金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第27回) 議事録

2024/06/28  金融庁  

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第27回) 議事録

1.日時:

令和6年4月24日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第27回)

令和6年4月24日


【神田座長】
それでは、すみません、予定の時間よりも1分ぐらい早いかもしれませんけれども、今日御参加御予定の皆様方、既に御参加いただいておりますので、始めさせていただきます。

市場制度ワーキング・グループの第27回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、大変お忙しいところ、本日も御参加いただき誠にありがとうございます。

議事に入ります前に、本会合の趣旨について御説明をさせていただきます。

本日から複数回かけてですけれども、次のことを御議論いただければということでございます。昨年12月に取りまとめていただきました市場制度ワーキング・グループと資産運用に関するタスクフォースの報告書におきまして、資産運用会社等におけるプロダクトガバナンスの確保等ということについて提言をいただきました。それについて皆様方に、本日から何回かにわたって御議論をいただければと思います。

そのテーマを議論していただくに当たりまして、資産運用に関する専門的な立場からの御意見をいただくという観点から、後ほど事務局から御紹介させていただきます方々に、このテーマに関する議論を行う期間に限定してというのでしょうか、このワーキング・グループに御参加いただくことにしております。

ということでございまして、それでは、事務局から御紹介お願いできますでしょうか。

【齊藤企画市場局市場課長】
事務局から御紹介申し上げます。神田座長より御説明ありましたとおり、資産運用会社等におけるプロダクトガバナンスの確保等に関して御議論いただくに当たり、資産運用に関する専門的知見を得るために、小池広靖様、西岡明彦様、野尻哲史様、また藤田薫様に期間限定で本ワーキング・グループに御参加いただきます。役職等につきましては、お時間の都合もございますので、お手元の配席図での紹介に代えさせていただきます。

以上でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。

それでは、議事に入らせていただきます。

本日ですけれども、まず、資産運用会社等のプロダクトガバナンスに関するこれまでの経緯等について、事務局から御説明をしていただきます。その後に、PwC Japan有限責任監査法人の辻田様と久保様にお越しいただいておりまして、プロダクトガバナンスに関する欧州の取組について御説明をしていただきます。

それに続きまして、プロダクトガバナンスに関する国内の資産運用会社における取組として小池委員から、野村アセットマネジメント株式会社の取組について御説明をしていただきます。

さらに、プロダクトガバナンスに関する基本的な考え方と論点を事務局から御説明していただきます。

これら一通り全て終えていただいた後で、討議の時間として、委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただくということとさせていただきます。

なお、本日、井藤企画市場局長と太田原参事官及び今泉市場企画室長におかれましては、公務の御都合で、4時半頃でしょうか、この後、途中退席されることになっております。

それでは、まず初めに事務局から御説明をお願いいたします。

【齊藤企画市場局市場課長】
お手元の資料2を御覧いただければと思います。プロダクトガバナンスに関する検討の経緯等に関してでございます。

プロダクトガバナンスにつきましては、これまでも累次にわたり検討されてきたところでございます。右下にございます3ページを御覧いただければと思います。

こちらは2年前の6月でございますが、市場制度ワーキング・グループ中間整理における提言でございます。プロダクトガバナンスに関して、このページの下のほうになりますけれども、資産運用会社等に対してプロダクトガバナンスの確保を促す観点から、資産運用会社等自身のガバナンスの強化を図っていくため、顧客本位の業務運営に関する原則の見直しを検討すべきであるといった御提言をいただいているところでございます。

また、次のページでございます。2年前の12月でございますが、市場制度ワーキング・グループの顧客本位タスクフォースの中間報告でございます。こちらにおきましても、資産運用業に関しまして、資産運用会社においては、想定顧客を明確にし、顧客利益を最優先して個別商品ごとに品質管理を行うプロダクトガバナンスの体制を確立することが重要と御指摘いただいております。そして、商品組成の課題、また商品の管理・検証の課題が指摘されているところでございます。

そして、一番下のところでございますけれども、プロダクトガバナンスの実践をしていくために必要な原則の見直し等について検討を深めていくべきであると、そういった御指摘をいただいているところでございます。

また、次の5ページでございます。こちらは金融庁で公表いたしました資産運用業高度化プログレスレポート2023でございます。プロダクトガバナンスの強化につきまして、左側のところでございますが、プロダクトガバナンスに関する体制整備の状況などを確認したところ、多くの社において取組が進められていることが確認された
一方、次の6ページ目でございますが、一部の社におきましては、取組が不十分と考えられる状況や実効性を確保するための課題が確認されたと指摘させていただいております。また、左下でございますけれども、各社におけるプロダクトガバナンス強化に係る取組の進捗には差が開きつつあり、プロダクトガバナンス体制の実効性を維持・向上していくために継続的な取組が期待されると指摘させていただいております。

次の7ページ目でございます。昨年末の市場制度ワーキング・グループ及び資産運用に関するタスクフォースの報告書の御指摘でございます。資産運用会社におけるプロダクトガバナンスの確保等について、資産運用会社等の金融商品の組成者においては、顧客の最善の利益にかなった商品提供を確保するための枠組みであるプロダクトガバナンスを実践していくことが重要であると御指摘いただいております。そして、文字が小さくなっておりますけれども、様々な指摘をいただいているところでございます。そして、一番下のところでございますけれども、こうした指摘を踏まえ、資産運用会社における適切な商品組成と管理、透明性の確保等を後押しするため、顧客本位の業務運営に関する原則に資産運用会社のプロダクトガバナンスを中心とした記載を追加し、資産運用会社における個別商品ごとに品質管理を行うガバナンス体制の確立を図っていくことが適当であると御指摘いただいているところでございます。

次の8ページ目は、昨年の年末に政府で取りまとめました資産運用立国実現プランであり、この中でもプロダクトガバナンスにつきまして取り上げられているところでございます。

次のページでございます。プロダクトガバナンスに関する取組の状況についてでございます。

10ページ目でございますが、こちらは事務局のほうで資産運用会社に対しましてヒアリング等をさせていただき、その取組状況の概要をまとめさせていただいているところでございます。

まず、プロダクトガバナンス体制の確保につきましては、多くの会社において経営陣をメンバーに加えた会議体が設置されております。一部では、外部の目線を取り入れるため、社外取締役や外部有識者をメンバーに追加するなどの取組も行われているところでございます。また、商品組成時におきましては、コスト控除後のリターンで分析する取組が行われている状況でございます。想定顧客につきましては、重要情報シートの記載内容以上に具体的な基準を定めていない会社がほとんどの状況でございます。ただ、一部の会社では、想定顧客を「広く一般的な顧客」と「特殊な商品を志向する顧客」に分類した上で、特殊な商品を志向するお客様については顧客理解が促進される取組を実施されているといった例もございました。

また、商品組成後でございますが、多くの会社におかれまして、中長期の運用実績という観点も不芳ファンドの抽出基準として設定されている状況でございます。その一方で、不芳ファンドの分析は、あくまで当該ファンドのパフォーマンス改善・償還が目的であり、その後の商品組成自体の検討に生かすところまでは実施されていないという状況でございます。また、その2つ下の黒丸のところでございますが、販売会社から定期的に得られる顧客情報は、ファンドの設定・解約に係る情報程度という状況でございます。一部の会社では、毎月分配型のファンドについて詳細な情報を入手している例も見られているところでございます。

情報の提供でございますけれども、運用責任者の氏名あるいは運用チームの考え方や投資哲学を情報提供している社が見られた一方、氏名開示についてはこれから検討するという社もございました。また、一部の会社では、プロダクトガバナンスに関する体制や取組内容の公表をされているところもございました。

次のページから3枚程度は、ヒアリング等の結果についてまとめた詳細でございますので、御参照いただければと思います。

右下の14ページ目でございます。こちらは御参考として、プロダクトガバナンスに関するEU制度でございます。この後、PwC様から詳細に御説明いただけると思いますので、事務局のほうからは簡単に御説明させていただければと思います。

EUでは、2014年に採択、2018年に施行されたMiFID Ⅱにおきまして、顧客に適合した金融商品の提供を確保する観点から、資産運用会社と販売会社の相互連携によりまして、金融商品の適合性を検証する仕組みが導入されているところでございます。この中で、資産運用会社に対する主な義務といたしましては、取締役会の監督の下、金融商品組成時に販売対象とする顧客層を特定するほか、販売後においても、販売会社に対するモニタリングを通じて、当該商品が特定された顧客層に適合しているか否かを定期的に検証する、こういったことが求められている状況でございます。

事務局からは以上になります。

【神田座長】
どうも御説明ありがとうございました。

それでは続きまして、PwCの辻田様と久保様からお話をいただければと思います。本日は、大変お忙しいところお越しいただきまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【久保参考人】
PwC、久保です。本日、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。私自身は今、PwCでファンド監査でしたり、金融機関に対してアドバイザリー業務を提供しています。10年ほど前にPwCルクセンブルクに5年ほど出向していました。そのとき、日本の金融商品取引法に相当するMiFIDの大改正が行われていました。その頃からこのプロダクトガバナンスについては、日本でもいろいろ意見交換をさせていただいています。

まず、右下3ページのところを見ていただければと思います。何で欧州のプロダクトガバナンスの規制を取り上げるかというところです。米国との比較というところで、米国のファンドについては集団投資スキームということで、会社型になっていまして、会社の中にボードがあり、ボードの中に運用会社等から独立している独立取締役の方がいて、このボードがファンドのガバナンスを担っているという仕組みになっています。一方で欧州にも、会社型のファンドというのはあるのですが、大手の金融グループの運用子会社が契約型のファンドを立ち上げる形も多く、ファンドを金融商品と捉えてプロダクトガバナンスを行っているという形になります。日本でも特に参考になるのではないかということで、今回、欧州の規制を取り上げさせていただいています。

5ページを見ていただければと思いますが、そもそもプロダクトガバナンス規制が欧州で出てきた背景というところについて、こちらはオルタナティブの投資に投資するようなファンドや仕組商品をリテールの投資家の方々が大量に購入していました。当局が、リテールの投資家がリスクとリターンの源泉を理解しないまま、そういうオルタナティブのファンドや仕組商品を購入しているのではないのかというところで、この議論が出てきました。先ほど事務局の方から御紹介がありましたとおり、2014年5月にMiFID Ⅱが施行されて、2018年から適用されていまして、それ以外に実施細則やガイドラインが出ています。

ページをめくっていただきまして、8ページを見ていただければと思います。実際のプロダクトガバナンスの規制の中身のところを説明させていただければと思います。このプロダクトガバナンスの規制というのは、関連情報の開示を義務づけるような「情報の規制」でもなく、何か商品の内容に特定の条項を加えるような「商品の規制」でもなく、商品の組成会社だったり販売会社の行為に着目する「行為の規制」になります。そこで、商品の組成会社というのは何なのかというところですが、MiFIDの条文で、商品組成会社というのは商品を組成、開発、発行、設計する会社と定義しています。販売会社というのは商品、サービスを顧客へ提供、販売する会社と定義しています。特にポイントになるところは、商品組成会社につきましては、特に運用会社に限定しているわけでもなく、販売会社と商品組成会社が一致しているケースもあると御理解いただければと思います。

9ページに移りまして、では、どういう行為を規制するルールなのかといいますと、商品組成会社と販売会社の商品組成のプロセスあるいは行為と販売会社と商品組成会社の間の情報交換のプロセスあるいは行為を規制しています。より詳細は次のスライドから説明させていただければと思います。

10ページですが、商品組成会社における規制の部分ですが、こちらは事前の態勢と事後の態勢という形に分かれています。事前の態勢について、上から3つ目にありますとおり、商品に合った投資家層のニーズ、特徴、目的を特定するということが要求されていまして、マーケットの状況が悪化した場合も含めたシナリオ分析を実施することも要求されています。事後の態勢について、その商品がターゲット投資家層のニーズ、特徴、目的に合致しているか継続的に分析する必要があります。また、当初想定しなかったケースが発生した場合には、販売会社へ関連情報を提供したり、販売会社と協議を行ったり、必要な場合には当局への報告を検討する必要があります。

