主筋周囲拘束補強型RC梁(CCM-RC梁)工法の評定取得-大地震時の損傷低減が可能なRC梁部材の開発-

2024/05/29  株式会社 熊谷組 

主筋周囲拘束補強型RC梁(CCM-RC梁)工法の評定取得-大地震時の損傷低減が可能なRC梁部材の開発-

2024年05月29日

飛島建設株式会社
株式会社熊谷組
鉄建建設株式会社

飛島建設株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:乘京正弘)、株式会社熊谷組(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:上田真)、鉄建建設株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:伊藤泰司)は、鉄筋コンクリート造建築物の大地震時の損傷を抑制する主筋周囲拘束補強型RC梁(CCM-RC梁)[Confined Concrete and Main bar]工法を開発し、一般財団法人日本建築センターより、評定(BCJ評定)を2024年2月26日に取得しました。
CCM-RC梁工法は、梁端部のせん断補強筋間に拘束筋(CCM筋)を設け、主筋と周囲のコンクリートの一体性を高めることで、地震時のエネルギー吸収性能の向上が期待されます。また、特殊な材料や加工を必要としないため、低コストでの導入が可能です。
さらに、本工法を適用した部材は、地震時の損傷(=ひび割れ面積)を低減することができ、被災後の補修費用などを低減し、建物の継続使用性を高めることができます。

はじめに

本年、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震をはじめ、全国各地で最大震度5弱以上の地震が多発しています。今後も南海トラフ地震、首都直下地震など巨大地震の発生が懸念されています。また、2016年の熊本地震のように震度7の地震が繰り返し発生することで地震被害が大きくなることも考えられます。
そうした中、これらのような巨大地震に対し、建築物は繰り返される大地震後の継続使用という観点から、躯体の損傷を抑えることの重要性が高まっています。建築物の被害軽減に対する耐震性向上の備えは、人命の保護や財産の保全、そして人々の生活や都市機構維持のためにも重要と考えられます。
飛島建設株式会社、株式会社熊谷組、鉄建建設株式会社の3社は、新築を対象とした鉄筋コンクリート造(RC造)建築物のRC梁部材において、大地震時に生じる損傷を軽減する主筋周囲拘束補強型RC梁(CCM‐RC梁)工法を開発しました。
本工法は、梁端部のせん断補強筋間に、主筋を囲うように拘束筋(CCM筋)を設けることで、主筋と周囲のコンクリートとの一体性を高め、損傷を抑制し、耐震性能(=エネルギー吸収性能)を向上させる工法です。

CCM-RC梁工法の概要

従来のRC梁は、地震により大変形領域に達すると、写真1(a)のように主筋に沿って付着割裂ひび割れが生じることがあります。付着割裂ひび割れは、主筋が太径で高強度であるほど生じやすくなり、曲げ抵抗する主筋の付着抵抗力を著しく低下させるため、荷重‐変形履歴性状に大きな影響を及ぼします。
そこで本工法は、図1に示すように、主筋とその内側のコンクリートを内包するような拘束筋(以下、CCM筋と称す)を梁端部に設けることで、写真1(b)のように付着割裂ひび割れを抑制し、損傷を低減することができることを確認しました。主筋およびせん断補強筋は、現行設計法で設計されたRC梁と同じように設けます。

図1 CCM-RC梁部材の構成

(a)従来RC梁

(b)CCM-RC梁

写真1 部材実験の最終破壊状況(1/30rad)

本工法の付着割裂強度の増大は、付着要素実験で確認を行いました。図2に示す通り、付着割裂強度が増大するとともに、靭性能も向上します。
また、付着割裂強度が増大するため、大変形時の主筋の付着抵抗力を保持し、スリップ挙動が小さい、荷重-変位履歴特性を得られることも部材実験で確認しました(図3参照)。
さらに、部材のエネルギー吸収性能を表す等価粘性減衰定数heqは、部材変形角1/100radの2サイクル目から従来RC梁との違いが現れ始め、1/67radの3サイクル目以降は、最大24%増大する結果となりました(図4参照)。
これらより、本工法は従来RC梁と比較し、大地震時の損傷を抑制するだけでなく、エネルギー吸収量を高める効果を得ることができます。

図2 CCM筋による付着強度増大

図3 CCM-RC梁の荷重‐変位履歴特性(1/50rad)

図4 等価粘性減衰定数heq

CCM-RC梁の構造規定

図5にCCM-RC梁の全体図を示し、以下に構造規定を示します。

  1. CCM筋は、梁端部から梁せいDの区間に配置する。
  2. CCM筋は、1つのCCM-RC梁において、梁端部の両側又は片側、その上端もしくは下端のそれぞれについて、任意の位置に適用することができる。
  3. CCM筋はせん断補強筋の間に1つ以上配置する。
  4. 軸筋は、柱梁接合部への定着は行わない。

図5 CCM-RC梁の全体図

適用範囲

本工法の適用範囲は、以下の通りです。

  1. 建築物の高さは、60m以下とする。
  2. コンクリートの種類は、設計基準強度Fc=21N/mm2から33N/mm2までの普通コンクリートとする。
  3. 付着割裂破壊に対する安全性の検討において、CCM筋の効果を計算式に算入できる。

評定取得番号(一般財団法人日本建築センター 特別工法委員会)

飛島建設株式会社 BCJ評定-SS0065-01
株式会社熊谷組 BCJ評定-SS0066-01
鉄建建設株式会社 BCJ評定-SS0067-01

今後の展開

今後は、継続使用性の向上を求めるRC造建築物に対して、CCM-RC梁工法の提案を積極的に行っていきます。また、内閣官房が推進する国土強靭化計画に則り、繰り返される巨大地震に対応すべく、継続使用が可能な建物の提供に少しでも貢献できるように、より多くのRC造建築物に本工法が適用されることを目指していきます。

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鉄建建設株式会社 経営企画本部 広報部
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株式会社熊谷組 技術研究所 防災技術研究室 前川
〒300-2651 茨城県つくば市鬼ケ窪1043
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鉄建建設株式会社 建設技術総合センター研究開発センター環境G 石渡
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