2021年ゴールデンウィーク(4月25日~5月5日)の旅行を取り巻く環境と意識調査

2021/04/22  株式会社 JTB 

・GWに旅行に「行きたい」と考えている人は10.3%(例年の半分以下)  ・旅行者は感染防止を最優先、域内志向が強まる  ・滞在先でワーケーションを予定している人も一定数(22.3%)

JTBは、「ゴールデンウィーク(以下、GW)<2021年4月25日~5月5日>の旅行を取り巻く環境と1泊以上の旅行に出かける人の意識調査」をまとめました。





社は例年、GWの国内/海外旅行者数や消費額を各種データや定点の意識調査をもとに推計し、「GWの旅行動向」として発表してきました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下、新型コロナ)は世界的流行からの収束が見えず、海外渡航は依然制限され、日本国内の旅行も多くの地域間で移動の自粛が要請されています。現在、GW前の感染者数増加に対し、国や自治体が今後の具体的対策を講じている段階でもあることから、今年は旅行者数等の推計は行わず、定点で実施している意識調査、および各種データから見えてくるGWの旅行トレンドについて、まとめることとしました。結果は以下の通りです。

※なお本調査は、大阪府や東京都などが緊急事態宣言の発出を政府に要請する前に実施されたアンケートデータを元に分析しています。宣言が発出された場合、関係各府省庁の要請に応じた対応を行ってまいります。

【旅行動向アンケート 調査方法】
調査実施期間: 2021年4月9日~14日
調査対象: 全国15歳以上79歳までの男女個人
サンプル数: 事前調査20,000名 本調査1,535名
(事前調査で「GWに国内旅行に行く/たぶん行く」と回答した人を抽出し本調査を実施)
調査内容: 2021年4月25日から~5月5日に実施する1泊以上の旅行
(海外旅行、商用、業務等の出張旅行は除く)
調査方法: インターネットアンケート調査


<社会経済環境と生活者の動き>
1.新型コロナウイルス感染症と旅行・観光の動き
新型コロナが世界的に流行してから1年1カ月あまりが経ちました。各国でワクチン接種が始まったものの、収束が見えず深刻な状況が続いています。感染者数は2021年1月を境に一時減少傾向となりましたが、3月より再び上昇に転じ、世界での累積感染者数は1億4,000万人以上になりました。コロナ禍は引き続き旅行・観光に大きな影響を与え、国際間の移動については入国制限や隔離期間の設定など依然として厳しい措置が取られています。オーストラリアとニュージーランドとの間で、2021年4月19日より「トラベルバブル」(隔離なしでの往来)が認められるなど、一部で再開の兆しもみられますが、世界全体における本格的な再開にはもうしばらく時間がかかりそうです。

国内の新型コロナの状況に関しては、昨年冬の感染拡大により、2021年1月に11都府県を対象に「緊急事態宣言」が発出されました。3月に解除されたものの、変異種の拡大に伴い、2021年4月5日に「まん延防止等重点措置」を大阪府・兵庫県・宮城県に適用し、その後埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・愛知県・京都府・沖縄県が追加されました(図表1)。

国内旅行に関しては、昨年夏の感染拡大が落ち着いた2020年10月~12月においてGoToトラベル事業の効果もあり回復基調となりました。しかしながら、冬季になり感染が拡大し、GoToトラベル事業は停止となり、緊急事態宣言が発出された2021年1月以降に国内旅行者数は再び減少に転じました。国内の航空便に関しては、当初4~5月の需要拡大を見込んでいましたが、4月以降も大幅な減便となり、JR各社はGWの予約状況が前々年比2割程度と発表しています。

国は現在、GoToトラベル事業が再開するまでの間、都道府県が行う県内旅行の割引事業を財政的に支援する「地域観光事業支援」を実施していますが、対象の地域がステージ2以下であることから、利用できる地域は一部に限られる見込みです。ワクチンの接種率が高まり、集団免疫を獲得するまでは、引き続き感染防止を意識した取り組みをしながら生活を続けることになり、旅行に関しても、旅行者と受け入れ側の双方が感染防止策を徹底した上で実施する必要があります。