11ページのところに販売会社におけるモニタリング態勢がありますが、商品組成会社の事前の態勢と事後の態勢と同じような形になっていますので、ここでは詳しくは説明しません。

次の12ページの情報交換の仕組みですが、商品組成会社と販売会社の間の情報交換の仕組みの構築が要求されています。具体的には、商品組成会社は、適切な販売チャネルの情報、商品の承認プロセス、ターゲット投資家層の分析結果、商品のサステナビリティー要因等、販売に必要な全ての情報を販売会社へ提供する必要があります。販売会社は逆に、当初想定していなかった投資家への販売情報、実際に商品を購入した投資家層のタイプ、購入した投資家からの苦情、質問、フィードバックのサマリーを商品組成会社へ提供することが要求されています。

13ページですが、こちらは条文とかガイダンスの様々なところでプロポーショナリティーという用語が使われています。ここでは釣合いの取れた方法と訳していますが、メリハリを利かせてプロダクトガバナンスの運営をすることが求められている点が重要なポイントかと考えています。

こちらにガイダンスで例示されている事例を幾つか掲げています。一番上のところに記載されているように、よりシンプルで一般的な商品については、ターゲット投資家層の特定を詳細に行う必要はないのですが、ベイルイン商品のように、より一般的でない商品については、ターゲット投資家層の特定をより詳細に行う必要があります。

例えば今、新NISAで初めて投資を始める人とかが非常に増えているかと思いますが、ではこういう人たちに未公開株式に投資するようなファンドを提供していいのかというような考えもあるかと思います。未公開株式とかオルタナティブに投資するようなファンドも当然あると思いますが、どういう人を想定してつくった金融商品なのかというのを販売会社へ伝える必要があると思います。逆にパッシブで一般的な商品であれば、投資家層をリテールの投資家、プロフェッショナルの投資家、両方を含むように幅広く特定することが可能であるということがガイダンスで記載されています。

実際にMiFIDが適用された後、どういうことがあったのかというところについて、16ページで説明しています。MiFID適用後に欧州の各国当局が検査を行っていまして、その検査結果をこちらにまとめています。

英国とドイツとフランス、それぞれコメントが違う形になっています。英国につきましては、全ての運用会社は販売会社から最終顧客のデータを入手することに苦労しているというコメントがありますが、一方で、運用会社と販売会社はより協調的な関係構築に取り組むことというコメントになっています。ドイツにつきましては、プロポーショナリティーのところが言及されていまして、複雑な商品については、より詳細にターゲット投資家層の特定をしなければいけないところ、そこまでしていないのではないのかというコメントになっています。フランスにつきましては、グループで同じ方針を適用していて、本来であればグループの中でそれぞれ違う形の投資家層を特定しなければいけないところ、そのようにされていないのではないのかというコメントになっています。

17ページと18ページは、当局がグッドプラクティスを公表していますので、御参考までに見ていただければと思います。

19ページですが、当局がターゲット投資家層の事例を、5つのカテゴリー、タイプ、知識と経験、資産状況、リスク許容度、目的とニーズという形で特定をしています。ここでのポイントとしては、投資すべきでない顧客、ネガティブターゲット投資家層も特定しています。この例では、主に欧州の投資適格債、国債、マネーマーケット、社債に投資するような一般的なファンドを例に挙げています。投資すべきでない顧客の例として、全額の元本確保を必要とし、解約請求したら即時に全額返金されることを期待するような顧客を挙げています。このような一般的な商品であっても、そのような投資家には売ってはいけないのではないのかとケーススタディーとして紹介されています。

20ページと21ページも実務上のポイントです。欧州もファンド数が多く、日本は1万5,000本ぐらいあるのですが、欧州には6万本ぐらいあります。従いまして、販売会社と商品組成会社の間の情報交換のテンプレートというのが用意されていまして、このテンプレートに従ってやり取りをしています。

私からのプレゼンは以上でして、最後、資産運用インダストリーリーダーの辻田からまとめをさせていただきます。

【辻田参考人】
ありがとうございます。MiFID Ⅱにおけるプロダクトガバナンスの規制の概要については、今、久保から御説明差し上げたとおりなのですけれども、恐らくポイントとしては3点あるのかなと思っております。

まず1点目のところは、久保からもありましたけれども、商品組成会社というコンセプトかと思っております。最終投資家あるいは消費者の目線から見たときに、そのプロダクトが投資信託なのか仕組債なのか変額年金なのか、そこはあまり関係ない話でございますので、投資商品を幅広くカバレッジする規制をつくっているというのが一つポイントではないかと思っております。

2点目のポイントといたしましては、プロポーショナリティーということだと思っています。やはり公募投信だけでも6,000本以上あるという中で、全ての商品に対してリスクを考えずに同じような規制を入れていくと、恐らく現実的には着地させることが難しくなってくるかと思います。より消費者あるいは投資家にとってリスクが高いと思われるプロダクトにできるだけエネルギーを注いでいただくのが恐らくよいのかなと思っているところでございます。

3点目は、最後の情報交換の仕組みと思っております。既に運用会社から販売会社に対する情報提供は重要情報シート等でなされているところですけれども、恐らく販売会社から運用会社にいかに情報をフィードバックするかというところがポイントになってくるかと思っています。これを実現するためには、やはりテンプレートのような何がしかの枠組みがないと、なかなか物事が進まないのかなと思っております。

以上、蛇足かもしれませんけれども、私からコメントさせていただきました。

PwCからのプレゼンテーションは以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは続きまして、プロダクトガバナンスに関する国内資産運用会社における取組ということで、小池委員からお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【小池委員】
ありがとうございます。野村アセットマネジメントの小池です。本日は大変貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。弊社のプロダクトガバナンスにつきまして御紹介をいたします。

3ページをお開きください。3ページは弊社のプロダクトガバナンスに関する考え方を御紹介しています。フィデューシャリーである資産運用会社としての使命を果たすべく、過去より利益相反管理を含む投資信託の運営管理に取り組んでまいりました。一方で、資産運用の重要性がますます高まる昨今、私たちの取組が果たして十分なのかという議論を続けてまいりました。

その道のりを、4ページで御紹介しています。2016年にファンド業務運営諮問会議を設置し、ファンドの管理・検証を始めました。その体制は5ページで御紹介しているとおりです。ファンド業務運営諮問会議は、独立社外取締役を含む社外メンバーが過半数を占め、ファンドの組成・償還・併合、信託報酬水準に関する方針などを検証します。ファンドのパフォーマンスにつきましては、左の図の下段でお示ししたPRC、パフォーマンス・レビュー・コミッティーの略称ですが、私、CEOが委員長を務めるこちらの社内の委員会でモニタリングを行ってきました。

一方で、資産運用業の高度化が求められる中で、現在の管理体制が本当にこのままでいいのかという思いも強くなってまいりました。様々な議論を重ねた結果、お客様目線でより実効的に強化をしていこうという判断を行い、2022年にプロダクト・ガバナンス部を新設しました。4ページの道のりでお示ししているとおり、従来までの取組をステージ1としますと、22年4月からはステージ2と位置づけ、自ら進化をするべく取り組んでおります。

6ページにお進みください。ステージ2における我々のプロダクトガバナンスの基本的な考え方をお示ししています。スライドのとおり、長期的な資産形成に資する商品提案、説明責任の履行、課題の発見と改善の実施、このプロダクトガバナンスサイクルを循環させることを基本的な思想、骨格としています。

その体制は、次の7ページに御紹介をさせていただいております。プロダクトガバナンスに特化したプロダクト・ガバナンス部を新設し、お客様目線に立った評価プロセス、評価基準のフレームワークを再構築しています。プロダクトガバナンス委員会は、個別のプロダクトのパフォーマンス検証、そして、今まで以上に課題に対する是正に力を入れています。もちろん以前もパフォーマンスの検証は行っていましたが、過去のモニタリングは運用パフォーマンス、つまり運用の巧拙の評価に偏る傾向がありました。現在は、お客様目線に立った商品全体の評価、もしくはパフォーマンスが振るわない商品の改善ルールなど、顧客目線で踏み込んだプロダクトガバナンスを推進しています。

8ページを御覧ください。8ページは、開示しているファンドレビューのサンプルイメージです。英国のバリューアセスメントの制度に着想を得て、2023年から約700本ある公募投信のレビューを始めました。レビューの結果はファンド・レビュー・レポートとして、ウェブサイト上で開示をしています。レビューにおいて要改善と判断したファンドにつきましては、併せて改善策も記載し、一定期間経過後に、改めて改善策の進捗を公表しております。

9ページをご覧ください。9ページはファンドレビューの考え方です。目的は、「お客様の利益に資する商品提供」と「プロダクトの育成、競争力の強化」の2つです。このファンドレビューを通じまして、高品質のファンド群により多くの経営資源が投入されるようになり、結果、運用力向上など、サービスの改善が図られ、最終的にお客様の利益に資する商品提供を促進していくという効果を期待しております。

10ページでは、具体的なファンドレビューの評価方法について御紹介をしております。ファンドレビューは、パフォーマンス、商品性、情報提供の3点で評価をしております。この3点で評価をした結果、それぞれのファンドに赤、黄色、緑で評価を行い、評価結果は定期的にレポートを通じてお客様に開示しております。

次のページをご覧ください。御紹介しましたとおり、プロダクトの評価・改善はプロダクトガバナンスのコアを形成するものですが、単に評価をするだけでなく、評価した結果をお客様にしっかりお伝えすること、ご覧いただくことが大切であると考えています。昨秋から、ファンドを運用する担当者や運用体制についても開示を始めました。プロダクトガバナンスの重要なポイントの一つは透明性であると考えています。パフォーマンスというプロファイルだけではなく、そのファンドを運用する担当者もしくは当社の体制をお客様に知っていただくこともプロダクトガバナンスの一つの在り方と考えています。

本資料の11ページから14ページにイメージを御紹介しております。13ページでは、ファンドマネジャーの氏名や顔写真、投資哲学などを御紹介させていただいております。また14ページにあるように、海外の運用者も御紹介しており、グローバルな運用体制を構築しているということをお客様に御理解いただけるように取り組んでおります。

15ページをご覧ください。このように、自信を持ってファンドマネジャーを御紹介できるように、運用力の強化には力を入れております。15ページにありますとおり、採用、育成、評価の各フェーズにおいて様々な取組を行っています。運用調査についてはコース別採用を行い、入社後はリサーチ業務を通じスキルを徹底的に磨くなど、育成プログラムを強化しています。その後、複数の運用領域の経験や海外での経験などを通じて、適性に応じて選抜を行っていきます。昨年より運用者レビューというものも開始しました。一定の水準に満たない運用担当者は運用から外れてもらうなど、健全な緊張感、競争環境の醸成に努めています。そしてまた、運用パフォーマンスに基づく評価、ペイ・フォー・パフォーマンスを徹底しております。

17ページをお開きください。ステージ2では手探りの中、試行錯誤を続けてまいりましたが、振り返りますと、私たちの取り組んできたプロダクトガバナンスには、まだ改善の余地があるのではないかと考えております。例えばファンドの評価方法については、果たしてこの評価方法でいいのかといった疑問があり、社内での議論を続けております。より一層の透明性やクオリティーの向上に向けて、今般、プロダクトガバナンス有識者会議を新たに設置しました。有識者会議の議長には、本日出席されているフィンウェル研究所の野尻さん、そしてメンバーに国際社会経済研究所の藤沢さん、経済コラムニストの高井さんをお招きし、私たちのプロダクトガバナンスの在り方を客観的に御指導いただき、さらなる改善に努めております。

