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第33回EBRD年次総会日本国総務演説(令和6年5月16日 於:アルメニア・エレバン)

2024/05/16  財務省 

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第33回欧州復興開発銀行年次総会における日本国総務演説
(2024年5月16日(木)於:アルメニア・エレバン)

1. はじめに

議長、総裁、各国総務、並びに御列席の皆様、

第33回欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development)年次総会の開催にあたり、日本政府を代表し、アルメニア政府、そしてエレバン市の皆様の温かい歓迎に対して、心から感謝申し上げます。また、今般アルメニアが初の主催国となったことをお祝い申し上げます。

そして、昨年の総会以降、ベナン、コートジボワール、ガーナ、ケニア、ナイジェリア、セネガルのEBRD新規加盟が承認されたことを祝福します。

2. ウクライナ支援

ロシアがウクライナに対し、不法かつ、不当で、いわれのない侵略戦争を2年以上にわたって継続していることについて、改めて最も強い言葉で非難します。ロシアによるウクライナ侵略は、悲劇的な人命の損失と財産及びインフラの破壊を引き起こし、世界経済及び地域経済の課題を深刻化させています。我々は、この違法な侵略の即時の終結を求めます。これは、世界経済及び地域経済の見通しに対する最大の不確実性の1つを解消するものです。

我々は、自由と独立を守るために奮闘しているウクライナ国民の皆様の、勇気と忍耐に改めて敬意を表します。日本は、ウクライナに対する財政支援を行っており、信用補完により50億ドルの融資を実現するとともに、9.4億ドルの無償資金を供与してきました。この3月には、本年中に20億ドルの追加融資を実現するための信用補完を可能とする予算も成立しています。これまでも、そしてこれからも日本はウクライナと共にあります。

ウクライナの膨大な復興需要には、民間の資金・技術・ノウハウを動員して対応していく必要があります。この点、本年2月の「日・ウクライナ経済復興推進会議」のタイミングにおいて日本とウクライナによる新たな租税条約の署名が行われました。この租税条約は、旧ソ連時代に締結された租税条約を全面的に改正するもので、両国間の健全な投資やモノ・サービスの交流を一層促進することが期待されます。また、国際協力銀行(JBIC)が、黒海貿易開発銀行を通じたウクライナ及び周辺国向けの最大1.5億ドルのツーステップローン供与に向けた覚書(MOU)を締結しました。

さらに、ウクライナ支援に当たっては、地域の国際開発金融機関(MDBs: Multilateral Development Banks)であり、市場経済移行を任務(マンデート)とするEBRDの役割が重要なことは論を待ちません。侵略戦争の開始後、EBRDが即座に支援パッケージを発表し、2023年末までに38億ユーロもの対ウクライナ支援を実施してきたことを高く評価します。日本としても、EBRDに設置したバイの信託基金に追加の予算措置を講じ、同国の農業ビジネスの振興や、企業の事業継続に必要な人材育成等を支援してきました。

昨年12月、EBRD株主の連帯が、ウクライナの復興需要に対応するための例外的な措置として、40億ユーロ規模の増資の総務会承認という形で結実したことを歓迎します。日本は、EBRD第2位の株主として、3月末の予算の承認後、今月直ちに増資への応募を行ったところであり、年内には出資を行う考えです。他国にも速やかな対応を求めます。

3. EBRD業務の方向性

現在G20において、より良く、より大きく、より効果的なMDBsのための取組が議論されています。こうした議論を踏まえEBRDは、その資本基盤・融資余力を、独自のマンデートに沿って、最大限効率的かつ効果的に活用していかなければなりません。以下、日本が特に重視する4点について申し上げます。

第一に、G20 による「MDBs の自己資本の十分性に関する枠組(CAF: Capital Adequacy Framework)の独立レビュー」の勧告の継続的な実施です。ハイブリッドキャピタルの発行や、請求払資本の有効活用に係る格付機関との議論など、融資余力の拡大に向け、EBRDが不断の努力を行うことを求めます。

第二に、民間資金動員の強化です。膨大な開発ニーズに対応するには、公的資金に加え民間資金を動員することが不可欠です。民間セクター支援をその業務の中心に据え、中東欧諸国等で十分な実績を有するEBRDが、MDBsによる民間資金の動員に向けた取組をリードしていくことを期待します。

第三に、気候変動対応の強化です。EBRDは、1988年の大地震で甚大な被害に遭われたアルメニアを含め、日本と同様に自然災害の影響を受けやすい地域を支援対象としています。EBRDはグリーン経済移行(Green Economy Transition)を業務の柱に掲げていますが、気候変動の緩和のみならず、適応への対応を強化することを求めます。

第四に、適切な地理的優先順位(Geographical Direction)の確保です。日本は今般のサブサハラ地域への支援の地理的拡大を歓迎しますが、EBRDにとって、既存の受益国への支援が最優先であることを忘れてはなりません。ウクライナ及び周辺国は言うに及ばず、中央アジアやモンゴルを始めとする市場経済への早期移行段階の国(ETCs: Early Transition Countries)に対する支援も適切に維持されるべきです。一方で今般の地理的拡大については、昨年のサマルカンドにおける総務決議に沿って、既存の受益国支援に影響を与えない形でなされるべきです。その上で、同地域においては、世銀グループやアフリカ開発銀行(AfDB)と円滑に連携し、重複を避けつつ相互に補完しあうことにより効果的な支援を行うことが重要です。

我々は、これらの日本の主張が、次期EBRD戦略資本枠組み(SCF: Strategic and Capital Framework)において十分に反映されることを求めます。

4. EBRDと日本の協力

EBRDの株主構成は、非欧州諸国も含むグローバルなものとなっており、その組織運営においては、非欧州諸国も含めた多様な声が反映されなければなりません。また、EBRDの支援対象国が欧州を超えて広がりを見せる中、多種多様で複雑なニーズに対して、柔軟かつ効果的に対応していくためには、EBRD職員の構成において国籍を含む多様性を推進することが重要です。日本は、増資への出資や信託基金への貢献といった資金面のみならず、政策面・人材面でもEBRDの取組を支援していく考えです。

日本企業は、気候変動や食糧不足など各国が直面する様々な課題の解決に資する、多くの最先端技術を有しています。我々は、EBRDの支援案件における日本企業の参加を一層促進するべく、EBRDと更に協働していく考えです。この点については、EBRD東京事務所がその中核的な役割を果たします。例えば、本年3月に開催したウクライナ投資に係るウェビナーはこうした取組の一つであり、東京事務所の尽力により、多くの日本企業等からウクライナ投資への多大な関心を集める場となりました。EBRDが、東京事務所の機能とリソースを最大限に活用しつつ、日本企業による投資の促進に向けた取組を更に強化していくことを求めます。

5. 結語

世界並びに地域は、新型コロナウイルスによるパンデミックに続き、ロシアによるウクライナ侵略やイスラエル・パレスチナ武装勢力等の衝突といった、度重なる地政学的危機への対応を迫られています。同時に、気候変動をはじめとする長期的な開発課題への対応も必要です。

ルノーバッソ総裁は、2020年の前回総裁選において、こうした困難な状況の中で当選され、増資をはじめ多大なる成果を挙げられてきました。我々はEBRDのリーダーとして正しい人物を選ぶことができたと確信しています。日本として、今般の総裁選において、ルノーバッソ総裁の再選を強く支持する考えです。

我々は、EBRDが、その支援対象国が複合的な危機に対応するため引き続き重要な役割を果たしていくことを期待します。

(以 上)

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