2022/12/22

がん治療成績の把握、患者の治療説明での活用を目的としたがん累積再発曲線を描画する簡易ノモグラムツールの開発(情報通信総合研究所)

株式会社 情報通信総合研究所 

報道発表 報道

【報道発表】がん治療成績の把握、患者の治療説明での活用を目的としたがん累積再発曲線を描画する簡易ノモグラムツールの開発(東京大学医科学研究所/公益財団法人がん研究会 有明病院/株式会社情報通信総合研究所)

2022年12月22日更新
株式会社情報通信総合研究所

本日、以下のとおり報道発表をいたしました。

2022年12月22日

東京大学医科学研究所
公益財団法人がん研究会 有明病院
株式会社情報通信総合研究所

(報道発表資料)

がん治療成績の把握、患者の治療説明での活用を目的とした
がん累積再発曲線を描画する簡易ノモグラムツールの開発

株式会社情報通信総合研究所と公益財団法人がん研究会 有明病院は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」研究(以下、「AIホスピタル」という。)において、バイオバンク・ジャパン(以下、「BBJ」という。注1)の臨床情報を統計処理して利用した、がん累積再発率を描画する簡易ノモグラムツール(注2)を開発しました。

本研究開発により、医師による治療成績の把握や患者への治療説明等を行う際に、自院の臨床情報を秘密分散・計算システムに連携することにより、自院のがん累積再発率と全国規模のBBJの臨床情報を対照データとして比較することが可能となり、また分析結果のグラフによる描画も簡便にできるようになりました。
なお、この研究開発の基盤技術には、NTTグループが持つ秘密分散・秘密計算(注3)を用いています。

1. 研究体制

<「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」課題における、
秘密分散・計算システムを使った医療情報の保存と利活用に関する研究>
● AIホスピタル サブテーマD
・公益財団法人がん研究会 有明病院
・AIホスピタル サブテーマA
・株式会社情報通信総合研究所
・株式会社エヌ・ティ・ティデータ経営研究所
・NTTコミュニケーションズ株式会社

<BBJ試料・情報を活用した「AIホスピタルシステム」の構築とその活用に関する共同研究>
東京大学医科学研究所
●AIホスピタル サブテーマA
・株式会社情報通信総合研究所
・株式会社エヌ・ティ・ティデータ経営研究所
・NTTコミュニケーションズ株式会社

図1:本研究開発の体制と各機関の役割

2. 背景

近年、がん治療の分野では個別化医療が著しく進んでおり、医師には治療成績の的確な把握と、データに基づく患者への分かりやすい説明が求められています。

株式会社情報通信総合研究所と公益財団法人がん研究会 有明病院では、これまでに戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」の共同研究において、医師等による簡易な治療成績の把握や患者への治療説明での活用等を目的に、簡易ノモグラムツールを開発してきました。この簡易ノモグラムツールは、自院の臨床データベース等から秘密分散・計算システムに臨床情報を連携することで、患者の状態(年齢、生活習慣、病期、がんのサブタイプ等)に応じたがん累積再発率等の分析結果やグラフを簡易に描画できるものです。

これまでに開発してきた簡易ノモグラムでのグラフは、自院の連携データのみから分析され、描画されていたため、全国規模のデータ等との比較ができないことが課題となっていました。

そこで全国規模のコホート調査データであるBBJのデータを利用して比較対照データを示すことで、全国規模の治療成績をもとに説明・比較できる機能を開発しました。

3. 研究手法と成果

BBJの有する約27万人の臨床情報から胃がんに関連する患者の臨床情報を抽出し、秘密分散・秘密計算技術を用いて情報を秘匿化した状態で、全国規模の比較対照データとしてがん累積再発率を分析しています。また、この比較対照データと自院のデータをグラフ描画により簡易に解析・把握できるようになりました。

