「受配電設備向けスマート保安」の社内実証を開始

2024/09/26  三菱電機 株式会社 

遠隔監視とデータ活用により、工場やビルなどの受配電設備の保守業務効率化を検証


当社の「受配電設備向けスマート保安」の概要

 三菱電機株式会社は、工場やビル、データセンターなどに設置される受配電設備の遠隔監視とデータ活用による保守業務効率化の実現に向けた「受配電設備向けスマート保安」の社内実証を2024年10月1日から開始します。
 電気設備の現場では、電気保安人材の高齢化や人手不足に加え、再生可能エネルギー設備の増加により、2030年には第二種電気主任技術者が約1,000人不足すると予想されています(※1)。また、1980年代から1990年代に設置された電気設備の多くは、一般的に設置後20~25年とされている更新推奨時期を超過して使用されているため、突発的な故障が起こるリスクが高く、一度故障が発生すると他の設備を含む長期的な操業停止や予期せぬ費用の発生が懸念されています。このような課題の解決に向けて、経済産業省は、IoTやAIなどを活用して、電気設備を自動で遠隔監視し、異常兆候を検出して事故を未然に防ぐ「スマート保安」を推進しています。
 当社は今回、受配電システム製作所(香川県丸亀市)にて、カメラと複合センサを活用して受配電設備の遠隔監視を行い、取得したデータの活用による保守業務効率化の実現に向けた「受配電設備向けスマート保安」の社内実証を行います。従来、人手で実施していた法定点検や自主点検(※2)業務をオンラインで見える化し、センサから得られたデータを活用して、内在化している異常兆候を抽出・早期除去することで、電気設備の安全かつ安定的な操業の実現可能性を検証します。また、当社が保有する劣化診断技術と得られたデータを組み合わせて、電気設備の余寿命を診断し、対象機器の劣化速度を分析することで、メンテナンスや更新について、計画的かつ適切なタイミングでの実現可能性も検証します。
 当社は今回の社内実証で得られる成果を活用し、電気保安人材の高齢化や人手不足および電気設備の高経年化による突発的故障リスクなどの社会問題の解決に貢献していきます。さらに、カーボンニュートラルの推進と安心・安全な設備運用、経済合理性を満たすエネルギー最適化に総合的に応えるE&Fソリューション(※3)の創出を目指します。

■社内実証の概要
1.カメラと複合センサの活用による遠隔監視で、保安業務の効率化を検証
・受配電盤内に設置したカメラで盤内の状態を撮影するとともに、温湿度センサや塵埃センサで盤内の温度や湿度、汚損量を遠隔で常時監視
・カメラや各種センサなどから取得したデータをSCADAで収集、解析し、それらをオンラインで画面表示することで「見える化」を実現、従来人手で実施している法定点検や自主点検業務の効率化を検証
・受配電設備に設置するカメラ、複合センサについては、ユニット化したり、マグネットを使用することにより簡単に取り付けが可能

保守支援者向け画面表示 (動力センター:Power Center)

遠隔監視用画面表示(電気室内全体)


遠隔監視用画面表示(受配電盤個別)

2.取得したデータを常時監視することで、異常兆候の抽出・早期除去による電気設備の安定操業の実現可能性を検証
・デジタル化により電気設備の健全性を診断し、内在化している異常兆候を抽出・早期除去することで、電気設備を安全かつ安定的な操業の実現可能性を検証
・異常の例として、電気設備の外部の相対湿度が100%に近い場合などは電気設備内で結露が発生する可能性が増加。結露発生による地絡や短絡の事故防止に向け、センサで電気設備内外の温度や湿度を測定し、絶対湿度を常時監視することで、結露が発生する可能性が高い状態を判断し、発生前に異常として通知
・通知を受け、電気設備内のヒーターや除湿器を動作させるなどの対策を施すことで、結露の発生を未然に防止可能

結露発生の未然防止の流れ

3.劣化診断技術とデータを組み合わせて電気設備の余寿命を診断し対象機器の劣化速度を分析、メンテナンスや更新の計画的かつ適切なタイミングでの実現可能性を検証
・温度や湿度のほか、ガス、塵埃、音、変異などのさまざまなセンサから得られたデータに対して、当社が持つ「MT法(※4)による劣化診断技術」などを応用することで、電気設備の余寿命診断を実現する技術を確立
・対象機器の劣化速度を分析することで、メンテナンス・更新について、計画的かつ適切なタイミングでの実現可能性を検証

■今後の予定・将来展望
 今回の社内実証で得られる成果を活用し、需要家を対象とした「受配電設備向けスマート保安」のサービスを2025年4月に提供開始予定です。また、段階的にスマート保安のサービス対象を熱や水、空気などの動力系設備に広げていくことで、工場などの設備運営を最大限効率化するソリューションの開発を行い、カーボンニュートラルの推進と安心・安全な設備運用、経済合理性を満たすエネルギーの最適化に取り組みます。将来的には、当社独自のデジタル基盤「Serendie(TM)(セレンディ)」と連携したE&Fソリューションの創出を目指します。

■商標関連


※1 出典:経済産業省 電気保安人材に係る制度見直しとスマート保安技術の導入促進について
※2 法定点検:日本の電気事業法や電気設備基準などの法律に基づき義務付けられた定期的な点検
自主点検:法定点検に加え企業や施設運用上のリスク管理のために行う任意の点検
※3 Energy & Facility(エネルギー & ファシリティ)ソリューションの略称
※4 「マハラノビス・タグチシステム」と呼ばれる、品質工学の多変量解析/パターン認識手法

<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 受配電システム製作所
開発戦略プロジェクトグループ 新事業創出グループ
〒763-8516 香川県丸亀市蓬莱町8番地
TEL 0877-24-8023

他の画像

関連業界