2024/07/17

学校法人会計基準の諸課題に関する検討ワーキンググループ(令和5年度~)(第1回) 議事録

文部科学省 

学校法人会計基準の諸課題に関する検討ワーキンググループ(令和5年度~)(第1回) 議事録

1.日時

令和6年3月13日(水曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

中央合同庁舎7号館東館(文部科学省)14階 高等教育局会議室
※オンライン会議とハイブリッド形式

3.議題

  1. 本ワーキンググループの運営について
  2. セグメント情報における配分基準に関する論点の整理
  3. 本ワーキンググループのスケジュールについて
  4. 学校法人会計基準の在り方に関する検討会 報告書について

4.出席者

委員

飯田委員、稲垣委員、佐野委員、須賀委員、菅原委員、南委員、村松委員

文部科学省

篠原私学経営支援企画室長、畑参事官補佐、今井専門職

5.議事録

【畑参事官補佐】 定刻になりましたので,始めたいと思います。配付資料の確認と会議運営上の留意点について,私から説明させていただきます。今回は対面で行います。なお,関係者がオンラインで傍聴しております。配付資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,事前に送付させていただいておりますが,印刷したものを机上にセットしております。配付資料は1から5,参考資料1と2を配付しております。それから,ファイルに閉じた形で机上配付資料をセットしております。資料が足りないなどの不備がございましたら,事務局にお伝えください。
会議運営上の留意点ですけれども,本日は委員全員に出席いただいております。本日の会議は非公開でございますが,会議資料と議事録につきましては,委員の皆さまに確認の上,後日文部科学省のウェブサイトで公開する予定でございます。なお,参事官の村上ですが,急な要件のため遅れております。私からは以上です。
それでは,令和5年第1回の学校法人会計基準の諸課題に関する検討ワーキンググループを開催いたします。本日はお忙しい中,本検討ワーキンググループにご出席いただきありがとうございます。後ほど主査の選出を予定しておりますが,それまでの間は恐縮ではございますが私のほうで進行させていただきます。会議の開会にあたりまして,篠原室長よりご挨拶を申し上げます。
【篠原室長】 本日,村上参事官が遅れてまいります。私は本件を担当している私学経営支援企画室の篠原と申します。本日はお忙しい中,こちらのワーキングにご参加いただきありがとうございます。また委員をお引き受けいただいたことに関しても,心よりお礼申し上げます。
本ワーキンググループの趣旨を簡単にご説明させていただきます。ご存知のとおり,昨年5月の私立学校法改正に伴い,学校法人会計基準は私学振興助成法に基づく補助金の適正配分から,ステークホルダーへの情報開示という形へ主な目的が変わりました。これを受けて,「学校法人会計基準の在り方に関する検討会」というのを昨年立ち上げ,検討を進めてまいりました。報告書は1月に出ております。その報告書の中で,現行の内訳表の代わりにセグメント情報を公表していきましょうということになってございます。また,このセグメント情報に関しては,今まで補助金の適正配分を前提にやってきた基準ではなくて,原則として経済実態を,より適切に表す配分基準が望ましいということにもなりました。しかし,こちらの経済実態を,より適切に表す配分基準が現在ございません。したがって,まずはこれを定める必要があるということで,検討の場としてこのワーキンググループを立ち上げさせていただいたという次第です。
また,会計基準の在り方に関する検討会の報告書では,別途継続的な議論が必要というふうにされている論点もございますので,そちらも追って対応していきたいというふうに考えてございます。検討の方向性に関しましては,現行の学校法人会計基準が広く学校法人の会計実務に定着しているということ,そしてこれまでも学校法人の特性を踏まえながら,基本的な考え方を蓄積しながら外部報告を目的とする観点からの改正などが行われてきています。学校法人会計基準の在り方に関する検討会では,こちらの特性を踏まえつつ,現行の学校法人会計基準を前提にしながら,より開示に適した会計基準とするために必要な改正を行うというスタンスで検討を行ってまいりました。今回のセグメント情報の配分基準の策定に関しましても,この基本的なスタンスは維持しつつ,経済実態をより適切に表すという方向性と,多様な学校法人の現場がある中で,その対応可能性とのバランスにも配慮しながら検討を進めていくということが重要ではないかと考えております。委員の皆さまには,学校法人における財務処理,計算書類の作成等の実務や慣行などに関するご知見をいただきながら,活発にご議論いただければと思っておりますので,ご協力のほどよろしくお願いいたします。
【畑参事官補佐】 議事次第をご覧ください。本日の議事は,審議事項が2つあり,本ワーキンググループの運営についてと,セグメント情報における配分基準に関する論点の整理です。また,報告事項として,本ワーキンググループのスケジュールについてと,学校法人会計基準の在り方に関する検討会報告書について,となっております。
はじめに審議事項の(1)ですが,本ワーキンググループの運営要領を策定し,その後要領に即して,主査の選出をさせていただきたいと考えております。まず事務局より資料1の説明をさせていただきます。その上で資料2の要領について説明をさせていただき,本ワーキンググループの運営要領を決定できればと思います。
【篠原室長】 それでは資料1と資料2について説明をさせていただきます。資料1は,今年の2月に高等教育局長の決定として定めた文書になります。1ポツの目的の部分をかいつまんで説明させていただきますと,挨拶でも触れました学校法人会計基準の在り方に関する検討会で報告書をまとめたのですが,セグメントの原則的な配分基準として定める「経済実態をより適切に表す配分基準」の検討が別途必要であるとされているとともに,継続的な議論が必要とされている論点も複数記載がされております。これらを踏まえて,セグメントの配分基準等について必要な事項を検討するということを目的にワーキンググループを設けることにさせていただきました。名称は,「学校法人会計基準の諸課題に関する検討ワーキンググループ」とさせていただいております。このワーキンググループは,2ポツにあるとおり,検討事項としては,新しい配分基準の部分とその他に検討が必要な事項ということをさせていただきたいと思っています。
実施方法に関しては,有識者の協力を経て,2ポツの検討事項を検討していくということで,資料1の別紙に有識者の先生方のお名前を記載させていただいております。学校法人慶應義塾財務部長の飯田委員,日本公認会計士協会常務理事の稲垣委員,公認会計士の佐野委員,学校法人早稲田大学副総長の須賀委員,学校法人文化学園学園本部経理部長の菅原委員,日本私立学校振興・共済事業団私学情報室長の南委員,学校法人帝京大学企画・管理部長の村松委員,以上7名の委員のご協力をいただき,進めてまいりたいと考えています。必要に応じまして,この有識者以外の方にも協力を求めるとさせていただきたいと考えています。実施期間は,令和6年2月1日~令和6年3月31日までとさせていただいていますが,必要に応じて実施期間は延長させていただきたいと思っています。
議事の取扱いですが,率直かつ自由な意見交換を確保したいということを考えております。したがって,会議は非公開とさせていただきます。資料と議事に関しては,文部科学省のWEBサイトに掲載する形にさせていただきたいと思っています。庶務は,私学部参事官付で勤めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
次に資料2の説明に移らせていただきます。こちらはワーキンググループの運営要領ということで,先ほどよりも少し細かい部分を定めさせていただきたいというものになります。このワーキンググループで決定をいただきたいため,案とさせていただいております。この運営要領の定めるところによって,ワーキンググループを運営させていただきたいというものでございます。
1ポツ,検討ワーキングに主査を置き,委員の互選により選任をする。
2ポツ,ワーキンググループは開示を前提とした学校法人会計基準の諸課題について検討するものであり,学校法人の特性を踏まえた率直かつ自由な意見交換を確保する必要等があることから,非公開で行うことを基本とする。ただし,審議に支障を生じることがないと主査が認める場合は公開で行うことができるものとする。
3ポツ,会議において配布された資料は,原則として公開する。
4ポツ,検討ワーキングの議事録は公開する。ただし,主査が議事録に個別の学校法人に係る非公開の情報が含まれると認めるとき,その他正当な理由があると認めるときは,議事録の全部又は一部を非公開とすることができる。
5ポツ,この運営要領に定めるもののほか,検討ワーキングの運営に関し必要な事項は,主査が検討ワーキンググループに諮って決定をする,となっております。
