デジタル関係制度改革検討会(第5回)の議事録を掲載しました

2024/06/27  デジタル庁  

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デジタル関係制度改革検討会(第5回)

概要

  • 日時:2024年5月27日(月)14時00分から15時00分まで
  • 場所:オンライン開催
  • 議事次第:
    1. 開会
    2. 議事
      1. ベース・レジストリと制度的課題
      2. 官報電子化
      3. 法制事務のデジタル化・法令等データ利活用促進に向けた取組、デジタル法制審査の今後の方針(案)
    3. 閉会

資料

議事録

事務局(黛): 皆さんおそろいになりましたので、第5回デジタル関係制度改革検討会を開始いたします。

今回も構成員の皆様にはオンラインでご参加いただいております。

本日の出欠状況ですが、岩村構成員及び上野山構成員がご欠席と伺っております。

それでは、本日の議題についてご議論いただきます。以降の議事進行は、座長にお願いしたいと存じます。安念先生、よろしくお願いいたします。

安念座長: 黛参事官、どうもありがとうございました。

それでは、議論に入ります。

本日の議題は次の3件です。第1「ベース・レジストリと制度的課題」、第2「官報電子化」、第3「法制事務のデジタル化・法令等データ利活用促進に向けた取組、デジタル法制審査の今後の方針(案)」の3つでございます。

それでは、まず第1「ベース・レジストリと制度的課題」について、杦浦参事官よりご説明をお願いいたします。

事務局(杦浦): 杦浦でございます。よろしくお願いいたします。

ベース・レジストリにつきましては従前よりご議論いただいておりまして、おかげさまで、法改正案を提出して、先週までの審議もありましたけれども、今週、まさに最後の参議院の委員会と本会議に進もうかなというところです。その関係もありまして、本日の説明の内容は法案審議の過程によっては若干の変更等が生じる可能性があることをご了承いただきたく思います。また、資料の公開につきましても、法案の審議の状況を見つつ公表させていただくような形にさせていただきたく、ご了解をお願いいたします。

それでは、今日の中身の説明に入らせていただきます。

まず、本日ご議論いただきたいことは、大きく2点でございます。ベース・レジストリ整備におきまして、行政機関の役割を整理したところでございます。また、法案に盛り込まれております変更届出のみなしに関する特例について、どういったことを下位法令で規定していくのかというところをご議論いただきたいと思います。

では、1点目の関係行政機関の役割です。4ページ、法案でございますけれども、ここの中で特にデータの品質の確保をデジタル社会形成基本法の中で明示的に位置づけるということ、また、デジタル手続法においてもデータの品質の確保というのを各種整備計画の中で位置づけてやっていくということが挙げられてございます。

5ページですが、データの品質確保につきまして、簡単に理念をおさらいでございます。まず、もともと我々としては限られた人的資源の下で行政サービスの質の維持、また、利便性の向上、行政運営のさらなる簡素化・効率化というところを実施するために、デジタルファーストに加えまして行政機関等が持っているデータを連携させることによりワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップを実現していくということになります。その際、データ連携をするためには、これまで以上にデータの品質、特に正確でありかつ最新であるといったところ、また、データ連携のために標準的な様式等を整備していくということが必要でございますので、この辺りを法案に盛り込んでいる次第でございます。

6ページでございますけれども、ベース・レジストリとしましては、これも改めてとなりますが、デジタル社会形成基本法におきまして多数の手続の処理の基礎となるデータを集めたもので、それを多様な主体から参照されて、それもちゃんと機械で自動処理というところが基本かと考えております。そのためにデータの標準化に係る基準等を確保していき、データの品質確保、データベースの整備を両輪でやっていくと考えております。

7ページでございます。関係機関等とこれからどのように役割を果たしていくかということになります。まず、こちらはデジタル臨時行政調査会作業部会でも過去にご議論いただいておりますけれども、いわゆるデータクレンジングというところをなるべく最小限で済まそうということになりますと、やはりデータ流通の上流のほうにおいて品質を確保していくということが重要であるとこれまでもご議論いただいております。具体的には、そうなると一番上流である対象データの管理権限等を持っている制度所管庁においてまずはデータの品質を確保していただくということが重要と考えております。もっとも、データベース整備の過渡期におきましては、デジタル庁としてもお手伝いなり少々手を出していくというところがあろうかと思います。その後、データ連携のための情報交換システムの整備ということになりますと、ここはデジタル庁の出番かなということでございます。特にデータベース間の相互運用性の確保、そのためのデータの標準化の基準の策定といったところは大変重要でございますし、また、API等々を整備していって、情報提供ネットワークや国の行政機関が共有システムを管理しているノウハウも併せてデジタル庁で整備・管理を進めていくということで考えております。

8ページ、データの品質における課題と対応方針のイメージでございますけれども、大きく分けて形式的な課題と内容に関するものがあると考えておりまして、形式面で申し上げますと、まずは文字規格が様々あるというところが一つ。それと、住所・所在地で顕著でございますけれども、表記ゆれといったところがございます。これらについてはデータの標準化の基準を策定していく、あるいはベース・レジストリの参照を徹底していくというところで、特に表記ゆれに関しては手入力をなるべくなくしていくというところかと思っております。

また、この同じ問題をデータの内容にはめることもございまして、こういった手入力の際には誤記というものが生じ得ますので、これもベース・レジストリ参照を徹底することで内容の正確性を担保していくということ。あわせて、今、登記制度で名称、所在地等の変更があった際に当然義務として登記の変更をしていかないといけないわけですけれども、実態としてなかなか法人側の負担感もあるといったところでございます。今後、この変更届出が不要になるようなみなしの規定ができることによってその手続の負担感を減らしていくということで、一層法人登記の最新化というのが進んでいくのであろうと期待をしております。

また、不動産登記におきましては、筆界の確定や地籍調査が必ずしも徹底できていないところがございますけれども、ここは制度所管庁によるベース・レジストリ、データベースの品質向上というところに努めてまいるというのが一義的かなと考えてございます。

参考として、例えば文字に関しましては、9ページに文字の規格ということを参考として挙げております。もともとの常用漢字といったものからJISのいわゆる第4水準といったところのJISX0213が今、情報端末等で普通に表記ができる範囲となりますけれども、実際には住民基本台帳であったり、戸籍であったりといったところがそこからはみ出ている部分もございまして、実質的には同定という作業を行って対応しているというところでございます。この辺りはベース・レジストリにおいてもどこまでを標準的な範囲としていくのかが今後の議論になるかと思っております。