18ページにお進みいただきますと、我々の想定顧客に係る取組について御紹介をしております。スライドの左のように、商品性に応じまして、3つの顧客想定に分類をしています。その上で、それぞれの顧客想定に応じた対応を行っています。例えば、広く一般的な顧客向けのファンドですが、流動性が高く、運用手法も理解しやすいものであるため、次の19ページのような書面で販売会社に想定顧客属性を通知、重要情報シートの個別商品編に記載するなどの対応を行っています。そしてまた、これらはホームページ上でも御覧いただけるように準備しています。

特に注意を要するのは、一番下の特定顧客向けの低流動性資産投資もしくは解約に強い制限があるような商品についてで、そのような特定顧客向けのファンドについては特別な対応が必要なのではないかと考えております。

20ページに最近の事例を御紹介させていただいております。今年2月より、ブラックストーン様のプライベートエクイティーファンドを公募で御提供させていただいています。このファンドは低流動性資産に投資を行っており、流動性、換金に制約があるため、スライドのようなレターを販売会社にお送りしています。

一般的な公募投信とは異なるオルタナティブのファンドにおきましては、想定顧客を明確にして、販売会社から顧客情報を受領して、運用会社として私たち自身が検証できるよう取組を始めました。スライドの真ん中のレターですが、上段の赤枠部分で投資目的、商品性の理解など、4つの要素に分けて想定顧客属性をお知らせしています。下段の赤枠部分では、想定顧客属性を踏まえた販売をお願いし、販売したお客様に関するデータ提供を販売会社に求めています。我々はもちろん、販売会社の皆様にとりましても初めての試みでしたので、御承諾いただけるかどうか非常に心配ではありましたが、弊社のプロダクトガバナンスの方針に御賛同いただき、前向きに対応いただいております。

どのような情報を受領しているかが分かるように、21ページに、サンプルを掲載しております。受領したこのような情報を基に、想定している投資家に商品が届けられているか確認をした上で、必要に応じて販売会社とコミュニケーションを取っていこうと思っております。このような取組はまだまだ始まったばかりですので、いろいろ試行錯誤を続けながら、実効性のあるプロダクトガバナンスに進化をさせていきたいと考えております。

駆け足で御説明をしてまいりましたが、プロダクトガバナンスはフィデューシャリーデューティーの一角をなすものであり、過去の慣例を捨てて、新しい運用会社の姿を求めていく取組と捉えています。

一方で、運用会社と一言で言いましても、規模も違えば、商品も様々、そして販売チャネルも多様なものが多いので、求められるプロダクトガバナンスの姿が必ずしも一つにまとまるというところではないところが難しさであると最近感じております。そしてまた、資産運用会社だけで考えるものではなく、先ほどの事例のように、インベストメントチェーン全体で捉えまして、販売会社にも資産形成普及のパートナーとして理解してもらえるよう取り組んでまいります。

幅広い取組の御紹介のため、早口、駆け足になりましたが、御容赦いただければと思います。

以上となります。当社の取組が御参考になればと思います。本日はありがとうございました。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは続きまして、プロダクトガバナンスに関する基本的な考え方と論点について、事務局から御説明をお願いいたします。

【齊藤企画市場局市場課長】
お手元の資料5に沿って御説明させていただきます。プロダクトガバナンスに関する基本的な考え方・論点についてでございます。

1ページ目でございます。目次といたしまして、Ⅰでは、プロダクトガバナンスに関する基本的な考え方につきまして、まず整理させていただいておりまして、その後、Ⅱでございますけれども、プロダクトガバナンスに関する原則として考えられる各論点についてまとめさせていただいております。

3ページ目でございますが、基本的な考え方についてでございます。まず上側でございますけれども、昨年の年末に取りまとめていただきました市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォースの報告書の記載でございますけれども、プロダクトガバナンスについて、顧客の最善の利益にかなった商品提供を確保するための枠組みと、そういった形で記載していただいております。

その下の御議論いただく際の視点でございますけれども、大きく3つほど指摘させていただいております。

まず、1つ目の四角でございます。資産運用会社等は顧客から預かった資金を運用するものであり、顧客に対する忠実義務や、先般の金サ法改正により法定化されました最善利益勘案義務等を負うことになります。これらを踏まえて、顧客の最善の利益にかなった商品を提供するために、どのようなガバナンスを構築すればよいか、経営陣のリーダーシップの下で考えていくことが求められるのではないか。そして、より良い商品を提供するための自社における理念を定めて、それに沿った業務執行の体制を構築していくべきではないか、それに基づいてどのような商品を提供していくべきか検証することが求められるのではないか。こうした観点から、資産運用会社等においてはどのような取組が求められるかということを指摘させていただいております。

2つ目の四角でございますけれども、その上でということで、具体的な商品の組成、提供、管理の各プロセスにおける品質管理を実効性あるものにするため、経営陣の指揮の下で、これらのプロセスの各担当部門における品質管理を行うことに加えて、商品組成部門等から独立した検証体制を構築することが必要ではないか。こうした検証体制を確立する上でどういった点に留意すべきかということを指摘させていただいております。

最後に、資産運用会社等において顧客の最善の利益にかなった商品提供を競い合い、よりよい商品が投資家によって選択されていくメカニズムを実現する観点から、投資家にとって各社のプロダクトガバナンスの確保に関する取組が見える化されることが重要ではないか。こうした点からどのような情報発信が有益かといった点を指摘させていただいております。

次のページでございます。プロダクトガバナンスに関する原則を記載する位置づけでございますけれども、まず市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォースの御提言では、青字になっておりますけれども、顧客本位の業務運営に関する原則に資産運用会社のプロダクトガバナンスを中心とした記載を追加することが適当であるとの御指摘をいただいております。

現行の顧客本位の業務運営に関する原則、いわゆるFD原則でございますけれども、FD原則は金融商品の販売や推奨に関する内容が中心ではあるものの、金融商品の組成に携わる金融事業者も対象に含まれております。例えば原則5の「重要な情報の分かりやすい提供」、あるいは原則6の「顧客にふさわしいサービスの提供」、こうしたものに商品組成に関連する内容が盛り込まれているところでございます。これらの内容はプロダクトガバナンスを実践していく上で基本となるものと考えられるため、プロダクトガバナンスに関する原則を定めるに当たりましては、これらの基本的な考え方を具体化し、FD原則を補充するものとして、FD原則の中に位置づけていくことが適当ではないかということでございます。そして、FD原則を補充するために盛り込む内容としては、商品の組成、提供、管理の全体のプロセスを対象とすべきであるため、①プロダクトガバナンス体制、②商品組成時、③商品組成後、④顧客への情報提供という切り口で考えていくことが適当ではないかと指摘させていただいております。

次のページから、具体的な論点でございます。6ページ目をお開きいただければと思います。以降のスライドの構成でございますが、まず上側で取組状況と課題、下側に求められる取組という形で整理させていただいております。時間の関係もございますので、求められる取組、下側のほうを中心に御説明させていただければと思います。

プロダクトガバナンス体制の確保についてでございますけれども、資産運用会社等においては、経営陣の十分な理解とリーダーシップの下で、より良い商品を提供するための自社における理念を定め、それに沿った業務執行の体制を構築していくことが求められるのではないか。そうした観点から、商品組成時・組成後の各段階において、プロダクトガバナンスの実効性を確保するための体制を整備することが求められるのではないか。その上で、商品の組成、提供、管理の各プロセスの担当部門における品質管理の体制を適切に確保するとともに、こうした部門等から独立した、各担当部門の機能発揮状況を検証するための体制を整備することが求められるのではないか。その際に、社外取締役や外部有識者の意見、こういったものを取り入れる枠組みも整備することが有用ではないか、またPDCAサイクルを確立していくことが重要ではないかと指摘させていただいております。

次の8ページ目でございますが、商品組成時の対応でございます。商品組成時の対応として、御議論のための御参考といたしまして、特殊な商品例ということでお示しさせていただいております。御参照いただければと思います。

9ページ目を御覧いただければと思います。商品組成時の対応につきまして、まず想定顧客についてでございます。上側でございますけれども、金商法では適合性の原則として、顧客の知識、経験、財産の状況、金融商品取引契約を締結する目的に留意して販売勧誘することが求められているところでございます。また、重要情報シートにつきまして、手引を金融庁で作成しておりますけれども、その中で一定の目線を示しておりまして、想定顧客属性については、投資目的、リスク許容度を軸に記載することが示されているところでございます。

こうした点を踏まえまして、求められる取組でございますけれども、想定顧客の特定に当たっては、顧客の知識、経験、財産の状況、金融商品取引契約を締結する目的といった観点を考慮して、具体的に定めていくことが基本ではないか。特に複雑な商品、運用手法、分配手法等が特殊な商品については、どのような顧客のニーズに合致させるよう組成しているのか、また、それが当該商品に適切に反映されているか検証を行う必要があるのではないか。例えば顧客の年齢層、現役世代でありますとか退職世代、例えば毎月分配型投信などを念頭に置きますとこういった点、あるいはプライベートアセットに投資するような流動性リスクを伴う商品については、流動性に関する顧客のリスク許容度、こうした商品の特性に応じた要素も考慮すべきではないか。また、特定した想定顧客につきまして販売会社の十分な理解が浸透するよう、販売会社への情報提供もしっかり行っていくべきではないかと指摘させていただいております。

次の10ページ目でございます。商品組成時の対応として、商品性についてでございます。求められる取組といたしまして、資産運用会社等の提供する商品は、より良い商品を提供するための自社の理念を踏まえ、資産運用会社等が真の顧客ニーズを把握した上で、そのニーズに最も合致するよう組成されることが重要ではないか。また、顧客からの資金を継続的に運用するものであり、一時的なトレンド、テーマにとらわれない、中長期的に持続可能な運用商品であるかを商品組成時に検証すべきではないかと指摘させていただいております。また、リスク、リターン、コストのバランスを適切に勘案して商品組成を行うべきではないかということでございます。

次のページから、商品組成後の対応についてでございます。

12ページ目を御覧いただければと思います。商品組成後の対応として、想定顧客に関してでございます。求められる取組といたしまして、顧客に適合した金融商品の提供が確保されるためには、商品を組成する資産運用会社等においても、「商品組成時に想定していた顧客」と「実際に購入した顧客」のギャップを把握し、商品の提供方法の改善や、その後の商品組成に生かしていく取組が求められるのではないか。資産運用会社等におきまして、こうしたギャップ分析を適切に行うためには、販売会社の協力が不可欠と認識しております。販売会社においては、資産運用会社等との情報連携が求められるのではないか。

一方で、コスト負担にも留意する必要があるかと思います。例えば、リスクが低く、インデックスファンドのような分かりやすいものは簡潔な情報連携とし、複雑な商品についてはより詳細な情報連携を行うなど、メリハリ――先ほどありましたプロポーショナリティーでございますけれども――をつけることが適当ではないか。また、会社ごとに別々の情報を提供することは販売会社にとってもコスト負担が重いと思われますので、販売会社から情報連携する内容に関して一定のフォーマットを用いることも考えられるのではないかということでございます。そして、ギャップ分析の結果を踏まえて、必要に応じ、例えば顧客への商品説明資料の改善でありますとか、販売会社の営業職員の理解を深めるための研修の実施など、運用・商品提供の改善に繋げていくことが重要ではないかと指摘させていただいております。

次の13ページ目でございます。商品組成後の対応として、商品性についてでございます。求められる取組として、商品を顧客へ提供し、運用が開始された後においても、マーケット環境等の変化に応じ、商品組成時に想定していた商品性が確保されているかの検証を継続的に行うべきではないか。検証に当たっては、リスク、リターン、コストのバランスが適切なものとなっているかといった観点から評価・検証を継続的に行うべきではないか。加えて、その評価・検証の結果を当該商品の改善につなげるとともに、今後の商品組成、提供、管理のプロセスを含めたプロダクトガバナンスの体制の見直しにおいても必要に応じて有効活用していただくべきではないかということでございます。

