2024/02/09

「最低賃金引上げの影響に関する企業調査(2023年)」について

株式会社 常陽銀行 

2024 年 2 月 9 日

「最低賃金引上げの影響に関する企業調査(2023 年)」について

常陽銀行(頭取 秋野 哲也)の子会社である常陽産業研究所(代表取締役社長下山田 和司)は、このたび「最低賃金引上げの影響に関する企業調査(2023 年)」を実施しましたので、その結果を下記のとおりお知らせいたします。

当社は、地域のシンクタンクとして各種調査研究および総合金融サービスの提供を通じ、今後とも、地域の課題解決のためのさまざまな情報発信および取り組みを展開し、地域の成長と活性化に貢献してまいります。



1.調査結果

当社では、2023 年 10 月の地域別最低賃金(以下、最低賃金)の改定を受けて、茨城県内企業を対象に、賃金の見直し状況や、最低賃金改定による経営への影響などに関する調査を実施しました。アンケート結果によると、最低賃金の改定を受けて賃金を引き上げた企業は、全産業で 54.6%(前年比+4.2 ポイント、以下 pt)でした。また、改定後の最低賃金(953 円)の捉え方については、「低すぎると思う」が「高すぎると思う」を 10.9pt 上回りました。なお、調査結果の詳細は、別紙を参照してください。

2.調査の特徴

本調査は「茨城県内主要企業の経営動向調査」の特別調査として、2023 年 12 月 1 日~25 日に実施したものです。有効回答数は 194 社(製造業 82 社、非製造業 112 社)でした。

なお、経営動向調査では、従業員数 300 人以上の大企業から 30 人未満の企業まで、茨城県内企業を幅広く調査対象としています。

以 上

( 別紙 )

【最低賃金引上げの影響に関する企業調査(2023 年)】

最低賃金の改定を受け、賃金を「引き上げた」企業は 5 割超 ―時間額 953 円は「低すぎる」が、「高すぎる」を 10.9pt 上回る―

今回調査の概要

2023 年 10 月、都道府県ごとに定められた地域別最低賃金(時間額)が、全国加重平均で1,004 円、茨城県で 953 円へ改定された。引上額は、全国加重平均で 43 円(同 4.47%)、茨城県で 42 円(引上率 4.61%)と、ともに 3 年連続で過去最高を更新している(参考図表)。

こうした状況を受け、当社は 2023 年 12 月、茨城県内企業を対象に、改定に伴う影響などに関するアンケート調査を実施した。なお、最低賃金の改定に係る定例調査は、今回で 3 回目となる。

改定に伴う賃金の見直し状況については、全産業で「全員が改定後の最低賃金を上回っており、賃金は見直していない」が 39.7%と最も多く、次いで「改定後の最低賃金を下回る従業員がおり、最低賃金を超えて賃金を引き上げた」と「改定後の最低賃金を下回る従業員がおり、最低賃金まで賃金を引き上げた」がともに 20.6%、「全員が改定後の最低賃金を上回っており、賃金を更に引き上げた」が 13.4%、「わからない」が 5.7%となった(図表 1-1)。

回答を組み合わせてみると、最低賃金の改定を受けて賃金を「引き上げた」とした企業※1 は54.6%と、2 年連続で前年水準を上回った。業種別にみると、製造業が 63.4%、非製造業が 48.3%と、製造業が非製造業に比べて 15.1pt 高く、その差は前年(2022 年)比で大幅に拡大している。また、改定後の最低賃金を「下回る従業員がいる」※2とした企業は 41.2%と、こちらも 2 年連続で前年水準を上回った(図表 1-2)。最低賃金の引上額が 3 年連続で過去最高を更新する中、既存の賃金設定が改定後の最低賃金を下回るケースが増えてきているものと推測される。

改定後の最低賃金を「下回る従業員」については、全産業で「パートタイムの非正社員」が 89.0%と最も多く、次いで、「フルタイムの非正社員」が 16.4%、「正社員」が 13.7%などとなった(図表 2)。なお、業種別(製造業・非製造業)、従業員規模別(30 人未満・30~99 人・100~299 人・300 人以上)のいずれの区分でも、「パートタイムの非正社員」が 1 位であった。

こうした中、改定による経営への影響については、全産業で「多少は影響する」が 38.1%と最も多く、「影響はない」が35.4%、「大いに影響する」が21.2%、「わからない」が5.3%となった(図表3-1)。

