カメラを用いた予兆AIが風車の月次巡視を一部代替します

2022/10/26  Arithmer 株式会社 

風車のナセル内部を常時監視し、故障や事故の予兆を事前に察知~スマート保安の推進~

 Arithmer株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:大田 佳宏)が開発した風力発電施設における心臓部(ナセル)内部の異常を検知するAIシステムが、株式会社ユーラスエナジーホールディングス(本社:東京都港区、代表取締役社長:稲角 秀幸、以下「ユーラスエナジーHD」)が保有する高知県大豊町のユーラス大豊ウインドファームの自主点検装置として採用されました。


当社は「数学で社会課題を解決する」をMissionに掲げ、顧客やパートナーのデジタルトランスフォーメーション(DX)に寄り添うAI開発会社です。数学のコア要素技術をベースに、予兆AI、風力AI、浸水AI、ビジョンAI、レコメンドAI、業務AIなど、さまざまな最先端のAIエンジンを駆使したソリューションを開発し、これらの高度技術を自在に組み合わせることで、顧客の課題解決に貢献してまいります。

人間では発見が難しい事象(予兆)の検知により、ダウンタイムを削減。稼働率を向上します。
風力発電の発電コストを低減し、再生可能エネルギーのシェア向上に寄与します。
点検の一部をAIが代替することで、スマート保安を実現します。


開発の背景
近年、再生可能エネルギーへの注目度が高まる中、風力発電は、大規模に発電ができれば発電コストが火力発電並みといわれており、経済性が確保できる可能性がある、現在期待されているエネルギー源の一つです。
一方、故障や点検によるダウンタイム(機器が規定通りの動作をすることができない時間)の発生や、万が一の風力発電施設の事故における社会的な影響、また、風力発電機器のメンテナンス人材不足など、風力発電業界を取り巻く環境には対処すべき課題があります。
これらの課題に対し、Arithmerでは、自社の持つ画像解析技術を活用し、ナセル内部についてカメラを用いて故障や事故の予兆を検知するAIを開発し、このたびユーラス大豊ウインドファームに設置された風車8基へ正式導入されました。

特徴
風車のナセル内部にカメラを設置して定期的に画像を取得することで、常にナセル内部を監視することが可能です。取得した画像はAIを用いて解析し、人間の目では発見が難しいわずかな変化(異常)を察知することができ、問題の早期発見につながります。


【導入の効果】


風力発電用の風車の点検は、定期的に実施することが法令で定められていますが、ユーラスエナジーHDではこのほかに月に1度の自主点検(月例巡視)を実施しています。この月例巡視の点検項目には、気象状況や風車の外観点検、ナセル内部の点検などがあります。そのうち目視点検事項の一部であるナセル内部の点検について、本サービスに置き換えることとなりました。
昇塔目視を当社AIシステムに置き換えることで、巡視業務を効率化し、人的リソースの負荷低減が図られるとともに、点検時に必要となる風力発電の稼働停止を回避することができ、稼働率の向上と、それに伴う発電量の増加を見込むことができます。
また、従来は月に1度の自主点検時にしか気付きえなかったような変化(トラブル前の予兆)をほぼリアルタイムで発見できるため、故障等が発生する前に速やかな対処が可能となり、ダウンタイム(故障時やトラブルなどで発電機を止める期間)の発生が回避できること点でも、風力発電の稼働率の向上を見込めます。
これらの結果は風力発電の発電コストの低減につながることから、火力や水力、原子力等の他の発電方法よりもコスト優位性を高めることになり、ひいては、再生可能エネルギーのシェア増加につながるものと考えています。

本システムの実効性は、経済産業省の推進する「スマート保安」の観点においても有用と考えています。この技術を、巡視・運用管理がより困難な洋上風力発電機への技術展開など、AIによる画像解析技術を用いて「スマート保安」に貢献してまいります。

 ※スマート保安とは
国民と産業の安全の確保を第一として、急速に進む技術革新やデジタル化、少子高齢化・人口減少など経済社会構造の変化を的確に捉えながら、産業保安規制の適切な実施と産業の振興・競争力強化の観点に立って、官・民が行う、産業保安に関する主体的・挑戦的な取組のこと。
出典:スマート保安推進のための基本方針(スマート保安官民協議会資料:2020年6月29日)

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