【技術開発】建物外周壁開口部の遮音検討BIMアドインツール

2024/07/17  鉄建建設 株式会社 

遮音検討業務の効率化、最適化の実現に向けて


写真-1 騒音測定状況

鉄建建設株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:伊藤泰司)は、集合住宅やホテルの設計に際し、室内の静ひつ性を確保するために実施される、遮音検討業務の効率化、最適化の実現に向け、建物の外周壁に含まれる窓や換気口(以後「外周壁開口部」)の遮音仕様を検討するBIMアドインツールを開発しました。

本ツールの導入により、BIMモデルと音源の位置、音源の音の大きさに関する情報があれば、BIMソフトウェア(以後「BIMソフト」)上で建物外周壁開口部の遮音仕様の検討を行えるようになります。また、本ツールは、外周壁開口部の遮音仕様の検討にあたって実施する室内騒音の予測計算に必要な情報を、計算条件設定時にBIMモデルから自動的に取得するようにシステム化しました。これにより、業務上の課題であった図面からの情報の読み取りなどを簡略化し、作業時間の短縮と業務の効率化を実現しました。
開発の背景
集合住宅やホテルの設計では、一般に室内の静ひつ性を確保するために、仕様書などで外部騒音が室内に透過して生じる騒音の目標値が規定されることから、基本計画時に敷地周辺の外部騒音を調査し(写真-1)、室内で生じる騒音の目標値を満足する、外周壁並びに外周壁開口部の遮音仕様の検討を行います。

従来、これらの検討は、パソコンの表計算ソフトを用いて数式に従い行っていましたが、寸法や面積など計算に必要な情報を図面から読み取るのに時間を要し、さらには、技術者の不足などに対する課題を抱えていました。 

BIMアドインツールの概要

図-1 計算のフローチャート
BIMアドインツールとして、1.ユーザーによるBIMモデル内への音源パーツ、測定点パーツの配置から、2.予測対象室の指定及び用途の指定、3.予測対象室外周壁開口部の遮音仕様の設定、4.室内騒音レベル目標値の設定、5.予測計算の実行、6.計算結果の判定までをシステム化し(図-1)、これまで表計算ソフトを用いて図面を並べて机上で行っていた予測計算を、BIMソフト上で連携して行うものとしました。





BIMアドインツールの特徴
本ツールによる室内発生騒音の予測計算では、BIMモデルから建物を構成する各パーツの寸法や面積などの情報を取得する他に、音源の音の大きさを推定するために、音源の位置情報と予め計測した任意の測定点における音の大きさとその測定点の位置情報を入力します。そのため、本ツールでは、音源パーツと測定点パーツを設置するコマンドを用意し、それぞれデータを入力してこれらのパーツをBIMモデルに配置することにより、予測計算に必要な全ての情報をBIMソフト上で取得できるようにしました(図-2)。

図-2 音計算コマンドと検討モデルの例


図-3 計算結果表示例                  (上:目標値を満足、下:目標値を超過)
計算結果は、計算値が目標値を満足する場合は、ダイアログの計算値欄にセルの背景を「白」にして表示され、目標値を超過する場合はセルの背景を「赤」にして表示されます(図-3)。 室内騒音の予測計算は、目標値を満足する外周壁開口部の遮音仕様が定まるまで、繰り返し実施します。




計算結果は、エクセルファイルでの保存が可能であり、計算過程の一覧を表として提示することができるようにしました。

予測計算精度と業務の効率化
本ツールの予測計算精度は、従来の表計算ソフトによる場合と同等であることを確認しました。また、予測検討に要する作業時間は、従来に比べて1/10以上短縮され、業務の効率化が図れていることを確認しました。
今後の展望
今後は、社内での使用実績を積み上げ、遮音設計業務の最適化を目指します。

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鉄建建設株式会社
鉄建建設株式会社様は、1944年に日本の陸運輸送力の確保と増強のため鉄道建設専門の国策会社として設立されました。以来、全国交通網の構築、地域振興、人々の住みやすいまちづくりに貢献しながら、事業を拡大しています。

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