ここで一点ご説明を付け加えさせていただきたいのが,運営要領4ポツの議事録という部分でございます。先ほど説明した資料1は,5ポツにある議事の取扱いというところで,議事概要と資料を掲載すると書いてあったのですが,議事概要となるとざっくりとした中身になってしまいますが,検討会と同じく議事録まで公開させていただくほうがいいのではないかと考えており,資料2では議事概要ではなく議事録とさせていただいております。この点をご理解いただいた上で,こちらの運営要領を決定いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【畑参事官補佐】 ご説明ありがとうございます。それでは本運営要領案について,ご質問やご意見があればお願いいたします。それでは,本検討会については,資料2の検討ワーキンググループ運営要領のとおり実施することでよろしいでしょうか。
(反論なし)
ありがとうございます。
続きまして,ただいま決定いただいた運営要領にしたがって,主査の選出に入りたいと思います。運営要領1で,主査は委員の互選によるものと定められているため,主査として適任と思われる方のご推薦をいただければと存じますが,いかがでしょうか。
(稲垣委員から挙手)
稲垣委員お願いします。
【稲垣委員】 稲垣です。須賀先生を推薦いたします。
【畑参事官補佐】 須賀委員を推薦いただきましたけれども,委員の皆さまはいかがでしょうか。
(反論なし)
ありがとうございます。それでは,須賀委員に主査をお願いしたいと思います。それでは,須賀主査から一言ご挨拶をいただきたいと思います。
【須賀主査】 早稲田大学副総長の須賀でございます。今回このようなワーキンググループの主査をやらせていただくことになりましたが,私自身は大学のほうでは教務,人事,研究推進と何でもやっておりますし,関連高校の財務担当理事,別の学校で理事長もやっており,今回拝見した資料は,私どもに日ごろの業務の中で非常に関係の深いことで,いろいろなことを思い浮かべながら説明を聞かせていただきました。皆さんからいろいろなことを教えていただきながら,うまくまとめられるように努力してまいりたいと思いますので,ご協力よろしくお願いいたします。
【畑参事官補佐】 ありがとうございます。これより,進行を須賀主査にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【須賀主査】 それでは,議事の続きに入りたいと思います。審議事項2に入る前に,報告事項1および報告事項2について,事務局より報告していただきます。まずは報告事項1「本ワーキンググループのスケジュールについて」事務局よりお願いいたします。
【篠原室長】 資料3をご覧ください。こちらはワーキンググループのスケジュール(案)としております。本日が3月13日第1回ということで,今回は検討会におけるセグメント情報に関する議論がどのようなものであったかということを共有させていただいた後に,現行会計基準・他法人との相違点を共有させていただきたいと思います。その上で,セグメント情報における配分基準に関する論点について事務局から説明させていただき,ご意見などをいただきたいと思っております。あと2回の日時が決まっております。4月10日と5月29日に関しても14時~16時ということで,今回させていただく論点整理でのご意見やご指摘などを踏まえて,そちらを掘り下げながら整理をしていくということをやらせていただきたいと思っております。こちらのワーキングは,以降できれば1か月に1回もしくは2か月に1回のペースで開催したいと思っております。各委員には,改めて日程調整をさせていただいた上で,今後の日程を決めてまいります。
今後の検討事項は,先ほど申し上げたように論点の整理を引き続きさせていただいた上で,セグメント情報における配分基準について,どのような形がいいかという叩き台を作成させていただきたいと思っています。叩き台ができましたら,学校法人会議基準の在り方に関する検討会へ報告をいたします。その後ですが,叩き台について関係する私学団体あるいは病院関係者にヒアリングさせていただきたいと思っております。そこで叩き台のフィージビリティや方向性を確認させていただければと思っております。そこでいただいたご意見やご指摘を踏まえて,改めて配分基準を検討してまとめ案を作り,最終的にまとめとして決定させていただき,親会議に最終報告をする流れで進めさせていただきたいと思っております。
必要な議論をしっかり行っていきたいということから,回数や期限などは明記しておりませんが,そこはしっかり議論を重ねながら進めていくということでやらせていただきたいと思っています。一方であまりに長い検討をしていくというのもコスト的にどうかという部分もございますので,リーズナブルに皆さんのご意見をいただきながら進めていきたいと思います。お忙しい中恐縮ですが,ご協力をよろしくお願いいたします。
【須賀主査】 ご説明ありがとうございました。何かご不明な点はございますか。よろしいでしょうか。
それでは報告事項2の学校法人会計基準の在り方に関する検討会報告書について,事務局より資料のご説明をいただきます。
【篠原室長】 資料4は,この報告書に関してざっとまとめた資料になります。1ページ目は,学校法人会計基準の改正に至った経緯とスケジュールを示しております。赤字の部分で書いてありますが,学校法人会計基準の根拠が私立学校法に基づく基準になりました。また,目的が,ステークホルダーへの情報開示を主な目的とする基準に変わりますので,それを整備するということで検討会で検討を行ってまいりました。
その下のスケジュールをご覧ください。今までに検討会をずっとやってまいりまして,1月にまとめが出て,今は左から2つ目の黄色い矢印の省令改正・通知の発出,法人への周知という段階にございます。こちらは,現在省令案を省内で調整しているところで,パブリックコメント自体は年度を明けてからを予定しております。パブリックコメントを終えた後に省令を制定する手続きを経て,省令ができて通知を発出する流れになります。改正私学法の施行が令和7年4月で,今回の省令も令和7年4月に施行するところは揃えてございます。実際に新しい会計基準が使われるのはいつなのかということについてですが,令和7年4月~5月の下に,令和6年度計算書類の作成と令和6年度末の財産目録の作成というパートがございます。これはいずれも現行の会計基準方法を用いて作っていただくということになります。令和7年度のお金の出入り等に関しての計算関係書類と財産目録を作るというところから,新会計基準での処理が始まります。左側にピンクの四角で書いてありますが,令和7年度予算は新会計基準にて対応していただくという形になります。実務的には令和7年度の予算,決算から新会計基準から使われることになろうかと思います。
スケジュールに関して,8ページ目から先に二点説明をさせていただきたいと思います。上段のスケジュールは,今説明申し上げたものと同じものが入っておりますけれども,一番左の検討会から下に矢印が伸びてございます。これが今回のワーキンググループにつながる矢印です。セグメント情報の配分基準やその他の議題を検討していきますが,まずはセグメント情報の配分基準に関する論点スケジュールを書かせていただいております。こちらは本日ワーキンググループ第1回を実施していますけれども,ワーキングを立ち上げて検討していった後は,新しい配分基準に関しての通知を発出して法人に周知をするという形で考えております。学校法人会計基準を省令として定めるのは1回のみです,今回の令和6年4月頃に定めますが,その後に通知が2回出るような形での対応になってまいります。その後は学校法人の準備期間を経て,新配分基準によるセグメント情報に対応していくような流れで考えております。スケジュール的な説明は以上になります。
次に報告書の中身です。資料4の2ページ目をご覧ください。稲垣先生と佐野先生は検討会から引き続きご参加いただいておりますので,既にご承知の内容ではあると思いますが,ざっと説明させていただきます。この検討会の報告書では,「制度の設計理念・組織目的」というところで,私立学校に関しての理念などをまとめています。独自の建学の精神に基づく個性豊かな教育研究を行う機関として発展し,我が国の学校教育において大きな役割を果たしている。学校法人制度は公教育を担うにふさわしい公共性,公益性を担保する制度であると同時に,学校法人の持つ多様性を尊重する柔軟性を持った制度であるというふうに書かせていただいております。
2ポツ,「制度創設時からの環境の変化」は3つございます。一つ目は,多様なステークホルダーの重要性が増加していることです。したがって,会計基準・計算書類は多様なステークホルダーにより分かりやすい形にしていこうということです。2つ目は,学校法人のガバナンス強化の要請です。ガバナンス構造について社会的な信頼を確保していくという要請があてはまっています。3つ目は,経営力強化の必要性の増加で,計算書類は運営者の経営判断に一層資するものとすることが望まれます。
3ポツは,「私立学校法改正に伴う会計基準の位置づけの変化」です。こちらは先ほど説明をさせていただいた内容になります。3つ目の矢羽のところは,大臣所轄学校法人等はインターネット公表が義務付けられるということで,情報公開について規定されております。
