主製品としての化学製品のみならず、副産物や化学反応に伴うエネルギーからの収益マネジメントも重要
製造方法が化学反応をベースにしている都合上、ひとつの化学品を生産すると副産物が一定量発生する。例えば苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)は食塩水(塩化ナトリウム水溶液)の電気分解により生成するが、食塩水を分解することで、苛性ソーダだけではなく塩素や水素が常に一定の比率で生産される。したがって、主製品のみならず副産物の生成量と需要量を管理し、ギャップ(インバランス)が生まれた場合には、輸出入や他商品へ転換するなどの施策が取られる。さらに、副産物をベースに、より付加価値を高めた誘導品を生産して販売することもある。化学品は様々な産業分野で直接的・間接的に使用されることから需要のすそ野は広く、副産物が収益の柱となることも珍しくない。したがって、副産物含めて包括的に需要を予測し、生産量を管理することが重要である。加えて、化学反応中に生まれるエネルギーに対しても、別の生産プロセスの熱源に活かすなど、モノ(製品)とエネルギーの両方で可能な限りロスが出ないよう、管理することで収益と利益を最大化することが求められる。
化学工業品は大きく5つに分類される。原油や植物などを原料とする有機化学製品は、様々な産業の原料として経済発展に貢献している
以上のように化学品は特殊な商品となるが、より具体的な理解をおこなうべく化学品の具体例を示したい。化学工業品は経済産業省「工業統計」に則ると「化学肥料」「無機化学製品」「有機化学製品」「油脂加工品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料」「その他化学工業品」の5つに分類ができる。
化学肥料については、名の通り肥料として用いられる、植物の栄養三要素である”窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)”を中心とする商品群で、主に農業向けに出荷される。無機化学製品は、主として炭化水素を含まない化学品が分類され、苛性ソーダ(NaOH)、塩酸(NaCl)、カーボンブラック(C)、食塩(NaCl)、酸素(O2)、水素(H2)などが挙げられる。特に苛性ソーダについては各種化学反応で汎用的に使われることから生産比率が高い。有機化学製品は主に炭化水素で構成されるものであり、プラスチック素材の原料となるエチレン(C2H4)やプロピレン(C3H6)、ベンゼン(C6H6)などに代表される環式中間物、さらにそれらから合成されるプラスチック、合成ゴムなどが含まれる。また、油脂加工品等は、広義には有機化学製品に分類されるが、より最終製品に近い化学品として分類されている。その他では、土木現場で利用されるダイナマイトなどの火薬、農業で利用される農薬などが存在し、化学工業品は多種多様な利用用途を持つ品目であることが分かる。
特に有機化学については、プラスチックや繊維の原料として経済発展に大きな貢献をしている。原油からナフサを抽出し、それを化学分解して基礎製品にしたうえで、さらに酸化・燃焼、還元、中和・付加重合・縮合重合などの反応によって誘導品が生成され、各産業に展開している。
バリューチェーンのいずれの要素においても環境負荷が発生しやすく、環境への配慮・リスク管理は必須
近年は、化学品自体、もしくはその生産プロセスにおける環境負荷への取り組みが盛んである。化学メーカーのバリューチェーンは、研究開発から始まり、調達、製造、保管とあらゆる要素において環境汚染の可能性と隣り合わせの業界である。環境汚染を最小限にとどめるために、特定の固体・液体・気体などの状態(三相)を維持するために保管温度や圧力、湿度などを緻密に管理したり、毒性・発火性・引火性などを有する各種危険物を適正に取り扱うために、危険物取扱者などの専門性の有する人材や特殊な施設や輸送車輛などを配置する事業者がほとんどである。フロンなどに代表される、特に環境負荷の高い物質に課された法令規制などの遵守も強く求められている。