2.旅行やレジャー消費をとりまく経済環境と生活者意識
コロナ禍が続く日本の経済は、これまで2回の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置により影響を受け続けており、2021年3月の月例経済報告によると、個人消費は弱含み、輸出は増勢が鈍化と指摘されています。他方で設備投資は持ち直しの動きがみられ、生産は持ち直しているとされています。コロナ禍でもすべての産業が低迷しているわけではなく、日経平均株価も安定しています(図表2)。世界経済については、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(4月6日発表)において、2021年の世界成長率の予測をワクチン接種の進展や米国の刺激策が成長を押し上げたとして6%に上方修正しています。なお日本は3.3%の予測です。

雇用環境については、総務省統計局「労働力調査」によると、完全失業率は2020年10月の3.1%をピークに低下傾向ですが、2021年2月時点で2.9%とまだ高い水準です。雇用形態別雇用者数は、非正規の職員・従業員の減少傾向が続いています(図表3)。今後、企業の構造改革などで雇用環境が厳しくなれば、個人消費にも大きく影響してくると思われます。

生活意識に関しては、日銀が定点で調査している「生活意識に関するアンケート調査」の暮らし向きの実感の推移をみると、2020年12月に「ゆとりがでてきた」の割合が4.2%に減少しましたが、2021年3月には6.3%と増加に転じました。「ゆとりがなくなってきた」の割合も減少傾向になっています(図表4)。日銀の「貸出・預金動向 速報(2021年3月)」によると、預金動向(実質預金+CD)は増加傾向です。

JTBが実施したアンケートで、生活とGWの旅行について当てはまる状況を聞いたところ、「将来が不安なので、貯蓄や資産運用を増やしている(11.6%)」が「将来に不安はないので貯蓄や資産運用は増やしていない(4.3%)」を上回りました。また「先行きがわからないので大きな支出は控えておきたい(26.9%)」も「先行きがわからないので、今のうちに大きな支出を考えたい(1.7%)」を大幅に上回っており、不透明感の漂う将来を見据え堅実な消費を行う意向がみられます(図表5)。「今後1年間の旅行支出に対する意向」については、「これまでより旅行支出を減らしたい(45.1%)」が「これまでより旅行支出を増やしたい(9.2%)」を大きく上回りました。しかしながら、2020/2021年末年始の調査と比較すると、「旅行支出を増やしたい」という割合が増える結果となっています(図表6)。

なお、JTB総合研究所が昨年から行っている「新型コロナウイルス感染拡大による、 暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査(2021年1月実施)」では、「今後、どんな状況なら旅行に行きたいと思うか」との設問に対し、「特に理由がなくても行きたい」という意見が19.8%となっています。2020年4月調査時の12.7%から上昇しており、なかなか自由に旅行ができない中、”旅行に行きたい”という意欲が高まっている様子がうかがえます(図表7)。将来への不安があるものの、現状では可処分所得や預金高もプラス傾向にあること、外出自粛で旅行のように外出して成立する消費は我慢を強いられる状態が続いていることから、新型コロナが収束に向かえば、旅行やレジャーの消費が一時的に急増する可能性も秘めていると思われます。





<GWの国内旅行動向予測>
3.GWの旅行を取り巻く環境と生活者の旅行意向
※本動向調査は冒頭記載の通り4月9日~14日実施のアンケート結果に基づいています。

今年のGWのカレンダーは、5月1日(土)~5月5日(水)が5連休です。4月30日(金)を休みにすると、4月29日(木)から7連休となります。GW期間中(2021年4月25日~5月5日)の帰省を含めた旅行意向の詳細を前述のアンケートで聞きました。なお、今年は、新型コロナの影響で10都府県がまん延防止等重点措置の適用対象となっています。

期間中に旅行に行くかどうかについては、「行く(”行く”と”たぶん行く”の合計)」と回答した人は調査時点で10.3%となりました(図表8)。コロナ禍前のGWの旅行意向は概ね25%で推移していましたが、今年は例年の半分以下になっています。性年代別でみると、男女とも若い年代ほど旅行意向が高くなる傾向がみられます。「行く(”行く”と”たぶん行く”の合計)」が男性29歳以下は19.1%、女性29歳以下は16.5%であるのに対し、男性60歳以上は6.9%、女性60歳以上は3.7%でした(図表9)。

