2024/08/30

(論文)超過準備下の短期金融市場の動向と機能度

日本銀行 

超過準備下の短期金融市場の動向と機能度 ― マイナス金利政策解除後の動きも含めて ―

2024年8月30日
日本銀行金融市場局

要旨

日本銀行は、各種の非伝統的金融政策を実施する中、過去25年間の大半の期間、所要準備額を大きく上回る潤沢な資金を供給してきた。本稿では、こうした超過準備下での短期金融市場におけるレート形成および取引動向を振り返ることで、非伝統的金融政策が短期金融市場に与えた影響を評価する。

短期金融市場には、(1)イールドカーブの起点としての機能、(2)金融機関の資金過不足の調整を行う場としての機能が期待される。超過準備下では、後者の重要性は低下していると考えられるが、無担保コールO/N物レート(TONA)が金利指標として担う近年の役割を踏まえると、無担保コール市場が多様な顔ぶれで構成され、一定の取引規模が確保されていることの重要性は高まっている。

非伝統的金融政策が採用された期間は、超過準備への付利の状況に応じて、(1)2001年~から2006年の量的緩和期(第1局面)、(2)2008年の補完当座預金制度の導入~から2016年のマイナス金利政策導入までの期間(第2局面)、(3)2016年~から2024年のマイナス金利政策期(第3局面)、に大別される。このうち、補完当座預金制度が存在せず、超過準備への付利がゼロ%であった第1局面は、無担保コール市場における取引インセンティブが失われ、市場の機能度が低下した。第2局面では、補完当座預金制度が導入され、日銀当座預金の付利先と非付利先との間で取引インセンティブが発生した。こうした中、無担保コール市場の機能度は徐々に回復し、第3局面においても、市場機能は維持された。この間、GCレポ市場においても、レート形成や取引動向といった点で、市場機能は維持された。

2024年3月に「金融政策の枠組みの見直し」が決定され、マイナス金利政策が解除されると、短期金融市場は、「マイナス金利」から「プラス金利」の世界にスムーズに移行した。円滑な移行には、第3局面において、無担保コール市場の顔ぶれが多様化し、取引ネットワークが拡大したことなどが寄与している。

日本銀行が短期金利の操作を主たる政策手段としたことに加え、TONAが金利指標として担う近年の役割を踏まえると、短期金融市場の機能が維持されることは、これまで以上に重要である。日本銀行では、短期金融市場のレート形成や取引動向を今後とも丁寧にフォローし、市場の機能度に目配りする方針である。

日本銀行から

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照会先

金融市場局市場調節課

Tel : 03-3277-1234

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