4ポツは,「改正私立学校法が想定するステークホルダー」です。こちらは従来の利害関係人の範囲(学生生徒やその保護者,職員,債権者等)と書いておりますが,今般の改正では,ステークホルダーは従来の利害関係人の範囲にとどまらず,寄付者や産業界等,その範囲は広範に渡るものというふうに解するべきとしています。「財務報告の目的・機能」はステークホルダーの中でも特に,在学者その他の利害関係人の情報ニーズを満たすほか,資源提供者等の意思決定に資する情報提供,そして情報開示を通じて学校法人が社会への説明責任を果たす機能を有するとしています。そして学校法人等が適正な財務情報を開示することを通じて,基本的な財務規律の構築にも資するとまとめております。
3枚目は,会計基準と計算書類・附属明細書・財産目録の体系イメージです。要は左側が今の計算書類で,右側が新しい改正私学法における計算書類になります。ポイントとして上に3つチェックマークがございます。1つ目のチェックマークは,情報開示に適さない書類は位置付けや様式を変更するということですが,これは左の現会計基準による計算書類の緑の箱の中にある,これらの書類が右の青い箱に移っていく中で,いくつか位置付けや様式を変更しているというものです。まず黒字で書いてある資金収支計算書,活動区分資金収支計算書,事業活動収支計算書,貸借対照表というのは,そのまま計算書類のほうに引っ越していく形になります。また,今までは貸借対照表に注記事項がくっついていたのですが,これらの注記事項が計算書類全体に関わる内容であるということから,貸借対照表から切り離して書かせていただこうかと考えています。
オレンジ色の字の部分には,固定資産明細表,借入金明細表,基本金明細表の3種類の明細表がございますが,こちらは利害関係者にとって不利益の大きい内容は部分的に様式を変更して,附属明細書という位置付けで計算関係書類の中に位置付けることになりました。
ポイントの2つ目のチェックには,内訳表を計算書類から除き,代わりにセグメント情報を追加するとあります。左側の現会計基準のほうに青字で,資金収支,人件費支出,事業活動収支の3つの内訳表がありましたが,こちらは計算書類から除いて,私立学校振興助成法で提出を求める書類として位置付けることになりました。今般セグメント情報として,学校や附属施設等の部門別の情報を表示していくというのを,注記事項のパートの中でやっていくことになっています。
ポイントの3つ目のチェックですが,財産目録の様式等についても,新会計基準で規定したというところです。これは今まで通知が根拠だったのですが,新会計基準の中に位置付けたということになります。
次に4枚目の説明をさせていただきます。こちらはセグメント情報に関しての議論をご紹介するものです。報告書の該当する番号が一番上のタイトルの右横に書いてありますので,必要に応じてご覧ください。セグメント情報は内訳表に代わって,学校や附属施設等の部門別の情報を表示します。ポイントの2つ目に書いていますが,セグメント情報の開示に際しては,経済の実態を反映したものとすることが望ましいとされています。3つ目のチェックは,原則的な配分基準の策定は別途検討が必要であり,策定までの当分の間の取り扱いも別途定めています。
下の表は,今般対応していこうとしているセグメント情報に関する情報と,今の内訳表の情報を対比したものになります。趣旨に関しては,セグメント情報は各学校の個別の部門に関する情報開示として,経済実態を反映したものとすることが望ましいとされています。内訳表のほうは,経常費補助の効果を具体的に把握し,教育活動の実態に即した有効適切な振興策策定のための資料を得られるようにするといった違いがございました。区分と配分基準,科目という欄については,次のスライドで説明させていただきます。開示義務に関しては,セグメント情報を開示していくことになっています。内訳表に関しては,法的な義務はないのですが,平成16年に通知で積極的な開示を推奨しており,約20%の学校法人において,ホームページで公表しているという状況になっています。当分の間というところも,7枚目のスライドで別途説明させていただきます。
5枚目をご覧ください。セグメント区分方法について説明させていただきます。セグメント区分の考え方ですが,拠点区分別(設置学校・附属施設別)を採用いたしました。この他にマネジメント・アプローチなどの考え方もあったのですが,議論の結果,拠点区分別という形になっています。区分に関しては,各学校法人の業務内容等に応じた適切な区分をしていただきます。以下に掲げる区分に基づくセグメント情報については,全ての学校法人等において共通に表示していただくということで①から④まで記載しております。
①私立大学(短期大学を含む),私立高等専門学校に関しては,一つひとつセグメントとして情報を開示していただきます。
②は①以外の私立学校で,高等学校,中学校,小学校,幼稚園,私立専修学校,私立各種学校です。こちらは,まとめて開示をしてもいい学校になります。
③は病院。
④はその他で,①,②,③のいずれにも該当しないものになります。
②,③については複数ある場合,それらの一部または全部を一括することができます。④その他に関しては,主要な事業等の内容について注記を入れていただき,「その他」の区分に含まれる内容のうち,学校法人等の判断で必要というものは,独立したセグメントとして表示することもできます。
その下の学校法人共通についてですが,この区分を設けて法人事務局における収支のほか,学校等の各セグメントに配分しなかった収支を計上することができます。他にも病院以外の附属施設や保育所なども計上できます。「その他」ですが,表示すべきセグメントが,その他以外に一つのセグメントのみの学校法人は,わざわざセグメント情報を開示する必要性が低いので省略できるようにしております。括弧の中がその例ですけれども,設置学校が一校の大学で病院がない場合や,幼稚園と保育所の場合などがあります。上記①から④はすべての学校法人で共通に表示してくださいとしていますけれども,それに加えて詳細なセグメントを設定することは,学校法人の財務報告の趣旨に鑑みて,積極的な対応が望まれるという形になっています。
6ページをご覧ください。配分基準のところは,本日もこの後に具体の議論をしていただきますけれども,まず基本的な考え方として,教育・研究等に投入される資源等を財務的に明らかにする機能も期待されているため,セグメント情報の開示に際しては,学校法人等のセグメントごとの経済の実態を反映したものとすることが望ましいとされました。 「原則的な配分基準」と「例外的な配分基準」という欄がございます。現行の資金収支内訳表の配分基準は,本務教職員の人件費支出については,原則としてどの部門等の教職員として発令されているか(発令主義),その発令に基づいて計上しているということで,学校法人等のセグメントごとの経済の実態を必ずしも表しているとは言えないというようなご意見がございました。これを受けて「原則的な配分基準」として,「学校法人等のセグメントごとの経済の実態をより適切に反映するための基準」を採用することになりました。「例外的な配分基準」に関しては,経常費補助金を受ける学校法人は1つの共通経費を2種類の基準で2回按分作業しなければいけないということで,事務の負担が増加するのではないかという懸念が示されました。事務負担への配慮から学校法人等の判断で,「例外的な配分基準」として現行の資金収支内訳表の配分基準を使うことができるようにしています。注記事項として採用した配分基準と,学校法人が配分方法を変更した場合は,その旨や変更の理由を書いていただく方向になっております。
「(3)開示科目」は,内訳表から若干簡素化しております。長期的かつ安定的な運営状況を表す項目として,短期的及び長期的な収支均衡を表す収支差額を開示することが適当だということで,ここに掲げている科目を開示することになっています。読み上げは省略させていただきます。
7ページ目のセグメント情報の当分の間の取扱いについて説明させていただきます。Aは当分の間ということで,経済実態をより適切に表す配分基準が策定されるまでの間の取扱いです。Bは経済実態をより適切に表す配分基準ができた後の取扱いになります。Aの区分に関しては,下の表の左側の対応を原則とすることになりました。
【区分ア】を見ていただくと,左から大学,短期大学,高等専門学校,それ以外の学校種,病院,その他という形になっています。この原則的な区分に対応しがたい場合は,【区分イ】を例外的に使うことができます。こちらは,大学,短大,高専,病院をまとめて記すことができ,それ以外の学校種,その他といった形でまとめることができます。ここの考え方としては,本当は経済実態をより適切に表す配分基準で表示したいけれども,その基準がないから現行基準でやらざるを得ない,だから例外的な省略可能範囲でやるというような考え方になります。
Bについては,経済実態をより適切に表す配分基準ができた後は,まず区分に関しては,左側の表のアに統一してまいります。配分基準に関しては,原則として新しい経済実態をより適切に表す配分基準で対応し,事務負担によって例外的な対応としては,現行の基準での対応ができるという形にしています。ここで右側に矢印が書いてありますが,現行基準を例外的な配分基準として用いるということに関して,これを継続的な対応とすべきか,期間限定とすべきかは,今後検討していくと報告書で記させていただきました。こちらは,基準としては統一的なものであるべきだろうということで新基準とするのか,事務的な負担という部分をどう見るかというあたりの議論をしていただく必要があると思いますので,今回の新しい配分基準の検討と合わせて対応していきたいと考えています。検討経過等の説明は以上になります。