10ページ、データの品質、特に表記ゆれ等々に関しましては、今、町字データの整備に取り組んだところでございます。こういったところは、結局は文字ベースでひもづけしていくとなかなかしんどいところがございますので、今後はコード、町字IDといったものをつけていくのと、表記を統一化していくのと併せて取り組んでいくことを考えてございます。

あわせて、ベース・レジストリを実際に使う場面というところでは、例えば郵便番号を入力すれば町字が出てくるような仕組みをつくることで、今後、住所の登録や入力の際には統一されたような表記ゆれのない書き方でそろえていくといったことが実現できればと思います。

11ページです。情報連携が進んでいくことによるメリットの一つとしての法人登記の最新性でございますけれども、これはまさに行政機関等への変更届出を不要とするということで、登記だけ直せばいいのだということが知れ渡れば、それは速やかに直していただくというところかと思っております。

12ページはここまでのまとめでございますけれども、データの品質を確保するということ、それは円滑なデータ連携を行うに当たって大変重要なことであります。行政機関の役割分担としては、まずは制度所管庁等におきましてデータの上流工程において品質を確保していただくということ、データ連携のためのシステム基盤についてデジタル庁が整備・管理をしていくというところで今後進めていきたいと考えてございます。

制度関係でございます。18ページに関係する法案改正箇所を示してございます。デジタル手続法の中において今般規定をつくりました変更届出のみなしでございます。

これにつきまして、19ページ目で何点か下位法令で規定すべきことを挙げてございます。特例の対象や稼働日の範囲、それから機械的には届出みなしを行わない適用除外、また、変更届出されたということを本来の申請者にだけ通知するといったところでございます。

まず1点目、特例の対象となる範囲につきましては、下位法令で決めていく必要がございます。20ページに示しておりますとおり、法人による変更届出の代替になりますので、どういった届出を対象として、その中でどういった事項が不要になるのかといったところは各制度所管のところで下位法令において具体的に条文の参照等により特定をしていただくということで考えてございます。もちろん中身を精査していく中で法令に基づく届出全てがこの対象となるとは限りませんので、特例の対象届出等を精査して決めていただくということになろうかと思います。

続きまして、2つ目は稼働日の関係で休日を定めております。法令は休日を除き毎日情報連携できるようにするということでございますけれども、行政機関から例えば行政機関が持っている法人のリストみたいなものを登録しておいて、その法人に変更があったら教えてくださいということかと思います。それに対して法務省法務局からは、データの更新があれば、それに応じて内容を返していくというところを基本的には毎日できるようにするという形でシステムを考えています。

片や行政機関からは、例えば昨日新しく行政機関に許認可等で登録された法人がすぐ明日、住所変更が行われますということもまれかと思いますので、行政機関が毎日登録し直したり聞きに行くということは必ずしもないのかなと思っております。そこは適宜休日というものを規定することで稼働日、あるいはその頻度を調整できるということで、これも行政機関等のほうで必要に応じて検討していただくものと考えてございます。

それから、22ページに3つ目として挙げておりますのは、適用除外でございます。これは実際に更新による届出がみなされるにもかかわらず届出が行われてしまったといった場合もございますし、そのほか、何か災害が起こっている場合のように運用上臨時で特例を外したりするといったところもあるかと思います。この辺もどういった状況が適用除外になるのかというところは具体的に下位法令で定めていくことになろうかと思います。

次に、4点目でございます。23ページに記載しておりますとおり、変更届出が行われましたというところをある意味通知してあげないと、本当に変更届出がみなされたのかどうか不安になってしまうこともあると思います。不安に駆られてやってしまうということになると手続が減りませんので、ここはお知らせをしていきたい趣旨です。ただ、処分のように必ずお知らせをしないといけないというものではないと思いますので、これはどういった形でやっていくかというのも検討していきたいと思っています。

以下の参照されている条文は参考として記載をしておりますので、適宜ご覧いただければと思います。

私からの説明は以上です。

安念座長: どうもありがとうございました。

それでは、ディスカッションに入りたいと思います。今、ご説明がありましたように、資料の2スライド目の本日議論いただきたい課題点の一つとしてベース・レジストリの整備における関係行政機関の役割というもの、それから変更届出に関する特例についての下位法令の規定方針というものです。1については先ほどまとめというのをしていただいて、スライドの12枚目の2で関係行政機関の役割をどのように分担するかということについてのサマリーが出ておりますが、要するに制度の所管官庁が川上、それから標準化の基本的な基準といったものについてはデジタル庁の役割ということだと伺いました。

それから、2番目についてはスライドの17枚目以降になりますが、4つの論点があるのですが、この法律が制定されればですけれども、これ自体はデジ手法で既に主務省令・法務省令に委任されていることですので、この下位法令は行政庁としてはおよそ制定しないという選択肢はないわけであって、その具体的な中身をどうするかということが問題であると認識しております。特にこの2つの点についてご議論いただければと思うのですが、先ほどご議論がありましたように、今日は岩村構成員と上野山構成員がご欠席ですから、私以外は弁護士の先生方お三方しかおられません。稲谷構成員、落合構成員、増島構成員の順で順次ご発言をいただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

稲谷構成員: ありがとうございます。

2点ありまして、一つは最初のベース・レジストリの整備の役割については全くご説明のとおりで構わないかなと思っています。順調に進んでいるということが確認されましたと思っていますので、非常にいいことかなと思います。

2つ目の下位法令の方針ですけれども、22ページの変更届で行ったものとみなさない適用除外の場面の中に、会社が登記申請を行って、本来だったらそれで全部変わるはずなのだけれども、変わる前にもう一回申請してしまったという場合はどうするかという問題が扱われていると思います。まずないと思うのですけれども、会社が手作業で打ち込んだときにミスが起きて、ベース・レジストリを参照していれば綺麗に統一的にできたものについて、訳の分からない情報が登録されてしまう可能性というのもゼロではない気もいたします。その矛盾が起きているときに、私としてはベース・レジストリを優先したほうがいいようにも思うのですけれども、その辺りはどうお考えになられているのか、あまりないことだと思うのですが、一応確認させて下さい。

2点目は、通知の方法ですけれども、こちらも将来的にデジタル完結みたいなことを考えていくのであれば、個人の場合はマイナポータルなどのように、固定的な宛先として使えるものが今はあると思うのですけれども、企業の場合にどうするのか。特にここに通知すれば基本的に通知したこととみなすような運用も将来的には考えていかないといけないと思いますし、そういった点については基盤的なものになるので各省庁というよりはデジタル庁でやっていく仕事にどうしてもなるのかなと思いました。その辺りについても何かお考えを今後持っていただけるといいのかなと思ったというその2点になります。

