OBP-601(censavudine, TPN-101)のC-9 ALS Phase2a試験の最終解析結果のお知らせ

2024/07/25  オンコリスバイオファーマ 株式会社 

2024年7月25日
オンコリスバイオファーマ株式会社

OBP-601(censavudine, TPN-101)の C-9 ALS Phase2a 試験の 最終解析結果のお知らせ

当社がTransposon Therapeutics, Inc.(以下、「Transposon 社」)と全世界のライセンス契約を締結しているLINE-1阻害剤OBP-601(censavudine, TPN-101)に関し、C-9 ALS(C9orf72変異型 筋萎縮性側索硬化症)及びC-9 FTD(同 前頭側頭型認知症)を対象にPhase2a臨床試験(以下、「本試験」)を実施しました。今回C-9 ALSに関して、本試験の最終結果を得ましたので、以下のとおりお知らせいたします。

なお、 本試験の投与期間は、全体で48週間です。前半24週間は400mg/日のOBP-601群とプラセボ群を設定した二重盲検試験であり、後半24週間は全ての患者に400mg/日のOBP601 を投与するオープンラベル試験として実施されました。

【結果概要】

1. OBP-601投与群は、C-9 ALS患者の死亡率と相関する呼吸機能の客観的な指標である、肺活量の低下率を投与開始後24週時点でプラセボ投与群と比較して約50%減少させました。

2. ALS 機能評価スケール(ALSFRS-R)を用いた評価では、病勢進行の抑制効果を示しました。

3. OBP-601 投与群では、NfL(神経フィラメント軽鎖)、NfH(同重鎖)、IL-6(インターロイキン-6)を含む神経変性及び神経炎症の主要バイオマーカーを低下させました。

4. C9 ALS/FTD 及び PSP(進行性核上性麻痺)における第 2 相試験を総合的に解析したメタアナリシスにおいて、OBP-601投与群で有意なNfL値の低下を示しました。

5. Transposon社は、OBP-601をC-9 ALSを対象とした第3相臨床試験に進める計画です。

C-9 ALS は、平均生存期間が2~3年の進行性かつ致命的な神経変性疾患であり、一般的に呼吸不全が原因で死に至ります。肺活量は、C-9 ALS 患者における呼吸機能の客観的な指標であり、死亡率と相関します。

既に発表したPSP患者でのPhase2試験と同様に、本試験でもOBP-601の高い安全性が確認されるとともに、疾患修飾薬としての臨床的有効性が示唆されました。OBP-601 を投与されたC-9 ALS 患者の被験者では、本試験開始時から 24 週後に肺活量の減少率がプラセボと比較して約50%低くなりました(LS mean(最小二乗平均値)変化率 -8.4% vs -16.5%)。プラセボ群の被験者を試験開始後24週から試験終了の48週までOBP-601の投与に切り替えたところ、試験後半24 週間における肺活量の低下(-7.2%)は前半のプラセボ投与時の半分以下であり、試験開始時からOBP-601を投与していた被験者群と同程度の臨床効果を示しました。その結果、両群の48週における肺活量の変化率は、類似の臨床試験から算出される自然経過の予想値より低くなりました。

C-9 ALS 患者の日常生活を把握する評価尺度であるALSFRS-Rは、OBP-601群とプラセボ群で本試験前半の24週まで同程度のスコア低下でした(最小二乗平均値 -7.2ポイント vs 6.7 ポイント)。しかし、試験開始時からOBP-601を投与されていた患者群の24週から48週までのALSFRS-Rの低下は、試験前半である24週目までの低下率の半分以下でした。また、試験開始時からOBP-601が投与されていた患者群のスコア低下は、試験前半・後半それぞれの期間におけるプラセボ群でのスコア低下率の半分以下でした。

全期間を通してOBP-601が投与されていた患者群の48週間全体におけるALSFRS-Rの低下は、自然経過の予想値よりも約40%抑制されており、長期治療による臨床的有用性が示されました。

OBP-601 を投与された C-9 ALS 患者の被験者では、投与開始後24 週の時点ではプラセボ群と比較して、神経変性疾患の主要バイオマーカーであるNfL値はより低値を示しました。

本試験後半(24週~48週)のNfL値の低下は、PSPのPhase2a試験で確認された変化と一致しています。更に、OBP-601は、NfH、IL-6、ネオプテリン、及びオステオポンチンを含む他の神経変性及び神経炎症のバイオマーカーにも効果を示しました。

OBP-601 の「PSP Phase2試験」及び「C-9 ALS/FTD Phase2試験」を総合的に解析したメタアナリシスでは、24週におけるOBP-601はプラセボに対し有意なNfL低下効果を示しました(p = 0.034)。異なる疾患の患者を評価した臨床試験において、一貫してバイオマーカーの改善が示され、これらの疾患に共通した LINE-1 関連の病態生理を示しているという仮説が裏付けられました。

【当社代表取締役社長 浦田泰生によるコメント】

「確固たる治療薬のない神経変性疾患領域で、新たな治療方法の兆しが示されたことはOBP601 が非常に多様な神経難病に対して効果を示す可能性が大きくなったと思います。OBP-601のLINE-1 阻害作用が NfL 値の低下に大きく影響し、メタアナリシスにおいても有意な低下効果を示し、更にC-9 ALS患者の呼吸機能の低下を抑制できたことは、臨床的に大きな意義があるものと考えます。今後実施される予定のPhase3試験の結果を注視していきたいと思います。」

【マサチューセッツ総合病院神経内科部長、ハーバード医科大学神経内科教授、本試験の代表研究者であるMerit Cudkowicz, M.D.によるコメント】

“The effects of TPN-101 across multiple key endpoints in this study are encouraging and represent an important step forward in finding a potential treatment for this serious illness. I look forward to advancing the development of TPN-101 and what that could mean for people living with C9-ALS."

(訳)

「本試験の複数の主要エンドポイントでTPN-101(OBP-601)が有効であったことは、重篤な疾患の新たな治療法につながる重要な進展であり、今後の結果に期待が持てます。TPN-101の開発が進められることはC-9 ALSの患者さんの日常生活の質を向上させることが出来ると思います。」

【Transposon 社の会長兼最高経営責任者であるDennis Podlesak氏のコメント】

“Today there are very limited treatment options for ALS patients and based on these results that show patients treated with TPN-101 experience impactful benefits across multiple functional and biomarker measures, we plan to rapidly advance TPN-101 into a Phase 3 registration study for the treatment of C9ALS. In addition to ALS, we are committed to advancing TPN-101 for the treatment of PSP, Alzheimer’s disease and other neurodegenerative and autoimmune disorders with the goal of providing new and innovative therapies that can significantly improve the lives of those battling these devastating diseases."

(訳)

「現在の治療ではALS患者に対する選択肢が限られている中で、複数の機能的指標およびバイオマーカー測定で有意義なデータが得られた結果を受け、C9-ALSの治療のためにTPN-101(OBP-601)を迅速に第3相登録試験に進める予定です。C9-ALSに加えて、私たちはPSP、アルツハイマー病、その他の神経変性や自己免疫疾患を対象にTPN-101の開発を進めることを計画しており、これらの重篤な疾患と戦う人々の生活の質を大幅に改善できる革新的な治療法を提供することを目指しています。」

Transposon 社は、今後開催される学会で本試験に関する詳細なデータを発表予定です。
なお、本件による2024年12月期の当社業績への影響はありません。

以上

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