【須賀主査】 ありがとうございました。それでは,審議事項2のセグメント情報における配分基準に関する論点の整理ついて,事務局からご説明をお願いいたします。
【篠原室長】 資料5について説明させていただきます。こちらは現在の基準と,先ほど説明した報告書を踏まえて検討していくための論点として事務局で整理をさせていただいたものになります。こちらに関して追加の論点等があれば,ぜひ先生方からご意見をいただきたいと思っています。
資料の構成は,0ポツが総論で,次ページのローマ数字Ⅰが共通経費です。3ページ目がローマ数字Ⅱで人経費の配分基準,最後5ページ目にローマ数字Ⅲで「経済の実態をより適切に表す配分基準」策定後の現行基準の取扱いということで作っております。
総論は,現行と新しい配分基準の方向性を整理した部分になります。現行の学校法人会計基準が,こちらの世界でどうなっているかというと,部門に関しては①から⑤の5つ出ております。
①学校法人,②各学校(専修学校,各種学校を含む),③研究所,④各病院,⑤農場,演習林その他③④の規模に相当する規模を有する各施設,となっています。
配分基準に関しては,昭和55年の文部省管理局長通知というのが,今までずっと使われてきておりますが,特定の部門のものとして把握できる収支額は当該部門へ直接計上されます。部門のところにアスタリスクで注釈をつけておりますが,実際の通知は「部門」のほか「学部・学科等」という言葉も並びで記載されています。ただし,今回の議論の趣旨に鑑みて「部門」という言葉だけ引っ張って書いております。通知本体は,参考資料2として入れておりますので,細かい部分までご覧になられたい場合はそちらを参照していただければと思います。
資料5の説明に戻ります。配分基準の上から2つ目のポツでは,2以上の部門に共通する収支額については,当該関係部門における在学者数,教職員数,使用時間,使用面積と妥当と考えられるものの比率により配分となっています。3ポツでは,配分できない部門共通の収支額がある場合は,各部門の収支額の合計額の比率により各科目ごとに配分されます。配分の基準は配分方法の欄に注記しています。4ポツでは,教職員人件費支出については,各部門のいずれの教職員として発令されているかにより計上となっております。
ここまでが現行の会計基準です。新しい学校法人会計基準については,2ページ目の上の四角部分をご覧ください。先ほど説明した内容と被りますが,セグメントとしては①から④,④その他は学校法人部門,病院以外の附属施設,保育所,学校法人共通を想定しています。
配分基準については,1ポツは原則として「経済の実態をより適切に表す配分基準」です。例外として現行の「資金収支内訳表」の配分基準を採用できます。ただし,当分の間の取り扱いとして,経済の実態をより適切に表す配分基準が策定されるまでの間は,現行の資金収支内訳表の配分基準を採用する形になります。ローマ数字の1ですが,考えられる論点の一つとして共通経費があろうということで書かせていただいています。
基本的な考え方としては,特定のセグメントに帰属させることが困難なケースは,2ページ目の四角の上の④その他の学校法人共通というところに一括計上するのだろうと考えました。2ポツの特定のセグメントに帰属させるべきケースは配分基準,経済の実態をより適切に表す配分基準を検討する必要があろうということです。具体的な論点として考えられるものを2つ挙げております。
1つ目は光熱水費です。ある校舎を複数セグメントで使用していた場合,その光熱水費をどのように配分するかということです。ある建物を複数セグメントで使う例としては,大学と短大,大学と附属病院などがあると考えられます。配分基準として考えられるものとして,大学と短大の場合であれば,それぞれの建物や部屋の面積を比率で使ったり,利用する学生数や教員数,利用時間などを比率で使うことが考えられます。
2つ目は減価償却額です。校舎の減価償却額をどうやって配分するかという検討が必要と考えられます。複数セグメントで使用する例としては,大学と短大,大学と附属病院があり,配分基準としては建物や部屋の面積,セグメントに所属する学生数や教員数,利用時間等が考えられます。これ以外にも様々な費用があると思いますが,現行基準の考え方に挙がっているような項目である程度対応できるのではないかと考えています。一方で,費用に関しては特別な性質や事情があって別の検討が必要だというものがあれば,「3 その他,特別な検討が必要なもの」として,ご意見をいただきたいと思っています。
次にローマ数字2の人件費の配分基準についてです。こちらは現行学校法人会計基準の取扱いを3ページ目の下の四角内に書いています。「(1)教(職)員人件費支出」について,「各部門・学部・学科等のいずれの教職員として発令されているかにより計上」「発令の内容によりいずれの部門,学部,学科等の教職員であるか明らかでない場合は,主たる勤務がいずれであるかにより計上」ということで,どこか一箇所に計上する形になっております。「(2)「学校法人」部門の職員人件費支出」については,上記(1)の取扱いに関わらず,学校法人部門の職員として発令されている者のうち,主として学校法人部門の業務に従事する職員についてのみ「学校法人」部門に計上します。学校法人部門の業務についての詳細は,4ページ目の四角内に書いております。学校法人部門の業務も昭和55年の通知に記載があり,ア~ケの9つが列挙されています。上から順に,
ア 理事会及び評議員会等の庶務に関すること
イ 役員等の庶務に関すること
ウ 登記,認可,届出その他の法令上の諸手続きに関すること
エ 法人主催の行事及び会議に関すること
オ 土地の取得又は処分に関すること(他の部門の所掌に属するものを除く。)
カ 法人運営の基本方針(将来計画,資金計画,中期計画等)の策定事務に関すること
キ 学校,学部・学科(学部の学科を含む)等の新設事務に関すること
ク その他「学校法人」部門に直接かかわる庶務・会計・施設管理等に関すること
ケ 他の部門の業務に属さない事項の処理に関すること
という考え方になっております。その下のポツは,その他の職員に係る人件費支出は主として行う業務の所属するそれぞれの部門に計上する形になっております。
(3)は,「医・歯学部及び附属病院の教員人件費支出のうち臨床系教員の人件費支出」ということで,臨床系の教員に関しては,上記(1)の取扱いに関わらず,授業科目を担当していれば学部に計上し,その他の教員の人件費支出を附属病院に計上ということで,授業を担当するかどうかで分けられているという状況になっています。この人件費の配分基準に関しては,報告書では特に具体的な案は記されていないので,こちらは論点ということでいくつか書かせていただいています。
1「学校法人」部門の業務を担当する教職員の人件費ですけれども,まず職員に関しては,先ほど説明した(1)~(3)を踏まえると,学校法人部門の業務に従事する職員は「④その他(学校法人部門)」に当てはめて計上することが妥当ではないだろうか。職員だけでなくて教員も,学校法人部門の業務に専従する方がいた場合は,その発令の内容に関わらず「④その他(学校法人部門)」に計上するということになるのではないだろうかと考えております。
2つ目の論点は,複数セグメントの業務を兼務する教員の人件費ということで,複数セグメントの業務を兼務する教員についての人件費の配分の基準を考える必要があります。5ページ目の上の点線の四角ですけれども,複数セグメントで教育研究等の業務に当たっている例としては,大学と短期大学,大学と附属病院,あとは大学で教育研究活動をしつつ,学校法人部門の仕事もしているというような場合が考えられるのではないかと思います。配分基準として考えられるものとしては,業務に従事している時間,各セグメントに所属する学生数などを使うことが考えられるのではないかと思っております。3つ目の論点は,複数セグメントの業務を担当する職員は,学校法人部門の業務に従事する職員を除くとしています。複数セグメントで共通するような業務には,総務,人事,財務,学務あたりがあると思って書かせていただいておりますが,このような職員の方の人件費の配分をどうするかということです。それについても次の点線の四角内に記載していますが,複数セグメントの業務を担当する職員の例として,大学と短大や他の設置校,幼少中高,大学と附属病院が考えられます。配分基準として考えられるものとしては,各セグメントの業務に従事している時間,セグメントに所属する学生数等があろうかと思います。4が医学部と歯学部と附属病院の業務を担当する教員です。こちらは医歯学部と附属病院を設置している大学において,医学部の専任教員として教育研究にあたりながら,附属病院で診療に従事しているケースのように,医歯学部と医歯学部附属病院に配分する基準の検討が必要となっております。また,医歯学部附属病院以外の病院を持っているケースもあると思いますので,併せてそちらの検討も必要ではないかと考えました。点線の四角の中は,複数セグメントの業務を担当する職員の例として,医歯学部と附属病院のほかに,看護学部等のコメディカル学部学科と病院の場合もあるのではないかと思います。配分基準として考えられるものとして,病院は学生さんがいないので,従事している時間が挙げられるのではないかと思っています。