ありがとうございます。

安念座長: ありがとうございました。

それでは、落合構成員、いかがでしょう。

落合構成員: どうもご説明いただきましてありがとうございます。

まずはベース・レジストリに関する議論が進んできていること自体、非常に大変な道のりだったこともありますので、非常にすばらしいことだと思っております。

まず、関係行政機関の役割からです。これは図表で描いていただいておりますが、5ページで今後連携を進めていけるようにすることは非常に重要なポイントではあると思っております。先ほどの稲谷構成員の2点目のご質問ともちょっと重なってくるかとは思いますが、ベース・レジストリで情報をできる限り集約していき、正式なデータにしていくことが、社会効率的にも、過誤防止という意味でも重要だと思っております。その際に、稲谷構成員がおっしゃられたパターンだけではなくて、例えば自治体側で何かのきっかけがあって先に情報を渡されたような場合に、さらにそれをベース・レジストリに対してフィードバックしていくことをどう考えるか、はあるかと思っております。もちろんデジタル庁で必ずしも基になる登記簿の話とまた関係ないところで情報が出てきて、実はデータとして新しいものが把握できるということがあると思うのですが、品質確保の観点で言いますと、誰がどのトリガーでどうアップデートできるようにしていくかというプロセスで、最終的なゴールは右の図であると思います。そこに至るに当たって、結構細かいやり取りが想定され、必ずしも政省令に書くというよりかは、システムや実務のほうに落ちる可能性もあるとは思うのですが、この辺りを整備していくことが非常に大事なのではないかと思いました。できる限り総合調整をデジタル庁が行っていくことが、国全体のシステムの統一性という形でもよろしいかと思いますし、場合によってはこの標準化を徹底するという意味で情報交換システムや、その先に出ていく情報、他の主体から受領する情報や他省庁から来る情報があるとすれば、その場合の入力フォーマットというところも整備していいと思います。その点は恐らく7ページの2番で言われている連携基盤の情報交換システムやAPIを切るということによって、基本的には整備をしていっていただくということかと思っております。

第2点としましては、正確性等についてですが、個別のデータの正確性についてはどうしても特に不動産側などが、表記の統一であったり、急に変更があったりということがあって難しい部分があろうかと思います。正確性を担保するという話にはなりつつも、完全に正確性を担保しようとすると破綻するおそれがあると思いますので、一定のレベル感を定めてこの程度のレベルでは少なくとも実施できるようにしていくとか、全用途というのは多分現実的でもないと思います。こういう部分は補助してくださいということは、少ないケースに対してはやむを得ないかと思いますが、そういうことは引き続き委員などの外部から仕事をしている人が言わないと、取り組んでいただきにくいかなと思いましたので、念のため改めてコメントさせていただきました。

最後に、届出等に関する部分です。これは通知方法を定めておくという方法になっておりまして、恐らくそのように技術的には書かざるを得ないのかなとは思っております。

ただ一方で、これも本来的には技術的な対応ではあろうかと思いますので、そもそもデジタル庁のベース・レジストリに登録されれば自動的に通知されるということであれば、本来的にはそこの通知みたいなものも、必ずしも改めて法律で書く必要もない部分はあるかと思います。とはいえ当面の間はそこまでの整理はできないということもあるので、こういった方法になっているのであろうと思います。

ただ、あと一点あるとすると、届出の行為があるということに対して万が一正確性に欠けるか、もしくは時点の間違いの関係などで最新の情報が通知されなかったことが仮にあるとすれば、その場合の訂正やそれに対する効力発生時期という点も、もしかすると考えておいたほうが現実的にはよりワークするのではないかとは思いました。

長くなりましたが、以上です。

安念座長: ありがとうございました。正確性をどこまで追求していくか。これはバランスの問題で難しいですね。

増島構成員、いかがでしょう。

増島構成員: ありがとうございました。

これは2つとも重なる部分もあると思いますけれども、100%うまくいくものはつくれないという大前提に立ったプランニングである必要があるでしょう。今の役割分担でいきますと、ハイレベルな役割分担はこうなるわけですけれども、ここから細かい話を決めていくときに必ずやらなくてはいけないのは、原子力発電所のように壊れない前提とか、間違わない前提みたいなものはやめたほうがいいと思います。間違えますと初めから言っていただいた上で、間違えたときにはこうするというのが、なるべくハイレベルなレベルで決め事として押さえていただくということでやっていただくべきだろうと思います。方針の段階でそういうコミュニケーションをしておくことによって、建前として安心安全、大丈夫です、というコミュニケーションを前提に進めていって、検討が進んでいく中で建前との無理なつじつま合わせをしなければならなくなるといったことを起こさずに済むためです。

2点目は、この「みなし」によってみなされない場合の話をしなくてはいけなくなっているという点についてです。「みなし」でやるという方針については昨年議論をしまして、取りあえず中間期には仕方がないですねという話をしました。テクニカルにはこの「みなし」方式は、既存法制との関係ではスムーズというか、直す部分が少ないということで「みなし」という方法を採用したと理解していますが、この「みなし」方式を採用したことによって、それがうまくいかない場合やみなされない場合の例外など、さらにサブシステムをつくってしまうということになっているわけであります。これがシステムのスパゲッティ化と呼ばれている現象がまさに制度でも起こってきてしまうということだなと思って拝見しておりました。今回は、そこを「休日」というかなりテクニカルなやり方や幾つかの技術的な方法で解決しようということをされていますが、サブシステムが回っていくということは複雑化するということであり、それはエラーが発生しやすくなる、分かりにくくなるということをそのまま意味しているということであります。こちらについても同じく間違えますと言っていただいて、間違った場合にはこうしますというのを考えておくというのはとても大事なことだろうと思った次第でございます。

以上です。

安念座長: ありがとうございました。間違えますというのを言うのが日本の霞ヶ関が一番苦手なのですよ。

増島構成員: でも、実際に間違えますからね。

安念座長: そうなのですよ。人間なんだから間違うのは当たり前で、大切なのは、間違ったときにどうするかの手順を決めておくことですね。

増島構成員: そうですね。間違えないように極力詰めろと言ってやるのですけれども、この詰めの作業が非常に無駄を生むというか、そこまでするのといういつもの日本人の職人技になってしまいまして。

