賃上げで収入が増えた就労者の約4割が「暮らし向きが良くなる」と回答、今後の消費活動にも積極姿勢を示す

2024/05/29  株式会社 野村総合研究所 

賃上げで収入が増えた就労者の約4割が「暮らし向きが良くなる」と回答、今後の消費活動にも積極姿勢を示す

〜非正規雇用者や中小企業従業員を含む日本全体で賃上げの拡大と定着を〜

#政策提言

2024/05/29

株式会社野村総合研究所

株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、社長:柳澤花芽、以下「NRI」)は、2024年5月、全国の就労者20~59歳の男女2,680人を対象に、賃上げによる収入増加の実態と、それがもたらす就労や消費への影響を把握するためのインターネットアンケート調査(以下「本調査」)を実施しました。主な結果は、以下の通りです1

今年これまでに、勤め先の賃上げで収入が増えた就労者は33.3%

回答者のうち、今年これまでに(2024年1月1日から、調査に回答した2024年5月7日または8日までの期間。以下同じ)勤め先の賃上げによって収入が増えたと回答した人は33.3%でした。収入増はまだ実現していないものの今年中に勤め先の賃上げによって収入が増える予定があると回答した人は12.1%で、両者をあわせた「今年中に勤め先の賃上げで収入が増える人」は45.4%でした(図1)。

図1:今年の賃上げ実施状況および予定(就労者全体)

出所:NRI「賃上げとその影響に関する調査(2024年5月)」

賃上げで53.5%が「働くモチベーションが上がった」。36.7%が「今後の暮らし向き改善」と回答

今年これまでに勤め先の賃上げによって収入が増えたと回答した人(以下「今年これまでに賃上げで収入が増加した就労者」)のうち53.5%が、賃上げによって収入が増えたことで働くモチベーションが上がったと回答しました(「上がった(12.5%)」と「やや上がった(41.0%)」の合計)(図2【左】)。
また、今年これまでに賃上げで収入が増加した就労者のうち36.7%が、賃上げで自身の収入が増えたことにより今後の暮らし向きは良くなると思うと回答しました(「良くなる(9.6%)」と「やや良くなる(27.1%)」の合計)(図2【右】)。賃上げが、働くモチベーションの向上や今後の暮らし向き改善への期待につながっている様子がうかがえました。

図2:勤め先の賃上げで収入が増えたことによる変化(今年これまでに賃上げで収入が増加した就労者)

【左】「働くモチベーション」の変化

【右】「今後の暮らし向き」の変化

出所:NRI「賃上げとその影響に関する調査(2024年5月)」

賃上げで収入が増えた就労者において、今後の消費活動に積極的な人は約4割

今後の消費意向を聞いたところ、今年これまでに賃上げで収入が増加した就労者の場合、「積極的に消費活動をしたい」は6.4%、「どちらかといえば、積極的に消費活動をしたい」が34.6%で、消費活動に積極的である人の割合は合計41.0%でした。一方、今年中に勤め先の賃上げによって自身の収入が増える予定はないと回答した人(以下「今年中に賃上げで収入が増加する予定のない就労者」)の場合、「積極的に消費活動をしたい」は4.9%、「どちらかといえば、積極的に消費活動をしたい」が20.8%で、消費活動に積極的である人の割合は合計25.7%にとどまりました(図3)。

図3:今後の消費活動意向(今年の賃上げ実施状況・予定別)

出所:NRI「賃上げとその影響に関する調査(2024年5月)」

なお本調査からは、今年中に賃上げで収入が増加する予定のない就労者よりも、今年これまでに賃上げで収入が増加した就労者の方が、今後の消費活動に積極的である人の割合が高い傾向が、正規雇用者と非正規雇用者の両方にみられるという結果も得られています2。以上のことより、賃上げが今後の積極的な消費活動につながる可能性がうかがえます。