ローマ数字Ⅲ「経済の実態をより適切に表す配分基準」策定後の現行基準の取扱いについてですが,これを一定期間とするのか,継続的な取扱いとするのか検討が必要ということで,最後に論点として挙げております。ローマ数字3に関しては,ある程度新しい基準がどのようなものかが見えてから議論したほうがいいと思うので,今論点としては挙げておりますが,本日はローマ数字ⅠとⅡを中心にご意見をいただければというふうに思っています。説明が長くなりましたが,以上になります。
【須賀主査】 ご説明ありがとうございました。今説明のあった事項についてご審議いただきたいと思いますが,その前に参考として机上に配布されている資料1のセグメント情報比較表について,日本公認会計士協会の稲垣委員から説明をお願いします。なお,この資料は日本公認会計士協会において,今回の審議に使用するために便宜的に作成いただいたものです。現時点では公表するのには適していないということで,今回机上配布としているものでございます。今後公表に適する資料となった場合には,配布資料にさせていただきます。稲垣委員,よろしくお願いします。
【稲垣委員】 稲垣でございます。この資料をご覧いただきながらご説明したいと思います。はじめに,この資料を作成するに至った背景と経緯について説明したいと思います。先ほど篠原室長から説明があったように,在り方検討会から,引き続きワーキングのメンバーになったわけですが,セグメントにおける一番の課題である配分基準をどのように作るかということに関して,検討案(草案)を会計士協会のほうで検討させていただくということでお預かりした経緯がございます。ただ,現在の会計監査慣行の中では,会計士協会自体が会計基準設定主体にはなり得ませんので,あくまでも検討材料を我々が用意して,ワーキングなり在り方検討会に提供して,そこでご判断を決定いただくという立て付けになっております。
基本的には配分基準を考えるのですが,その配分基準を考えるにあたり,そもそも他の制度ではどのようになっているのかということを見ていく必要があります。それぞれ制度の背景がありますから,そういうことをある程度念頭に置いておく必要があるだろうということで,一番左側の「学校法人(私学法)」と書いてある欄は,今般の新しい私学法に基づく学校法人のセグメントについてどうあるべきかというところで,まだ空欄になっているのは,これからここを埋めていくという形になっています。次の2行目は,「学校法人(私学助成法)」と書いてありますけれども,これは現行の助成法に基づく内訳表に関してどのような定めになっているかということです。主にこれとの対比が重要になってくるわけですが,必ずしもそれだけではなく,類似の制度として,例えば国立大学法人ではどのような制度になっており,さらには営利企業ではどのような制度になっている,それから非営利法人制度として,公益法人制度や社会福祉法人制度ではどうなっているかということを整理して理解しておくことは有用ではないかということで,横軸に設けさせていただきました。
縦軸に関しては,そもそもの総論的な意味合いもあって,財務書類等の作成根拠はどうなっているか,ステークホルダーはどういうことを想定しているか,そもそも目的をどのように定義付けているかという総論的なところから始まって,セグメント情報の作成根拠が規定でどうなっており,さらにはセグメントの区分についてどのような考え方が設けられているというところから始まって,具体的にセグメントの区分方法の考え方,そして3ページ目の左上ですけれども,セグメントの測定についてということで,まさに配分基準はここの部分になるわけですので,ここが一番重要な部分ですけれども,そこだけをいきなり検討するのではなく,総論部分も含めた理解をしていくことは有用だろうということで,こういう表を作っております。また,配分基準以外にも例外事項や追加的に検討すべき事項があるのではないかということで,そういう項目を設けて整理をしております。
机上配布と主査からお話がありましたが,会計士協会の中でいろいろな検討を始めた段階で,まずこういうものを作った状況ですので,必ずしも詰め切れていない部分も多々あります。そこを詰めながら私学法の考え方のところが固まっていけば,そういうものを案として入れていき,どこかの段階で確定版にして,ワーキング資料というステータスにできればと考えております。そういう意味では,検討の前提として,こういう整理をしておくということで作らせていただきましたけれども,重要なのは篠原室長の説明にもあったように,現行の内訳表基準が全く使えないというわけではなく,内訳表基準の中にも経済実態を表している部分は多々あるわけで,そういう意味では表していない部分をきちっと把握して,そこをどうするのかというのが重要な論点だと思いますので,先ほどの論点整理には,そういうところが抽出されているというふうに理解しております。
細かな説明は割愛しますけれども,ポイントを絞って中身を見ていきたいと思います。そういう意味では,新しい私学法の基準と現行の私学助成法の対比が一番重要になってくると思うのですが,例えば1ページ目の真ん中付近のセグメント情報の根拠法令というところですけれども,国立大学法人や企業会計ではセグメント情報という言葉が使われて規定されています。一方,公益法人や社会福祉法人といった類似の非営利組織では,セグメント情報という言葉を使った開示規定はございません。ただ,ここに書いてあるように公益法人であれば公益事業,収益事業,法人会計といった事業内容別の区分が求められたり,あるいは社会福祉法人においては,事業内容や拠点別,サービス内容別の開示が求められているという意味で,セグメントという言葉は使っていませんが,事業の内容別に区分開示が求められているという立て付けになっております。
今般セグメント情報が求められた背景は,在り方検討会の検討の一番のポイントになったわけですが,セグメントの区分に関して,従前の内訳表は目的が補助金算定・補助金行政のための資料だったと。一方で新しい計算書類は,ステークホルダーへの情報開示のための計算書類としてのセグメント情報なので,そこは目的が異なるので,その目的に応じて検討する必要があるということで,具体的な検討が始まっていくということになります。そういう意味では1ページ目の考え方と2ページ目の私学法の具体的な区分方法は,既に在り方検討会で固まっておりますので,ここは今回の検討の対象ではないわけですが,そこがどうなっているかによって測定方法をどのように考えるかということで,ある意味網羅的な検討資料として,この表を作成させていただきました。そういう意味では,2ページ目の下のところで,法人共通の区分ということで詳細は要検討とか内部取引消去の区分も要検討となっているのは,他制度ではどのような扱いかということを睨みながら学校法人においてどのような取り決めにしていけば良いかということを,今後検討していくということで,一番の今回の検討のポイントは3ページ目にあります。基本的な考え方は経済実態をより適切に表す配分基準ということですけれども,具体的な配分基準の詳細は要検討で,基本的に国立大学法人と共通と思われるという記載がありますけれども,これは見なかったことにしていただければと思います。必ずしも会計士協会がそのように考えているというわけではなく,参考とするけれども詳細は私立学校の学校法人の制度に照らして要検討だということと,まさに共通収支の取り扱いが今回の検討の中心になるということです。参考までに,公益法人や社会福祉法人では,先ほど申し上げたような事業別の区分,拠点別の区分などが求められており,それに対して一定の規定がされているわけです。また,一つの参考として,国立大学法人ではセグメント情報というのが求められて開示されている中で,そこでは共通費の区分をどのように考えるか,あるいは今回一つ大きな論点になると思われる,附属病院とその学部の関係をどのように整理するかという考え方は,国立大学の中では一定のものが示されているので,そういうものも検討材料として検討する必要があるだろうということで,ここに書かせていただいております。
4ページ目の最後は不明と書いてありますが,要検討という意味です。これからこの辺を具体的に検討していくということとなります。この表を作らせていただいて,類似の制度も横の目において俯瞰しながら検討していくわけですが,あくまでも大きなポイントは,測定基準・配分基準の中の人件費あるいは共通経費の中の特定の論点に絞られるので,そこをきちっと議論することが重要ですし,それが効率的な検討になると思いますが,最終的に配分基準の考え方を文科省さんの通知として公表するときに,どのような形のものを想定するかによって,どのような形で整理して提供するのがいいかということは,いろいろと協議させていただきながら作業を進めていきたいと思っております。
若干乱暴な言い方をすると,現行の基準の中で不都合な部分を「これとこれとこれはこういうふうにしましょう」ということを議論検討するのが,議論の中心ではあるのですが,最終的な基準として公表する通知をどのようにまとめるのかという最終成果物を想定しながら検討していくところが少し難しいところなのではないかと思います。内訳表基準のうち「こことここだけはこういうふうにしてください」という学校法人会計基準の通知として出すのは,基準としては少し馴染まないのではないかと思いますので,その辺はテクニカルな問題として,今後もご相談させていただきたいと思っております。駆け足になりましたけれども,徐々にブラッシュアップして提供させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【須賀主査】 稲垣委員,ご説明ありがとうございました。ご質問やご意見があればお願いいたします。佐野委員が参加されているのでしたら,その時の検討状況を踏まえて先にお話しいただければと思います。
