第102回世銀・IMF 合同開発委員会における日本国ステートメント(令和2年10月16日)

2020/10/16  財務省 

102 回世銀・IMF 合同開発委員会における日本国ステートメント
2020 10 16 日 テレビ会議)

1.はじめに

まず初めに、バーチャル形式とはなったものの、開発委員会が開催され、重要な開発課題について議論されることを歓迎するとともに、関係者のご尽力に感謝します。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が全世界に拡大する中で、国際的な支援が必要とされる途上国、とりわけ低所得国において、社会・経済への影響が広がっています。

こうした中、日本は、世銀グループによる緊急支援が迅速に行われていることを評価します。

2.世銀グループと連携した日本の支援

日本は、かねてから世銀グループと緊密に連携し、国際保健、債務の透明性と持続可能性、質の高いインフラ投資、防災といった課題に取り組んできました。新型コロナウイルスによる危機を受け、途上国が危機から立ち直り、持続可能な成長を遂げるため、改めて、これらの課題への取組みを加速することが一層重要になっています。

(1)国際保健の強化

国際保健は、これまで日本がリードしてきた政策分野であり、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本の知見を活かし、引き続き、国際社会の先頭に立って取り組む所存です。

①途上国における保健・医療物資の製造・供給支援

新型コロナウイルスの感染拡大を収束させるためには、ワクチン・治療薬・診断薬をはじめとする保健・医療物資の開発・製造・供給を促進し、誰もがこうした物資にアクセスできる環境を整えることが重要です。

その一環として、日本は、途上国向けを含めたワクチン・薬の開発・製造・普及の推進に向け、治療薬等に係る特許の使用許諾を後押しする特許プールを提唱しています。更に、日本は、途上国のジェネリックメーカーを含め、ワクチン・薬の製造能力を強化することを重視しています。

その観点から、日本は、国際金融公社(IFC)が本年 7 月に途上国向けの保健・医療物資の製造・供給に係る民間投資を支援するため、Global Health Platform を設立したことや、世銀が 10 月に途上国によるワクチンの購入・配布への支援を表明したことを歓迎します。日本は、IFC と連携して、こうした取組みを支援するため、途上国における民間投資案件の組成や供給能力の向上を行うために必要な資金として、IFC の日本信託基金から 10 百万ドル拠出することを表明します。

② 感染症に対する予防・備え・対応とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ

パンデミックを防ぐためには、感染症の予防に努めるとともに、初期段階における迅速な対応が極めて重要であり、早い段階で疑い事例を感知し、診断を行い、それに基づき早期の治療と接触履歴の追跡を行うことが重要です。このような迅速な対応を可能とするのは、医療に係る人材の育成や、機材・医薬品の確保、施設・インフラの整備に加え、必要な地域への医療サービスの提供などを含む、医療ネットワークの整備です。

日本は、かねてからユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とそれを支える保健財政の重要性を訴え、取組みを続けてきました。昨年は、G20 議長国として、G20 財務・保健大臣合同会議を開催し、UHC ファイナンスに関するG20 共通理解文書を取りまとめました。こうした UHC の推進は、パンデミックに対する予防・備え・対応の強化につながり、経済・社会活動の持続可能性を確保する上でも重要です。

UHC を推進する上で世銀グループは極めて重要なパートナーです。日本は、世銀グループと連携して、本年6 月に立ち上げた「保健危機への備えと対応に係るマルチドナー基金(HEPRTF)」や、世銀に設けた日本信託基金を活用し、途上国における感染症の備え・対応のための能力強化等の支援や、NGO を通じた感染症対策支援を実施していきます。

更に、感染症への備えを強化するにあたっては、これまでに蓄積されてきた自然災害に対する備えに関する知見を活用することも有用です。日本は、強靭な社会システムの構築に向け、世銀防災共同プログラムを通じた知見の共有を進め、国際保健と防災に関する取組みの連携を強化していきます。

(2)債務の透明性・持続可能性の確保

一部の低所得国における債務の脆弱性の高まりは、国際社会において深刻な懸念となっています。途上国の持続可能な経済成長を確保するためには、債務支払猶予イニシアティブ(Debt Service Suspension Initiative(DSSI))による流動性支援に加え、途上国の支払能力を構造的に改善する措置の実施が求められます。