旅行に行かない理由としては、「新型コロナウイルス感染症がまだ収束していないから/拡大の懸念があるから(63.9%)」が最も多く、次いで「GWは混雑するから(22.4%)」「家でのんびりしたいので(15.4%)」となっており、新型コロナが大きく影響しています(図表10)。旅行に行く目的や理由については、「リラックスする、のんびりする(40.6%)」が最も多く、次いで「家族と楽しく過ごす(38.8%)」「自然や風景を楽しむ(34.5%)」「食事、地域の味覚を味わう(30.8%)」「温泉(27.9%)」となっており、旅行先でゆったりと過ごしたい意向がうかがえます(図表11)。




4.GWの旅行は感染防止を意識し、域内志向
アンケートの事前調査で「GWに旅行に行く/たぶん行く」と回答した1,535名を抽出し、旅行内容について詳細を聞きました。全体的な傾向として、旅行を予定している人は、新型コロナ感染防止を意識して内容を検討している様子がうかがえました。具体的な旅行内容は以下のとおりです。

旅行の出発日:5連休の初日である「5月1日(土)(25.8%)」が最も多くなっています。次いで「4月29日(木・祝)(13.7%)」「5月2日(日)(12.6%)」の順となっており、4月30日(金)を休んで長い連続休暇とする人も多いようです(図表12)。

旅行日数:「1泊」が39.2%と最も多く、次いで「2泊(28.6%)」「3泊(16.3%)」となっています。3泊までの旅行が全体の8割以上を占めており、短期旅行の傾向が表れています(図表13)。

旅行先:「関東」が20.5%で最多となり、次いで「近畿(13.7%)」「東海(11.1%)」となっています(図表14)。その地域を選んだ理由としては、「行きたい場所があるので(36.2%)」「自家用車やレンタカーで行ける場所なので(24.1%)」「自然が多いなど、三密を回避しやすい地域なので(22.9%)」「帰省先なので(22.7%)」が高い結果でした(図表15)。居住地別に旅行先を見ると、全国的に旅行先と居住地が同じ地方、つまり域内の旅行の割合が高くなりました。図表は割愛しましたが、域内志向は2020/2021年末年始の調査結果(https://press.jtbcorp.jp/jp/2020/12/08newyear-travel.html )と比べて強くなる傾向が見られます。自家用車など他人との接触を避けて行くことのできる近距離の観光地が旅行先に選ばれ、また普段泊まらない域内の都心のホテルも選択されていることが推測できます(図表16)。

同行者:「子供づれ(中学生までの子供がいる)の家族旅行」が25.3%で最も多く、次いで「夫婦のみ(22.1%)」となっています。これらに「(母娘、三世代等の)その他の形態の家族旅行(11.3%)」を加えると、家族旅行が過半数となります。一方で、「ひとり(19.5%)」もコロナ禍前の2019年より5.2ポイント増加しています(図表17)。

一人当たりの旅行費用:「1万円~2万円未満」が23.8%で最も多く、次いで「1万円未満(21.3%)」「2万円~3万円未満(20.1%)」となっており、3万円未満が6割以上を占めています(図表18)。

利用交通機関:「乗用車・レンタカー」が65.0%で最も多く、次いで「JR在来線・私鉄(19.6%)」「JR新幹線(17.7%)」となっています。公共交通機関より乗用車を利用する傾向がみられます(図表19)。

利用宿泊施設:「ホテル」が38.2%で最も多く、次いで「実家や親族の家(24.1%)」「旅館(20.2%)」となっています。ホテルは2019年の53.3%から減少傾向となりました。一方、「キャンプ場・グランピング・キャンピングカー・車中泊など、アウトドアに関する宿泊(7.2%)※2021年から回答の選択肢として追加」が一定のボリュームを有しています(図表20)。