【佐野委員】 篠原室長からの詳細なご説明がわかりやすかったので,当時の議論状況というのは皆さまも議事録を拝見されて十分にご理解いただいていると思いますが,特にこのセグメント情報に関しては,資料5ページのところで,新配分基準を策定後,現行基準をどうするかというのが新基準が決まってからの検討というお話もありました。私もそれはごもっともと思っていますが,当時の議論の過程から見ますと,いかに実務で楽に採用することができる新基準を作るか,それによって例外を認めることがない,つまりステークホルダーに対する説明責任を新基準によって全学校法人が説明できる状況を作ることが大事なのではないかと思っています。したがって,現行基準を例外として残さざるを得ないような複雑な新基準ではなくて,現行の配分基準を睨みながら,経済事態を表すためにどの部分を直すべきなのか,直さなくていいのかというところに注力してはいかがかと思っています。
私が実務に関与している中では,諸経費に関してはどの学校も部門計上,配分基準を詳細に定めています。例えば消耗品を一括して購入したら,教育研究経費の消耗品であれば,5月1日現在の在籍者数であったり,大学の場合は前期後期で人数差が大きいところは,10月1日という基準日を定めて配分しています。管理経費のほうは,学生生徒に関わる経費はほとんどありませんので,教職員割でやってみようなど,現行でもある程度の実態を表す基準を各学校が配分基準として設けていると思っています。補助金申請のときには,その中から補助金対象外項目を抜くこともやっていますから,諸経費に関して,現在提案されているセグメント情報というのは,高等教育機関,つまり大学,短大別になりますが,それ以外の中学,高校等は一括してもいいことになっていますから,現行の配分基準も割と使えるのではないかと思っています。そうすると何が問題かというと,篠原室長からのご説明にもありました通り,今,発令基準で貼り付けになっている教職員の人件費が,一番議論の山になるのだろうと思っています。もちろん中高のほうは免許制がありますし,一括のセグメントになります。例えば,高校と中学で数学を教えていても,今の貼り付け基準で言ったら,このままでも良いのですが,この資料にありますように,大学でも2つ以上ある場合,それから大学・短大がある場合で,特に教養科目などを一人の専任教員が持っているときにどうするかというようなところを,実務に負担がないように決めればいいのではないかと思っています。そのあたりを議論しながら,頭の片隅にこれが決まったら「現行基準を使ってもいいよ」という例外はもうないというところに落ち着いたらいいのではないかと思いながら,作業を進めてはいかがかと思っているところです。
個別の論点については,いろいろとご意見が出ると思いますが,今日は実務に長けていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいますので,現場での不都合なところを出し合って楽な新配分基準ができてくればいいなと思っているところです。
【須賀主査】 ありがとうございました。各学校でもいろいろな基準が使われているとは思いますが,佐野委員におっしゃっていただいたような観点から,それぞれの事情をお話しいただけると議論が進みやすいのではないかと思います。飯田委員,何かありましたらお願いします。
【飯田委員】 今の佐野先生のご意見につきましては全面的に賛成いたします。最後に佐野先生が「楽に」と言ってくださった部分に関しては,どうしても学校のほうで実務をやっている人間からすると,原則的な基準をここで定めたら,その基準で内訳表を作らせていただけるということでないと厳しいのではないかと思います。今回開示する資料が増えて,時間的にも1ヶ月伸ばしていただく形にはなると思いますが,既存の基準を残しつつ,内訳表も残すとなると,かなり神経を使ってやっていかなければならないと思いますで,そこにもご配慮いただけると大変ありがたいと考えております。
【須賀主査】 ありがとうございます。稲垣委員から何か追加でありませんか。
【稲垣委員】 一部繰り返しになりますけれども,素案材料を提供するにあたって,まずは経済実態を表すというのは,別の言い方をすると一定の恣意性を排除することが目的だと思います。したがって,開示を目的とする財務報告であれば,実態を表すべきものであるから,恣意性を100%排除できるかどうかはともかくとして,そういうところには注意が必要だということで,このような表現になっております。
最終的に現場での制度運用が困難になってしまうと本末転倒ですから,現場できちんと運用ができて,かつ負荷がそれほどかからないような形に持っていければいいと思っています。もう一方で会計士協会の立場としては,出来上がった計算書類を監査する責任があります。監査するときというのは,会計基準にどう定まっていて,その会計基準の規定に沿った処理がされていることを確認することが監査ですので,監査で対応できる部分も,今回の基準の策定において織り込む必要があると思います。そういう意味では,どちらかというとガチッと決めてこの通りというよりは,定められた基準の中で各学校法人によって運用の実態が違う部分もあると思いますから,そこは個々の学校法人が,自学校の実態に応じて規定を解釈すると,こういうふうにやるのがその規定の趣旨に沿っただろうというところを,学校法人さんが判断をし,先ほどの監査でいうと「この基準に沿っているから,こういう基準を定めて私もやっているんだ」ということを説明いただいて,監査人として納得できるというようなところを,基準に定めていくことが必要なのではないかと考えております。
【須賀主査】 ありがとうございました。それでは菅原委員,お願いします。
【菅原委員】 これまでの検討会での経緯と,資料5の配分基準に関する論点を拝見させていただきました。私は学校法人文化学園の決算を担当しております。学園には同じキャンパス内に大学と大学院大学,専門学校が2つございます。その4校に,それぞれ教員や職員,アルバイト等も従事しておりますが,今まで私たちが人件費を計上する際に最も注意しているのは発令基準です。そちらがあって学校に人件費を貼り付けることができるということで,私たちもそれを仕事としてやってきました。
今回,このセグメントの情報の論点を見ますと,より実態に即したものに合わせていくとなると,その発令基準を以て行わないというものを会計基準のほうへ定めていければ,配分基準ができるのではないかと思っております。ただ,数年に一度は会計検査院の検査(監査)がございます。その際に私たちが資料提供する最も重要なものは,発令がどのようにされているかということです。そういったところも踏まえつつ,補助金への申請も確認しながらやっているところですから,ある程度の基準ができればそれに沿った形で今後数字を出していけると思っておりますので,ぜひとも,この検討会のほうでいろいろな話し合いをさせていただきながら進めさせていただければと思っております。
一点,我々のほうで貼り付けの人数を算出する際は,教員職員の人数比を重要視しております。非常勤教員の貼り付けにつきましては,授業のコマ数によって最終的に金額を配分している状況でございます。職員につきましては,人件費の金額と人数比によって,それぞれの学校へなるべく偏らせないようにしながら,ただそこがどちらかというと人事経理の恣意的と言っては言い過ぎかもしれませんけれども,我々としては自分たちでいつも確認をしているところでございますので,今後そういったところが配分基準でしっかりと明記されていけば,実務を行う人間としてはやりやすいのではないかと思っております。ぜひともご検討のほどお願いしたいと思っております。以上になります。
【須賀主査】 どうもありがとうございました。次に南委員,お願いします。
【南委員】 私は私学事業団ということで,日頃から皆さまにまとめていただいた情報をご提供いただいている立場でございます。いつもありがとうございます。今回新たなセグメントということで,何らかの形で配分をしていくというところでございます。先ほど稲垣委員からもございましたけれども,現行の配分基準が全てダメというわけではなく,その中でも十分に活用できる部分もあると思いますので,どこまで流用できてどの部分を変えていかなければいけないかというところを議論していければいいのではないかと思っていたところです。
最初見たときに,例えば共通経費の中で,光熱費だったら面積でなければいけなかったり,人数でなければいけないというところまで細かく決めるのかと思ったのですが,そうではなく,ある程度同じ建物の使い方としても,いろいろな使い方もあろうかと思いますので,それぞれの指標をある程度使えるような流動的な形での配分基準ということであれば,現行の配分でほぼほぼいけそうと思っていた中で,一つ配分の指標の中で教職員の数がございました。これまで発令主義によっての人数の配分と,配分された人員に対する人件費の配分というところが,人件費も経費の配分を見直すことによって,教職員数の比率を指標として配分していた部分が変わってくる必要があるのかなというのは,ちょっと感じたところでございます。私からは以上でございます。