次のページ、最後の論点でございますけれども、顧客に対する情報提供についてでございます。

15ページ目を御覧いただければと思います。求められる取組といたしまして、投資家がより良い金融商品を選択できるよう、プロダクトガバナンスを確保する体制や金融商品の運用体制について、投資家に分かりやすい情報提供を行うべきではないか。また、運用体制については、個々の投資信託等の商品性に応じた情報提供を行うべきではないか、これもメリハリが重要ではないかということでございまして、例えば運用担当者の判断が重要となるアクティブ投信については、個人情報保護にも留意しつつではございますが、投資家に対し、運用責任者や運用の責任を実質的に負う者の氏名、経歴、投資哲学等を見える化することも考えるべきではないかといった点を指摘させていただいております。

以上になります。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、今日は残りの時間を討議の時間とさせていただきたいと思いますので、今いろいろ御説明やプレゼンもいただきましたし、事務局からも説明をしていただきましたので、御質問、御意見等をお出しいただければと思います。

この会議、今日初めての方もいらっしゃるかもしれませんけれども、会議時間等も見まして、大変恐縮ですけれども、御参加の方々の人数で割り算をして、お一方当たりの御発言のお時間というので御参考としてお示しさせていただいているのですけれども、そういたしますと本日は、お一方当たり4分以内程度を目安にしていただければありがたく存じます。また、御発言の順番については若干前後する可能性があるかと思いますけれども、あらかじめ御了承いただければと思います。

会場にお越しの方、対面で御参加の方には、いつものようにといいますか、ネームプレートを立てていただければ、私から御指名をさせていただきます。それからオンラインで御参加の方々には、大変恐縮ですけれども、チャットを全員宛てに1行入れていただければと思います。

そういうことでございますけれども、まず委員の皆様方から御発言をいただきまして、最後、時間があればオブザーバーの皆様方から御発言をいただくということとさせていただきたいと思います。

それでは、いかがでしょうか。

では、まず坂先生からお願いいたします。それから佐々木委員の順にお願いいたします。

【坂委員】
ありがとうございました。全体として、現状の課題に対応する適切な枠組みを御提案いただいていると受け止めております。企業、経済の成長を促し、国民の資産形成を進めるため、インベストメントチェーンの要である資産運用業の高度化は極めて重要です。この点、欧州の先進的な規律について御報告がありました。我が国の資産運用業の国際競争力という観点からも、我が国の状況を十分踏まえつつ、全体として欧州に並ぶレベルの取組が望まれているように思われます。

プロダクトガバナンスにおいて取り組むべき課題は、事務局の御提案の中にも表れておりますが、2つの点ないし側面があると考えられます。1つは、想定顧客を適切に設定し、顧客属性を適切に把握するということ。いま一つは、商品や運用をより高度化、洗練されたものにすることです。いずれについても適切なガバナンス体制の確立を前提に、ガバナンス体制における検討、検証を実効的に行うためには、客観的かつ合理的な分析手法、評価基準が確立、共有されることが肝要と考えます。かかる観点から、想定顧客、商品性それぞれについて、若干コメントと御質問をさせていただければと思います。

まず、想定顧客ないし顧客属性に関しては、この中に2つのポイントがあると思います。1つは、顧客の知識、経験、財産状況、契約締結目的に基づいた顧客の類型化または評価基準、いま一つは、リスク許容度のレベル分け、このリスク許容度という観点は極めて重要と考えております。

顧客の類型化、評価基準に関しましては、販売会社と組成会社・運用会社との間の情報共有に課題が指摘されていることに鑑みますと、事務局の資料5の12ページ、情報連携のフォーマットは、ぜひとも必要と考えます。また、リスク許容度については、年齢や財産状況等の客観的な状況が的確に把握されるべきと考えます。顧客が主観的に希望しても、年齢や財産状況等からは適合しないと考えられる金融商品は当該顧客のリスク許容度の外にあると、適切に評価されるべきです。

この想定顧客ないし顧客属性に関しては、PwC様の資料3の19ページを興味深く拝見させていただきました。この点に関して3点、御質問させていただければと思います。

まず1点目ですけども、想定顧客ないし顧客属性の類型化ないし評価基準に関して、これは19ページのターゲット投資家層を5つのカテゴリーで特定するというところで表現いただいていると思いますけども、この内容について、いま少し教えていただけるとありがたいと思います。特にリスク許容度についてどういった評価するのかということについて教えていただければありがたいです。

2点目ですけども、19ページの黒丸の3つ目の説明中に「X」という部分、それから4つ目の本文中にも「X」という表記があります。これらは具体的な数値が入っていくという趣旨なのかどうかを教えていただければと思います。

それから3点目ですけども、この19ページの記載の内容は、個別には顧客とも共有されるのでしょうか。以上の3点について御教示いただけるとありがたいです。

次に、商品内容ないし運用に関しましては、小池様の資料4の9ページの右の図が目指すべき姿を表していると思います。商品内容ないし運用については、資料5の10ページのリスク・リターン・コストのバランスを適切に勘案する商品組成という点、及び13ページの、中長期的なコスト控除後リターンやシャープレシオ等の評価・検証を継続的に行うという点が極めて重要と考えます。こうした客観的かつ合理的な分析、評価に基づいた検証、これを具体的に精緻化していくということが求められるように思います。また、こうした分析、評価が商品横断的に比較可能な形を取ることも重要であり、かかる在り方は、より深い検証を可能とするものとも思います。

さらに、検証結果については、できる限り顧客と共有されることが望まれます。この点に関し、小池様から資料4の8ページ等で御紹介ありましたファンド・レビュー・レポートが注目されます。これについては、出された後に関係者や投資者等の行動の変化や反響というものがもしおありになるようであれば、教えていただけるとありがたいです。

以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。PwC様と小池社長に御質問があったと思います。もしよろしければお願いいたします。

【久保参考人】
御質問ありがとうございます。PwCです。最初の質問で頂いた5つのカテゴリーについては、当局のガイダンスがありまして、その中で何か定量的な形で規定されているわけではなくて、あくまでも各商品組成会社が考えて決める形になっています。定性的な部分について、リスクオリエンテッド、スペキュレーティブ、バランス、コンサバティブという形で記載例としてはありますが、何か数字があるというわけではないです。

Xの部分のところは、これはあくまでもケーススタディーになります。ここに何か数字を入れなければいけないわけではないです。一応ケーススタディーでは幾らぐらいを想定した形でつくっていると御理解いただければと思います。

あと3番目、これはあくまでもターゲット投資家層の分析例で、商品の組成会社が販売会社とのやり取りの中で使う紙ですので、特に顧客に渡す紙ではないです。

【神田座長】
よろしゅうございますか。

【坂委員】
ありがとうございます。

【神田座長】
それでは、小池さん、いかがでしょうか。

【小池委員】
御質問ありがとうございます。ファンド・レビューの取り組みを続けてちょうど1年になりますが、この間にプロダクトガバナンス有識者会議を立ち上げ、その際に野尻さん含め、3名の方からアドバイスをいただいたのですが、まずレポートが難し過ぎるという声を多く頂戴しました。誰に向かって発信しているのかや、個人の投資家の人なのか、販売会社向けなのかが曖昧だという御指摘を受けましたので、目下改善に取り組んでおります。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、対面で御参加の方で札を立てていただいている方を順番に、右のほうから行きたいと思いますので、佐々木先生、どうぞ。

【佐々木委員】
ありがとうございます。私のほうからは感想と質問ですけれど、本日、プロダクトガバナンスということでいろいろ御説明いただいて、非常に細かく、いろいろな面からプロダクトガバナンスについての議論があり、これを全てうまく適用できれば非常に丁寧な対応で、問題も減るんじゃないかというふうな感想を持ちました。

ただ、私は専門ではないので、あまり細かい点について申し上げてもあれかなと思ったんですけど、私自身は実務的な部分は分からないのですが、やはり実際に適用するとなると、かなり難易度も高いようなところもあるのかなと感じました。あとは、実際にプロダクトガバナンス体制についてもいろいろな段階があって、どこを対象にするかということも問題になると思っていて、まず第一に、金融庁が今まで指摘しているように、シンプルに、もう明らかにコストとリターンが見合わないとか、顧客の最善の利益にかなっていない、あるいは複雑なルールが適用されているというような、そういったものをまず排除するということが重要、細かい適用も重要なのですけど、まずはそれが第一なのかなと思っています。

そういったことを前提とした上で、定義についても、もう少し詰めてもいいのではないかなと、プリンシプルを理解して考えていくべきとはいえ、あまりにいろいろな論点が含まれていて、ちょっと私的には、これ自体は非常にすばらしいんですけど、重要性からいって分けていって、重要なものと、より複雑なガバナンスと、ある程度段階分けしていってもいいのかなというようなことを感じました。

そういった意味で、現実には、もちろん個人によっていろんな、ただコスト・リターン・リスクというだけ、複雑性というだけではなくて、様々な自分のポートフォリオの中で資産を選択していくわけですから、個人が判断できるのがもちろん望ましい。そういった意味では情報提供していくことが重要と思うのですが、まず初めに、投資に慣れてない顧客層を想定し、そういったところに声が届くということを進めるのも重要ではないかと思います。

そういった意味では、今の資産運用業高度化プログレスレポートなどで様々な点を明らかにしているということは重要で、それをメディアとかに取り上げてもらって、より分かりやすく公表してもらうということも重要なのではないかなと改めて感じました。

その上で、せっかくの機会なのでお伺いしたいと思ったのが、小池様の、例えば一般的に言って、野村アセットマネジメントというわけではなく、このプロダクトガバナンスといった議論の中で、実際にこういった理念というかプリンシプルに沿ってやっていくに当たって、非常に難しいと感じられている点をシンプルに教えていただけたらと思ったんですけど、よろしいでしょうか。

【神田座長】
ありがとうございました。

小池さん、どうぞ。

【小池委員】
まず、おそらく運用会社各社で、考え方が大きく異なる部分もあると思いますし、規模の面というのもあると思います。また、我々のような会社と、今、スタートアップでどんどん立ち上げていかれている方々というのは、やはりそういったことを手当てする人材が非常に違うと思いますので、まず、体制も含めまして、やはり一様ではないという点に難しさを感じています。

また、先ほど申しましたように、例えば販売会社が対面の金融機関の場合と、オンラインの証券会社の場合がありますが、オンラインだとなかなか我々の意向とかメッセージが届かないケースも、もしかしたらあり得るかもしれません。商品、チャネル、会社の持つフィロソフィーのようなものがそれぞれ違うので、なかなか1つの型にはめることができないというところが少し難しいのではないかなと思っています。

【佐々木委員】
分かりました。ありがとうございます。

【神田座長】
よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

それでは、厳密に言うと札を立てていただいた順とちょっと違うのですけど、ほぼ同時に立てていただいておりますので、この先、西岡委員、野尻委員、野村委員、藤田委員に御発言いただき、あとオンラインで御参加の武田委員、有吉委員、松尾委員、神作委員の順で御発言いただければと思います。

どうぞ、西岡委員。

【西岡委員】
発言の機会いただきまして、ありがとうございました。マン・グループの西岡でございます。

私、前職は日系の運用会社で経営しておりましたので、その点の経験も踏まえて、幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、このプロダクトガバナンスのこの議論自体、本当に顧客本位とかスチュワードシップ、コーポレートガバナンス改革など様々な、御当局様の一環とした方針で、今、資産運用立国を目指すところまで近づいているということは、長く運用業界に携わる者としては非常にうれしくもあり、また、責任の重さを、きっと皆すごく実感しているのではないかと思っています。

