ファストフードをはじめとする外食市場を調査

2024/05/14  株式会社 富士経済 

第24047号

ファストフードをはじめとする外食市場を調査

― 2024年国内市場見込(2023年比) ―
●ファストフード 4兆765億円(6.4%増)
“ちょい飲み”需要獲得やカフェユーザーの取り込みにより、他カテゴリーから需要流入期待
回転ずしや牛丼はファミリー層の需要獲得が進み、ラーメンは“ちょい飲み”で好調

●ハンバーガー 1兆418億円(6.2%増)
新規出店と既存店リニューアルによる客数増加により拡大、1兆円を突破

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、イートイン需要、特にディナーの客数回復が進んだほか、価格改定を実施しながらも付加価値メニューの投入により、多くの業態が好調なファストフードをはじめとする外食の国内市場を調査した。その結果を「外食産業マーケティング便覧 2024 No.1」にまとめた。

この調査では、ファストフード、ファミリーレストラン、専門料理店(アジア・エスニック料理、西洋料理、日本料理)など食事の提供を主とする外食58業態の市場を捉えたほか、行動変容・価格改定・インバウンドなどを受けての需要動向を分析した。なお、料飲店や喫茶などドリンク・アルコールの提供が多い外食、レジャー施設や宿泊宴会場などコト消費に伴う外食市場については、今後発表する予定である。

◆注目市場

●ファストフード

2023年、イートインを中心に客数の回復がみられ、テイクアウト・デリバリーは、需要増加は落ち着いたものの、上位企業によるキャンペーン施策、専門店のオープンなどを通して利用方法の一つとして定着した。多くの企業が価格改定を実施したが、同時に付加価値メニューの投入などを行ったことが客単価上昇につながり、市場は前年比9.3%増の3兆8,308億円となった。業態別にはハンバーガーが引き続き好調で、回転ずしやラーメンなど主要業態もイートイン需要の回復により伸長した。

2024年は、価格改定により客単価が上昇しているほか、参入企業は付加価値メニューの投入、既存店のリニューアル、郊外ロードサイドでの新規出店などにより、需要獲得を進めている。また、“ちょい飲み"需要獲得やカフェユーザーの取り込みにより、居酒屋・炉端焼や喫茶など他カテゴリーからの需要流入が期待される業態もあり、市場は引き続き拡大するとみられる。

時間帯別では、2023年、2024年と、全ての時間帯で拡大するとみられる。ディナーはラーメンや回転ずしなどでの“ちょい飲み"需要獲得により居酒屋・炉端焼からの需要流入が期待され、アイドルタイムはハンバーガーやドーナツにおいて、カフェ利用の代替を目的にドリンクやスイーツメニューの拡充が行われていることから、構成比が上昇するとみられる。

提供形態別では、イートインが、コロナ禍からの回復に加え、“ちょい飲み"やカフェユーザーの取り込みにより市場、構成比ともに拡大するとみられる。テイクアウトは、利用方法の一つとして定着しており、コロナ禍においてはイートインの苦戦をカバーした。イートインの回復により需要は落ち着くとみられるが、テイクアウト専門店の展開などにより、構成比は安定的な推移が予想される。デリバリーは、コロナ禍に外出自粛によるイエナカ需要を獲得したが、オペレーションの負担や収益性の低さなどから注力度を落とすチェーンもみられ、構成比は減少していくとみられる。

◆ファストフードの注目業態

●ハンバーガー

2023年は、各チェーンが価格改定や、付加価値メニュー投入を行い客単価の上昇に努めたことと、新規出店による店舗数増加もあり、市場が拡大した。

2024年は、引き続き新規出店が進められていることに加え、一部チェーンで既存店舗の移転や施設増設などリニューアルにより1店舗当たりの売上を向上させる動きもあり、市場は拡大し1兆円を突破するとみられる。

これまで素早く・低価格であることで需要を獲得してきたが、近年の価格改定により“低価格"という優位性は薄くなっており、価格志向の消費者に関しては、より低単価な惣菜パンなど内食への需要流出が懸念される。一方で、ドリンクに加え、ケーキやパフェなどスイーツメニューの充実化により、コーヒーショップなど喫茶業態からの需要流入が期待される。

●ラーメン

2023年は、人流回復により、インバウンド需要の拡大と相まって、スープや麺、トッピングにこだわった専業系ラーメンの人気店では長蛇の列ができるほど需要が伸びた。また、手軽に食せるランチ需要に加え、軽めの飲酒ニーズや一人飲みニーズといった“ちょい飲み"需要などにより、市場が拡大した。

2024年は、引き続き専業系ラーメン店がTV番組やSNSで取り上げられ注目を集めているほか、そういった店舗を中心とした新規出店や単価の上昇、インバウンド需要の獲得により、市場が拡大するとみられる。

なお、大人数での酒席の機会が減少し、個人や少人数で食事とともにアルコールが飲める値ごろ感や使いやすさから、駅前や繁華街で気軽に利用できる“ちょい飲み"需要を取り込んでおり、居酒屋・炉端焼からの需要流入が期待される。一方で、コロナ禍の対応措置の“ゼロ・ゼロ融資"が終了したことから、資金的に厳しい事業者もみられ、市場は上位チェーンへの集約が進んでいくと予想される。

