パチンコホール、黒字企業が半数超えるも二極化が鮮明に 2024年は「新台導入」と「新紙幣対応」が重荷

2024/06/19  株式会社 帝国データバンク 

パチンコホール経営法人の実態調査(2023年)

帝国データバンクでは、企業概要ファイル「COSMOS2」(147 万社収録)の中から、2018 年~2023年の各年において業績が判明している「パチンコホール経営法人」を抽出。法人数や売上高合計、損益について調査・分析した。前回は2023年6月22日に発表。


<調査結果(要旨)>
売り上げは下げ止まりの兆しも、法人数は大幅減少

3年ぶりに黒字法人が半数を超えるもコロナ禍前の水準には戻らず


※調査機関:株式会社帝国データバンク、2023年度までの業績
※調査結果は下記HPでも公表している
https://www.tdb.co.jp/report/index.html

2023年はパチンコホール運営業者にとって、コロナ禍で悪化した事業環境が改善した1年だった。特に新しくリリースされたスマートパチスロ(スマスロ)のヒットにより、遊技を楽しむファンがホールに戻るなど集客に苦戦していたホールの救世主ともなった。

しかし、業界全体からみればコロナ禍で大幅に落ち込んだ来客者数の改善は一部の業者に限られ、ファン離れの傾向について抜本的な解決には至っておらず、業界が抱える大きな課題の一つとして積み残されたままだ。
2023年は過去最大の倒産<(株)ガイア、民事再生法、負債943億5500万円>が発生したほか、コロナ禍で赤字に陥り、新台入れ替えなど設備投資資金を賄えず、廃業を決断する業者も散見された。しかし、倒産件数は集客力の回復や事業譲渡などが進み、件数は24件(前年は34件)と減少に転じている。


売り上げは下げ止まりの兆しも、法人数は大幅減少

2023年、売り上げが判明したパチンコホール経営法人数は1336社となった。2022年より172社(11.4%)少なく、2018年の2192社から5年間で856社、約40%減少した。

2023年の総売上高は11兆1525億円となり、対前年比で1.9%減少した。コロナ禍の2021年は、休業要請等、通常通りの営業活動ができなかったことにより対前年比23.6%の大幅減少となったが、経済活動が回復するにつれて減少幅は縮小している。

社数が大幅に減少する一方、総売上高が微減にとどまっているのは、店舗の売却・買収が進み運営法人の淘汰が進んでいること、コロナ禍の収束やスマスロのヒットにより売り上げを回復させている業者が一定数あることが考えられる。



3年ぶりに黒字法人が半数を超えるもコロナ禍前の水準には戻らず





2023年の損益が判明したパチンコホール経営法人の損益状況を分析した結果、黒字企業の割合が52.5%となった。コロナ禍で業績が悪化し、2021年には約6割の法人が赤字となっていたが、業績は徐々に回復し、3年ぶりに黒字法人が過半数を超えた。
 

2024年業界見通し

2023年、パチンコホールの倒産は前年比で30%減少した。コロナ禍では、緊急事態宣言の発出による営業自粛や風評被害などから事業環境が悪化していたが、行動制限が解除されてから多くのホールが業績を回復させたことが倒産に至る法人が減少した要因の一つと言える。

しかし、2024年は廃業が増加、淘汰が進む可能性がある。スマスロだけでなくスマパチでも話題の台が多くリリースされるほか、7月に予定されている新紙幣の発行によりホール事業者はサンド(貸出機)識別機の交換、新しいサンドの購入を迫られることになり、多額の設備投資が不可欠となるため、手元資金の有無が業績の明暗を分け、二極化が鮮明となる一年になりそうだ。長年にわたるパチンコ・パチスロ需要の減少によって資金繰りに余裕のあるホール運営法人は少なく、ガイアの民事再生を契機として金融機関のなかには「パチンコホールに対する見方をさらに厳しくする」といった声もあり、新たな資金調達の可否が鍵となりそうだ。

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