静止気象衛星に関する懇談会(第7回)の議事概要を掲載しました

2023/04/05  気象庁 

第7回 静止気象衛星に関する懇談会 議事概要

1.懇談会の概要
日時:令和5年3月10日(金) 13:00~15:00
場所:気象庁3階講堂 及び オンライン会議
議題:
(1) 後継衛星に関連した現状報告
(2) 「後継衛星の整備・運用のあり方」とりまとめに向けて
(3) 今後の懇談会について

出席者:
静止気象衛星に関する懇談会 委員
足立 慎一郎 民間資金等活用事業推進機構 代表取締役社長
岩村 有広 一般社団法人 日本経済団体連合会 常務理事
沖 理子 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構
第一宇宙技術部門 地球観測研究センター長
佐藤 正樹 東京大学 大気海洋研究所 教授
佐藤 将史 一般社団法人 SPACETIDE 理事・COO
高薮 縁 東京大学 大気海洋研究所 副所長・教授
中島 孝 東海大学 情報理工学部 情報科学科 教授(副座長)
中須賀 真一 東京大学 大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授(座長)
藤原 謙 ウミトロン株式会社 代表取締役
保科 泰彦 日本放送協会 報道局 災害・気象センター長
村田 健史 国立研究開発法人 情報通信研究機構
オープンイノベーション推進本部
ソーシャルイノベーションユニット
総合テストベッド研究開発推進センター 研究統括

委員以外の外部有識者
今須 良一 東京大学大気海洋研究所 教授

気象庁出席者
情報基盤部長 千葉 剛輝
情報基盤部情報政策課長 酒井 喜敏
情報基盤部気象衛星課長 長谷川 昌樹
総務部参事官 安田 珠幾
総務部企画課長 太原 芳彦
総務部企画課国際室長 新保 明彦

2.懇談の概要
気象庁より、ひまわり8号及び9号の後継衛星を 10 号と呼ぶことにするとの報告
があった。
今後 PFI 事業形態について小会合を開催して、その結果も踏まえて次回懇談会で整
備・運用のあり方について取りまとめを行うことについて了承された。
赤外サウンダの利用技術開発や将来の衛星計画について議論するために「静止気象
衛星に関する懇談会」を新しい体制で継続する必要性が認識された。