これにより、全国規模の治療成績の把握や自院の胃がんの治療成績との比較が、容易にできるようになりました。

がん研究会 有明病院では、客観性の高いデータと比較しながら、患者の個々の状態に応じた統計情報をグラフで描画して示すことにより、患者への治療説明が分かりやすくなる等の効果が出ています。

4. 今後の期待

本研究開発は、胃がんの領域において行われましたが、今後乳がん、肺がん、食道がんにおいても同様にBBJの臨床情報を用いた開発を随時行う予定です。

本研究開発で構築された簡易ノモグラムツールを、広く医療機関にも利用していただくことを予定しています。

参加医療機関が増加すると全国規模のデータ数が大きくなり、日本人のがん治療成績をより確かに推定できるようになります。

補足説明

(注1)バイオバンク・ジャパン

バイオバンク・ジャパン(BBJ)は、東京大学医科学研究所に設置されている日本最大の疾患バイオバンクです。本バンクは、文部科学省のリーディングプロジェクトとして2003年に設置され、これまでに約27万人の患者さんの参加協力により、64万本以上の血液(血清)試料と約27万人分のDNA試料と臨床情報を収集しています。BBJではこれらの試料・情報を保管するとともに、日本のルール(法律やガイドラインなど)に従って多くの研究者に提供しています。またBBJは、研究成果の公開を通じて、国民の健康・福祉に貢献しています。
本研究プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)によるゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(ゲノム研究バイオバンク)「利活用を目的とした日本疾患バイオバンクの運営・管理」の支援を受けて実施しています

(注2)簡易ノモグラムツール

ある関数の計算等を簡易に行うためのグラフ等を示しています。本研究では、ブラウザ画面で抽出条件を指定することにより、生存時間分析の一つであるKaplan-Meier法を用いたがんの生存曲線や、がんの累積再発曲線を簡易に表示することができます。また、臨床医等からのフィードバックを貰い随時改修を行いながら、現場ニーズに沿ったツールを開発しています。

(注3)秘密分散・秘密計算

秘密分散とは、データに特殊な符号化を施して複数の断片に分割することで、個々の断片からは情報が漏れず、幾つかの断片が消失しても復元が可能な技術です。また、秘密計算とは、データを暗号化したまま計算できる技術です。データの通信・保存の際の暗号化に加え、データの計算過程も保護することができます。秘密計算の利用により、診療情報の中身を見ない状態での統計処理が可能になります。
本研究開発では、BBJの臨床情報とがん研研究会 有明病院の臨床情報は別の秘密分散ストレージに保管・管理し、秘密計算プラットフォームへデータ連携・格納することで、秘密計算を行います。
(引用:日本電信電話株式会社 Webページ「秘密分散技術の初の国際標準にNTTの秘密分散技術が採択」 2017年10月、
https://group.ntt/jp/newsrelease/2017/10/23/171023a.html

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

研究開発関係者・機関窓口

◆AIホスピタル事業全般に関すること

株式会社情報通信総合研究所 社会公共コンサルティング部 AIホスピタル事業
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-14-10 アーバンネット日本橋ビル
メール:aih-pr@icr.co.jp

◆本研究開発に関すること

株式会社エヌ・ティ・ティデータ経営研究所
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-9 JA共済ビル9階
電話:03-5213-4110
メール:ai-hospital@nttadata-strategy.com

◆秘密計算・秘密分散技術に関すること

NTTコミュニケーションズ株式会社 スマートワールドビジネス部
スマートヘルスケア推進室
〒105-8019 東京都千代田区大手町2-3-1 大手町プレイスウェストタワー33F
メール:aihospital-ss@ntt.com

◆研究開発フィールドに関すること

株式会社公益財団法人がん研究会 有明病院 医療情報部
〒135-8550 東京都江東区有明三丁目8番地31号
電話:03-3520-0111
メール:oguchi@jfcr.or.jp

◆BBJの臨床情報に関すること

バイオバンク・ジャパン事務局
〒108-8639 東京都港区白金台 4-6-1 東京大学医科学研究所内
電話:03-5449-5122
メール:shiryo_h@biobankjp.net

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