【須賀主査】 ありがとうございました。村松委員お願いします。
【村松委員】 帝京大学の村松でございます。よろしくお願いいたします。今日は非常に多くの情報をいただいて,頭がパンクしそうな感じもありますが,最初なので立ち位置の確認についてお話させていただきます。
勉強不足で申し訳ないのですが,在り方に関する検討会の報告書を拝見すると,要するにセグメント開示をどこまで法定するべきなのかという議論をされていたと思います。私もその部分が議論になると思って入ってきたのですが,先ほどからのお話だと,どちらかというと決まっており「配分基準について考えましょう」という議論になっているので,要するに「人件費をどのように配分しましょうか」というテクニカルに近い部分の議論をすればいいのか,それとも,開示の是非といいますか,どこまで開示すべきなのかというようなことが議論の対象になるのかどうかというところを教えていただきたいと思いました。
私はどちらかというと経理実務というよりも,大学で経営管理を担当していますので,セグメント別の情報というのは経営管理上は必須のものなので,当然その大学とか各学校法人によって,ある基準に基づいて割り振りながら,その部門の状況というのを経営的に判断するという意味では,どこの大学でもやっているはずです。それをどこまで開示するのかという,また全然別の議論になると思います。報告書の中の議論でも,むしろそこが焦点になっており,いろいろな先生方から「そもそも学法法人はどうあるべきなのか」というような議論が展開されていたので,そこについて,このワーキンググループで話題になるべきなのかどうなのかということを教えてもらいたいというのが一つです。
では配分基準をどうするかという議論になりますと,先ほど佐野先生がおっしゃられた,新基準でどうやって経営自体を楽に説明するかという話は,まさにその通りだと思っています。ただ,経費の配分の仕方など,いろいろなことを考えなければいけないと思いますが,経費配分の考え方,あるいは収支の配分の考え方については,恣意性を排除することはほぼ不可能に近いと思っています。恣意性を排除するのは不可能なので,何らかの割り切りをしてルールを作らなければいけないということが,このワーキンググループの一つの目標になると思います。あくまでステークホルダーがそれを正しく理解する,恣意性があるので「こういう恣意性に基づいてこういう在り方をしましたよ」というのを明確にして,ステークホルダーが公表された情報をしっかり理解できないようであれば,あるいはそれを変な形で使うようなことがあってはいけないので,そういったところをしっかりと議論するべきだと思います。その前提としてどういう開示の仕方をするかというのは,ここでも議論しなければいけないと思います。
また,室長が最初に言っておられたことですが,ルールを作って配分基準を作っていくのですが,そもそもそれ実務的に対応できるのかという議論が,必ず最後に出てくると思います。大学の経理事務では,もともと私学法が改定される段階で,要は助成法に基づく会計処理と私学法に基づく会計処理が重複しないということを明確に言っておられたと思います。なんとなく内訳表は残り,一方でセグメント情報のところは残るのかという部分は勉強不足のため,これからしっかり学んでいこうと思っていますが,そこの部分が,結局大学の学校法人も経理事務のところはかなり膨らんでしまうところがありまして,ですから本当に経済合理性のある配分基準になってできるのかどうか,できたとしてもそれは本当に現実的にできるのかどうかというハードルが物理的にもあると思っています。その辺は先生方のご意見や文科省のご意見を伺いながらしっかり固めていかなければいけない部分だと思っています。勉強不足の中でここに臨んでいますので,お恥ずかしい質問も入っているのかもしれませんが,そのあたりをワーキンググループの最初に位置づけていただくとありがたいと思っています。以上です。
【須賀主査】 ありがとうございます。事務局のほうから何か説明を追加できることはありますか。
【篠原室長】 今,村松委員からご質問があった,セグメント情報の公表をどうするかというところからの議論が必要なのか,それとも配分基準に関しての議論をすべき場なのかというご質問に関してですが,今般ワーキンググループを立ち上げさせていただいた弊省の認識としては,報告書をまとめさせていただいた段階でセグメント情報の開示はすること,あとはその開示に際しての形に関しては,検討会の合意という形で結論が出ているという認識になります。その中でも開示をするに際して必要な経済実態を表す配分基準がないから,それはしっかり検討しようというところを宿題としていただいておりまして,今回のワーキンググループの立ち上げと検討という流れになっていると認識しています。
先ほどのご指摘の中で,実務として回るのかということや,恣意性の排除は100%できないという点については,おっしゃる通りだと思って聞いておりました。基準を多様な私立大学に使っていただくことになりますので,ある程度考え方を整理して「こうやると妥当だよね」というところを共通解として探していくのが,この検討ワーキングの作業になるのではないかと思っております。その作業の中で実務が回ることを担保したいので,今回あえて実務に近い方々を委員として選ばせていただきました。実務が回るというところも担保したいという欲張りなワーキンググループになっております。この点に関して,稲垣先生や佐野先生からも,検討会での議論を振り返って認識のズレなどはないかについてコメントをいただきたいのですが,いかがでしょうか。
【佐野委員】 一つ目の区分の話で「セグメントは決まったのか」ということについて,結論としては篠原室長がおっしゃった通りですが,議論の過程において,例えばそうではなくて,「高等教育機関とそれ以外の2つでいいのではないか」とか,「現在の学校法人会計基準で行っている教育研究と収益事業があればそれを分ければいいのではないか」という議論を経て,そうは言っても高等教育機関である大学については「大学別のものが必要だよね」ということについては反対意見もありましたが,そういう方向にいったほうが社会に対する説明責任が果たせるのではないかとなりました。しかし,中高以下の学校種については,同一キャンパスでやっているとか,利害関係人の範囲が狭いこと,資金規模の問題などがあるため,一括してもよろしいのではないかという議論があり,室長がお話になったような形で一応の結論を見ました。では,どのように分けるのかというのは,本来だったら,そこで分け方を決めた上で「こうなるよね」とするべきだったと思いますが,今申し上げたように区分をするにあたってもいろいろな意見があって,やっと落ち着きました。もう時間切れで配分基準の細かいところまでの議論ができなかったことが,私は実態だと思っています。ですから,この場では決まったセグメント区分になるような配分基準を検討するものと思います。万が一,実務に落とし込めるものがないとなれば,また遡って戻ることもあり得ると思いますが,ミッションとして,一旦出た結論に向かって合理的な監査にも耐えられるような基準を決め,かつ実務に落とし込めるものを作ることが目標だと思います。
2つ目に,配分基準をガチッと決めるのかという話がありましたが,私のイメージとしては,いろいろな基準を提示して,その中で各学校が自分の実態に合った基準を適用していくことがよいと思います。セグメントのほうは,個別の小科目の記載がなく,区分別になっており,細かい経費のところまでは踏み込んでいないので,現行でやっている配分基準を使っていけると思います。ただ,全く合理性のないものを使っている場合は,社会に説明する際に虚偽説明になってしまいますので,実態に近いものをちゃんと使っているという保証をしていかなければならないと思っており,そこは検討すべきだと。
人件費に関しては,セグメント用に作った基準が会計基準そのものになるとは思っていません。設置基準との関係もありますから,当然学部別に最低人数が必要なわけで,それで発令も出ます。発令に基づいて貼り付いて補助金が交付されます。非常勤の方々については,もともと経常費の対象になっていませんから,これは実態に応じて時間数でやっています。これは契約行為ですから,契約に基づいた時間でやっていると思います。人件費についての貼り付け方式は,計算書類としての会計基準として残らざるを得ないと思います。三番目におっしゃっていたダブルスタンダードはないというのは,まさにその通りで,セグメントがなければ私学法で作る計算書類と助成法で求められるものは同じです。計算書類の作成基準としては,処理基準と表示基準は同じだと思っています。ただ,そこに注記事項としてセグメントが出てきたために,現在の会計基準でやっている人件費のように貼り付けましょうというのでは,「実態を表せないからどうしよう」「これは社会に対してセグメント別の経済的実態を表していないから,そこに基準を設けましょう」という流れでできてきたもので,これは会計処理ではなく注記に落とし込むための基準だというふうに私は理解しています。会計処理は,あくまでも計算書類の中で現在の貼り付け方式,これは補助金の仕方が変わればまた別ですけれども,補助金の交付が貼り付けで学部・学科別に計算される,また設置基準も学部・学科別に専任教授等の人数が決まるということが変わらない限り,会計処理については現行がそのまま行くのだろうと思っています。セグメントは会計処理に直接影響しないだろうというふうな理解をしていますが,どうなのでしょうか。そういう意味ではダブルスタンダードではないという理解です。
