企業における生成AI活用の格差浮き彫りに-規模別・業種別の利用状況・課題と今後の展望-(情報通信総合研究所)

2024/11/14  株式会社 情報通信総合研究所 

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【報道発表】企業における生成AI活用の格差浮き彫りに -規模別・業種別の利用状況・課題と今後の展望-

2024年11月14日更新
株式会社情報通信総合研究所

株式会社情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:神谷直応)は、生成AIの企業における導入状況や活用に関するアンケート調査を実施しましたので、その結果をご報告いたします。

サマリー

生成AIの導入は大企業を中心に進んでおり、業種別では情報通信業や金融業, 保険業などで活発化している一方、卸売業, 小売業やサービス業では導入率が低い傾向が見られます。また、生成AIの活用における課題として、ノウハウ不足や正確性の確認の難しさが指摘されており、今後の導入促進に向けて、社内でのユースケースの共有や教育が重要なポイントとなっています。

企業における生成AIの導入・利用率

生成AIが注目されて2年近くが経過し、企業では様々な用途での活用が拡大していますが、従業員規模別に生成AIの導入・利用率を比較すると、従業員規模が大きいほど導入・利用が進んでいる状況が確認できます(図表1)。特に、全社で導入している企業の割合は、従業員数が1,000人以上の企業とそれ以外で倍以上の差が見られます。

図表1:企業の生成AI導入・利用率(従業員規模別)
(注)本調査における生成AIの定義:AI技術を駆使して、人が作り出すような文章/テキスト、画像/写真、音声/音楽、動画などのデジタルコンテンツを生成する技術

業種別に生成AIの導入・利用率を比較すると、情報通信業や金融業,保険業で導入・利用が進んでいる一方、卸売業,小売業や各種サービス業では10%前後となっており、業種によってかなりの差が見られます(図表2)。

図表2:企業の生成AI導入・利用率(業種別)
(注)アンケート調査の回答数が1,000以上の業種のみを掲載しています。

課題

生成AIを利用する中で感じている課題を確認すると、活用ノウハウや知識不足(54.0%)が最も多く、正確性が確認できない、または確認に時間を要する(50.1%)、著作権侵害などのリスク(35.5%)と続いています。

また、生成AIの利用をさらに進める上での改善点については、社内事例/ユースケースの共有(50.8%)が最も多く、プロンプト/テンプレートの共有(43.8%)、社内教育/研修の実施(41.6%)と続いています(図表3)。

図表3:生成AIを利用している従業員の状況(課題、改善点)
(注)回答対象は現在生成AIを利用している人(n=3,347)。

今後の展望

今回実施したアンケート調査の結果から分かるように、企業の生成AI導入・利用率は従業員規模や業種によってかなり差があります。総務・人事や企画、営業など業界横断的な利用シーンがあることを踏まえると、まだまだ普及拡大の余地が大きいと言えます。今後は、中小企業やサービス業を中心に利用が遅れている企業への導入をいかに進めていくのかを考える必要があり、全体を底上げするという観点でも、政府として企業の導入を後押しするような具体的な推進策が望まれます。

また、生成AIの活用は、既存ビジネスの強化(業務効率化等)から新商品・サービスの創出といったビジネスの中核へと進んでいくとみられます。そのような状況では、ハルシネーション対策の重要性が増し、汎用型の生成AIではなく、業務や事業領域に合わせてカスタマイズされた専門的な生成AIが重要になると見込まれます。日本企業はこれまでもソフトウェアを中心に自社専用にカスタイマイズして利用する傾向があり[1] 、これが諸外国と比較した場合の強みとなることも期待されます。

図表4:生成AIの活用ステップ

[1] 総務省「令和元年版情報通信白書」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd112210.html

参考:従業員の生成AI利用率

個人として業務の中で生成AIを利用している割合は8.4%。部署別に比較するとミドルオフィス(経営企画、商品・サービス企画・開発、広報、マーケティング等)での利用が進んでいます。

参考図表1:従業員の生成AI利用率(部署別)
(注)直近1年間において、業務の中で生成AIサービスを利用したかどうかを尋ねています。

参考:生成AIを利用している従業員の満足度

生成AI利用に対する満足度については、全体的に満足(非常に満足、やや満足)が多いものの、個社特有の情報や専門用語等を多く扱うと想定される「コールセンター」や「法務・知財」部門で働く従業員はやや不満に感じる割合が多くなっています。

参考図表2:生成AIを利用している従業員の満足度(職種別)
(注)回答対象は現在生成AIを利用している人(n=3,347)。

本報道発表資料(PDF)

PDF資料をダウンロード (1.73MB)

アンケート調査の概要

調査対象:全国の就業者
調査手法:Webアンケート調査
調査期間:2024年8月29日~9月6日
有効回答数:112,021名(従業員規模別、業種別の回答数は下表のとおり)

【株式会社情報通信総合研究所】 https://www.icr.co.jp/

1985年6月設立。情報通信分野をコアとしたシンクタンクとして、専門的な調査研究、コンサルティング、マーケティング、地域情報化等にかかわる調査・提案などのビジネスを展開しています。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社情報通信総合研究所
ICTリサーチ・コンサルティング部
鷲尾 哲
E-mail : sa.washio@icr.co.jp

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