージやストレッチをして身体をリラックスさせる。精神的なストレスを溜めない。
・十分な睡眠を取ることで、肌の修復を助ける成長ホルモンの分泌を活性化させる。


「1年以上続くコロナ禍で、少なからず精神的なストレスを感じている人は多いのではないでしょうか?リモートワークによって生活リズムが崩れ、ホルモンバランスや免疫状態が悪化すると、活性酸素がたまり、シミができやすくなってしまいます。」(日比野先生)

・無理なダイエットをしない
栄養不足と精神的ストレスにつながるため。

・紫外線を避ける
紫外線も強くなってくる季節。外出を控えていることで紫外線ダメージを避けられると思うかもしれませんが、室内でも肌は窓から入ってくる紫外線にさらされています。UVカット効果のある下地やファンデーションは室内でも塗っておくようにしましょう。

・酸性雨などを浴びない
雨を不用意に浴びない。浴びてしまったらタオルで拭く、ないしは軽く洗う。

・タバコや過度な飲酒を避ける
赤ワイン1杯程度ならば、赤ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化作用が他のアルコールよりは少しは期待できる。

・有酸素運動やスローな運動を習慣(深呼吸などを取り入れて)
おすすめはウォーキング、軽いジョギング、ちょい早歩き、ヨガなどのスローエクササイズ。

他の画像

関連業界