我々は、G20 による DSSI の延長の決定、及び、「DSSI 後の債務措置に係る共通枠組」への原則的な合意という2 つの大きな前進をしました。G20 は、途上国や国際社会の期待に応えるよう、2020 年 11 月の G20 財務大臣・中央銀行総裁会議において、「共通枠組」をとりまとめ、公表しなければなりません。

全ての公的な二国間債権者が、DSSI 及び DSSI 後の債務措置を完全かつ透明性高く実施することが不可欠です。その際、債務措置に、民間債権者が公的債権者と少なくとも途上国にとって同程度に有利な条件で参加するとともに、世銀グループ及びIMF が、途上国による着実な改革の実施を効果的に支援することが必要です。特に、世銀グループが、IMF 支援プログラムと整合的な形で、国際開発協会(IDA)第 19 次増資より導入された、持続可能な開発金融政策(Sustainable Development Financing Policy)の下、最適な行動目標(Performance and Policy Actions)を設定することを期待します。

債務透明性も、DSSI 及び DSSI 後の債務措置の中核的要素です。世銀グループ及びIMF には、債務透明性の強化と債務データの正確性を確保する取組みの継続を期待するとともに、全ての公的な二国間債権者が世銀グループ及びIMF の債務データ突合(Debt Data Reconciliation)に協力することを求めます。

こうした取組みを実効的なものにするためには、世銀グループが、途上国の債務の透明性及び持続可能性の確保に向けた能力構築支援を強化していくことが重要です。日本は、世銀の債務管理ファシリティ第3 フェーズ(DMF III)の2021 財政年度の活動への 1.5 百万ドルの拠出を表明します。また、途上国における国内資金動員(Domestic Resource Mobilization(DRM))のための、世銀グループ及びIMF による取組みを期待します。

(3)インフラ・産業基盤の整備

日本は、これまで世銀グループと共に質の高いインフラ投資の推進に向けた取組みを実施してきました。今後は、新型コロナウイルスからの復興段階も見据え、途上国が包摂的かつ持続的な成長を実現するために、質の高いインフラ投資をさらに推進するとともに、新たな産業の育成や雇用の創出を図っていくことが重要です。

こうした観点から、日本として、世銀東京開発ラーニングセンター(TDLC)を活用した知見の共有を行うとともに、「質の高いインフラ・パートナーシップ基金」やグローバル・インフラストラクチャー・ファシリティ(GIF)を通じて、ライフサイクルコストを勘案した調達や、マクロレベルでの債務持続可能性も含めたインフラ・ガバナンスの実践を支援していきます。

また、新型コロナウイルスにより、既存のサプライチェーンの脆弱性が露見する中で、生産拠点の多様化を通じた新たなサプライチェーンの構築が重要となっています。こうした中で、世銀グループがその知見を活かしつつ、主導的な役割を果たしていくことを期待します。

3.世銀グループのガバナンス

新型コロナウイルスによる危機下においては、国際社会が連携して途上国支援を行っていくことが重要であり、世銀グループが、引き続き、中心的な役割を果たすことが求められます。

現下の危機にあって、まずは新型コロナウイルスへの対応に国際社会は集中して取り組むべきであり、国際復興開発銀行(IBRD)・IFC の株式配分について、今の時点で議論を行う必要はないと考えます。

他方、危機に対して特に脆弱な低所得国を支援するIDA については、2021財政年度に資金利用の前倒しを予定している中で、資金が不足し、低所得国のニーズに応えられなくなることが見込まれます。日本としては、復興段階における需要も見据えつつ、持続的な成長の達成に必要な資金の確保に向け、早急に議論を開始し、国際社会が一体となって取り組むことが重要と考えます。

4.結語

世界の開発をリードする世銀グループが、マルパス総裁のリーダーシップの下、豊富な知見とネットワークを活用し、国際社会と連携しつつ、新型コロナウイルスへの対応、そして、危機からの復興のシナリオ構築に向けて、主導的な役割を果たしていくことを期待します。

これまで日本が重視してきた国際保健、債務の透明性と持続可能性、質の高いインフラ投資、防災は、新型コロナウイルスの危機から立ち直り、持続可能な成長を遂げる上で、ますます重要となっています。日本としては、世銀グループとの長年にわたるパートナーシップを更に発展させ、その世銀グループによる取組みを、資金面、政策面、そして人材面で、積極的に支援してまいります。

最後に、この場を借りて、先月末日に退官されたルウェルーIFC 前長官による、これまでの世銀グループにおけるリーダーシップと、日本とのパートナーシップの強化に向けた貢献に感謝申し上げます。

(以上)

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