世界初の軟包装用水なしオフセット印刷機を開発 ― 食品などの包装材印刷のVOCフリーと約80%の消費電力削減を実現 ―

2019/03/14  東レ 株式会社 

2019年3月14日

東レ株式会社
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

世界初の軟包装用水なしオフセット印刷機を開発
―食品などの包装材印刷のVOCフリーと約80%の消費電力削減を実現―

東レ株式会社(所在地:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、NEDO事業において、株式会社ミヤコシなどと食品や生活用品など身近な商品の軟包装材向け印刷用に世界初となる水なしオフセット印刷機を共同開発しました。 同印刷機は、印刷工程に揮発性有機化合物(VOC)を含む液体(湿し水)を使わない水なし印刷方式を採用しており、環境に配慮した印刷が可能です。東レ独自の水なし平版と、省電力LED-UV技術によるインキ乾燥方式と組み合わせることで、軟包装用印刷のVOCフリー化と、従来の印刷方式に比べて約80%の消費電力削減を実現します。 東レは世界が直面する「発展」と「サステナビリティ(持続可能性)」の両立をめぐる問題の解決に向けて、革新技術・先端材料の提供によって、本質的なソリューションを提供してまいります。今回開発した水なしオフセット印刷機と水なし平版、水溶性UVインキを組み合わせた軟包装用水なしオフセット印刷システムはその取り組みの一貫として印刷業界の環境負荷低減に貢献して参ります。

図1 軟包装用水なしオフセット印刷機

1.概要
軟包装材は、フィルムを使った包装材で、軽量性、柔軟性、加工のしやすさ、透明性、バリア性などの特長から、食品やシャンプー・洗剤の詰め替え品用など、生活に身近な幅広い商品の包装に使われています。この軟包装に関する印刷市場は、世界的な人口増加に伴い、今後も年率5~7%の拡大が予測されています。一方で、軟包装用印刷には、アジアでは主にグラビア(凹版)印刷※1方式が採用されており、有機溶剤を含むインキを大量に使うことから、PM2.5(微小粒子状物質)による環境汚染の原因となる揮発性有機化合物(VOC)※2を多く排出することに加え、溶剤の加熱乾燥や排気燃焼処理に膨大な電力を使うことが問題となっています。
このような背景のもと、東レは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト※3において、VOCフリー化や省電力性など環境性能の高い軟包装用水なしオフセット印刷※4システムの開発を2016年度から開始し、2017年度には印刷機メーカーの株式会社ミヤコシ、印刷用インキメーカーの株式会社T&K TOKA、ならびに印刷システムのユーザーである光村印刷株式会社が参画して、開発を推進してきました。そして今般、システムの中核となる世界初の軟包装用水なしオフセット印刷機を開発しました。
2.軟包装用水なしオフセット印刷機の特長
今回開発した軟包装用水なしオフセット印刷機は、東レ独自の水なし平版と水溶性UVインキとの併用により、印刷時にVOCを含む液体(湿し水)を使う必要がないほか、印刷後の設備などの洗浄にVOCが発生しない水系洗浄液を利用できます。加えて、省電力性が高いLED-UV※5を使ったインキ乾燥方式を組み合わせることで、溶剤乾燥と排気処理が不要となります。これにより、グラビア印刷方式に比べてVOC排出量の98%以上の削減と、印刷機1台あたり約80%減となる年間96万kWhの電力消費量の削減を実現します。
さらに、この軟包装用水なしオフセット印刷システムでは、VOCフリーシステムによって排気処理装置や防爆対応設備が不要となるほか、平版の使用により版代コストを安く抑えられます。設備導入コストとランニングコストを低減できるため、軟包装用印刷の多品種化・小ロット化が進む市場に、優れたパフォーマンスで対応することができます。

図2 現行プロセスと新規プロセスの比較

【注釈】 ※1 グラビア(凹版)印刷 版は円筒形の金属シリンダで、表面に直接絵柄を凹状に刻んでクロムメッキを施す。版のコストは高いが、耐久性に優れており、フィルムロールの連続印刷など、大量印刷に適している。凹部の深さや形状に融通が利くので濃淡表現に優れる。インキ成分は顔料と樹脂と有機溶剤であり、印刷後に有機溶剤を乾燥させて被印刷物に絵柄を定着させる。 ※2 揮発性有機化合物(VOC) 印刷工程では、有機溶剤を含むインキや薬液を使用することでVOCが発生する。VOCは、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の主原因となるため、国内では大気汚染防止法によって規制されており、発生するVOCは燃焼処理や吸着処理などの排気処理が施されている。近年では、VOC発生源付近での労働環境改善、防災対策、VOC処理のエネルギーコスト低減(CO2削減)の必要性が高まっており、VOCそのものを排出しない印刷システムが望まれている。 ※3 プロジェクト 事業名:戦略的省エネルギー技術革新プログラム/革新省エネルギー軟包装印刷システムの開発 事業期間:2016年度~2018年度 ※4 オフセット印刷 平版印刷。版は板状の金属プレートで、表面の感光層を露光して絵柄を作る。版の耐久性はグラビア版に及ばないが版コストが安く、短納期で用意できる。写真や色などの再現性に優れており、商業印刷に多く用いられている。 ※5 LED-UV 発光ダイオード(Light Emitting Diode)を光源とした紫外光(Ultraviolet)を発光するランプ。このUV光を、UVインキ印刷部に照射して瞬時に乾燥(硬化)させる。オフセット印刷用インキは、従来の自然乾燥タイプの油性インキから、速乾性のUV硬化インキへシフトしており、UV光源としてメタルハライドUVランプが用いられてきたが、近年では省エネで発熱量の小さいLED-UVランプの採用が進んでいる。

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