朝礼での外国籍従業員への円滑な伝達を実現する「翻訳サイネージ(TM)」を開発

2024/09/11  三菱電機 株式会社 

生産現場における言語の壁を解消、多言語表示により大人数にメッセージを正確に伝達


朝礼前に原稿を作成する画面と朝礼時にサイネージへ多言語表示する画面

 三菱電機株式会社は、国内の生産現場において雇用が拡大している外国籍従業員との円滑なコミュニケーションの実現に向けて、工場での朝礼など大人数が参加する場において、多言語を同時表示することで正確な内容を伝達できるシステム「翻訳サイネージ(TM)」のコンセプトを創出し、プロトタイプを開発しました。
 少子高齢化の進展と労働人口の不足が深刻化する中、さまざまな分野で外国籍労働者の雇用が拡大(※)しています。一方、日本人従業員と外国籍従業員との間には言語の壁があり、特に生産現場では日常生活で聞き慣れない専門用語が多く、安全・品質に関する遵守事項や作業指示が伝わらないケースが発生しています。それにより生産ロスの増加や品質低下、教育にかける時間の増大などを招くことが課題となっていました。
 当社は今回、日本語で作成した伝達内容の原稿を事前に多言語に翻訳し、それらの翻訳文章を朝礼時に大画面で同時表示するシステム「翻訳サイネージ(TM)」を開発しました。外国語に翻訳した原稿を日本語に再翻訳することで誤翻訳の抑制につながる「折り返し翻訳」機能や、多言語へ一括で翻訳することでサイネージに表示する翻訳文章を短時間で作成できる「多言語翻訳一括作成」機能を有する本システムの活用により、言語が異なる多様な国籍の従業員に対して、それぞれの母国語で朝礼の内容を正確に伝達することが可能になります。また、工場の班長やリーダーはスマートフォンを用いて、手元での伝達項目の確認やサイネージの操作が可能です。これにより、多言語表示しながら円滑な朝礼を実施できるという、新しい朝礼スタイルを創出しました。
 本開発に際しては、当社群馬工場における実証実験を行い、朝礼時の様子の観察や、班長やリーダー、外国籍従業員へのヒアリングを実施しました。その結果、外国籍従業員の91%が「朝礼が分かりやすくなった」と回答しており、品質向上に加えモチベーションの向上にもつながっています。
 今後、本システムの社内導入を進め、そこで得られた知見を踏まえて事業化を目指し、生産現場における安全・品質の向上や、業務の効率化・雇用確保など、外国籍従業員とともに働きやすい職場の実現に貢献します。

■「翻訳サイネージ(TM)」の特長
1.多言語で同時表示することで、多様な国籍の従業員に朝礼の内容を伝達可能
・朝礼前に日本語で作成した原稿を複数の言語に翻訳し、朝礼時に翻訳した文章を大画面に多言語で同時に表示
・英語、ポルトガル語、タガログ語、ベトナム語など17言語への翻訳に対応した「多言語表示」機能により、言語が異なる多様な国籍の従業員に対し、それぞれの母国語で朝礼の内容を伝達可能

例)4言語の多言語表示画面

「翻訳サイネージ(TM)」を使用した朝礼の様子

2.「折り返し翻訳」「翻訳辞書・音声認識辞書」機能により多言語翻訳の精度向上、「多言語翻訳一括作成」機能により翻訳作業の効率化を実現
・外国語に翻訳した原稿を日本語に再翻訳する「折り返し翻訳」機能により、誤翻訳を削減。また、日本語原稿と折り返し翻訳結果を左右で見比べることができるユーザーインターフェースの構築により、誤翻訳の日本語での確認・修正が可能
・専門用語を登録できる「翻訳辞書・音声認識辞書」機能を活用し、生産現場に特化した用語をあらかじめ登録しておくことで、翻訳精度を向上
・正しく翻訳できるように修正した英訳用の日本語原稿を、ポルトガル語やタガログ語など他の言語への翻訳用原稿として流用する「多言語翻訳一括作成」機能により、多言語への翻訳作業を効率化

折り返し翻訳を行う翻訳作成画面


多言語一括流用を行う翻訳作成画面

3.スマートフォンでの遠隔操作によるサイネージ表示の切り替えが可能、「音声入力・翻訳・折り返し翻訳」機能により急な伝達にも迅速に対応可能
・スマートフォンからも事前に作成した原稿の確認やサイネージに表示する翻訳文章の切り替えが可能
・サイネージに表示される全ての翻訳文章のスクロールが完了したことをスマートフォンに通知することで、班長やリーダーはサイネージ画面を確認することなく、次の話題への切り替えが可能
・朝礼時、事前に原稿を作成していない内容を追加で伝える際、スマートフォンアプリの「音声入力・翻訳・折り返し翻訳」機能により、誤翻訳を抑制した伝達内容を、迅速に多言語で同時表示することが可能

サイネージでスクロールが完了したことを通知するスマートフォンの画面


音声認識・折り返し翻訳の結果を確認するスマートフォンの画面と、結果を多言語表示するサイネージの画面


■実証実験での効果検証結果
 当社の群馬工場において実証実験を実施し、外国籍従業員を対象にしたアンケートでは、91%が「朝礼が分かりやすくなった」と回答しています。また、生産現場から以下のコメントが得られました。
 <班長(日本人)のコメント>
  ・さまざまな母国語の従業員に対して、同時に伝達が可能となり効率化が図れた
  ・伝達内容が以前より伝わるため、トラブル発生時の「止める・呼ぶ・待つ」の基本ルールが徹底された
  ・職場の雰囲気が明るくなった
 <外国籍従業員のコメント>
  ・朝礼内容の詳細が理解できると、気を付けるべきこともわかる
  ・「翻訳サイネージ(TM)」の導入で、会社が自分たち従業員の事を考えてくれていることがわかった

■今後の予定・将来展望
当社内の生産現場へのシステム導入を進め、朝礼など大人数への伝達シーンでの利用促進を行うとともに、2025年度以降の事業化を目指します。また、朝礼向けの翻訳システムだけでなく、作業指導・受け入れ教育・個別相談・全社教育・海外拠点の立ち上げ指導などに対応する、新たな生産現場向けソリューションを継続して開発していきます。これにより、外国籍従業員との言語の壁をなくし、安全・品質の担保と円滑なコミュニケーションの実現に貢献します。

■開発したシステムの仕様


■商標関連


※ 出典:総論:拡大する外国人材雇用、その背景と今後の期待とは | 高度外国人材と創出する日本企業のイノベーティブな未来 - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ(jetro.go.jp)

<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船五丁目1番1号
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