安念座長: ありがとうございます。

杦浦参事官、いかがでしょうか。

事務局(杦浦): ありがとうございます。

今の段階から詳細を詰めていくところになるので、今日のところはいただいたご意見を踏まえながら今後の制度設計に生かしていくということにはなるのですけれども、幾つかコメントを申し上げますと、まさに先生方の皆様からご指摘いただいたように間違いがあり得るということを前提で設計をしていくという辺りは肝に銘じたいと思います。得てして我々は間違えないようにしようとして二重チェックをするということをやりがちですので、そこは効率化をしていく中で何かしら間違いはあり得るという前提で、さはさりながら、ポイントとしては自動化していくところ、手入力、手作業というのをなるべく減らすというところになろうかと思います。特に登記の情報と各省が持っている情報の間でそごがあるというのは、連携してもしなくてももちろん起こり得るものではございますので、その辺りで何かしらそごが生じたときにどういう手順で修正をかけていくのかというのは、基本、デジタル庁がそれなりの窓口なりの機能を果たすのだと想定しておりますけれども、そういったところの具体化を進めていきたいと思います。

それから、通知の関係につきましては、まさに事業者周りの制度や手続の簡素化・見直しをしているデジタル庁のグループもありますので、そちらと話し合いつつ、何かお知らせや通知を出すところで共通化できる、連携できるところがあるのではないかというところも含めて話をしております。この辺はある意味デジタル庁の中で違うシステムをつくってしまわないようにというのが一つあるのですけれども、デジタル庁の中でもちゃんと連携をして、事業者になるべく一元的にお知らせを出せるようなアプローチが取れるとよいと考えております。

それから、データの正確性そのものに関しては、登記の情報をそのまま流す登記情報の連携の話と、さらに住居表示までひもづけを今後検討するアドレス・ベース・レジストリのほうもまたそこで少しアプローチの仕方がもしかしたら違うところがあるかもしれません。今のところ町字というレベルまでに関して言えば、大抵の自治体でこれが正しい町字ですよということを公示しているところがほとんどですので、そういったところをまずは確認していき、町字レベルについては統一をしていきたいと思っております。

ただ、そこから先になると、住所の世界は深いものがございますので、この辺は最初から完璧を目指さずに、自治体の実情をちゃんと踏まえてやっていきたいと思います。特に住居表示に関しては自治体においてもある程度デジタルで既に地番も併せて管理をしているようなところもあれば、紙で、手作業でやっているというところとまちまちになりますので、そこのシステム関連でお手伝いできるところはどういったところがあるのか見据えながら、今、ちょうどその調査をするということで今年度は考えてございます。自治体の実態をちゃんと見ながら、どうやったらなるべく自治体の手間をかけずにやっていけるのか、この辺りは考えていきたいと思っております。

以上、本日の段階では少し理念的なお話になりますけれども、先生方のコメントを踏まえて詳細を検討してまいりたいと思います。ありがとうございます。

安念座長: ありがとうございました。

それでは、次の議題に移りたいと思います。議題2及び3は、続けてご説明をいただいた後、質疑応答とさせていただきます。

それでは、議題2「官報電子化」について、内閣府官報電子化検討室の田中室長補佐よりご説明をお願いいたします。田中補佐、お願いいたします。

内閣府(田中室長補佐): 内閣府の田中でございます。

官報電子化ということで、本日はご説明の機会をいただきまして誠にありがとうございます。

まず、官報電子化につきましては旧デジタル臨調の案件でございましたので、その経緯を最初に簡単におさらいさせていただきます。官報電子化の経緯といたしましては、まず令和4年の春にデジタル臨調に要望がございまして、その後、デジタル臨調の作業部会でもご議論いただきまして、一括見直しプラン、それから令和4年12月の工程表で決定いたしまた。ここで官報を電子化するにはどうも立法措置が必要だという方針は決定いたしまして、その後、令和5年3月から内閣府でいわゆる有識者会議というのを立ち上げました。デジタル臨調の構成員でもあられた宍戸先生に座長を務めていただきまして、そこでの取りまとめを経て、昨年12月に法律という形で成立いたしました。この法律では、官報を電子化することと同時に、法令の公布を官報をもって行うことといった事項についても法定しておりまして、そういう意味でも電子化の象徴的な取組になったのかなと考えております。施行の時期は公布の日から1年6月以内ということで、まだ具体的な日付は決定しておりませんけれども、後ほどご説明いたします運用的な事項も含めて、今まさに検討を進めているところでございます。

次に、法律のポイントについてごく手短にご説明させていただきます。まず、大きく4点を3スライド目に記載しておりますけれども、最初に官報の発行方法というところでございまして、この法律は官報の定義というのを置いていないのですけれども、官報というのは官報掲載事項を記録した電磁的記録、いわゆる電子データでございます。これが官報を発行するときに当然発行主体である内閣府のサーバーにあるものがいわゆるその原本的なものに当たるわけですけれども、ポイントはそれをウェブサイトを通じて国民がダウンロードすることです。そのときにダウンロードしたものがまさに官報になるということをこの法律の中で規定を置いておりまして、これはどういうことかというと、行政機関が持っているものと国民がダウンロードしたデータは、電子署名等を通じてデータの情報が同じであれば全く同じものとして取り扱うということを理論的に位置づけているということになります。これは②に関係し、法令の公布を官報をもって行うことをこの法律は規定しておりますので、法律が公布されるときに官報に載ったデータがいわゆるその正本と言われるデータになるわけですが、国民がダウンロードしたデータについても電子署名がついて真正性が担保される場合は正本ということになります。したがって、今後、法律のデータ等の利活用を進めていく上で、データというのが法律の正本であるということについての理論的な裏付けになったかと考えております。

その他のポイントといたしまして、③はインターネットを利用することができない方がまだ一部いらっしゃるということでこういった配慮措置を記載しておりますけれども、いずれにいたしましても、法令の公布が行われた時点というのはウェブサイトにアップロードされた時点になりますので、理論的にはこういった配慮の措置をやらなくても、アップロードされた時点で全ての国民に法令が提供される前提要件が満たされたことになるといった整理をしているところでございます。

また、④の長期公開のところはどちらかというと国民の利便性に関する観点ですけれども、官報というのは国の広報ですので、できるだけ永続的に公開することを基本とした上で、一部プライバシーに配慮すべき事項等が官報の中に含まれておりますので、そういったものについては一部の公開期間に限って公開することで、目的外利用等を抑止するといったことにしてございます。