多分今はその各々の施策、スチュワードシップにしてもコーポレートガバナンスにしても、見直しが何回も入って深めていく、深化されていくというステージにあるのだと思います。今回のプロダクトガバナンスというのも、その大きな流れの中にあるという観点で、高いところを目指す議論になればいいなというふうに、まず考えているということでございます。

この資産運用立国のインベストメントチェーンの中で、アセットマネジャーは、日本の特殊な立ち上がりもあって、非常に頑張らないといけないところにあるという認識をまず持っておりますので、この機会に、アセットマネジャーも大きな責任を果たすべく努力をしていかないといけないということの再認識の契機になればいいなと思っています。

また、議論の中心はアセットマネジャーだと思いますが、お客様本位の取り組み等で変化はしてきているものの、我が国の資産運用業は歴史的に販売会社主導で形成されてきたことから、販売会社のインベストメントチェーン上の責任などの明確化を通じて、アセットマネージャー、販売会社一体の改革の一助になる議論が大事だと考えています。

その前提の中で、まず、プロダクトガバナンスの課題については、かなり議論されてきているので、ペーパーを見るときっちりと課題抽出がされてきていると認識しています。その上で、ペーパーに沿って幾つか意見を述べさせていただきます。

まず、3ページ、4ページの基本的な考え方、これは各社、既に様々な前向きの対応が進んできていて、小池様の発表を聞くと、かなり的確に対応されているなとまず思いました。

その中で、やっぱり見える化というのはとっても大事で、開示の議論のポイントというのは、分かりやすさとミスリードを防ぐことだと考えています。資産運用業務はやはり情報格差のあるインダストリーですから、ミスリードを防ぐというのがすごく大事になります。また開示に係るコストについても考えなくてはならない。本来プリンシプルベースで考えるべきとは考えていますが、分かりやすさとかコスト等を考えると、一定の部分はルール化、共通化みたいなことも議論すればいいのではないかなと思います。

次に8ページの商品組成時の想定顧客の議論は非常に大事で、先ほど申し上げました情報格差のあるプロフェッショナルの世界では、顧客の真の利益というのがとても大事だと思っています。顧客の真のニーズに応えるために、ディリジェンスに努力するという、こういう枠組みがないと成り立たないインダストリーだと思っています。

そういう意味においても、アセットマネジャーとしては当然のことですけれども、先ほど少し触れましたように、インベストメントチェーンの成り立ちから見ると、販売会社と共にやっていくというのはすごく大事なポイントだと思います。インベストメントチェーンの中でお互いが責任を持てるかというのがとても大事なポイントだと思っています。

また12ページの組成後の対応もすごく大事だと思います。歴史的経緯からインベストメントチェーン上で販売会社のほうが上で、アセットマネジャーが下だというような構図があり。ここから脱却するというのが、本質的にこの議論が進んでいく前提になるのではないかなと思っています。

ただ、小池様の話を聞いていると、かなり、その辺りについても変化の兆しもありそうでないときっと販売会社も生き残っていけないのだという認識を新たに持ちました。

13ページのパフォーマンス関連も非常に大事だと思います。しかしながらこれも一定ルールベースにしないと、コストがかかり過ぎることや比較しにくいことなどもあり、この辺りについては欧州の例も見ながら考えていけばいいかなと思います。

最後に、情報提供です。運用体制、主要メンバー、投資哲学、経験などは、色々個人情報等問題もあるかもしれませんが、やはり特に定性的な運用に関してはお客様が運用会社や、プロダクトを選ぶ大事なファクターでもありますので、これはやはり運用会社も肝を据えてといいますか、責任を持って開示していく方向に動くべきだと考えています。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、野尻委員、どうぞお願いいたします。

【野尻委員】
ありがとうございます。フィンウェル研究所の野尻と申します。よろしくお願いいたします。

まず、自分の持っているプロダクトガバナンスに関する全体的な見方であります。もう御承知の方も多いと思うんですけど、イギリスでは、もう随分前から当局のレポートにインベスターという言葉はなくなっていて、全てコンスーマーという表現に変わっています。要は、投資商品も消費財なんだというふうに考えると、消費財と同じようにして物を考えていく必要があるんじゃないか。例えば車でいえば、どんなカーライフを願っているのか。SUVなのか、スポーツカーなのか、ワンボックスなのかというのは、それぞれのライフプラン、カーライフを設定した上で提供するということだと思うんですね。

ここで言うところのカーライフ云々とかいうのは、顧客の最善の利益は何かということの定義だというふうに私は思っています。言い方を換えると、何を最善の利益として見ている顧客なのか、これを前提にした組成時のガバナンスが必要になる、組成時の顧客属性が必要になるというふうに思っています。

商品が先にあって、それに適合する顧客を考えるというプロセスではなくて、顧客の目的が先にあって、それに沿って商品が組成されていく、既に存在している商品についてこれを言うのはちょっと酷な話なんですけど、組成時のということであれば、これがやっぱり大事ではないかなと思っています。

資料をたくさんいただいて、いろんな提案をいただいているんですけど、それを基準に考えていきますと、例えば、プロダクトガバナンスに関する基本的な考え方の①のところは、私は、フォローしているのが退職者世代がメインですので、退職後の生活資金というのを念頭に置くと、大事なことは退職後の豊かな生活を担保できるかということだと思うんですね。これが目的で、それに必要な資金額は幾らかというのが目標で、それに用意できるような投資商品というのが手段、またはツールになるんだと思うんですね。この議論をしていかないと、実は、今日のテーマでもあるプロダクトガバナンスというのが、手段と目的とが混在してしまうようなことが多々あるように思います。繰り返しになりますけど、顧客の最善の利益というのが先にあって、これに対してどう考えるか。現役世代がやっぱりリターンを重視するのに対して、退職世代はボラティリティーの少なさみたいなものを重視するとなると、これは大きな違いが出てくると思います。顧客がどう違うか、顧客によって属性が違い、求めている最善の利益が違うということを念頭に置く必要があると思っています。

基本的な考え方の②に言及されている顧客本位の業務運営の7原則、これにプロダクトバランスというのを付け加えていくということには賛成です。これ、ぜひやっていくべきだと思うんですが、そのときに、顧客の最善の利益というのが、顧客属性を検討する上で重要ということを明記できないだろうかと考えています。

それから、プロダクトガバナンス体制の確保に対しては、小池委員からの御指摘もあったように、全ての会社ができるというのはなかなか大変ですし、スタートアップの会社にも求めるのはなかなか大変なんじゃないかと思っています。そこで、何かしらエコシステムみたいなものを想定することはできないだろうかというふうに考えています。

1つは、外部に置くファンドアナリストみたいなものをきちんと充実させていくことで、外部の目線で投資信託の評価ができないだろうかと思っています。

それから、商品組成時の対応、これは先ほどお話をしたように、結局、商品が先にあって、こういう商品をつくりました、これに合う投資家はこうこうこうですというやり方をすると、結局リスクの取れる人といった定義になり、それはリスクの多寡関係なく、みんな取れるじゃないかということになりかねません。一般的な言葉でくくられてしまわないようにするということが大事になるのではないかと思います。

この議論を詰めていきますと、顧客と接している販売会社にも、本当にその顧客の属性が十分理解できているんだろうかというところも若干疑問に残る点があります。その意味で、販売会社側もさることながら、運用会社側にも、商品組成の段階で、顧客調査とか世論調査というんですか、サーベイをちゃんとやって、これに基づいて商品を組成するようなマーケティングリサーチが必要になってくるのではないかと思います。

これができると、商品組成後の対応としては、2点に注目すればよくなります。1つは、本当にその顧客属性に合った投資家が保有しているかどうか。もう1つは、その商品そのものが最初の設計どおりかどうか。この2つだけ、きちんとフォローしていけばいいのではないかなと思っています。

最後に、情報提供に関しても、顧客の目的が何かというのがクリアになっていると、投資商品、投資信託がその目的にどんな特性を提供できるかというのを伝えれば済むと。細かいリスクとかリターンとか、そういうデータも必要なんですけど、やっぱり大きな目線で、この投資信託が消費者の何に貢献できるかを明示することが重要です。それが消費者の共感を生むということだと思っています。例えば、アクティブファンドはインデックスファンドに勝てないといった表現で全て括られていくのと同じで、やはり共感を持ってもらえるというのがすごく大事なのではないかと思います。言い換えると、プロダクトガバナンスというのが、その商品とか、それを運用する会社のブランディングみたいなものなのではないかと思っています。トータルとして、顧客属性は、顧客の最善の利益は何かということを詰めた上での答えになることを念じています。

以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】
野村資本市場研究所の野村でございます。本日、いろいろと御教示いただきまして、どうもありがとうございます。

私からは全体感的なコメントと、資料5の記述に関する個別のコメントを若干申し述べたいと思います。

まず全体感ですが、やはりプリンシプルベースのアプローチを貫徹することが大事なのだと思います。細かい論点や具体的な内容は、原則というよりはベストプラクティスの共有ですとか、そういったアプローチのほうがなじむものもあるかもしれないと思います。原則のレベルでは、結局のところ、何度も御発言にありましたけれども、顧客の最善の利益追求ということに、ある意味尽きまして、あとは個別の論点、方法論という整理もできるかもしれません。

また、今回の論点、資料にも挙げていただいておりますが、顧客本位の業務運営の原則の、顧客の最善の利益の追求(原則の2)が中心・中核ということで、資料に挙げておられる原則の5や6に集約されるということかと思います。そういった観点からも、何か新しく作るというよりは、既存の原則に追加していくようなアプローチに同意いたします。

また、プロダクトガバナンスの体制や、その情報開示といったことは、基本的には、可能であれば高度化していくと良いということになるとは思うのですけれども、やはりいろいろと負担が生ずるのも事実ではございます。そういったコスト的なものも、場合によっては最終的に顧客に転嫁せざるを得ないということもあり得ますので、総合的なことを念頭に置く必要はあるのかと思います。

次に、資料5の個別のコメント的なものでございます。

まず、10ページですが、この商品組成時の対応の商品性のところ、これは、自由な発想ですとか、イノベーションの促進、そして運用の高度化、こういったものの抑制にはならないようにするというのも大事なことかと思います。

9ページと12ページ、ここの想定顧客のところですが、商品の組成時、それから組成後のいずれも、顧客の想定が大事だというのはそのとおりだと思います。

ただ、いわゆるステレオタイプ的な属性分類のようなものが、場合によってはあまりマッチしない、適当でないという可能性もあるかもしれないと思います。例えば、9ページにある「年齢」は、結構標準的だと思います。ただ、これは野尻さんが詳しいお話だと思うのですが、高齢者といっても一律ではないというのもよく知られているところですので、妙な決めつけになってあまり機能しない、実用性が伴わないということにならないようにする必要があるのかなと思いました。

12ページの販売会社との会話というのは、重要だと思います。フォーマットが有用だという御指摘も何度か今日出てきておりまして、そうかもしれないと思う一方で、フォーマットはややもすると埋めに行ってしまうというか、形式対応に陥りがちな部分も場合によってはあります。既に重要情報シートがあるので、そこを起点に何かできないかなど、そういったことの確認も必要かと思いました。

PwC様からの御指摘、プレゼンにありましたプロポーショナリティー、あるいは商品のタイプに応じたメリハリが重要だというのは、本当に同意いたします。

最後ですけれども、15ページにある顧客への情報提供促進の一環で、運用担当者に関する情報提供、これは意味があると判断して自発的に行われるのは良いと思うのですけれども、プリンシプルで促進というようなレベル感のものなのかについては、いろいろな検討が必要かと思いました。

以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、藤田委員、どうぞお願いいたします。

【藤田委員】
ブラックストーンの藤田です。ありがとうございます。

まず、全般についてですけれども、デフレ脱却の兆しが見える中で、資産価値の目減りに対する資産防衛への観点でも、資産運用の重要性というのはより一層高まっているかと存じます。また、インフレ下ということになりますと、株式と債券では十分な分散が得られないということが分かっておりますので、プライベート資産等の活用が一層重要になってくるということもあるかと思います。その意味で、今般のプロダクトガバナンスにおきましては、資産運用立国の実現プランにある運用対象の多様化の進展につながる議論となることを期待しております。

