電気自動車販売台数、かつてないペースで増加の見通しも、ネットゼロ実現にはさらなる政策措置が必要

2021/06/10  ブルームバーグ エル・ピー 

ブルームバーグNEFの直近予想によると、電気自動車の市場規模は、現在から2050年までの間に累積46兆ドルになる見込み

ロンドン 、ニューヨーク、2021年6月9日 ー 電気自動車(EV)市場の見通しはかつてないほど明るいといえるが、2050年までにネットゼロエミッションを目標に掲げる各国政府は、EV導入促進に向けてさらなる政策措置を講じる必要がありそうだ。ブルームバーグNEF(BNEF)により本日発表された調査リポート「電気自動車の見通し」によると、この目標達成には、EV普及の加速から、充電ネットワークの拡大、電池リサイクルの推進、大型トラック対象の新規制の整備、自転車・歩行などのアクティブな移動方法の促進まで、すべての分野において断固とした政策措置が必要になる見通しだ。


同リポートは、2040年までの道路輸送セクターに影響を与える経済・技術動向を部門・国別で詳細に分析。2021年版の今回、初めて世界の道路輸送由来のCO2排出量を、2050年までのネットゼロ実現に至る軌道に乗せるための要件を検証している。

また同リポートでは、乗用車、バス、二輪/三輪自動車の各部門において最近のEVの急成長が継続するばかりか一段と加速していることが、主に内燃機関車とその代替手段の経済性比較に基づいて示された。

BNEFの経済移行シナリオ(Economic Transition Scenario: ETS)に基づくと、世界販売台数のうちゼロエミッション車が占める比率は、2020年の4%から2040年までには70%に上昇する見通しだ。なお、当シナリオでは追加の政策措置を想定していない。中国、米国、欧州などのEV先進国では、これらの数値ははるかに高いが、新興国での普及率が低いため世界平均が押し下げられている。バス車両に関しては、ゼロエミッション車の販売台数比率が2040年までに83%に増加するとみられる。同期間に、小型商用車市場でゼロエミッション車が占める比率は1%から60%に上昇し、中・大型商用車市場では、現在のほぼゼロから30%強まで上昇する見通しだ。

BNEF次世代交通の部門長コリン・マッケラッチャーは次のように述べています。「これまでの電力輸送分野の成長は大きな成功事例であり、EV市場の将来は明るい。しかし、まだ12億台以上の内燃機関車が道路上を走り、これらがEVに切り替わるまでには時間を要する。今世紀半ばまでにネットゼロを達成するには、社会全体で直ちに取り組む必要があろう。特に、移行への取り組みがほとんど手つかず状態のトラックやその他大型商用車分野で重要だ。」

BNEFは、今年のリポートで新たに道路輸送セクターにおけるネットゼロシナリオ(Net-zero Scenario:NZS)を追加した。このシナリオでは、例えば乗用車部門の場合、ゼロエミッション車が2030年までに世界自動車販売台数の60%近くを占める必要があることが示された。これは2030年のEV年間販売台数が5500万台となることを意味する。経済移行シナリオでは、この数字は34%となり、販売台数では3200台に相当する。

マッケラッチャーの追加コメント:「自動車メーカーにとって2030年までのモデル更新サイクルは2度しかない。従って、より高いEV普及率実現に向けて投資を行うためには、かなり近い将来に政策に関する明確な見通しが必要になるだろう。これは、特にCO2排出量や燃費基準の厳格化がまだ実施されていない国に当てはまる。インフラの構築や消費者の関心を喚起するには、早期の規制導入が不可欠だ。」

BNEF商業輸送チームリーダーであるニコラス・ソロポロスの見解:「政策担当者は、ネットゼロには程遠い環境にある大型トラック部門の対策を早急に採る必要がある。トラックの燃費やCO2排出量に関するより厳格な基準の導入に加え、各国政府はトラックに対する脱炭素化の義務付けを検討する必要があるかもしれない。また、貨物分野に関して、大型トラックよりも早く電動化できる小型トラックを推進するインセンティブも検討する必要があるだろう。」

下のチャートによると、道路輸送部門のうち、新興国でよく使用されている二輪/三輪車とバス車両の2部門では、相対経済性において観察される傾向に基づけば、2050年までにネットゼロエミッションをほぼ達成できそうだ。