また、最後の米印で書いておりますとおり、官報のデータについてはこれまで国立公文書館に移管されていなかったものなのですけれども、この法律の中で国立公文書館に移管をして永久に保存することを規定してございます。

最後に、今後の法施行後の具体的な取組についてご説明いたします。5スライド目の下の点線枠囲みのところが有識者会議で決定いただいた方針でございまして、まずは法整備を行うというところと、基盤的業務に万全を期すということで、官報は国の広報ですので、システム障害等で法令の公布が安定的にできないということが一番の問題です。まずは8時半なりの定刻にきちんと出すということを基本とします。その上で、今はPDFでございまして、そういったデータの利活用をするときの利便性といったところについては今後取組を進めていくべきことと認識しておりまして、こういったものをシステム更改等に合わせまして総合的に進めていくという方針で考えております。

上の緑の枠で囲っているところがその具体的な内容ですけれども、まずは電子署名などの真正性を確保する手段やプライバシーの抑止の技術といったものについて新しい技術を導入していこうと考えております。また、②については特に機械可読なデータ構造の実現といったところを、今後検討を進めていきたいと考えております。

簡単ではございますが、説明は以上です。

安念座長: ありがとうございました。

それでは、続いて議題3「法制事務のデジタル化・法令等データ利活用促進に向けた取組、デジタル法制審査の今後の方針(案)」について、中野企画官よりご説明をお願いいたします。

事務局(中野): 中野でございます。

こちらはデジタル関係制度改革検討会の下にワーキンググループを置いていただいておりまして、先週金曜日にもワーキンググループでご議論いただいた内容を踏まえ、ご説明させていただきます。

まず、「法制事務のデジタル化・法令等データ利活用促進に向けた実証事業」を昨年度に実施しました。こちらについて結果概要をご説明させていただきます。我々の法制事務システムの目的としましては、4ページに書いてある3つがございますけれども、効率的な法令等見直しを実現する基盤の確保、そして法令等を戦略的にオープンデータ化する、そして法制事務のデジタル原則への適合をさせていくといった目的を持ちまして取組を進めております。

こちらに記載させていただいておりますデジタル法制ロードマップにおいて、現状はフェーズ0というところで法令等データへの不十分なアクセス、手作業、目視での条文管理という状況でございますが、最終的にフェーズ5の制度デジタルツインとして、仮想空間上で自動分析で条文を変えた場合にどうなるかという法令の効果がシミュレーションできるような世界というのを目指しております。

その上で、昨年度の調査実証の概要でございますが、6・7ページに掲げております6つの事項について調査・実証を進めてまいりました。簡単に幾つかポイントをご紹介させていただきますけれども、実際に法制事務エディタをプロトタイピングしてユーザーテストを実施するということで、条文を溶け込みベースで修正した場合に改め文が出てきたり、条が自動でずれていくみたいなことができないかといったユーザーテストをしながらプロトタイプを改善していくということをやってまいりました。

この結果概要でございますけれども、例えば立案中の改正内容を反映した改め文と新旧対照表を自動生成する機能や、立案中の改正内容を反映した改め文と新旧対照表のワードファイル等を出力する機能といったものにつきましては、今年度以降、実装に向けた開発や引き続き詳細な技術検証等を行うことが望ましいという結果になってございます。

他方で、いわゆる2段ロケット、3段ロケットと言われますN段ロケット方式による改正や一部改正法の一部改正といったものにつきましては、技術的にハードルが高いとか、それほどニーズがないといったご指摘をいただいておりまして、何より優先順位を持ってシステムの開発をしていくべしということをワーキンググループでもご指摘いただいております。

その上で、法制事務のデジタル化・法令等データ利活用促進に向けた取組の現状と今後の方針でございますけれども、20ページは2022年のデジタル臨調第4回資料から抜粋したものでございますけれども、法令データのデジタル正本の提供体制の確立ということで、データベースを中心にしたワークフローというものを実現できないかということを打ち出させていただいております。

21ページがその後の主な進展・状況変化でございますが、まずもって大規模言語モデル(LLM)を用いた生成AI製品というものが次々に発表されており、審査員を増島先生にもやっていただきましたけれども、法令APIハッカソンで建築物の設計が建築基準法に適合しているかの審査を自動でやるような、ややフェーズ5に近いような内容のご提案をいただいたりしておりまして、今後の発展の可能性が少し見えてきているというところにあろうかと思います。また、e-Gov法令検索の法令データ自体がベース・レジストリに指定されたり、先ほどご説明のあった官報の発行に関する法律が成立して、官報の発行はウェブサイトで行うことが規定されています。そして、ベース・レジストリに関する法案を議題1でご説明いただきましたけれども、こちらも国会で審議されているという状況になります。

その上で、法令データのベース・レジストリの整備・提供に向けてということでございまして、公布法令につきましては官報が電子化されまして、ウェブに掲載されている電子版が官報の正本となっていく。溶け込み条文につきましても、現行、まさにe-Gov法令検索におきまして、公布後速やかに信頼性の高いデータを提供しています。そして、過去のものについても取得できるようにe-Gov法令検索及び法令APIを今年度に機能向上することを予定しており、これらを連携させていくということも今、取組を進めてございます。

これを図解したのが23ページでございまして、これまでは再利用、デジタル活用が難しい書類の作成・公開が中心で、目視、手作業が多くて公開方法に一貫性がないという法令データ整備であったのが、これからはそのデータを再利用していきまして、公布法令については電子で公布され、それが溶け込ませの際にも活用されていくというものを目指していくということになってまいります。

その上で、告示データのベース・レジストリの整備・提供に向けてというもう一つの課題でございますけれども、そもそも我々が整備するデータの対象自体も拡充する必要があるのではないかという論点でございます。こちらが現状と課題でございますが、告示については最新の正確なデータを提供する統一的なデータベースがございません。また、官報電子化を定める官報法の検討の中でも法規的性質を有する告示が存在するとされています。他方、告示には法令標準XMLスキーマのような構造化されたフォーマットが不存在という状況になりますので、今後の方針としまして、2024年の調査・実証事業において告示等のXMLスキーマの検討をする、そして官報電子化の取組を踏まえましてデジタル庁、そして司法法制部、総務省と関係省庁が連携して整備を行う対象範囲、公開するデータ形式等について整理しまして、体制等を整備した上で2026年度中目途で告示のベース・レジストリの提供開始を目指すといった取組を新たにできないかと考えているところでございます。