2点、プロダクトガバナンスの会議体の設置と、情報交換の仕組みについて、具体的にコメントさせていただきます。

まず、会議体の設置です。顧客の最善の利益を重視しまして、最良の商品を提供していくということは、顧客の重要な資産を預かっている運用会社に求められるフィデューシャリー・デューティーであることから、プロダクトガバナンスの確保に強く賛同いたします。

ただ、競争力を促進する観点、並びに形骸的な枠組みとならないためにも、自主的な取組を重要視するほうがよろしいのではないかと思います。実際、小池委員からもありましたとおり、資産運用会社の多くは高い倫理観及び厳しい競争の下で、運用者の育成、構造的な成長領域の把握や革新的な運用戦略の構築、商品の組成、業界動向の把握、販売戦略の策定や見直しなどを随時行っております。

また、外資系でございますと、日本法人に限らず、地域横断的に経営陣を含めてベストプラクティスについて議論することが一般的かと存じます。足元、国内外からの新規参入の活発化や、新興運用業者を促そうとしている中で、統一化、または義務化されることで、コスト負担増となって参入障壁になるということがないように、ぜひとも配慮していただきたいと思います。

続きまして、販売会社と運用会社の情報交換の仕組みについてです。

インベストメントチェーンにおきまして、運用会社、販売会社、顧客がBtoBtoCの関係にある中で、組成前から組成後の一連の商品サイクルを通じまして、販売会社及び運用会社間の連携を活性化することこそが、真の顧客ニーズを把握した上での商品提供につながると考えます。

PDCAサイクルの確立を目指しまして、実務の観点で、欧米の事例を踏まえて、資料5に関連しまして2つ提言させていただきます。

まず、販売会社による運用会社へのデューデリジェンス、IDD、ODD等があるかと思いますけれども、こちらを推進してはどうかという点です。

資料5の10ページ、13ページに商品性、15ページには投資家の運用体制の開示拡充とございます。個人投資家に対して、機関投資家同様の詳細なデューデリジェンスの実施を求めるにはやはり限界がありますし、ほかの委員からもございますとおり、顧客向けには分かりやすさを追求するということが重要になってくるのかなと思います。他方、リテール分野におきましては、販売会社が投資家に資する商品を選定している現状を鑑みますと、運用会社は商品組成時の販売会社への情報提供の強化に優先的に取り組むことを検討してはいかがでしょうか。

ブラックストーンでは、世界最大級のオルタナ投資会社としまして直近の為替レートで時価総額約23兆円、運用資産額は約150兆円に達します。そのうち約25%がプライベート・ウェルス経由でございまして、欧米、アジアの様々な金融機関様と協業をしてございます。そういった中で、販売会社様は商品採用に際しまして、組成の背景、運用哲学や体制、運用の継続性とパフォーマンス分析、コンプライアンスやオペレーションの体制などを徹底的に検証されて随時モニタリングを実施されています。欧米だけではなく日本でも昨今では専門性の高いファンドコンサル会社に委託する例なども見えてきています。こうした取組が浸透しますと、顧客から業界への信頼向上に繋がると考えます。その意味で、運用会社向けに商品分類に応じたこういったデューデリに対するベストプラクティスの共有をするのはいかがかと思います。

続きまして、販売会社と運用会社の販売実態に対する情報共有です。

資料5の9ページに、商品組成時における想定顧客の特定に当たっては、顧客の知識、経験、財産の状況等の観点を考慮するのが基本ではないかとございます。既に私の経験としましては、販売会社様において顧客の適合性及び特定商品への確認書の徴求など十分な取組がなされていると理解しておりますけれども、MiFIDを参考に、販売開始前に、販売会社と運用会社の間で個別商品の想定顧客、販売会社における適合性をどのように確保していくのか、そういった枠組みをつくることを事前合意するというのはよろしいのではないかと思います。

また、12ページのギャップ分析ですけれども、米国でも販売員の情報を入手して、効率的に販売員の研修に活かしている、こういった事例もあります。商品提供の方法の改善と販売員の高度化に寄与すると期待できるのではないでしょうか。運用会社による検証を可能にするために、定期的に販売会社様から運用会社に投資家の情報、例えば保有資産、投資目的、投資経験、年齢等の投資家の属性の分布ですとか、販売員情報、これには販売員の担当顧客の属性ですとか、業界経験、役職等もあるかと思いますけれども、こういった部分を共有する枠組みや統一フォーマットの導入という点については賛同をさせていただきたいなと思います。

さらに、MiFIDにおきましては、運用者である外部委託先、こういったところも共同製造者と捉えられているようでございますから、日本においても運用会社、外部委託先、販売会社、この3者で取り組むことが望ましいのではないかと思います。

そして、最後に1つ質問というか、意見をさせていただければと思いますが、資料8ページに商品分類を御提示いただいております。非上場資産は価格変動性が上場資産よりも低い傾向にあるにもかかわらず左側に位置しています。確かにこれに加えて流動性リスクというのは別に存在しておりますけれども、どちらかというと真ん中に当たると思われておりますけれども、これはなぜ左側に分類されたのかというのは御意見いただけると幸いです。

以上です。

【神田座長】
ありがとうございました。

それでは、最後の点はいかがでしょうか。

【齊藤企画市場局市場課長】
最後の点、資料5の8ページ目のところの特殊な商品例の分類のところで、今、御指摘いただいたのは非上場資産組入というものが、価格変動が大きい商品・複雑な商品の中に入っているということについてでございますが、考え方によっては流動性が低いということで、真ん中の分類に当たるという、そういった分類もできるかと思っておりますけれども、ここでは非上場会社、スタートアップ等については、リスクが上場会社等に比べれば高いということも踏まえて価格変動が大きいということで入れさせていただいています。ただし、考えようによってはいろいろな分類の仕方があろうかと思っております。

【神田座長】
よろしゅうございますでしょうか。

ありがとうございました。それでは、オンラインで御参加の委員の方々に、この後御発言いただければと思います。順番はチャットをいただいている順で、武田委員、有吉委員、松尾委員、神作委員、松岡委員になります。その後、会場に戻って亀坂先生にお願いいたします。

それでは、オンライン御参加の武田委員、どうぞお願いいたします。

【武田委員】
資料の御説明や御発表をどうもありがとうございました。事務局から御説明いただきましたプロダクトガバナンスに関する基本的な考え方について違和感はございません。重要なことは3点あると感じました。

1点目は顧客本位の視点で、顧客をしっかり想定し、その下でよりよい商品組成と販売ができること。2点目は、その商品性が、皆さんもおっしゃるように、正しさだけではなく分かりやすく伝わり、結果として想定顧客にリーチし、これを運用会社と販売会社の間で、双方向で適切な情報交換がなされること。3点目は、仮に情報を見た結果として課題があるならば、商品組成や商品の説明を、既に販売してしまったものについてどこまでできるのかという課題があると思います。今後の組成という観点でも、データに基づきPDCAを回し、そのために定性的な情報だけではなく、定量データの見える化とエビデンスに基づいて双方向で確認、必要があれば情報提供のやり方を見直し今後の組成に生かしていくこと、が必要ではないかと思います。

先ほど既に前向きな取組が始まっているという御報告も頂き、大変心強く思いました。同時に、プロダクトガバナンスに関する基本的な考え方は、これを機に明確にし、運用会社と販売会社の双方で共有し、さらに改善が必要な点は意識改革を図っていくことも必要ではないかと思います。先ほども他の委員からの御意見でございましたように、目的と手段が逆転しないようにお願いしたいと思います。データをそろえ、そのフォーマットを埋める作業は、時間がたつと、形式的になりがちであることは否めません。目的はあくまでも顧客の最善の利益追求ですので、目的と手段が逆転しないようなメッセージの出し方、工夫として何かできることがあるのかどうか、その点の御検討をいただければありがたく思います。

以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、続けて有吉委員、どうぞお願いいたします。

【有吉委員】
有吉でございます。事務局説明資料による御説明、どうもありがとうございます。また、お三方の御報告も大変勉強になりました。

まず、資料5の事務局説明資料にまとめられているようなプリンシプルベースによりプロダクトガバナンスに関する規律づけを図ろうとするという全体的な方向性や整理の仕方、それから個別の提案について基本的には賛成するものであります。その上で総論的なコメントを1つと、各論的なコメントを3点申し上げさせていただきたいと思います。

まず総論的なコメントでございますが、先ほどの全体的な方向性は賛成と申し上げておきながら、ちょっと逆行するようなことを最初にコメントさせていただいて恐縮でありますが、規制のバランスを考えることも必要な領域であると思います。

今回の議論について、冷や水を浴びせる意図は全くないということを強調しておきたいところではあるのですが、特に特定のニーズがある顧客層を想定したような商品について、商品組成時、それから組成後に厳格な規律を求めて規制コストが過度に高くなってしまうことになりますと、業者の側がシンプルな商品ばかり組成するようになってしまうといった懸念もあるのではないかと危惧しております。

藤田委員がおっしゃっていたことと重なるところがあると思いますが、このような流れは、先般の資産運用に関するタスクフォースでの、投資運用業者の新規参入を促し投資運用サービスの多様性を高めようとした提言とも逆行してしまうのではないかと思います。そういった意味で、今回のプロダクトガバナンスに関する制度設計に当たっては、過度な規制がシンプルな商品を組成する方向に業者を促してしまうといった懸念があり得ることも踏まえて、バランスの取れたうまい規律になるよう期待したいと思っております。

それから、各論的なコメントでございますが、まず、資料5の8ページの商品類型的な部分との関係でございます。投資信託を含む仕組み性の商品の性質を考えるときに、一口に難しい商品と言っても、私は2つの類型があるのではないかと考えております。1つは、キャッシュフローが加工されていたり、条件が複雑であったりするような、そもそもの仕組みが複雑なタイプの商品というものです。それとは別に、仕組み自体はとてもシンプルであったとしても、オプションが組み込まれていたり、あるいは特殊な条件が付されていたりするといったような商品については、一般投資家にとって経済的にどう評価してよいかが非常に難しい、あるいは一定の知識がないとそういった評価が不可能であるといったタイプの難しさを有する商品もあるのではないかと思います。

この2つの難しい商品というのは、それぞれ捉え方や扱い方が違ってくるのではないかという気がしておりまして、特に後者のような難しい商品というのは、幾ら丁寧に説明を尽くしたとしても、知識とか経験の乏しい投資家には適切な投資判断を行うことができないといったものではないかと感じます。そういった意味で、想定顧客あるいは顧客に適した商品ということを検討する際に、こうした経済的な評価が難しいタイプの商品があるのだということは考慮すべき視点の一つではないかと思っているというのがコメントの1つ目であります。

それから、2つ目のコメントでございますが、資料5の12ページでは、商品組成後の対応として、販売会社による資産運用会社等との情報連携ということが強調されておりますし、既に何名かの委員から、販売会社と資産運用会社の情報連携の重要さということが強調されていたと思います。この点は、必ずしも商品組成後の対応だけではないと思いまして、一方で、資料5の9ページを拝見しますと、商品組成時の対応としても、資産運用会社から販売会社への情報提供という記述があるわけでありますが、販売会社から資産運用会社への顧客属性であるとか、顧客のニーズとか、こういった情報の提供ということが触れられていないように感じます。

