ビール酵母細胞壁由来の農業資材の“植物活性メカニズム”解明へ
アサヒグループホールディングス 株式会社ビール酵母細胞壁水熱反応物にRCS(活性炭素種)が存在することを発見、農業分野に応用
アサヒバイオサイクル株式会社(所在地 東京、社長 千林紀子)は、ビール酵母細胞壁水熱反応物※1にRCS(活性炭素種:Reactive Carbon Species)※2が存在することを発見しました。
この研究成果について、イギリスの査読※3付き科学雑誌に論文を投稿しました。ビール酵母細胞壁水熱反応物からのRCS生成というメカニズムは特許出願中です。
ビール酵母細胞壁水熱反応物は、ビール酵母細胞壁由来の農業資材などとして2017 年から販売されてきました。この物質は、これまでも植物の生育や免疫力を高めることが確認されていましたが、そのメカニズムについては解明されていませんでした。
今回、ビール酵母細胞壁水熱反応物からRCSが生成することが明らかになったことにより、ビール酵母農業資材による植物の生育や免疫力への影響などの“植物活性のメカニズム”解明に繋がる知見が得られました。即ち、ビール酵母細胞壁水熱反応物から得られる適量のRCSが “即効性のあるポジティブストレス”を与え、植物ホルモンが内生され、植物の生育促進に効果をもたらす可能性が示唆されました。これが“植物活性メカニズム”の技術的裏付けの一つになると考えられます。
アサヒバイオサイクルでは、今回の研究成果で得られた技術的裏付けを「X-RCS(クロス アール・シー・エス)」と名付け、この技術に裏打ちされた、ビール酵母細胞壁由来の農業資材のさらなる普及を目指すと共に、メカニズムのさらなる解明を進めていきます。
*「即効」とは不対電子※4が即時に反応することを指しています
【研究の背景】
・ビール酵母細胞壁とは、ビール製造工程で発生する副産物です。発酵終了後のビール酵母の最外側に細胞を殻のように覆う部分で主な構成成分は多糖(β-グルカン、マンナン)やタンパク質などです。
・アサヒグループでは、長年ビール酵母の研究に取り組んでおり、ビール酵母細胞壁は、植物の成長や免疫力を高めることから農業資材(肥料原料)などに活用されています。本資材は農業分野やゴルフ場などの芝管理に幅広く活用され様々な有益な効果が報告されてきましたが、その作用メカニズムについて充分解明しきれていませんでした。
・農業や芝管理で本資材を使用した際の効果について、より科学的に解明し、理解を促進するために、ビール酵母細胞壁を活用した農業資材に関してこれまで研究・分析を進めてきました。
【研究概要・ポイント】
・ビール酵母細胞壁に過熱水蒸気を用いて水熱反応させた水溶液(Yeast Cell Wall treated with Hydrothermal Reaction; YCW-H)を、電子スピン共鳴分光法(ESR)※5により分析しましたその結果、RCS(活性炭素種:Reactive Carbon Species)の存在を確認できました。
・RCSは細胞に接触すると、活性酸素の発生を促進します。適量の活性酸素によるストレスが“ポジティブストレス”となり、植物ホルモンが内生されます。それが植物の免疫性を高め、発根を促進し、収量増や可食部が肥大するなどの効果につながると考えられます。
※1 ビール酵母細胞壁を沸点を超える温度に加熱した蒸気を用い、高温・高圧の水が共存する条件で化学反応させたもの
※2 炭素原子に由来する反応性の高い分子群
※3 学術雑誌に投稿された論文を、その分野を専門とする研究者が読んで内容の妥当性などをチェックし、掲載するか否かの判断材料にする評価や検証のこと
※4 通常の安定化した状態とは事なり、反応性が高く、他の物質とすぐに反応できるような状態の電子のこと
※5 活性炭素種(RCS)などの化学種の種類の同定や量の定量をするために一般的な測定手法
提供元:PRTIMES