博報堂生活総合研究所アセアン「アセアン生活者研究2024」を発表

2024/06/27  株式会社 博報堂DYホールディングス 

アセアン家族の10年変化―「先進的な行動スタイル」と「伝統的な家族観」を織り交ぜながら独自の価値観を形成する「Weaving Family」へ

博報堂生活総合研究所アセアン(以下、生活総研アセアン)は、『The ASEAN Family(アセアンの家族)』をテーマにアセアン生活者の意識・行動に関する調査・研究を行い、インドネシア・ジャカルタにて開催した「アセアン生活者研究 2024」フォーラムにて研究結果を発表いたしました。

2014年に設立された生活総研アセアンは、今年10周年を迎えます。2014年当時も今回と同じく「The ASEAN Family」をテーマに研究を実施。テクノロジーの発展やSNSの急速な普及によって、常時オンラインで接続しながらリアルタイムでコミュニケーションを楽しんでいるアセアン家族の姿を紹介しました。

それから10年の間にアセアンの家族はどのように変化したのかを見つめるため、アセアン6か国(タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシア、シンガポール)で定量調査と家庭訪問調査を行いました。結果からは、家族ファーストが根底にありつつ、「新興価値(グローバルの情報や価値観に触れ、新たに取り入れた価値)」と「伝統価値(あらためて自身のルーツを見つめ、強化または取り戻しつつあるアセアンらしい価値)」をバランス良く織り交ぜながら独自の価値観を形成しているアセアンの家族の姿がみえてきました。



<研究結果のポイント>
■「家族ファースト」のアセアン
自国において家族の重要性がどう変化していくと思うかきいたところ、「重要性が増す」と回答したアセアン生活者は日本に比べて30ポイント近く高い。

アセアン家族における「新興価値」(グローバルの情報や価値観に触れ、新たに取り入れた価値)
【キャリア意識の向上】
「なりたい男性像/女性像」をきいたところ、「キャリアでの成功を目指す」と回答したアセアン生活者は、10年前から男女それぞれ10ポイント以上上昇。

【家族サイズは「拡張」から「凝縮」へ】
今後「子供の数が減る」「同居家族の人数が減る」と答えたアセアン生活者は6割以上に。

【個の自由も尊重】
「一人で過ごす時間を増やしたい」「自由がほしい」というアセアン生活者の願望は10年間で大きく増加。

アセアン家族における「伝統価値」(あらためて自身のルーツを見つめ、強化または取り戻しつつあるアセアンらしい価値)
【家族内のパワーバランス】
アセアンは日本と比べ、夫の権限が強い傾向。家族内のヒエラルキーをある程度明確にすることで、秩序や助け合いの関係を維持している。

【「家族ファースト」が社会的信頼のベース】
アセアンでは「家族との関係が良好な人は、『良い人』である可能性が高いと思う」と回答した人が約7割に。「良い家族を持っていること」が「良い人の証」「社会の信用手形」として機能しているため、より良い家族にしたい、家族をより良く見せたいと考え行動する傾向。

■アセアンの家族像:「Connected Family」から「Weaving Family」へ
テクノロジーの発展と普及により、さまざまな国や文化の価値観に触れることで、アセアン生活者は受容すべき「新興価値」と、大切に守り抜くべき「伝統価値」を取捨選択しています。
今回の調査を通じ、家族ファーストが根底ありつつ、異なる価値を織り交ぜる(=Weaving)ことで生まれる、アセアン家族の新しく強靭な価値観や生活スタイルがみえてきました。重視する要素に合わせて家族ごとに独自のパターンで編み上げられた価値観は、不安定さを抱えるアセアン社会の中で、家族を包み込んで守る役割も果たします。

図:2014年発表『Connected Family』と2024年発表『Weaving Family』の特徴

「価値観を再構築する」「新しい概念を受け入れながら、これまでの伝統価値を見直し再評価する」といった柔軟性の高さは、アセアン生活者の特性のひとつです。このようなアセアン家族における「新興価値と伝統価値のリミックス」の流れは今後も続くと生活総研アセアンは考えています。


<参考資料:調査結果の詳細>
■「家族ファースト」のアセアン
・自国において家族の重要性がどう変化していくと思うかきいたところ、「重要性が増す」と回答したアセアン生活者は、日本に比べて30ポイント近く高い。



■アセアン家族における「新興価値」
【キャリア意識の向上】
・アセアン生活者に「なりたい男性像/女性像」をきいたところ、「家庭を最優先する」と答えた人は男女ともに10年で減少した一方、「キャリアでの成功を目指す」と答えた人は男女それぞれ10ポイント以上上昇。
・「家族の時間を犠牲にしてでもキャリアで成功したい」と答えたアセアン生活者はこの10年で約7ポイント上昇。



【家族のサイズは「拡張」から「凝縮」へ】
・自国における将来の家族変化についてたずねたところ、「子供の数が減る」「同居家族の人数が減る」と答えたアセアン生活者は6割以上に。



【個の自由も尊重
・アセアン生活者の「一人で過ごす時間を増やしたい」「自由がほしい」という意向は10年間で大きく増加。



■アセアン家族における「伝統価値」
【家族は将来への保証】
・「自分や家族の未来をよく計画して準備している」と回答した人は、アセアンでは28.1%と日本より15ポイント以上高く、社会保障が十分とは言えないアセアン各国において、家族で助け合うことが重視される。
・また、結婚した/家庭を持った理由・きっかけとして、アセアンでは「経済的に準備ができた」がトップに。






【家族内のパワーバランス】
・夫婦間の権限や決定権のバランスについてきいたところ、アセアンでは日本と比べて夫の権限が強い傾向。
・「助言を求めたり意見を尊重する人/存在」について、アセアンでは「両親」が約7割でトップ。子供は親を尊敬し老後の面倒を見るべきとされているが、親としても子供たちを適切に導いていくことが求められる。このような「立場に合わせた役割が付与される共助関係」が、アセアン社会・家族の調和のために必要な要素となっている。






【「家族ファースト」が社会的信頼のベース】
・アセアンでは「家族との関係が良好な人は、『良い人』である可能性が高いと思う」と回答した人が約7割に。「良い家族を持っていること」が「良い人の証」「社会の信用手形」として機能しているため、より良い家族にしたい、家族をより良く見せたいと考え行動する傾向。
・次の世代に伝えたいこととして、アセアンでは「家族の価値観や伝統」がトップ、次いで「宗教的な慣習、行事」。「良い人・良い家族」を育むために、日本では「人に迷惑をかけない」などの倫理観を大切にした教育がなされる傾向にあるが、アセアンでは「家族(一族)の伝統や価値観」「宗教的な慣習」を次の世代に継承していくことが重視されている。



<HILL ASEAN「アセアン家族定量調査2024」調査概要>
調査方法:インターネット調査
対象地域:タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、シンガポール、日本
対象者:20-49歳男女、SEC A-C、計4,900サンプル
実査時期:2024年1月

■博報堂生活総合研究所アセアン(Hakuhodo Institute of Life and Living ASEAN)
2014 年、アセアンの生活者を研究する企業内シンクタンクとして設立、2017年3月タイ現地法人化。
アセアン生活者の洞察・提言を通し、アセアンにおける企業のマーケティング活動をサポートしています。
・所在地:タイ・バンコク都
・研究・活動内容:アセアン各国視点での調査・分析、アセアン各国でのフォーラム開催、生活総研アセアン Web サイトの特設ページにて、本調査結果の詳細と研究内容の解説および、今後のマーケティングへの示唆などをご紹介しています。
https://hillasean.com/

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