その上で、26ページの取組方針案でございますけれども、下の告示については今、お話しした内容でございまして、上のところでございますけれども、法制事務デジタル化及び法令データの利活用促進に向けて法制事務の業務フローの見直し、法令編集機能や法令APIの改善、法制事務ナレッジ共有ツールの開発等、何より優先順位をつけて順次開発・実装を行いまして、中長期的課題について調査実証を行い、法制事務支援ツールのプロトタイピング、法令データを利活用したサービスの開発促進を実施するということを取組方針として今、こちらで掲げさせていただいております。

あと、30ページのデジタル法制審査につきましては、現状、7項目のアナログ規制、そしてフロッピーディスク等の記録媒体を指定する規制に関係し得る情報のデジタル原則適合性を確認しておりまして、昨年8月からは情報システムの整備が見込まれる行政手続を定める規定についての確認も新たに実施しておりますし、アナログ規制点検ツールα版というのを国・地方自治体に配布させていただいております。現状、これまでの点検結果といたしましては、93法案、142条項について、昨年の臨時国会までに点検をさせていただいておりまして、こちらについて今、通常国会でも点検を継続しているという状況になります。

この取組の方向性でございますけれども、既存法令の約1万条項の見直しというのは6月が一つの区切りで、技術検証の実施等も進められております。また、デジタル法制審査で点検した法案のうち、一部は施行済みとなっておりまして、必要な下位法令等の整備が進められているという状況になります。

そして、アナログ規制点検ツールα版についても各省庁から結構良い評価をいただいているという状況にありますので、更にこれを改善していきたいというところでございまして、今後の対応方針でございますけれども、政策の企画・立案の段階から業務設計、情報システムの整備・運用に係る検討が行われるようにデジタル法制審査の機能等を強化、そして政府情報システムのプロジェクトにおける予算要求段階、執行段階といった各フェーズに応じたレビューを通じて制度・業務・システムの整合性を確保することとしたいと考えております。各府省庁はこの一括法を踏まえまして、引き続きこの法令等の立案段階からデジタル原則に適合した運用を見据えた業務システムの設計等が行われるように点検をして、それをデジタル庁に提出する。デジタル庁は、これまでのアナログ規制の見直しやそのための技術実証の結果等を少し精査してみようと思っていまして、この優良事例等を見た上で各府省庁や地方自治体に対して業務システムを含む法令の運用面でのさらなるデジタル化の促進、アナログ規制点検ツールも今、より改善したものを内製化して開発しているところですので、この開発・展開等の支援を行うということを今、考えているところでございます。

私から駆け足のご説明となりましたけれども、先ほどの官報電子化と併せましてご意見、ご質問等をいただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。

安念座長: 中野企画官、どうもありがとうございました。

それでは、議題2と議題3についてまとめてご発言をいただきたいと思いますが、先ほどと同じように稲谷構成員からお願いいたします。

稲谷構成員: よろしくお願いいたします。

議題2も議題3も法システムのデジタル化という観点が極めて重要な議題だと思っていまして、そのどちらにも非常に大きな進展が見られるというところに、すごいなと思いますというのが第1点です。

質問等になるのですけれども、まず官報に関してなのですが、プライバシーにはどう配慮していくかというのが問題になるというのは非常によく分かります。しかし、例えば不利益処分などの例というのは、法解釈・運用の実態を反映致しますので、研究者としては調べられないと、あるいは法実務をやる人からすると調べられないと困るというところがあったりするのかなという気もします。別のところに長期保存されていくということはご説明があったと思うのですけれども、閲覧期間の制限というのも一つの手だと思いますし、有用なやり方だと思いますが、例えば正当な目的で使うということを宣誓させて、身元なども確認させた上で、しっかりしているのであれば使わせる。そのときに保存方法や管理方法がめちゃくちゃだったり、あるいは故意に拡散したりすると罰則の対象になるような方法も、多少アナログかもしれませんけれども、考えられるのかなと思いました。あるいは、誰の見たデータが拡散されたのかを調べられるような方法があれば、その辺りも結構実効性を持ってやることもできるのかなと思います。アナログな方法とデジタルの組合せということなのかもしれませんが、そういうバランスの取り方も一つあるのかなと思ったというのが1つ目です。

もう一つは、法制事務のデジタル化を進めていってフェーズを上げていくという話で、特に仮想空間上で法令をシミュレーションするみたいな話になってきたときには、どうしても判例や今申し上げた処分例みたいなものをどうするのかという問題は出てくるだろうと思っています。とりわけ判例、特に下級審の裁判例などというのは、特に刑事はそうなのですけれども、そもそもアクセスがすごくしにくいというところがあったりもします。ここはもちろん、これまで判例等をまとめて出版する会社さんなどもあったりするところですから、民間の事業とどうすみ分けをしていくのかというところは当然問題になると思います。それを念頭に置いた上で、デジタル化を進めていく、特に法システムのデジタル化を進めていくという観点から見ると、判例・処分例情報についても将来的には一元的にデジタル化していって、少なくとも必要に応じて民間事業者にも関与してもらいながら、また、プライバシーに配慮できる技術をうまく使いながら、なるべく公開情報として使うようにしていくという配慮は必要になると思いますし、とりわけ法令シミュレーションの中で使っていくという観点からも必要になると思いますので、その辺りについても今後、いろいろとご議論いただければいいのではないのかなと思ったというところです。
どうもありがとうございました。

安念座長: 落合構成員、いかがでしょう。

落合構成員: どうもありがとうございます。

まず官報については本当に電子での正本という形になってくる部分があるので、この点で非常に画期的な部分があるかと思います。電子を正本にしていることは、逆に言うと一般の業法よりこちらのほうが、整理が進んでいる状態になっていると思います。そうするとむしろそれを前提にいろいろなものを組んでいくための必要な方策は整理されたのだと思いますので、書面・押印の慣行見直しの議論も進めましたけれども、結局紙を持ってしまっている場合が行政庁の中で多いと思うので、機械可読化の点と併せて、ぜひここで整理されたものを、より一層デジタル化をして紙を減らすということにつなげていっていただきたいと思っております。

これがまず官報のほうであります。もう一ついただきました全体的な法制事務のデジタル化に関する点です。こちらも非常に進んできていてすばらしいと思いますが、今後のポイントとして幾つかあると思っています。まず一つが、自動走行に関するサブワーキングなどでも少し議論になっている部分もありますが、機械可読でかつさらにマシンエンフォーサブルにするようなところまで道路交通法を進めていくという話があるかと思います。単純なマシンリーダブルよりもハードルが高い目標も一段上にくっついてきているように思います。この点については、直ちに全法令ということでは全くないと思っていますが、先のレベルでの目標という意味では、そういったところもどういう方法で実施すればいいのかという整理が今後、重要になってくるのではないかと思っております。