自動車と軽商用車の予想は「プラスの軌道」として表示されている。つまり、今後新たな政策措置がない場合でも、現在の傾向が続けば2050年までのネットゼロ達成に向けて大きな前進ができることが示されている。ただし、目標達成のタイムラインを加速する必要はあるだろう。最後のチャートでは、より大型の商用車部門の見通しがはるかに厳しいことが示されている。

図1:ゼロエミッション車販売台数– 経済移行シナリオとネットゼロシナリオの比較

出所:ブルームバーグNEF
注:「ETS」は経済移行シナリオ、「NZS」はネットゼロシナリオを表す。「LCV、MCV、HCV」はそれぞれ、軽・中型・大型商用車を意味する。「ゼロエミッション車」には、バッテリー式電気自動車(BEV)および燃料電池車(FCV)が含まれる。すべて値は全世界の合計値。

投資、電力需要、金属市場への影響

今回のリポートでは、道路輸送に関する経済移行シナリオとネットゼロシナリオの双方においてより広範な影響についても検証している。経済移行シナリオでは、世界全体のEV市場規模は現在から2030年までの間に累積7兆ドル、現在から2050年までの間に累積46兆ドルになると予想される。

一方、経済移行シナリオ下で、2040年までに3億900万台以上の充電設備を備える規模にまで充電ネットワークを拡張する必要がある。家庭用充電設備だけでも2億7000万台、公共用充電設備2400万台、オフィス用充電設備1200万台、バス・トラック用充電設備400万台を設置する必要がある。これら全ての充電設備設置には、今後20年間で5890億ドル以上の累積投資額が必要になる。これは現在の投資額から大幅に増加にするように見えるが、足元での再生可能エネルギーへの投資額と比べればわずかな増加といえる。再生可能エネルギーに対する投資額は、2020年だけでも3000億ドルだった。

経済移行シナリオでは、路上でのEVの充電に使用される電力により、2040年までに世界電力需要がさらに9%上昇するだろう。BNEFの予想によると、今後数十年の世界的な電力需要の伸びの大部分は、再生可能エネルギー容量を追加することで達成されることになりそうだ。

EVによるリチウムイオン電池需要は、2021年の年間269ギガワット時から、2030年には年間2.6テラワット時、2035年には年間4.5テラワット時まで、急増すると予想されている。経済移行シナリオの下では、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガンなどの電池用金属の需要も増大し、電池製造方法の選択に応じて各金属の需要が拡大すると思われる。しかし、掘削と精製の両方でさらなる投資が必要になるとしても、これら金属の供給は需要に十分対応できると予想されている。

ネットゼロシナリオでは、上記のいずれの数字もはるかに大きくなる。まず、2040年までに5億400万台の充電器設置に9390億ドルの投資が必要になる。電力需要については、追加的な必要電力量(メガワット時)が2040年までに14%に、2050年までに25%をわずかに超える水準に達することになる。EVの市場規模は2050年までに累計80兆ドルに達する。

電池用金属のリサイクルは、ネットゼロシナリオの達成に欠かせない要素だ。これが実現できない場合、リチウムの累計需要は2050年までに確認埋蔵量を上回ることになる。しかし、世界中で電池のリサイクルが実施されれば、主要なリチウム需要は確認埋蔵量を下回るだけでなく、完全循環型バッテリー産業が実現し、今世紀半ばまでに再利用リチウムの供給量が年間総需要を上回る可能性さえある。

2050年までに道路輸送部門のネットゼロエミッションを実現するための時間はそれほど残されていない。ネットゼロを達成するには、直ちに政策措置の拡大が必要となろう。車両と車両走行距離の需要を削減すると同時に公衆衛生上の便益にもなるため、公共交通機関および積極的な移動手段への投資は、ネットゼロに向けた複合的ソリューションの重要な要素といえる。同様に、地方自治体レベルで、特に商用車事業者を対象に、都市部へ入る車両に対する規制を厳格化することも、ゼロエミッション車に経済インセンティブを与えることにつながるだろう。

「電気自動車の見通し」に関する主な調査結果および詳細は、https://about.bnef.com/electric-vehicle-outlook/を参照してください。

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