●牛丼

2023年は、新奇性の高いメニューや期間限定メニューの投入、アニメ・映画とのコラボキャンペーン・プレゼントキャンペーンなどが継続して行われたほか、郊外ロードサイドへの出店が進んだことで商圏が広がり、市場が拡大した。

2024年は、郊外ロードサイドへの出店やメニュー開発などのほか、テイクアウト・デリバリーに特化した店舗の広がり、カフェメニュー提供する横断型店舗の増加によって、需要開拓も進んでいることから市場は引き続き二桁増が見込まれる。

これまで、単身の男性客をメインに、素早い提供とコストパフォーマンスの高さから都市部で需要を獲得してきたが、展開メニューのテコ入れやカフェメニューの提供により、男性客以外のユーザー開拓を進めており、ファミリー需要の獲得に向けて郊外ロードサイドへの出店なども積極的に行われている。

●回転ずし

2023年は、SNS上での迷惑動画拡散と価格改定によりユーザーの離反が懸念されたが、価格改定と同時に実施されたメニュー施策やPR強化により、客数の回復が進んだことから、市場が拡大した。

2024年は、商品提供時のレーンやデジタルビジョン使用、メニュー自体の品質を武器に他チェーンとの差別化を図る動きもみられ、引き続き市場が拡大するとみられる。

ファミリー層の利用が中心で、コロナ禍以降、回転レーンや特急レーンによるエンターテインメント性の高さも来店動機に繋がっており、ファミリーレストランからの需要流入が進んでいる。一方で、客層が近く、郊外ロードサイドに限らず都市部でも店舗数が増加しているという点で共通する焼肉料理とは競合しており、今後の動きが注目される。

◆調査結果の概要

■ファミリーレストラン(FR)

2023年は、コロナ禍からの回復が進んだことや、値上げに加え、フェアメニューなどの強化により客単価の上昇、新規需要の獲得がみられ、市場が拡大した。また、既存店の強化により、1店舗あたりの売上高も増加した。

2024年は、フェアメニューの強化とともに、来店を促すための施策を各社が実施しており、需要は続いていることから、市場は拡大するとみられる。

これまで多種多様なメニュー展開を武器にファミリー層の需要を獲得してきたが、現在では目玉となるメニューがないことで苦戦している。ファミリーレストランが閉店した跡地に回転ずしなどファストフード業態の店舗がオープンするケースも増えている。

■専門料理店(アジア・エスニック料理、西洋料理、日本料理)

アジア・エスニック料理は、2023年、ディナーを中心とした客数の増加やこれまで自粛されてきた会食需要の増加から市場が拡大した。餃子専門店は専門性の高さが人気であり、一般中華料理では低価格業態が好調である。2024年は焼肉料理や餃子専門店の好調が続いているほか、韓国料理が若年女性の韓国人気を背景にカフェメニューを強化する動きもあり、市場は拡大するとみられる。

西洋料理は、2023年、食材などの価格高騰により、各業態で値上げを行い客単価が上昇したほか、クリスマスや年末の会食などの再開もあり市場が拡大した。2024年はフランス料理や高級イタリア料理がコロナ禍を経たリベンジ消費が活況で、ディナーを中心に客数が回復している。また、プレミアムハンバーガーが期間限定メニューの投入など客数回復と客単価上昇への取り組みもあり、市場は引き続き拡大するとみられる。

日本料理は、2023年、少人数会食が増えたほか、インバウンド需要の急速な回復により、各業態ともに好調であり、市場は前年比二桁増となった。2024年は、ハレの日向け少人数会食や個人向け会食の需要開拓に向けた取り組みを強化しており、市場は引き続き拡大するとみられる。

◆調査対象

ファストフード

・ハンバーガー
・チキン
・ドーナツ
・サンドイッチ
・クレープ
・アイスクリーム
・ラーメン
・カレーショップ
・ステーキ
・セルフ式そば

・セルフ式うどん
・クイックパスタ・ピザ
・回転ずし
・牛丼
・天丼・天ぷら
・スタミナ丼
・とんかつ・かつ丼
・唐揚げ
・定食チェーン
・スープカフェ

ファミリーレストラン

・総合FR
・和風FR
・イタリアFR

・中華FR
・チャンポンFR
・バイキングレストラン

アジア・エスニック料理

・韓国料理
・焼肉料理
・ホルモン料理
・ジンギスカン専門店
・高級中華料理
・一般中華料理

・点心料理
・餃子専門店
・メキシコ料理
・インド料理
・東南アジア料理

西洋料理

・フランス料理
・イタリア料理
・高級イタリア料理
・アメリカ料理
・プレミアムハンバーガー
・スペイン料理

・ステーキ・ハンバーグレストラン
・シーフードレストラン
・オイスターバー
・オムレツ・オムライスレストラン
・カフェレストラン

日本料理

・そば・うどん
・すし
・うなぎ
・てんぷら
・とんかつ

・すきやき・しゃぶしゃぶ
・料亭・割烹
・もつ鍋
・お好み焼き
・牛タン専門店

2024/5/14

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