3.意見・質疑応答
① 後継衛星に関連した現状報告 関係
(委員)CONSEO では、衛星地球観測のみならずモデルによる予測と組み合わせて、将来
を見通して社会を良くすることも目指している。こうした取組みにおいて気象庁の実績
は非常に大きい。衛星地球観測の提言に向けた議論では、衛星地球観測関係で産業規模 2
兆円という野心的な数値も出ているので、ぜひ御覧いただきたい。また、地球デジタルツ
インについての関心も非常に高い。気象については、気象庁が最も先進的に進められてい
るので、来年度以降も CONSEO の中での役割が期待されると考えている。
(委員)民間との対話は今後大事になる。CONSEO はこれまでなかった大きな対話のチャ
ネルになると考える。対話なので、気象庁からも発信してソリューションを探す具体的な
活動が重要である。
(気象庁)気象庁は気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)の場で気象データの説明を
してきている。衛星データに関する情報発信を今後一層強化していきたい。
(委員)今後データが大量かつ詳細になってくると、生データを使える人は研究者などの専
門的な方になってくるが、新しいひまわりも国民全体の共有財産なので、特定の企業や専
門家だけではなく、広く一般の利用者にも使いやすく分かるようにする視点をぜひお願
いいたしたい。そのためにも省庁横断的な視点をぜひ忘れないでいただきたい。
(委員)民間にデータ提供する観点もあるが、逆に民間センサの活用のような、民間が持っ
ているデータを活用するという観点もある。民間との双方向のやり取りについて、コミュ
ニケーションをお互いよくしていくところを含めて、お考えいただきたい。
(委員)企業との連携やコミュニケーションでは、ビジネスのニーズを聞き取り、ニーズに
合わせていく取組も必要。また、データの触り方が分からないというケースも多くあると
考えられるので、技術的なやり取りをできる窓口や機会を作る必要がある。Tellus では
xData Alliance というプラットフォームでハッカソンやレクチャー、ユーチューブで講義
を作るなどしている。技術的な理解が深まることで新しく出てくるビジネス動向もある
と思うので、ビジネスのコンテキストと技術のコンテキスト、両方のコミュニケーション
の場をつくっていくといいと思う。ユーザー側の目線では衛星データは Tellus に大量に
たまり始めているので、Tellus を含めてクラウド間の連携を意識した設計にしたり、クラ
ウドのプラットフォームの方々と調整したりすることで、クラウドユーザーを引き込む
ことにもつながると思う。このようにエコシステムのような形でユーザーの引き込みを
狙っていくとよいと思う。
(気象庁)WXBC の事務局として感じたこととして、衛星に限らず気象データ全般につい
て、利活用に関する認知がまだまだ進んでいない印象をもっている。近年は、アメダスデ
ータを使った勉強会やワークショップの取組なども行っているところである。気象デー
タを活用できる場面が多いということを、いろいろな機会で周知していく必要があると
思う。衛星データ利活用の取組も進めていきたい。
(委員)データ利活用を拡大する一つの方法として、コンペティションもある。新しい利用
の仕方やもっと発展させてビジネスプランまでを含めてコンペティションする。そこで
賞を取ったらビジネスに箔がついて民間のファンドからお金を取りやすくなるというこ
とで、みんな利活用方策を考えるので、利活用が加速する。シンポジウムに合わせて、コ
ンペティションを行うと効果的かと思う。
(委員)産業分野横断として、最近は TCFD という気候変動による財務リスクの開示義務
が急速に広がっており、注目されている。気象データと産業で分野横断的に連携できる重
要なポイントと思う。TCFD との関わりや貢献を積極的に取り組むのはいかがか。長期
的に見ても、気候変動リスクと企業活動との接点は大きなテーマになっていくと思うの
で、TCFD を中心として企業と気象データの活用の対話を検討いただきたい。
(気象庁)TCFD について個別の企業と何か具体的に取り組むところまでは至っていない。
気候に関するデータの提供や過去の気象状況を忠実に再現した再解析を行っており、こ
うしたデータがこの TCFD や気候変動の議論に利活用できるのではないか。現在勉強し
ながら取り組んでいる。
(委員)TCFD もあるが、本年 9 月にも TNFD に関する報告書が出される予定である。気
候変動と生物多様性を合わせてご検討いただきたい。
(委員)気象庁の中で、こうした情報利活用を担当する部門をぜひ拡充していっていただき
たい。
(気象庁)情報のアウトプットが重要ということで、組織体制としては情報基盤部内に情報
利用推進課を設けている。防災はもちろんだが、産業の興隆への寄与も気象業務法で定め
られているので、しっかりやっていきたい。日本でも社会のデジタル化が本格化していく
