水素発生と半導体応用を兼ね備えた2次元半導体ナノリボンを実現~MoS2ナノリボンで高い触媒活性とトランジスタ動作を実証~
科学技術振興機構(JST)令和7年1月9日
九州大学
名古屋大学
東北大学
筑波大学
大阪大学
産業技術総合研究所
京都大学
熊本大学
科学技術振興機構(JST)
水素発生と半導体応用を兼ね備えた2次元半導体ナノリボンを実現
~MoS2ナノリボンで高い触媒活性とトランジスタ動作を実証~
ポイント
- クリーンエネルギーの観点から水素発生触媒が必要とされているが、白金触媒は高価なため、代替となる触媒の候補として二硫化モリブデン(以下、MoS2)が期待されている。
- MoS2の極細構造(ナノリボン)を高密度に向きをそろえて合成することに成功し、ナノリボンの端(エッジ)が特に高い触媒活性を示すことを実証した。
- MoS2は高い電子移動度を示す半導体でもあり、ナノリボンのトランジスタ動作を実現し、次世代半導体として応用展開が可能であることも示した。
クリーンエネルギーの必要性から、水素への期待は高まり、効果的に水素を製造する方法が望まれています。電気化学的に水から水素を発生する方法では、白金が高い触媒活性を示すことが知られていますが、白金は希少金属で非常に高価であることが課題です。半導体性の2次元物質であるMoS2は安価で、高い触媒活性を示すことが知られていましたが、その活性サイト(反応が起こる場所)に関しては議論がありました。また、MoS2のナノシートは半導体材料としても優れており、微細化の限界に近付きつつあるシリコンデバイスに代わる次世代半導体として、近年大きな注目を集めています。
九州大学 大学院総合理工学府 博士課程のマ・ゾンペン 大学院生、同 大学院総合理工学研究院のパブロ・ソリス=フェルナンデス 特任准教授、吾郷 浩樹 主幹教授、名古屋大学 大学院工学研究科の高橋 康史 教授、東北大学 材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の加藤 俊顕 准教授、筑波大学 数理物質系の岡田 晋 教授、大阪大学 産業科学研究所の末永 和知 教授、産業技術総合研究所の林 永昌 主任研究員、京都大学 エネルギー理工学研究所の松田 一成 教授、熊本大学 大学院先端科学研究部の原 正大 准教授らの研究グループは、化学蒸着法と呼ばれる方法により2次元半導体であるMoS2のナノリボンを基板上に高密度に成長させる方法を新たに開発し、ナノスケールの電気化学的な測定を通じて、ナノリボンの端が中心部の100倍近い触媒活性を示すことを見いだしました。さらに、このMoS2ナノリボンは半導体デバイスとしても優れた電気特性を示すことも明らかにしました。本研究成果は、クリーンエネルギーの開発に寄与するとともに、次世代半導体開発に大きく貢献すると期待されます。
本研究成果は、2025年1月9日(木)に、米国科学振興協会発行の学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されます。
本研究は、文部科学省 科学研究費補助金 学術変革領域研究(A)「2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト(領域代表:吾郷 浩樹)」(JP21H05232、JP21H05233、JP21H05235、JP22H05478、JP22H05441、JP22H05448、JP22H05459、JP24H01165、JP24H01189、JP24H00478)、日本学術振興会 科学研究費補助金(JP24H00407、JP23K17863、JP21K18878、JP23H00097、JP23K1775、JP20H05664、JP19K22113、JP23H05469、JP22K18986、JP24K17708)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究 CREST(JPMJCR20B1、JPMJCR18I1、JPMJCR23A2、JPMJCR24A5)、戦略的創造研究推進事業 ACT-X(JPMJAX23DH)、創発的研究支援事業(JPMJFR203K)の助成を受けたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.61MB)
<論文タイトル>
- “Lattice-guided growth of dense arrays of aligned transition metal dichalcogenide nanoribbons with high catalytic reactivity”
- DOI:10.1126/sciadv.adr8046
<お問い合わせ先>
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九州大学 総合理工学研究院/半導体・デバイスエコシステム研究教育センター 主幹教授
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