【村松委員】 ありがとうございます。私どもは医学部病院を持つ大学学校法人という位置づけなのですが,そうすると大学における医学部あるいは病院があります。当然医療と医学的な教育研究は一体だよねという,大学の経営としてもそういう経営でやっているものですから,そもそもそれを切り分けて別々の収支を弾くこと自体に意味があるのかという個人的な疑問を持って臨んでいます。報告書の中にも同じような議論があり,私も共感しながら読んでおりましたが,その部分は議論の俎上にはないという考え方・・・。
【佐野委員】 個人的な意見なのですが,医療収入や医療経費については,現行の会計基準の中でも,教育研究経費の中の医療経費支出というのは固まりでありますし,医療収入も収入の付随事業のところに固まりでありますので,それを持ってくればいいだろうと思っています。人件費は別で,医学部と附属病院を持っている計算書類を拝見しましたが,内訳表までホームページで開示している学校はありません。内訳表まで開示していれば,附属病院の人件費がどうなっているのかが見えたと思いますが,わかりませんでした。しかし,いろいろと話を聞いている限りでは,いわゆる附属病院で従事している人の人件費は,職員と競合することはないと現場で伺っています。そういう実態について,この場でできる限り意見交換して,人件費について無理のないところに持っていけば,附属病院に関しては,私は医療収入・医療経費が現在でも分かれているので,それだけでもよいだと思っています。
【村松委員】 おそらく,具体的な配分方法をどうするのかというところから,また遡って分けるのがいいのかどうかという議論は,どこかであってもいいと思います。
報告書の中で私も気になったのは,要するにセグメント情報を細かく出すことによって,先ほどのステークホルダーにしっかり理解していただけるのかどうかというところは,非常に重要なポイントではないかと思います。ある意味では法人全体の収支を切り分けるという作業になります。これは計上方法として重要だということは,先ほども言ったとおりですが,例えば病院の患者がこれを見たときに,病院の部分に大きな赤字があったときにそれをどう感じるかです。もちろん企業会計であれば,採算の悪い部門は廃止してもいいし,売り払ってもいいと思いますが,学校法人の場合は基本的にできないはずなので,そのときに,ステークホルダーに対して間違った情報が伝わったり,場合によっては悪意のある使い方をされて,学校ランキングのようなものを収支毎に出されて,この学部は必要ないのではないかというような議論をされることは,学校法人としては心配なのですが,そこの議論はもう終わっているという考え方でいいのでしょうか。
【稲垣委員】 少なくともセグメントに関しては,学部別は求めていないです。
【佐野委員】 今の病院の話ですか。
【村松委員】 病院の話です。学部だけではなく・・・。
【佐野委員】 でも病院に限らないと思います,ミスリードというのは。
【村松委員】 ですから,例えば小中高は一体でもいいということになっていますけれども,小中高が赤字だからいらないのではないかという議論がされないとも限りません。ただ,学校法人としては一体なので,そのあたりをどう考えるのかという議論はそもそも論みたいになってしまいますが,少なくとも報告書の中ではずいぶん議論されていたと思いました。少なくとも報告書を読んだ限りにおいては,結論まで行っていなかったような両論併記のような形になっていたかなと思っています。そのあたりは残された残課題の検討ワーキンググループということだったので,それもあるのかなと思って来ました。そこはないと考えてよろしいですか。
【畑参事官補佐】 今の議論は,在り方検討会のほうでも一通りやって,整理として結論が出たというのが我々の考えているところです。したがって,そのように決まったというのが前提で,テクニカルなところを考えていただきたいということでお集まりいただきました。
【佐野委員】 まさにおっしゃる通りですが,ここは在り方検討会よりも現場に近い会議の中で,やってもやっても新配分基準が無理だとなれば,もしかしたら考える余地はあるのかな,くらいはあってもいいのかなと。ただ,ミスリードしないような配分基準を作るという結論に落ち着いて,その方向で実務を動かしましょうという話になっているので,この会議は現場に一番近い人たちが知恵を出し合ってやるというスタートラインにしかならないのかなと思っています。やってもやっても無駄だということであれば,また考えも変わると思いますけど,それがないようにやりたいというのが,この会議の目的なんだろうと思っています。
【村松委員】 そのあたりを確認しないと議論が違う方向に行ってしまいそうな気がしたので,いろいろと質問させていただきました。ありがとうございます。
【稲垣委員】 一件補足してもよろしいでしょうか。今回の基準の中で,法人の経営に資するという目的もしっかり謳われていて,おそらく法人の経営者・運営者が,部門別によってどのような状況かということは,かなりの法人で実際に把握されていると思います。そういう意味では,経営者の考え方でマネジメント・アプローチのような企業会計で取っている方法もありますが,それは法人の比較可能性上は馴染まないだろうということで,結果的には大きな意味での拠点別に決着したという中で,一方で,先ほどおっしゃられたように「こういうセグメントは赤字じゃないか」みたいなことがあったとしても,経営者がそういう前提で法人全体を運営しているのであれば,計算書類以外の事業報告書などで「我が法人はこういう方針で運営しているんだ」ということをきちっと説明することで,いらぬ方向に行くようなことも防げるのではないかというような議論も在り方検討会の中でされていたと思いますので,そのあたりも汲んでいただければと思います。
【須賀主査】 おそらく村松委員は,病院を持っている学校法人ですから,そういった状況には神経質にならざるを得ないと思います。私どもの学校でいきますと,今回部門別のところがなくなったので,表に出てこないんですが,経営上の判断としては,いろいろある独立系の大学院である例えばロースクールなどです。ロースクールはで黒字のところはないはずですが,どのくらい赤字なのかということが表に出てきてしまうととんでもない議論になるかもしれないということで心配でした。よくよく読んでみると,部門別のものが出なくて良くなっていましたが,病院の場合は出てきてしまいます。だから心配される気持ち(意味)はよくわかります。今,残っているのが,附属高校が同じ法人の中に入っているので,附属高校がどのような形で評価されるのかは,結構重要なことで,ご心配されているところが心配でないようにするために,どのように工夫するのかについて,おそらく多くの法人で同じような課題に直面しているのだと思います。
我々の中の議論として基準を作るということで,全てがうまく前に決めたことに従って基準をうまく作っていくかということで話が終われば,それはありがたいことだと思いますが,先ほどからおっしゃっているところからして,もしかすると基準を作っていく中で,もう少し根本的なところから見直してもらわないと,ここから先は議論できないことが出てくる可能性もないことはないんだとおっしゃっていた気がしたので。
【佐野委員】 なるべく言わないようにしていますが。
【須賀主査】 我々としては,自分の学校法人をどのように経営していくかという中で,どんな情報を外部に公開されて,そこから出てくる反応について,どのように理解していったらいいのかということが,頭の隅に必ずあるはずです。なるべくそこを公開していきながらも,正しい認識を持っていただけるようなやり方に近づけられるような配分基準にしていきたいと思います。それで話を詰めていく中で,同じように先ほどの問題意識が出てくるものだと感じております。
不手際で申し訳ございません。時間も押しておりますが,いろいろな意見が出てきましたので,これから何回か相談をさせていただきながら議論を詰めていければと思っております。事務局にお戻しいたします。
【畑参事官補佐】 本日はどうもありがとうございました。私のほうからいくつかお伝えいたします。冒頭でも申し上げましたが,議事録を公開しますので,議事録案ができましたらお送りいたしますので,ご確認をお願いいたします。
また,6月以降の日程調整を行いたいと思います。明日以降にメールでご案内しますので,ご協力をお願いいたします。次回は4月10日の14時からを予定しております。場所はまだ決まっておりませんので,後日お伝えいたします。私からは以上でございます。
【須賀主査】 どうもありがとうございました。
【篠原室長】 今日のワーキンググループはこれで終了という形にさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

高等教育局私学部参事官付

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