また、今年これまでに賃上げで収入が増加した就労者で、かつ今後の消費活動にも積極的な人に、積極的にお金を使いたいものを聞いたところ、最も多かったのが「旅行・レジャー(59.3%)」、次いで「趣味(46.2%)」、「外食(40.8%)」であり、増えた収入が「預金・貯金(42.8%)」や「投資(40.3%)」以外にもさまざまな消費に回る可能性がうかがえました。

今年中に賃上げで収入が増加する予定のない人は非正規雇用や、サービス業、中小企業に多い

今年中に賃上げで収入が増加する予定のない就労者の割合は、正規雇用者よりも非正規雇用者で高く、また、生活関連サービス業・娯楽業などをはじめとするサービス業で高くなりました(図4、図5)。また、従業員数が少ない企業に勤める人ほど、今年中に賃上げで収入が増加する予定のない就労者の割合が高い傾向が見られました(図6)。

図4:今年の賃上げ実施状況および予定(雇用形態別)

注:正規の社員・職員および公務員を「正規雇用者」、派遣社員およびパート・アルバイトを「非正規雇用者」として集計。
上記以外の雇用形態を回答した人を除く。
出所:NRI「賃上げとその影響に関する調査(2024年5月)」

図5:今年の賃上げ実施状況および予定(勤め先の業種別)

注:勤め先の業種について「その他」と回答した人を除く。
出所:NRI「賃上げとその影響に関する調査(2024年5月)」

図6:今年の賃上げ実施状況および予定(勤め先の従業員数別)

注:勤め先の従業員数について「わからない」と回答した人を除く。
出所:NRI「賃上げとその影響に関する調査(2024年5月)」

確実な賃上げの拡大と定着が「成長と賃金の好循環」実現の鍵に

政府は、賃上げによる個人消費の回復で経済成長を促し、それをさらなる賃金の引き上げへとつなげる「成長と賃金の好循環」の実現を目指しています。2024年春闘の賃上げ率は、平均で5.17%3と高水準になりました。本調査から、賃上げで収入が増えた就労者の半数以上で、働くモチベーションの向上が見られました。また、物価高騰による実質賃金の減少が続く中でも、賃上げで収入が増えた就労者においては、今後の暮らし向きが良くなると期待する人が一定数いることがわかりました。さらに、賃上げで自身の収入が増えた就労者は、そうでない就労者に比べて、今後の消費活動に積極的な傾向も確認できました。

今後、「成長と賃金の好循環」を実現できるかどうかは、実際にどれだけ多くの人が、一過性ではなく長期的に、賃上げによる収入増加の実感を得られるかどうかにかかっています。非正規雇用やサービス業、中小企業を含めた日本全体で賃上げの拡大および定着を図ることが期待されます。

  • 1

    本資料記載の構成比率は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、内訳の計が100%にならない場合があります。

  • 2

    今後の消費活動に積極的である人の割合は、正規雇用者の場合、今年これまでに賃上げで収入が増加した就労者で39.9%に対し、今年中に賃上げで収入が増加する予定のない就労者で24.5%、非正規雇用者の場合、今年これまでに賃上げで収入が増加した就労者で39.3%に対し、今年中に賃上げで収入が増加する予定のない就労者で25.8%でした。

  • 3

    詳細は以下URLをご参照ください(日本労働組合総連合会発表 2024春闘第5回回答集計結果)。
    https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2024/yokyu_kaito/kaito/press_no5.pdf?6816

ご参考:調査概要

【調査名】賃上げとその影響に関する調査(2024年5月)
【調査時期】2024年5月7日~2024年5月8日
【調査方法】インターネットアンケート
【対象者および回答数】全国の就労者20~59歳の男女2,680人(内訳は下記の通り)

20歳代 30歳代 40歳代 50歳代
男性 335 335 335 335
女性 335 335 335 335
  • 集計にあたっては、実際の就労者の性別・年代別の構成比と合わせるため、総務省統計局「労働力調査結果(2023年)」に基づき、就労者の性・年代別構成比(10歳刻み)に合わせてウエイトバック処理を行っています。なお、図中にはウエイトバック後のサンプル数を記載しています。

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本件調査の担当


株式会社野村総合研究所 未来創発センター 雇用・生活研究室 武田

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