この点、先ほど顧客の最善の利益というものが先にあるべきという野尻委員のコメントもございましたし、また、藤田委員からも情報連携の枠組みを構築しておくべきであるといったコメントもあったと思いますが、商品組成時というか、商品組成前というか、この段階の販売会社と資産運用会社の双方向の情報連携というのか情報提供というのか、こういったものはとても重要なのではないかと思うわけです。もっとも、事務局説明資料の記述は、一方通行のような表現になっているように感じましたので、もしそこに事務局として何か意図があれば御説明をお願いしたいと思いますし、私の意見としては、商品組成時あるいは商品組成前においても双方向の情報連携というものが重要ではないかと思っているというのが2つ目のコメントであります。

それから、3点目のコメントは、顧客に対する情報提供の項目についてでありまして、もうこれは言わずもがなということなのかもしれませんが、プロダクトガバナンスの文脈においても、その商品自体の情報をしっかり提供する、透明性を高めるということも非常に重要なポイントであると思います。この点、今回の事務局説明資料の中では、顧客に対する情報提供の項目として、運用体制に関する情報提供の在り方だけが言及されているように思いますが、これは商品に関する情報提供が重要でないということではなくて、今回はあくまでもプロダクトガバナンスとの関係での顧客に対する情報提供について議論をしているだけで、その結果、商品の内容や条件に関する情報提供については言及していないだけだと理解しました。ただ、そもそも商品自体の情報の提供をしっかりすること、商品の内容、条件についての透明性を高めることが、プロダクトガバナンスの観点からも非常に重要であるということは最終的に何らかの取りまとめをする際には一言言及いただいたほうがよいのではないかと思いました。

私からは以上でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。一部確認的質問というか、販売会社と運用会社の情報提供、双方向というのは別に販売後だけではなくて、販売時というか販売前もあっていいのではないかというところはいかがでしょうか。

【齊藤企画市場局市場課長】
御指摘のような双方向の情報連携といった観点について、事務局説明資料では商品組成前の段階で特に触れておりません。そこはそういった観点が不要だということを意図しているわけではございませんので、御指摘いただいた点も踏まえて今後の検討を進めていければと思います。

【神田座長】
どうもありがとうございました。双方向を排除する趣旨で9ページ辺りを書いているわけではないので、今おっしゃったようなことで御指摘も踏まえて検討させていただければと思います。どうもありがとうございました。

それでは、次にオンラインで、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】
松尾でございます。ありがとうございます。

まず、全体的なところですけれども、今回の資料でお示しいただいた方針に従ってかなり具体的に詰めておられるという印象ですので、これに基づいて、1歩、2歩を進めていただければと思います。

その上で3点ほど申し上げます。まず、事務局資料の8ページのところで、プロポーショナリティーの重要性が説かれたところですけれども、特に日本の場合は、投資信託については問題のない商品が大半かと思いますので、このプロポーショナリティーの考え方というのは非常に重要だと思います。その上で、ここに投資信託について見るとという形で分類、例えばこういう要素で分類できますと書いておられるんですが、投資信託に限らず債券ですとか、そういったものも当然ここでの基準で分類できると思います。PwCさんの御報告で商品横断的という言葉があったかと思いますので、債券だから、投資信託だからということで、評価のスタート地点が違うというようなことはないように、ここに書かれたリスク要素が共通のものは共通の規制をかけるということをぜひ明らかにしていただきたいなと思います。それが1点目です。

それから、プロダクトガバナンスの中では想定顧客の部分というのは非常に重要というのは既に何人もの委員から御指摘があったところかと思うんですけれども、ここについては、既に重要情報シート等で記載も求めているところですけれども、プロダクトガバナンスの考え方からすると十分な記載がされているものがなかなかないというところかと思います。可能であれば一歩踏み込んでこういうことを記載してほしいのですということを金融庁からメッセージとして出されてもいいのではないかという気がいたしております。

最後はモニタリングの部分でして、プロダクトガバナンスというのは基本的に業者さんの自主的な取組を尊重するというところが重要だと思います。そうしますと、監督官庁としては取組どおりに進んでいるか、進捗をモニタリングするということが重要かと思います。その中で、特に先ほどの想定顧客の話とリンクするんですが、想定顧客として書かれた人たちに売られているのか、想定顧客からはずれる人に販売されてないかというようなことが本当は重要なんだと思うんです。しかし、そこは組成会社と販売会社の連携というのがコストもかかるし、簡単なことではないんだということの御指摘もあったかと思います。とはいえ、組成する側も想定顧客と違う顧客層に販売されているのを見てていいということにはならないと思いますので、そういったところを重点的にモニタリングしていただいて、その進捗を公表するなりして、市場全体でモニタリングするような仕組みというのも御検討いただければと思います。

あと、それと似た部分ですけれども、リスクは高くはないんだけれども、同じような投資信託が多すぎるのではないかという問題も、あるところかと思いますので、その辺りも重点的にモニタリングする、あるいは市場参加者が進捗を見ることができるような仕組みというのをつくっていただければと思います。

以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作委員】
学習院大学の神作でございます。御指名ありがとうございます。

プロダクトガバナンスの考え方と論点について、欧州の動向ですとか、あるいは自社の例も含めて詳細な御紹介をいただき大変勉強になりました。ありがとうございました。

私は、プロダクトガバナンスの考え方は、顧客本位の業務運営の実質化、顧客の最善の利益に資する金融商品、金融サービスの開発、販売を実現することを究極的な目的にしていると理解しています。特にプロダクトガバナンスの考え方には、次の2点に大きな特徴があると思います。

第1に、個別の金融商品のリスクや内容及び個々の金融商品販売契約に着目するだけではなく、販売チャネルや販売戦略、具体的には助言を伴う販売かどうかであるとか、ポートフォリオ全体に組み込まれた金融商品の販売であるかどうかなどを問題にしている点にあると思います。このように、販売チャネルや販売方法も視野に入れて、顧客の最善の利益に資する金融商品の組成と販売がなされることを市場全体として実現しようとしている点に特徴があると思われます。

第2に、販売会社が自己の顧客層をよく把握、理解、分析し、そのうち商品開発や商品性の見直しに必要な情報を組成者に提供し、組成者と販売業者の間で建設的なコミュニケーションがなされることによって製販分離に伴う問題点を緩和するとともに、むしろ逆手を取って、そのメリットを増幅することが期待されていると思います。

この2点の特徴は、言わば市場全体を意識したもので、市場制度ワーキンググループで検討するのに誠にふさわしいテーマであると思います。具体的に、FD原則の改定を前提に検討が進められていると思いますけれども、原則でございますので、どこまで詳細に記載するかという問題はありますけれども、理想的には適切なプロダクトガバナンスの実施によって、特に次の3点が実現するとよいなと思います。

第1に、組成者も販売業者も含めて金融事業者は、ある金融商品の提供あるいは組成が適合しない消極的な対象市場について検討する必要があると思います。この商品は、このような類型の人には売るべきではないという部分をまず確定する必要があると思います。

第2に、そのような消極的市場の特定にとどまらず、特定の類型の顧客にとってより最善の利益に資する、より積極的な金融商品の組成販売を求めるものであると理解しています。特に複雑な金融商品や特殊性を有する金融商品に対しては、より詳細に想定顧客と対象市場を慎重に特定する必要があると思います。これに対し、一般的な商品であれば、詳細に想定顧客や想定市場を特定する必要はないと思います。

第3に、組成業者は想定顧客と想定市場を特定した上で、それを販売業者に伝達する必要があります。販売業者は組成業者の定める想定顧客と想定市場から原則として乖離してはならず、他方、組成業者の言うことをそのまま聞いて、無批判に受け入れて、それを頼りにしすぎることも、プロダクトガバナンスの考え方に反すると思います。販売業者は、自己の顧客層の深い理解に基づいて、さらに実際に販売した後の顧客の反応や対応などについて分析を加え、その結果については組成業者にフィードバックし、販売業者と組成業者の間で情報連携することが期待されていると思います。以上により、最終的には顧客の最善の利益に資する金融商品や金融サービスが開発、提供されることが目指されていると考えます。

以上に述べたことが実現されるように、資料5に指摘されているように、プロダクトガバナンスの体制整備、想定顧客、及び想定市場の特定、組成者と販売者の情報連携、金融商品についての評価と分析、顧客に対する情報提供といった各論点について、プロダクトガバナンスに係る原則を明らかにするという方向に賛成いたします。

最後に、一言だけ申し上げさせてください。プロダクトガバナンスの考え方は、EUから発したものと理解しています。EUにおけるプロダクトガバナンスを支えているのは、その前提として、Know Your Customerルールと、それから適合性原則、この2つが法令で明確に定められているということがあり、そのことを踏まえてこのプロダクトガバナンスの考え方が打ち出されてきていると理解しています。今回はプリンシプルについての検討ということでございますけども、必要に応じてプロダクトガバナンスの実効的な実施を実現するために必要であれば、場合によっては法令の見直しを行うことが必要になると思います。

以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、オンライン御参加の松岡委員、どうぞお願いいたします。

【松岡委員】
松岡です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

皆様いろいろ発言をされて、そのとおりと思うところも多いのですが、今の想定顧客のお話に関連して、第一に企業で働く人の観点ということで、KYCのお話は当然として、やはりキャリアプランとかキャリアステージ、及びそのライフプラン、ライフステージ、そしてリスクアペタイトに即した商品とその販売方法についてのモニタリングということがガバナンスとして有効に機能することを期待したいと思いますし、そうして信頼が醸成されることでさらに発展的な成長が望めるのではないかと思っております。

もう一つは、企業の観点からガバナンスコードがあり、それに対して投資家においてはスチュワードシップ・コードがあるということです。ここは多くの場合、上場株式について双方の立場で規定されているところが大きいと思いますが、先ほど野村アセットからのお話でPEファンドの商品のお話が紹介されましたように、昨今、特に海外において、プライベートクレジットにおけるファンドの存在、バンクが提供するというよりもプライベートファンドが提供するクレジット、デットというものが圧倒的に大きくなっているという現状もあります。海外投資家が日本において非常にインパクトを持つ状況は周知のとおりですが、ここについても今後、どういった取組や考え方でアプローチをするのかに注目することも必要ではないかと思いましたので、何かそのことについてコメントがある方がおられましたら、ぜひお願いいたします。

以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

今、松岡さんから最後に御指摘あった点について、もしどなたか御発言があれば承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。小池さん。

【小池委員】
ありがとうございます。御指摘いただきましたプライベートクレジットに関しましても、非常に大きなマーケットでありますし、魅力的な投資対象であると考えています。

ただ、一方で日本のマーケットにはまだ広くなじみがないものですから、資産運用の向上、商品バリエーションの拡大においては、プライベートデットも将来的に導入をしていきたいと思う一方で、あと、想定顧客の特定ですとか、情報の共有ですとか、こういったプロダクトガバナンスの考え方はより一層強く持っていかなくてはならないのではないかと考えています。

以上です。

【松岡委員】
どうもありがとうございます。特に、上場しているアセットマネジメント会社が、海外ではそういった商品を扱っているケースも多いようなので、おっしゃるとおり、非常にガバナンスが大事だと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、会場に戻りましてといいますか、亀坂先生、どうぞお願いいたします。

【亀坂委員】
ありがとうございます。

私は、事務局に用意していただいた資料5の、具体的にはスライド10枚目、12枚目、13枚目に特に関心がありまして、スライド10枚目の最初、箇条書の黒丸2個目ですね。新商品が中長期的な資産形成に資するか、短期的な投機に該当するようなものではないかということですね。長期間にわたって運用できるか。ここと、それに続くトピックに関心があります。

事務局に御質問したいのは、具体的には何年ぐらいを長期と考えていらっしゃるかということで、なぜこういった質問をするのかというと、株価の分析とかファンドの分析では、株価が上がっているときをデータの期間として抽出すると、シャープレシオとかすごく高く出て、株価の下落期間を意図的に取り出すとシャープレシオもマイナスになってしまうということで、実際にデータを扱って分析する側にとっては、期間の選択って非常に恣意性が入りやすいんですね。ですので、何か開示させるとなれば、例えば5年……、シャープレシオの計算だと普通は60か月の月次データで算出するんですけれども、直近の60か月のデータで計算してみるとか、そういうことも合わせて、定めないと恣意性が結局入っちゃうんですね。ですので、スライド10枚目とか12枚目、あるいは13枚目のところを具体化するには、まだまだ考慮すべきことが非常にたくさんあると思います。