回答を組み合わせてみると、「経営に影響する」とした企業※3 は 59.3%と、2 年連続で前年水準を上回っている(図表 3-2)。業種別にみると、製造業が 66.3%、非製造業が 54.1%と、製造業が非製造業に比べて 12.2pt 高く、その差は前年(2022 年)比で 4.7pt 拡大した(図表 3-1)。

※1 「全員が改定後の最低賃金を上回っており、賃金を更に引き上げた」、「改定後の最低賃金を下回る従業員がおり、最低賃金を超えて賃金を引き上げた」、「改定後の最低賃金を下回る従業員がおり、最低賃金まで賃金を引き上げた」の合計

※2 「改定後の最低賃金を下回る従業員がおり、最低賃金まで賃金を引き上げた」と「改定後の最低賃金を下回る従業員がおり、最低賃金を超えて賃金を引き上げた」の合計

※3 「大いに影響する」と「多少は影響する」の合計

最低賃金の改定が「経営に影響する」企業が実施している、あるいは実施予定の対応については、全産業で「人件費以外のコスト削減」が 37.3%で最も多く、次いで「残業時間・シフトの削減・抑制」が 35.5%、「対応は行わない」が 27.3%などとなっている(図表 4)。上位 3 項目を業種別にみると、製造業では「人件費以外のコスト削減」(35.8%)、「対応は行わない」(32.1%)、「残業時間・シフトの削減・抑制」(30.2%)、非製造業では「残業時間・シフトの削減・抑制」(40.4%)、「人件費以外のコスト削減」(38.6%)、「商品・サービス価格の改定」(28.1%)と、項目・順位とも異なった。業種間の差が最も大きかったのは「商品・サービス価格の改定」(製造業 15.1%、非製造業 28.1%)で、製造業では非製造業に比べ、最低賃金の改定に伴う人件費の上昇分を販売価格に転嫁する動きが弱い様子がうかがえる。

行政などに求める支援策については、全産業で「税金や社会保険料などの負担軽減」が 60.9%で最も多く、次いで「雇用維持にかかる補助金・助成金の拡充」が 42.4%、「生産性向上に向けた設備投資の支援」が 23.9%、「取引価格の見直しや価格転嫁の支援」が 19.6%などとなった(図表 5-1)。なお、「特にない」との回答は 2 年連続で減少しており、最低賃金の引上幅が大きくなる中で、支援を必要とする企業が増えているものと推測される(図表 5-2)。

なお、今回が初となる改定後の最低賃金(953 円)の捉え方に関する調査結果は、全産業で「適正だと思う」が 71.9%、「低すぎると思う」が 19.5%、「高すぎると思う」が 8.6%となった(図表 6)。「高い」と捉える企業よりも、「低い」と捉える企業の方が 10.9pt 多くなっている。

「高すぎると思う」とした企業からは、「経営を圧迫する」(食料品製造業)、「人件費の増加分は、価格転嫁が受け入れてもらえない傾向にある」(金属部品製造業)といった、切実な声が聞かれた。

一方、「県南は都内の最低賃金(1,113 円)と比較される」(運輸・倉庫業)、「千葉県(1,026 円)との格差から、人材確保が難しい」(食料品製造業)など、隣県に見劣りしない最低賃金の設定を望む声や、「物価高のためやむを得ない」(運輸・倉庫業)、「953 円ではフルタイムで働いても生活が困難」(卸売業)など、従業員の生活防衛のため引き上げるべき、との声も多くあがっている。

今回のアンケート結果から、茨城県内では

①最低賃金の改定を受けて賃金を「引き上げた」企業は 5 割超、2 年連続で上昇

②「経営に影響する」企業は 6 割弱、2 年連続で上昇/行政などに支援を求める企業も増加

③改定後の最低賃金の捉え方は、「低すぎる」が「高すぎる」を 10.9pt 上回るといった状況にあることが明らかとなった。物価高や人手不足を背景に賃上げの機運が高まっている中、先行きは、生産性向上やコスト削減等、賃上げの原資となる県内企業の収益向上が進むか、また、国などによる労働政策、産業政策などの一体的な見直しが進展するかが注目される。

公式ページ(続き・詳細)はこちら
http://pdf.irpocket.com/C8333/KKjE/UST3/edc1.pdf

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