ところなので、この流れにしっかり貢献していきたい。
② 「後継衛星の整備・運用のあり方」とりまとめ 関係
(委員)今後 PFI 事業形態についての小会合を開催することについて、了解する。本懇談
会の中間とりまとめにもあるとおり、データ利活用促進についての議論と、PFI 事業とを
しっかり紐づけて検討して事業を仕組んでいくことが、PFI を真に有用な手法として活用
することにつながる。データ利活用促進の検討はまだまだ今後に委ねるところも多いの
で、PFI の実施方針を出していく際の事業への組み込みには間に合わないと判断してしま
いがちであるが、民間の収益事業の提案をどこまで受け入れる枠組とするか等、柔軟かつ
前向きに検討できる余地も多い。この辺りの話は是非本質的に重要な事柄としてしっか
り検討をいただきたい。
(気象庁)PFI 事業のあり方について検討いただくことと、PFI 事業を実現する準備として
別の場でより詳細な検討の必要が出てくると思う。今後の小会合とこの懇談会の場で、御
議論と方向づけをいただきたい。
(委員)ひまわり 10 号に関しては今までと違って2機一括の体制でなくなるということで、
いろいろとチャレンジがあると思うが、諸外国の例はどうなっているのか。
(気象庁)例えばアメリカでは国を挟んで東西の両側に1機ずつで、次の計画ではさらにそ
の真ん中にもう1機置く計画である。ヨーロッパでは第 3 世代の衛星は合計3機でそれ
ぞれ役割が違う。このように複数機を順次上げていくが、8 号 9 号のようにペアで正副と
いうような例は珍しい。今後我々は順次新しい機能を取り込みながら、その時代に応じて
必要とされる衛星を維持していくということは、諸外国に近いような形になっているよ
うでもあるが、8 号 9 号を含めてこれまでの考え方であった「軌道上 2 機体制」を今後も
確保していくことは重要と考えている。
③ 今後の懇談会 関係
(委員)今後の気象衛星の整備・運用のあり方については、次回の懇談会でとりまとめを行
って一段落するが、国のインフラとしての衛星システムは今後も継続検討が必要である。
検討の中で、それぞれのフェーズで衛星を上げていくという流れを作っていく必要があ
る。衛星が上がったら検討を終わりにはせず、その先を見据えていろいろ検討するような
懇談会に変えていきたい。その観点では、利活用をこれからどう進めていくかが大きなテ
ーマになる。搭載する赤外サウンダから得られる新しいデータの利用技術開発と、将来の
ひまわりあるいは小型衛星を一緒に使うことも含めた将来の衛星計画の検討が必要では
ないか。
(委員)静止衛星に搭載する赤外サウンダについて、技術的には問題ないのか。
(気象庁)静止軌道のサウンダにいては、気象庁として次期衛星に搭載可能かどうか、国際
的な技術動向を調べてきた。欧米では静止軌道にはまだ載っていないが、低軌道の極軌道
衛星で十分実績を積んでいるものがあり、その技術を応用する形で開発が進められたも
のがあることから、十分実用に耐えると判断して今般調達となった。
(委員)気象庁の調達でも、詳細な調査検討を行った結果であろうから、実用上問題ないと
思われる。また、資料で紹介のあった MInT の活動の中で、JAXA が GOSAT のサウンダ
をベースにそれを静止軌道に持っていったらどうなるかの検討をしてきた。静止軌道で
は光の量が 2,000 分の 1 から 3,000 分の 1 になることが一番のボトルネックで、それを
どう解決するかという課題がある。JAXA の検討では、気象観測と温室効果ガスの両方を
やろうとすると難しいが、気象観測だけに限れば制限が緩くなるので、今のセンサを改修
すれば利用の可能性が出てくる。
(委員)サウンダのデータの特徴は、ひまわりの AHI のような2次元の、誰でもぱっとわ
かる絵では表現しづらいため、一般の方にはなかなか分かりにくいのではないか。非常に
貴重なデータが取れるセンサであることを一般の方に理解してもらうために、どういう
工夫が必要だろうか。GOSAT などで苦労や工夫された点を教えていただけないか。
(委員)サウンダの一番の目的は予報精度の向上ということなので、それが端的に分かるこ
とが一番いい。サウンダのデータそのものから、例えば非常に湿った空気が南から流れ込
んでいるときの断面図を見せられれば、これまでの上から見た絵と比べてリアルに感じ
てもらえるのではないか。GOSAT においても断面図を見せるような工夫をしている。
(委員)命を守るためにはリテラシーを上げていく必要がある。一般の方たちがぱっと見て
分かるような図の見せ方とか、あるいはデータ同化の結果で予測が良くなったというの
が分かりやすい一例だと思う。それをしっかりとアピールできるような活動が今後、気象
庁や研究者に求められると思う。
(委員)さらに将来のひまわりをどうするのかの検討は必要なので、この懇談会は常設的に
して検討をしていく必要があると思う。
(気象庁)ひまわり 10 号の次の計画は本当にまだ白紙だが、衛星に関する技術は小型衛星
