全国「周年記念企業」調査(2025年)
2025年は、日本にとって戦後80年という重要な節目の年となる。我々は歴史を振り返ると同時に、未来を見据えるよい機会になりそうだ。こうした節目となる周年記念をきっかけに、創業からの歩みを振り返り、事業戦略や方針を見直す機会と捉える企業も少なくない。また、アニバーサリーとしての記念式典やCI(コーポレートアイデンティティ)の再構築、新商品の開発など早期から周年需要を見据えて準備を始める企業も見られ、今後の発展を目指す各社の取り組みに注目が集まる。
<調査結果(要旨)>
- 2025年に周年を迎える企業は15万5167社、上場企業は404社
- 主な周年記念企業 ― 神戸市東灘区に本店を構える「櫻正宗」が400周年
- 就任経緯別では、創業者と同族承継が約8割を占める
- 周年企業の取り組みとして新プロジェクトの発足や記念式典の開催などが見られる
帝国データバンクでは、2025 年以降に創業・設立から10年刻み(200周年超は50年刻み)で節目を迎える企業(個人経営・特殊法人・団体等含む)を「周年企業」として、2024年11月時点の企業データベース「COSMOS2」(約147万社)から抽出し、分析した。
2025年に周年を迎える企業は15万5167社、上場企業は404社
2025年(令和7年)に節目となる周年を迎える企業は、2024年11月時点で、全国に15万5167社あることが判明した。このうち、創業から半世紀となる「50周年」企業が2万1468社、「100周年」企業が1685社に上った。
周年企業全体のうち、上場企業は404社判明し、2005年(平成17年)創業の「20周年」が70社で最多。1995年(平成7年)創業の「30周年」が44社、2015年(平成27年)創業の「10周年」が42社と続く。
業種別でみると、「建設」が4万5922社と全体の29.6%を占めトップ。次いで「サービス」が3万8573社と全体の24.9%を占め、「建設」「サービス」で周年企業の半数超に上った。
主な周年記念企業 ― 神戸市東灘区に本店を構える「櫻正宗」が400周年
創業から400年を迎える
櫻正宗(神戸市東灘区)は、ミネラルを多く含む名水「宮水」や酒米の王者として名高い「山田錦」、優れた技術を有する「丹波杜氏」と酒造りに必要な水・米・技術の3大要素が優れた地域である灘五郷で1625年に創業した。灘五郷を代表する酒蔵の一つとして、品質第一をモットーに文化の承継をしながら11代続いている。
上場企業でみると、創業100周年ではがん領域の医薬品で国内シェアNo.1を誇る
中外製薬(東京都中央区)、野村グループの持ち株会社の
野村ホールディングス(東京都中央区)、乳製品製造の
雪印メグミルク(東京都新宿区)、50周年ではホームセンターを展開する
ジョイフル本田(茨城県土浦市)、10周年では資産運用サービスを手掛ける
ウェルスナビ(東京都品川区)などが名を連ねる。
非上場企業でみると、創業100周年では国技である相撲の継承および発展を目指す
日本相撲協会(東京都墨田区)、50周年ではアウトドア用品の
モンベル(大阪市西区)やコンビニエンスストアの
ローソン(東京都品川区)、10周年では大塚家具の創業者が運営する
匠大塚(埼玉県春日部市)や、動画配信サービス「ABEMA」を運営する
AbemaTV(東京都渋谷区)などがある。
就任経緯別では、創業者と同族承継が約8割を占める
現経営者の就任経緯が判明した全国の周年企業約7万社を分析したところ、最も就任経緯として多いのは、事業を始めた「創業者」で2万9617社(構成比42.1%)、次いで血縁者が就任した「同族承継」が2万8565社(同40.6%)となり、「ファミリー」企業(創業者および同族承継の企業)だけで約8割を占めた。うち、代表者の持ち株比率が51%以上の「オーナー」企業は1万1317社判明した。
また、周年別に就任経緯の割合を比較すると、10周年と30周年では創業者が大半を占めている一方、50周年では同族承継が約6割を占めており、世代交代の進展が見られる結果となった。
周年企業の取り組みとして新プロジェクトの発足や記念式典の開催などが見られる
2025年に創業100周年を迎える
雪印メグミルクは、記念事業として若手から中堅のグループ企業社員で構成された社長直轄のプロジェクト「未来ビジョンプロジェクト」を発足した。
日本相撲協会は、記念ロゴ作成のほか、25年10月には大相撲ロンドン公演を開催する。また、同年12月に100周年記念式典を予定する。
創業50周年を迎える
ローソンは、KDDIと三菱商事が株式を50%ずつ持ち合う形で24年7月に上場廃止となり、同年9月から新株主による経営体制となった。9月18日には、3社で合同会見を開き、コンビニエンスストアの利便性をテックが支える「リアル×テック LAWSON」を来春にオープン予定と発表した。
創業・設立から記念すべき節目を迎える「周年企業」。長い間企業を存続・発展させていくことは決して容易なことではない。周年を祝う記念式典だけでなく、周年で生じる需要を取り込むべく中期経営計画に記載して、早期から準備する企業もある。周年を契機に今後のさらなる発展を期待したい。