第2点としましては、一度つくったエコシステムをしっかり続けていくということが何より大事だと思います。ハッカソンなどで多数の参加者が出られて、これはすばらしい取組だと思うのですが、実は1回の取組だと世の中の方は3年後ぐらいには忘れ去っているということが起こり得ます。そうすると、せっかく周りにいろいろな方が来ていただくというのは要するにユーザーもそうだし、フィードバックをしてもらってよくしていくための仲間の輪をつくっているというか、民間の協力者をつくっているということだと思っております。これはデジタルカタログのほうも含めてそうだと思うのですが、こういうものを適切に維持していくことは、極めて大事な一つの事業ドメインの維持につながってくると思いますので、ぜひその点も頑張って進めていただければと思っています。

私からは以上です。

安念座長: ありがとうございました。機械可読にするなら機械に教えることもできないとね。

増島構成員、いかがでしょう。

増島構成員: ありがとうございました。1つ教えていただきたいことと、2つコメントです。

一つは、今回、官報を技術中立にしますというふうにしているのはとてもよいことなのですが、例えば日銀券などはどんな仕様になっているか特に何も書いていないと思っています。それでも日銀がちゃんと偽造されないように作るという、法律に書かなくてもそれはするよねということで今回の官報のところも処理をしているのか、もしくはいわゆる性能規定と呼ばれているような、この要素とこの要素をきちんと満たすようにみたいな話が下位法令なのかもしれないですけれどもどこかに書いてあって、技術は別に特定していないみたいな形でつくられているのか、どちらでつくられたのかなというのが、教えていただきたいです。

2点目は、今回の法制事務のデジタル化はフェーズ5での制度デジタルツインを目指すという高い目標を掲げてやっていらっしゃるというのは非常にいいことだと思っているのですけれども、制度デジタルツインの状態にたどり着くためにはフェーズ1で何をするかとか、全部のフェーズのところで最終的にフェーズ5にたどり着くというつもりでやっていくという発想になっていないとうまくいかないのだろうという気がしています。そのときに割と大事かなと感じたのは、フェーズ5の制度デジタルツインと呼ばれている状況についての解像度は割と高めに持っておいたほうがいいだろうなということです。どこまで行ってもめちゃめちゃ細かいシミュレーションができるわけでもないと思いますし、例えば先ほどお話がありました、判例まで本当に踏まえてデジタルツインをやるのかというと、判例というのは結局裁判所が法令をどうやって読むかよく分からないみたいなときに判例が出るみたいな話なので、それまでも見越したデジタルツインというのは、本当はなかなか難しいような気がします。もしくはこのシミュレーションの粒度によっては条例的なものがどうなっているかということがもし必要だということであれば、それぞれのフェーズで地方のところの法令のデータ整備の状況というのをちゃんとフォローしていかないといけないというのが要求項目になると思いますから、ここのやっていることがフェーズ5を目指すのであれば、フェーズ5がどんなものなのかという姿の解像度を高めて、それに必要なことができるように各フェーズでやらなくてはいけないことは何なのかを決めていくという発想でやっていただけると非常にいいかなと思いました。

これにも関連して最後ですけれども、霞ヶ関はやはり流石で、これはどんどん進むということになるのですが、これが進めば進むほど地方との格差が大きくなるみたいな話になると、これはまた政治の不安定を招くという状態になると思っています。ユーザー側からすると国の事務だろうが条例の事務だろうが結局窓口は地方が持っているということになりますと、何か国が一生懸命いろいろやりましたよということになっても条例が相変わらず古くさいみたいな話だと全然ストレスが減らないという意味では、条例はあまり関係ないとも我々は言っていられないのかもしれないという感じもしております。もちろんタイムラグが発生するのは仕方がないかなとは思っていますし、いろいろな自治体がいらっしゃるということはよく存じ上げていますけれども、小林先生がよくおっしゃるように、地方の部分も結局同じ基盤という話が恐らくいっぱいあるということだと思いますので、地方との対応格差を生まないで、対応格差を生めばユーザーエクスペリエンスは上がらないというところを少し念頭に置いていただいた上で、それぞれを進めるときに地方はどうだったっけというのを考えていただくという思考サイクルを回していただけるといいかなと思いました。

以上です。

安念座長: ありがとうございました。今までも地方のことを考えながら来たはずですが、いよいよ奥の院に到達したなという感じがありますね。

ありがとうございました。

それでは、田中室長補佐、官報の件ですが、一つはプライバシーへの配慮という問題と、それからデジタルデータを正本と観念することの言わば横展開の問題、それから官報そのものの定義の問題というのをご指摘いただいたと思いますが、何かコメントがあれば、お願いいたします。

内閣府(田中室長補佐): ありがとうございました。

稲谷構成員からご指摘いただいたプライバシーの関係は、プライバシー情報を一部研究目的で再利用したいということだと思います。実は官報発行法ではデータの再利用ということに関しては一定の規制を置いており、具体的には、データベースをつくる事業者については内閣総理大臣の承認に係らしめるということにしています。その承認の基準として具体的に制度として落とし込んでいく際に、プライバシー情報であっても正当な目的であれば利用できるようにしていきたいと考えております。

また、落合先生からご指摘いただいた横展開についてはまさにデジタル庁とよく連携をして、知見も共有しながら一緒にやっていきたいと考えております。

また、最後に増島先生からご指摘いただいた技術中立化のところについては、先生のお話もあったとおり、まさにこういう措置を取るということ自体は法律で規定しておりまして、具体的な措置の内容は内閣府令に落としているということになります。具体的に言いますと、内閣総理大臣の作成であることを証明するための措置をとるということは法律で書いていまして、その具体的な措置の内容は府令に落としています。そういった措置を取るということ、すなわち真正性を担保するということがまさに法律事項ということで今回、整理したところでございます。

安念座長: どうもありがとうございました。

では、中野企画官、そのような点についてコメントがあれば、お願いいたします。

事務局(中野): ありがとうございます。

まず、判例や不利益処分をどうするかと稲谷構成員からご指摘いただきましたが、判例に関しましては別途法務省であったり最高裁判所の方々がいろいろお取組をされていると思います。例えばデータベースとしてそれを連携させていくのかは民間の方々がまさに生成AIに法令データと判決のデータをどちらも入れ込んだり、連携させてやっていただいているようなサービスも考えられる中で、政府がどこまでやるべきかというところはあろうかと思いますけれども、ご指摘のとおり、まさに判決がないと法令というのは解釈し切れないというのはおっしゃるとおりですので、どういった取組ができるかというところは検討してまいりたいと思います。

