医師の労働時間改善と学びの機会の拡大を両立する チャットカンファレンスの可能性

2023/08/08  株式会社 Medii 

医師の働き方改革と難症例の診断率向上の実現へ向けた新たな道筋

株式会社Medii(東京都新宿区、代表取締役医師:山田裕揮、以下Medii)は、未診断患者0を目指すプロジェクトの一環として、若手医師の臨床力とチームでの論理的課題解決力の向上を目的とした臨床推論カンファレンス「Medii臨床グランプリ」を開催しました。Medii臨床グランプリは、実際の臨床フローとタイムラインに合わせて設計し、医師たちのカンファレンスをチャットに置き換え、隙間時間で議論をする形式で実施しました。この新しいカンファレンススタイルが、医師の労働時間削減と学びの機会の拡大を両立できる可能性があることがわかりました。



医療現場におけるカンファレンスの実態


医療現場では、入院患者の診療に役立てるための情報共有や、日々の診療に活かすための学びの機会として複数の医師が一室に集い意見交換を交わすカンファレンスが行われています。医療現場におけるカンファレンスは、医療の質の向上や医師の成長、チームワークの強化に大きく寄与する重要な取り組みです。しかし、いくつかの課題も存在しています。

まず、自己研鑽のためのカンファレンスは診療時間終了後に行われることが多く、時間外労働の悪化を招いています。医療の質を保ちながら医師の働き方改革を実現するには、効率的な学びの機会の確保が求められます。

もうひとつの課題として、外来患者のカンファレンスが行われていないことが挙げられます。外来患者は主治医ひとりの判断に依存しており、複数の医師の知見が結集すれば見逃していた診断も発見できる可能性があります。しかし、医師の長時間労働が問題視されている中でカンファレンスを新たに設定することは現実的ではありません。

Mediiは、これらの課題に対応する新たなカンファレンススタイルでの臨床推論イベント「Medii臨床グランプリ」を企画し、医師の労働時間改善と学びの機会を両立するカンファレンスの検証を行いました。

Medii 臨床グランプリの概要


Medii臨床グランプリは、医師向けオンライン専門医相談サービス「E-コンサル」のグループチャット機能を用いた、チーム対抗の臨床推論カンファレンスです。エキスパート専門医が出題する難しい症例に病院や大学単位のチームで挑み、実際の臨床プロセスに基づいて鑑別診断や追加検査、結果が出るまでの初期対応方針などについて、E-コンサルのグループチャットで議論を行います。若手医師の臨床力向上のため、医学生および医師免許取得後10年目までの医師を参加対象としました。

【開催概要】
イベント名:第1回 Medii臨床グランプリ
開催日時:4/17(月)~4/23(日)の1週間、自由な時間に参加可能
参加費:無料
開催形式:オンライン(E-コンサル内)
対象:医学生および医師免許取得後10年目までの医師3~7名で構成されるチーム

【留意したポイント】
1. チーム制
チームでの論理的課題解決力の向上を図るため、実際の臨床現場と同様に、同じ院内で働く医師とチームを組み、協力しながら答えを導き出します。
2. 現場の臨床プロセスに即した出題形式
患者の次の外来日を想定した1週間という期間で開催しました。論文やガイドラインでの調査やチームメンバー以外の医師への相談も可能な、実際の臨床フローを意識し再現しました。検査結果が得られるタイムラインも考慮した出題方式を取りました。
3. チャットコミュニケーションの検証
医師の労働時間削減の可能性を検証するため、隙間時間で議論に参加し、チャットでカンファレンスが代替できるか検証を行いました。

検証結果


■隙間時間でも鑑別診断に至るカンファレンス
非同期型のチャットカンファレンスによって、難渋症例に対しても正確な診断と適切な治療方針を示すことができたチームが複数ありました。

■チャットカンファレンスのメリットと柔軟性
同じ時間に集まって行うカンファレンスとは異なり、全員が議論に参加しやすいというメリットがありました。チャット内で議論するため、論文やガイドラインの共有もスムーズで、理解を深めるためには効果的です。

■症例経験や知識の重要性と診断率向上への影響
難渋症例にも関わらず、チーム内の医師がその疾患を知っていたことでディスカッションせずに診断にたどりついた事例がありました。臨床グランプリを通して診断困難な症例を経験することで、実際の臨床で出会ったときの診断率向上に期待できます。また、外来患者の診断であっても、院内カンファレンスを行うことで診断がつかずに苦しむ患者を一人でも減らせる可能性があることがわかりました。

監修のエキスパート医師のコメント



群星沖縄研修センター長 徳田安春 先生
今回私が出題した症例は、診断困難症例のうち、リアルワールドのケースの中で実際に診断に苦労した症例を選びました。比較的難解なケースを選ぶことによって、参加チームの推論能力の識別が可能になったと思います。臨床現場で皆が困っている診断困難症例について、全国の医師の集合知によって診断にたどり着けるための活動を行っているMediiの取り組みを、私は高く評価しています。真に患者のためになる活動です。スキルの向上には、チャレンジ精神が大切です。「臨床グランプリ」を定期的に行うことによって、臨床推論のスキルアップに繋げてほしいと思います。


まとめ


医療の進歩に伴い専門化・細分化が進み、医師が全ての専門領域に精通することは極めて困難になっています。特に、希少疾患・難病領域においては患者数が限られるため十分な経験が積めない構造的限界があります。
「誰も取り残さない医療」の実現を目指すMediiは、今後も「Medii 臨床グランプリ」を通じて、若手医師の臨床力とチームでの論理的課題解決力の向上を推進していきます。未診断症例や診断に至らずに亡くなってしまうような剖検症例をゼロにするという社会的な課題解決に貢献していきます。

第1回 Medii臨床グランプリ開催レポート:https://medii.jp/magazine/CLINICALGP1-report-202308

次回の臨床グランプリは年内の開催を予定しています。

E-コンサルとは


E-コンサルは患者の診断や対応に悩む医師が、近くにいない専門領域の専門医に症例相談ができる完全無料のオンラインマッチングサービスです。診断が難しい症例や自身の専門外の症例をE-コンサル上のチャット機能を通じて匿名で相談が可能です。
各領域の医師にご推薦いただいた1,000名以上のエキスパート専門医に協力いただき、相談医からの質問内容に応じて、最適なエキスパート専門医へ通知が届きマッチングされます。地域偏在の課題が大きく知見が行き渡っていない免疫難病や希少疾患を中心に全ての専門領域を扱っています。
詳細:https://medii.jp/e-consult

会社概要


Mediiは「誰も取り残さない医療を」をミッションに掲げ、特に課題の大きな希少難病を中心とした専門医知見をオンラインで拡げる事業を展開しています。代表の山田は現役のリウマチ膠原病専門医であると同時に免疫難病患者でもあり、医師と患者の双方向の視点で医療構造を本質的に仕組みから変えていきたいという思いが、ラテン語で本質を意味するMediiという社名に込められています。どんな地域に住んでいてもより良い医療を全ての人が受けられる世界の実現を目指し、医療の本質を追求した取り組みを進めています。

会社名:株式会社Medii
所在地:東京都新宿区新宿5丁目14-12-202
設立:2020年2月20日
代表者:代表取締役医師 山田 裕揮
事業内容:専門医知見シェアリングサービスの提供
URL:https://medii.jp




※E-コンサルは、株式会社Mediiの登録商標です。

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