なども含めて盛んに世の中が動いている。こうした状況を踏まえて、今後のひまわりの在
り方についても、考えていかないといけない。
(委員)9 号を待機衛星として残すということは、地上のいろいろなアプリケーションでは、
いつでも 9 号のデータ処理に戻せるようにしておく必要があるということか。
(気象庁)9号を待機衛星として運用している間は、10 号に万一のことがあった場合には
9 号に切り替える可能性がある。このときに利用者の方に 10 号時代にあった9号のデー
タをどのような形でお届けできるかは、これからの課題となる。
(委員)これからデータの利用が多様性、多様化していくときに、サービスは以前のものに
戻る可能性もあるというのは、大きな隔たりになると思う。10 号になっても 9 号用のア
プリや仕組みは残しておくように周知したほうがよいのではないか。10 号に万一のこと
があったときに元の仕組みに戻れなくなると、データはあるけれどもサービスは止まる
ということが起こり得る。
(委員)CONSEO でも議論があったが、ビジネスするときにはデータの連結性が大事にな
る。技術が進んだ時に、進んだ技術を入れながらどうやって連結性を実現するかは時々少
し相反するケースもあるので、工夫をしていかなければいけない。シリーズで開発する衛
星においては常に発生する問題である。今後の懇談会で議論することになりうる。
(委員)予測の精度の向上に資するということであれば、市町村単位で線状降水帯の予測が
できるようになるのか、今の段階で分かることを教えていただきたい。
(気象庁)線状降水帯の予測精度向上は気象庁の喫緊の課題で、令和 11 年に市町村単位の
線状降水帯の予測情報を出すことを目標に取り組んでいる。赤外サウンダを搭載した次
期の気象衛星からは、水蒸気の 3 次元の分布が非常によく分かるようになるので、予測
精度向上の切り札と考えている。
(委員)今後の検討体制に関して、新しいセンサの開発だけではなく、衛星自体のサプライ
チェーンで気象衛星以外の企業と技術的に共通する部分があると思う。出口のユーザー
サイドにも、衛星データの利用には気象情報にはとどまらないバリューチェーン上のオ
ーバーラップがあると思う。サプライ側と出口側で分野横断的な議論があるのではない
か。
(気象庁)気象分科会からは、「DX 社会に対応した気象サービスの推進」について民間部
門を含めた提言をいただいた。1 つ目は最新の技術に対応した品質の高い気象情報を提供
していくこと、2 つめは気象庁内部利用にとどまっていたものを含めて気象情報・データ
へのアクセス性を向上すること、3 つ目はデータ提供側の知見を高めていくこと、4 つ目
はデータ利用者の知見を高めていくことである。提言の取りまとめに当たってアンケー
トをとったところ、まさに今いただいたような課題をいただいた。今やれることから取り
組みを進めている。データ提供側の知見を高めることでは、気象データアナリストの講座
を広げて、アドバイスする側の人材を増やしたり、WXBC のような取組を使ってデータ
を使ってみたい方々と連携して、いただいた御意見も利用しながら進めていくことにな
ると思う。さらに、衛星データや予報・観測データを対象にした利用ガイドを作ることに
ついても御提言いただいて、作業を進めている。
(委員)データの利用を広げていくこのような攻めの議論もあると一方で、10 年単位で更
新していくものと考えると、インフラや人材、継続体制といった守り議論も重要と思う。
(委員)データ利用に関しては、産業界に加えて、地方自治体による利用も大事である。例
えば防災において判断をして意思決定をするのは地方自治体なので、地方自治体による
利用は大事。農業や水産業においても、政府の省庁の判断には制度設計などで時間かかる
が、地方自治体は首長さんがやると言ったらやれる。気象業務においても例えば地方自治
体が衛星データを使って防災に役立てるような利用の仕方があると思う。自治体との連
携の現状とビジョンを教えていただきたい。
(気象庁)地方自治体との関係においては近年、地方気象台で「あなたの町の予報官」とい
う取組を進めている。各気象台で数名のチームをつくって、県内の担当の市町村を決めて
常時お付き合いしている。平常時は気象情報の使い方などをレクチャーしており、災害時
には防災対策の支援を行っている。また、各気象台長が年に1度以上は首長へ御挨拶に伺
っている。気象台側からの話題はまずは防災になるが、地元の地場産業などの話題となれ
ば気象データ利活用についても適宜ご案内するようにしており、そのような場面でひま
わりのデータを御紹介するようなことはできると思う。さらに、全国の地方気象台での取
組は定期的に本庁・管区間にて情報交換しており、深掘りしていける話が出てきたら本庁
からのサポートや他地方へ横展開できるようにしている。
(委員)データ利用の今後の議論では、ひまわりだけに限らない、数値予報データや JAXA
のデータも含めて扱う、もっと大きな枠組みを新たに作るか、他の仕組みと連携するとか
も検討いただきたい。