その次に、落合構成員の法制事務デジタル化に関しまして、機械可読化からマシンエンフォーサブルというのは非常に条文自体が抽象的に書いている場合などそもそも機械が読んだだけでは理解できないというのはおっしゃるとおりでして、これは法令APIハッカソンに関するワーキンググループでもそういうご指摘がございました。どういったやり方があるのかというのを、かなり難しい課題かと思いますけれども検討してまいりたいと思っております。

あと、一度つくったこのエコシステムを続けていくという点はまさに増島構成員の地方との格差が広がらないようにという点にもつながってまいりますけれども、我々の取組は基本的に全て報告書を含めオープンにさせていただいております。ソースコードも可能な限りオープンにさせていただく方針でやっておりますし、実際にこちらから主体的に法令×デジタルのワークショップを開催させていただきまして、こちらには自治体の方や民間のリーガルテックの方も参加いただいていると承知しておりまして、これはまさに官民、そして地方の方々と協働して開発を進めていくということを取り組めればと考えております。

そしてその上で、デジタルツインに至るまでにはそれぞれ段階ごとに取組が必要であろうという増島構成員のご指摘はそのとおりでございまして、我々はまだフェーズ0にいるというときに、実は法規範性があると言われているルールのうち告示についてはまだデータベース化できていないような状況になりまして、他方でこちらも実際にベース・レジストリ化しようと検討を進めてまいりますと、相当な工数とリソースがかかるということが大分判明しておりまして、やはり一歩ずつこれを進めていくということ、そして民間の方々のお力も借りながら、協働しながら進めていくことは重要だなと考えているところでございます。引き続きご指導いただければ幸いでございます。

以上、雑駁ではございますけれども、私からのご回答、コメントとさせていただきます。

安念座長: 皆さん、どうもありがとうございました。大変充実した討議ができてよろしかったと思います。

私は実は何とか法の一部を改正する法律の一部を改正する法律の附則を読むのが趣味なのですよ。完全に機械化できないのならその趣味はちょっと当面は残るかもしれないですね。

しかし、それにしても官報の話にしても、法制事務のデジタル化にしても、近代日本の百数十年の伝統が一変するような、本当に国家百年の大計に関わる仕事ですね。事務局の皆様は大変な作業だと思いますけれども、法治国日本の基盤中の基盤をつくり変えるという作業を現にしておられるわけで、ぜひ有終の美を飾っていただきたいものだと思って大変感銘深くお話を伺っておりました。どうもありがとうございました。

最後に、冨安統括官より一言頂戴したいと存じます。

冨安統括官: 本日は大変ありがとうございました。

最後に安念座長から非常に激励と申しますか、みんな地道に頑張っておりますので、応援の言葉をいただきまして本当にありがとうございます。

ベース・レジストリの改正を含みます法律案を今、国会に提出しておりまして、まさに今週、審議がなされようとしておりまして、まだ通ってはいないという状況でございますので、私どもはまずは国会の審議をしていただくことをしっかりお願いさせていただきまして、政府案どおり通りましたら、本日の議論を受けましてしっかりと制度の詳細を詰めてまいりたいと思っていますので、ご不便をおかけしますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

それから、官報電子化並びに法制事務のデジタル化ということで、これはまさに内閣府さんにも頑張っていただきまして官報電子化はここまで参りましたし、政府の業務が効率化するという側面と、機械可読性の話もございましたけれども、民間部門のデジタル化なり業務のDXを進めていくのと、最終的な発展系ではそこにも資するというか、そこと相乗効果を生むことによりましてより効率が生まれると考えています。昨年、やらせていただきました法令データAPIのハッカソンにおきましても、建設業を中心に建設業界のデータがデータ化されていることと法令データのAPIとで相乗的効果が発揮されることによりましていろいろなアイデアが出されたということでございましたので、まさに今、取り組んでいる業務というのが民間の分野におきましてデジタル化が進むことと軌を一にすることによりまして、より効果が発揮できるのだろうなと思っております。

また、今、デジタル法制推進につきましては、まさに2年前に見直しに係る工程表をつくっていただきました約1万条項のアナログ規制につきまして、見直し業務の最終局面に入ってきております。3月末、それから6月末ということでそれぞれ約2,000弱の固まりがあります。各省と一生懸命見直しの確認の業務をさせていただいておりますので、これにつきましても追ってご報告させていただきたいと思います。それから、地方の話がありましたけれども、デジタル原則適合性の確認を条例にも広げていく話がございますので、私どもはこれにつきましても今、自治体にどうやったらうまく条例の見直しなどがスムーズにできるかということでいろいろと勉強して、いろいろアイデアを出させていただいて、構成員の皆様の意見も頂戴したいと思います。またこれもそのうちご意見をいただければと思っております。

最後に、私どもデジタル庁で重点計画というのをつくろうと思っております。今回、デジタル法制推進、旧デジ臨でございますけれども、こういう制度につきましてデジタルに合わせて考えていくということは非常に大事だと思っております。既存の制度はもちろんですけれども、新しく政策立案するときにも既存のデジタル、あるいはデータとの整合性、あるいは業務の効率性といったものをしっかり見ていく必要があるだろうということで、政策、制度並びに業務、それからシステム・データの3つの三位一体の整合性を確保するということを打ち出していって、しっかりこれを政府の中で根づかせていきたいなと思っておりますので、またいろいろとご意見等をいただければと思います。

本日はどうもありがとうございました。

安念座長: 冨安統括官、ありがとうございました。

それでは、事務局より次回の検討会の開催などについて事務連絡をお願いいたします。

事務局(黛): それでは最後に、次回の検討会の日程及び議事録の取扱いについてご説明いたします。

次回の検討会は、6月11日火曜日の開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

本日の議事につきましては、後ほど議事録を作成し、皆様にご確認いただいた上で公開することといたします。また、資料につきましては、本日の議題に関係する法案の審議状況を踏まえて時期等を調整しつつ、デジタル関係制度改革検討会のホームページに公開することといたします。

ご説明は以上です。

本日はご参加いただきましてありがとうございました。

安念座長: それでは、以上をもって第5回デジタル関係制度改革検討会を終了いたします。皆さん、ありがとうございました。

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