大面積リブレット形状塗膜を施した機材を世界で初めて国際線に導入

2025/01/10  宇宙航空研究開発機構(JAXA) 

大面積リブレット形状塗膜を施した機材を世界で初めて国際線に導入
-世界初、ボーイング787-9型機での燃費改善効果を図る実証実験を開始-

2025年(令和7年)1月10日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
日本航空株式会社
オーウエル株式会社

 宇宙航空研究開発機構(本社:東京都調布市、理事長:山川宏、以下「JAXA」)、日本航空株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:鳥取三津子、以下「JAL」)、およびオーウエル株式会社(本社:大阪市西淀川区、代表取締役社長:川戸康晴、以下「オーウエル」)は、世界で初めてボーイング787-9型機(JA868J)の機体胴体の大部分にリブレット形状の塗膜を施しました。さらに、リブレット形状塗膜を施した機体を国際線として運航することも世界初であり、2025年1月中旬の就航を予定しています。

©JAXA/JAL/O’well

リブレット施工作業風景

©JAL

リブレット施工後のボーイング787-9型機

 JAL、JAXA、オーウエルの三者は、航空機の脱炭素化を推進しており、その一環として、オーウエルが改良を続けた技術である Paint-to-Paint Method(*1)により機体外板にリブレット(*2)形状塗膜を施し、その耐久性および燃費改善効果を検証してきました。2022年7月からJALの国内線機材(ボーイング737-800型機)でリブレット形状塗膜の耐久性を検証し、2023年11月からは胴体下部に大面積の施工をして燃費改善効果の確認を進めてきました(*3)(*4)。Paint-to-Paint Methodでは、塗膜に直接リブレット形状を施工するため、デカールやフィルムによるリブレット加工と比べて、重量の軽減や耐久性の向上が期待できます。

©O’well

 このたび、JAXAによる風洞試験や数値解析により国際線機材(ボーイング787-9型機相当機体)の 抵抗低減効果を確認できたこと、およびオーウエルによる機体大型化に対応できるリブレット塗膜施工システムの開発により、国際線機材の胴体上部まで施工面積を拡大し検証を進める運びとなりました。国際線機材では、長距離の飛行によりさらなる燃費改善効果が期待できます。

©JAL

リブレット施工部分(JA868J)

©JAXA

ボーイング787-9型機相当機体を用いたリブレットによる抵抗低減の効果推算解析(s+分布と表面流線)(*5)
s+:リブレットの抵抗低減率を評価するために用いる無次元数

©O’well

リブレット形状塗膜施工システム概要

 今回施工した機体では、巡航時の抵抗低減率が0.24% となり、これにより年間約119トンの燃料消費量と約381トンのCO2排出量の削減が期待されます(*6)。これはスギ約27,000本の年間CO2吸収量に相当します。
 今後、大面積施工したリブレット形状塗膜の耐久性、美観性、および長距離国際線における燃費改善効果を検証するとともに、さらなる施工範囲の拡大を目指し、三者で協力し引き続き航空機の脱炭素化を推進してまいります。

(*1)

Paint-to-Paint Method: 既存の塗膜上に、水溶性の型で塗膜に凹凸を形成する手法。オーウエルおよびJAXAの共同特許(特許第6511612号)。

(*2)

リブレット: サメ肌形状によって水の抵抗が軽減されることにヒントを得て考案された微細な溝構造。航空機の飛行時の空気の流れに沿って機体外板に微細な溝構造を形成することで、飛行時の抵抗を軽減することができる。

(*3)

2023年2月28日付プレスリリース 『JAL、JAXA、オーウエル、ニコン 世界初、塗膜にリブレット形状を施工した航空機で飛行実証試験を実施』

(*4)

2023年11月10日付プレスリリース 『リブレット形状を航空機に大面積施工し、燃費改善効果を計る飛行実証実験を開始します』外部リンク

(*5)

機体にリブレットを施工した際の空気抵抗低減効果推算技術の例。s+はリブレットの抵抗低減率を評価するために用いる無次元数で、一般的にs+が15~17付近でリブレットの抵抗低減率が最大となる。リブレットの溝方向と表面流線方向の角度の影響も考慮して推算。

(*6)

JAXAが算出した抵抗低減率と、過去1年間の成田=フランクフルト線での燃料消費量を元に算出した、当該路線を1年間飛行した場合の予測効果

以上

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