5.新型コロナ感染防止を最優先し、旅行の移動手段・同行者・行先を選択
今後の状況次第で、旅行中止か予定通りの実施かを判断
新型コロナの感染が増加傾向にある中で、旅行において特別に考慮したことを聞きました。特に考慮したこととして、上位から「公共交通機関を使わずに、自家用車やレンタカーを使う」が36.5%で最も多く、次いで「少人数での旅行にとどめる(32.0%)」「家族・親族や親しい友人以外には会わない(30.6%)」「感染者数が増加傾向の地域は避ける(21.8%)」「人が多数移動する時間を避ける(19.5%)」「部屋食や個室で食事ができる施設を選ぶ(19.5%)」となりました(図表21)。

次に、今後新規感染者数の増加や国・自治体からの自粛要請が厳しくなった場合のGW旅行の対応について見てみると、「今より感染者数が増えた時点で旅行は中止する(8.1%)」「状況・条件によっては旅行を中止する(43.5%)」が合わせて51.6%となった一方で、「状況に関係なく当初の予定通り旅行する」も31.8%を占めています。(図表22)。

このうち「内容を変更して旅行する」と答えた人は、「旅行する日数を短く変更する(35.2%)」「行き先を自然が多い場所(アウトドアなど)に変更する(30.3%)」「行き先を居住地内など近場に変更する(23.0%)」「行き先を自粛要請の出ていない地域に変更する(21.8%)」と考えおり、変更内容が分散する結果となりました(図表23)。一方、「状況・条件によっては旅行を中止する」と答えた人に、どんな状況なら中止するか聞いたところ、「旅行先に緊急事態宣言が出されたら、中止する(60.1%)」「自身の居住地に自粛要請が出たら中止する(40.2%)」「旅行先がまん延防止等重点措置の対象地域になったら、中止する(38.4%)」となり、旅行の目的や内容などの変更ではなく、宣言や要請が発出された段階で旅行中止を判断したいという意向がうかがえます(図表24)。



6.今年のGWの日並びはワーケーションやテレワーク活用のチャンスか
今年のGWに出かける場所として、気になっているところを聞きました。その結果、最も多かった答えは、「特に気になっている/行きたいところはない(30.0%)」でした。次いで「ドライブを楽しむこと自体をメインとした場所(21.8%)」「キャンプやグランピングなど、アウトドアで自然を楽しむ場所(19.0%)」となっており、特定の場所よりも新型コロナの感染を避ける環境が上位となっています(図表25)。また、GW期間中のワーケーション*の予定については、「ワーケーションを行う予定はない」が77.7%となった一方、22.3%の人はGW前後の平日に滞在先でテレワークを行うなど、何らかの形でワーケーションを予定していることがわかりました(図表26)。今年の日並びは、5連休が1つあり、あとは土日の週末と29日の祝日しか休みがありません。GW期間中の平日をテレワーク出勤として、自宅と職場以外の場所で仕事をする人もいると思われます。コロナ禍でテレワークが広がり、今年のGWはワーケーションやテレワークのチャンスかもしれません。

*ワーケーションとは、リゾート地や都市部など、普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇取得を行うこと。もしくは休暇と併用し、旅先で業務を組み合わせる滞在のことです。

JTBの宿泊・国内企画商品の予約状況をみると、緊急事態宣言中であった2020年よりは伸びているものの、2019年比では25%と低調です。コロナ禍前のGWは、まとまった休みを取れることから遠距離の沖縄、東京ディズニーリゾート(R)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(R)などのテーマパークが人気でした。今年はまん延防止等重点措置が適用されている地域、特に東京、京阪神、沖縄は避ける傾向が見られ、居住地域内および近隣エリアへの旅行が中心です。都道府県民限定の観光需要喚起策を実施している自治体では、特に域内で宿泊する動きが顕著です。宿泊予約状況では、海外旅行の代替需要による高価格帯の施設や、客室や個室で食事ができる、客室に露天風呂があるなど、他の宿泊客と接することが少ない施設が比較的人気です。

これらの状況から、自家用車でアクセスできる都市近郊や自然豊かな景勝地を選び、密となる場所を避け、宿泊施設にもこだわるなど、新型コロナ感染防止を強く意識していることがわかります。



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