MP2110AサンプリングオシロスコープのPAM4評価機能を強化

2021/07/21  アンリツ 株式会社 

MP2110AサンプリングオシロスコープのPAM4評価機能を強化

2021/07/21
50G~400G光モジュールの電気インタフェース側PAM4信号の規格測定が可能に

アンリツ株式会社(社長 濱田 宏一)は、BERTWave MP2110Aサンプリングオシロスコープの機能を強化し、PAM4[※1]差動電気信号の評価に必要な機能を追加するシグナルプロセッシングソフトウェア(オプション098)を開発しました。7月21日から販売いたします。

本オプションにより、IEEE 802.3規格に沿った光モジュール[※2]の電気インタフェース測定が可能になり、データセンターや5Gモバイルネットワークで高速通信を支える、PAM4技術を使用した50G~400G光モジュールの評価効率改善に貢献いたします。

開発の背景

現在、データセンターやモバイルネットワークにおける通信トラフィックのさらなる増大により、その通信を支える光モジュールにはPAM4技術が本格的に採用されています。また、より柔軟なネットワーク構築の必要性に伴い、PAM4通信方式の光モジュールは、従来のNRZ[※3]方式に比べ50 Gbit/sから800 Gbit/sと多くの通信速度をサポートしています。

光モジュールはネットワーク装置の電気信号を光信号に変換して遠距離伝送するデバイスです。従来のNRZ方式の光モジュール検証では、装置間を接続する光側インタフェースのマルチベンダ相互接続検証が重要視されており、電気側インタフェースの厳密な相互接続検証は必要とされていませんでした。

ところが、高速化のためにPAM4通信方式が使われるようになると、通信速度の多様なサポートにより、装置側ではより多品種の光モジュールをサポートする必要性がでてきました。さらに、従来はネットワーク装置と光モジュールを同一ベンダから調達していましたが、装置と光モジュールを別々に調達することでコストを下げる動きが主流になりつつあります。

このような状況では、光側のインタフェースだけではなく、電気側のインタフェースの相互接続性も重要になります。この相互接続性を担保するためには、IEEE 802.3の物理層の規格に準じた評価を厳密に行う必要があります。

この相互接続性向上の要求を満たすため、アンリツは光モジュールの製造向けサンプリングオシロスコープとして数多くのメーカで採用されているMP2110AのPAM4光インタフェース測定技術を生かし、IEEE 802.3規格に沿った電気インタフェースのPAM4測定を可能にしました。

製品概要

BERTWave MP2110Aは、通信信号の波形評価に使用されるサンプリングオシロスコープと、ビットエラーレート測定を行うBERTを1台に搭載可能な測定器です。オシロスコープはチャネル数などを選択することで多彩なシステムアップが可能で、必要な試験環境を柔軟に、かつ最適なコストで構築できます。高速な4チャネルの一括測定やパラレル測定は、製造現場でのスループットを改善します。

今回のオプション追加により現在IEEE 802.3で規格化が完了しているすべての種類のPAM4光モジュール評価を、光インタフェース側だけでなく、電気インタフェース側でも可能にしました。デジタルフィルタやイコライザを用いてIEEE 802.3規格に沿った測定を行うことができます。

またエンベディング/ディエンベディング機能[※4]によりケーブルなどの測定環境の補正が可能です。さらに、内蔵のクロックリカバリ(オプション054)を使用することにより、トリガ信号なしで測定環境を構築することが可能です。

BERTWave™ MP2110Aの特長

  • 1/2/4チャネルのサンプリングオシロスコープとBERTを同時に搭載可能
  • サンプリングオシロスコープは世界最高レベルの高感度で26 Gbaud NRZから53 Gbaud PAM4までの光信号解析に対応。オプションでクロックリカバリを搭載可能
  • 内蔵PCによる安定した高速測定

MP2110Aについてもっと詳しく

対象市場・用途

対象市場
光モジュールと光伝送装置の製造市場
用途
データセンター、コアメトロネットワーク、4G/5Gモバイルバックホール、5Gモバイルフロントホールで利用される25G~400Gの光モジュール、光ケーブルおよびそれら構成部品の物理層性能評価
  • 伝送規格:Ethernet、eCPRI/RoE、CPRI、SDH/SONET、OTN、InfiniBand、Fibre Channel
  • 光モジュール:CFP2/4/8、SFP28、SFP56、QSFP28、QSFP56、OSFP、QSFP-DD
  • ケーブル:Active Optical Cable(AOC)、Direct Attach Cable(DAC)
  • デバイス:TOSA、ROSA、High-Speed Optical Engine、PHY、Driver IC

用語解説

[※1] PAM4
Pulse Amplitude Modulationの略。振幅変調により伝送容量を向上させる方式。PAM4では、1タイムスロットの中に4レベルで2ビットの情報を伝達できる。
[※2] 光モジュール
光モジュールは、高速データ通信で使用されるホットプラグ可能な光トランシーバ。光トランシーバは電気信号と光信号を相互変換する。装置と接続する側は電気信号、光ファイバーケーブルで接続する側は光信号により伝送される。
[※3] NRZ
Non Return to Zeroの略。デジタル信号を伝送する方式。
[※4] エンベディング/ディエンベディング機能
エンベディング機能とは、ケーブルやプリント板を追加して減衰させた状態の信号を見られるようにする機能のこと。ディエンベディング機能は、逆にソフトウェアの信号処理を使い減衰していない状態の信号に補正し、DUT直後の信号をシミュレーションで観測できるようにする機能。

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