資料5の13枚目にも、シャープレシオ等を勘案したレーティングを活用してとあるんですが、普通、シャープレシオとかが使われがちなんですけれども、シャープレシオにもそういった欠点があって、例えば、インフォメーションレシオというような指標を使うとか、どういった指標を使って、マーケット全体が下がっていると、マーケットを上回るリターン、超過リターンを計算して評価しなくちゃいけないんですけれども、そういったことをどこまで具体的にイメージされているのか。あるいは、これからそういったことを検討されるのかもしれないんですけれども、今どこまで念頭に置かれているのかということを質問させていただければと思います。

不芳ファンドを抽出するというのも賛成なんですけれども、そういった指標とか、どういった形で評価するかということが非常に影響してくると思うんですね。これまでも皆さんコメントされていたとおり、例えば、シャープレシオだのインフォメーションレシオを開示したところで、顧客がどこまで理解してくださるかとか、販売会社の方々がどこまで具体的に計算方法等を理解してくださるかという問題が出てきちゃうと思うんですね。ですので、小池様からもスライド10ページ目などでファンドレビューの評価方法とかに関して御説明をいただいたんですけれども、何か追加でコメントをいただけるようであればお願いしたいです。久保様も、例えばスライド10ページにシナリオ分析とか海外では実施されていたり、13ページには市場イベントが発生したときの臨時レビューとかありましたので、本当にきちんと答えようとすると膨大な時間を必要とするとは思うんですけれども、もしも、かいつまんで教えていただけるならば教えていただきたいと思います。

以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。事務局と、小池委員と、ゲストでお越しいただいている久保さんへの御質問だったと思います。

事務局から行きましょうか。お願いします。

【齊藤企画市場局市場課長】
まずは事務局へのご質問について、資料5の10ページ目で、商品組成時の対応における商品性について、長期間にわたって運用できるかといった視点のところにつきまして、長期間とはどの程度を念頭に置いているのかという御質問かと思います。ここで申し上げたいメッセージとしては、持続可能な商品なのかという観点が重要かと思っておりまして、我々のほうとして、例えば5年ですとか10年ですとか、特定の期間を継続することが少なくとも必要だといった一定の目線を示すようなものではないと思っております。むしろ、それを示すと、それが独り歩きしてしまいかねないと思っておりますので、少なくともそういった一律何年ということではなく、商品の組成をするに当たって、その運用を今後継続しようとした場合に、きちんと持続可能なものかどうか。そういった観点からの考慮がなされているのかといった点が重要かと捉えております。

【神田座長】
それでは、小池さん、どうぞ。

【小池委員】
ありがとうございます。

まず、短期・長期の定義は、恐らく投資家の皆様のリスク許容度ですとかライフサイクルによって変わって、それぞれ個人の方の定義があると思いますので、そこは投資家の皆様に委ねるとしまして、資料の10ページにありますとおり、昨年は3年、5年というスパンでファンドの評価を行っておりましたが、これだけでは不十分だということで、今年度から10年という枠組みを導入してファンドの評価を行ってまいります。

ただ、我々運用会社が取り組まなくてはいけないのは、3年、5年、10年といった点だけでなく、より一層長い期間の投資をしていただけるような、それに資する商品をしっかりと御提供していく。もう一つは、先ほどもコメントしましたけども、ファンド・レビュー・レポートを公表しましたが、なかなか表現が難しい、少し専門的になってしまっているという欠点もありましたので、こういったものをより広くの方にどうやって知っていただけるか、そして長く投資をしていただけるかということが、運用会社に求められていることではないかと考えています。

【神田座長】
ありがとうございます。

久保さん、いかがでしょうか。

【久保参考人】
久保です。ありがとうございます。

シナリオ分析だったり、市場イベントというところをどのように考えるのかについて、私見ですが、欧州の場合は細かく数字で規定しないと理解しています。なぜかといいますと、私の説明でもありましたとおり、これは情報に関する規制や商品に関する規制ではなくて、あくまでも商品組成会社と販売会社に対する、行為に関する規制という形になります。例えば仮に10年を長期と定義しますというように、当局が何か数字を決めてしまうと、結局、商品組成会社が数字をうまくずらすような形で新しい商品をつくってしまうとか、あるいは販売会社がぎりぎりのところでお客さんを誘導してしまうようなことが起こり得るので、欧州のプロダクトガバナンス規制では細かく幾らと規定せず、そこはあくまでも商品組成会社と販売会社に決めてもらいます。情報の非対称性もありますので、一番情報がある商品組成会社と販売会社に、まず顧客の利益にふさわしくないような商品が外に出ていかないかどうかモニタリングを求め、商品の承認プロセスの中で顧客の利益にふさわしくないような商品にストップがかかるような仕組みを設けてくださいというのが、欧州におけるプロダクトガバナンスのルールの根本にあるのではないかと私は理解しています。

【亀坂委員】
ありがとうございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、予定の時間を過ぎてしまっているんですけれども、少しだけ延長をお許しいただいて、森下先生、御発言をお願いいたします。

【森下委員】
簡潔に、3点だけ申し上げます。

資料9ページですけれども、販売会社への適切な情報提供ということが書かれています。ということは、現状、販売会社がどのような点で運用会社からの情報提供に課題を感じていたり、あるいはもっとこういうふうに提供してもらえればよりよく説明できるのにというようなことに課題を感じていらっしゃるのかということも、やはりぜひお話を聞いてみたいと思っています。今日は運用会社のお話をお伺いできましたので、今後、販売会社のお話もお伺いする機会があればというのが1点目です。

2点目は資料13ページで、長期低迷ファンドの図が書かれています。あと、プログレスレポートの抜粋を指摘して、まとめていただいた資料2の中でも、一つのキーワードとして不芳ファンドということが書かれています。全てのファンドのパフォーマンスが望ましいということは恐らくないと思いまして、こういった不芳ファンドというものに対してどう対応するのがいいのか、グッドガバナンスのようなものが考えられるのか、あるいは対応の点での課題があるのかというのは、一つ論点として取り上げてもいいように感じました。

最後ですけれども、情報提供に関する、資料の15ページ目です。ここで書かれているのは運用会社による情報提供ということだと思いますけれども、やっぱり、ネットが進んだ中で今後、理想的な情報提供における運用会社と販売会社の役割分担というのはどうなんだろうかというようなことは、一つ大事な視点かなと思いました。例えば、運用会社さんがすごく情報を提供していたとしても、販売会社さんがそれをリファーしていただけなければ気がつかれないままで進んでしまうかもしれませんし、場合によっては、販売会社さんが今提供されている情報でも、運用会社さんが提供することにしたほうが、よりよく消費者に伝わるようなものもあるかもしれない。そのような視点も検討に値するのではないかと思いました。

以上でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

これで、委員の皆様、全員の方からは御発言いただきました。ちょっと小池委員だけは御報告が中心になったので、しかし、やり取りの中で多少意見も言っていただいたということで、すみませんが、また必要に応じて次回御発言いただくことにしまして、今日はこのテーマの初回ですので、オブザーバーの方々からも御発言希望があれば承りたいと思います。すみません、もう少しだけ時間を延長させていただいて、大変申し訳ありませんけども、簡潔にお願いしたいと思います。

今、チャットを入れていただきましたので、ちょっと順番を確認いたします。日証協、投信協会、そして国際銀行協会ですね。その順で、日証協の飯山さん、どうぞお願いいたします。

【飯山オブザーバー】
ありがとうございます。飯山でございます。発言の機会をいただきまして感謝申し上げます。

顧客の最善の利益にかなった商品提供を確保するため、商品の組成者が実効性のあるプロダクトガバナンスを確保していただくための体制を整備することについては、私ども販売会社たる証券会社としても賛同いたします。

御提案されております販売会社と資産運用会社等の間の情報連携につきましては、顧客本位原則を踏まえた対応であると理解しておりますが、業者側にとっては新たな事務負担を含むコストが発生することにもなります。センシティビティーの高い顧客情報の提供であるため、今後の検討においては、この取組によって顧客の受けるベネフィット、つまり、最終的には運用リターンの向上や安定化といったこと、また、それに要するコストについても勘案しながら、対象商品の範囲や連携すべき情報の粒度、分量、頻度、連携方法などについて慎重に検討していく必要があると思います。

この点なども含めまして、資産運用会社のみならず、証券会社の意見も丁寧に聞いた上で御検討願えればと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、投資信託協会の杉江さん、どうぞお願いいたします。

【杉江オブザーバー】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。投資信託協会の副会長、杉江でございます。

このプロダクトガバナンスに係る意見につきましては、本日、資料6で投信協会の意見を提出させていただいておりますので、御一読いただければ幸いでございます。投信協会としましては、このプロダクトガバナンスの推進については大変重要な課題だと考えておりまして、本会でも昨年9月に考え方をとりまとめ、10月の資産運用タスクフォースにて私から説明させて頂きました。その中でも、このプロダクトガバナンスを一番大事なものとして書いているところでございます。

1点だけ、個別の問題でございますが、資料5の15ページ、顧客に対する情報提供の問題でございます。この運用体制につきましては、個々の投資信託等の商品性に応じた情報提供を行うべきと書かれていますが、この点につきましては賛成であり、アクティブ型の投資信託の運用体制について情報提供をする必要があると考えております。

但し、マネジャーの氏名開示についても言及されていますが、これについては、各運用会社のビジネスモデルを踏まえて検討する必要があると考えております。例えば、大変有名なスターマネジャーを雇っているような会社と、そういうスターマネジャーはいませんが、グループで運用するというような考え方を採用している運用会社というふうに、運用会社のビジネスモデルというのは様々ですので、特にその運用責任者の氏名などの個人情報については、運用会社において開示するかどうかを判断されるべきものだと考えてございます。

先ほど、有吉委員から、商品に対する情報提供も必要ではないかというような御意見をいただきました。やはり、誰が運用しているかというような情報よりも、運用会社としてどのように運用しているかという、運用に関するフィロソフィーですとか、哲学、姿勢を見える化していくことが、個人投資家に長期的、継続的な資産運用を普及させる視点から必要なのではないかと考えているところでございます。

以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
ありがとうございました。

それでは、国際銀行協会の平山さん、どうぞお願いいたします。

【平山オブザーバー】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。国際銀行協会です。

2点ほどコメントさせていただきます。資料5の13ページ、不芳ファンドに関する記述がございます。会社によっては、不芳ファンドに関する議論がなかなか深まらないと伺っております。その理由は、恐らく、不芳ファンドの定義が定まっていないからだと思われます。この点、各ファンドの提供する価値が明確にあれば、不芳ファンドの該当性判定をしやすくなると思いますので、ぜひ御検討いただければと思います。

あともう1点、同じく資料5のP15で、運用体制の開示について。仮に運用責任者に関する情報開示がルール化されるのであれば、個人情報を公表することで得られる投資家にとってのメリットと、公表によるネガティブな影響とを比べていただいて、慎重に検討すべきだと思われます。

私からは以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

私の不手際で、予定の時間を10分以上超過しまして、大変申し訳ございませんでした。皆様方から、大変貴重な御指摘を多数いただいたと思います。どうもありがとうございました。本日いただきました御意見等を踏まえ、次回以降の会合で、引き続き御議論を進めていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

次回の日程につきましては、委員の皆様方の御日程等を踏まえて、後日、事務局から連絡をさせていただきます。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。皆様、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問い合わせ先

金融庁 03-3506-6000(代表)

企画市場局市場課(内線:2410、2356)

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