令和5年度 群馬県立病院におけるヒヤリ・ハット事例等の発生状況についてー患者さんが安心して安全な医療を受けられる県立病院を目指しますー(病院局経営戦略課)
更新日:2024年10月3日
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群馬県病院局では、4つの県立病院(心臓血管センター、がんセンター、精神医療センター、小児医療センター)において、患者さんが安心して安全な医療を受けられるよう、医療の安全を確保するための取組を行っています。
さらに、医療の透明性を高め、医療や県立病院に対する県民との信頼関係を築くことを目的に、毎年度、県立病院におけるヒヤリ・ハット事例等の発生状況について公表を行っています。
令和5年度の概況
県立4病院全体の報告件数は4,364件(前年度比128件増加)で、レベル0~3aのヒヤリ・ハット(インシデント)事例が4,317件(前年度比99件増加)、レベル3b~5の医療事故(アクシデント)が47件(前年度比29件増加)でした。レベル別の割合は、ヒヤリ・ハットが全体の98.9%を占めており、医療事故は1.1%でした。
引き続き、職員には些細なこと、軽微なことでも積極的に報告することを求め、事故等の実態や潜在的なリスクの把握に役立てていきます。
1 レベル別報告件数
レベル別報告件数一覧(単位:件)
区分 |
レベル |
4病院合計 |
心臓血管センター |
がんセンター |
精神医療センター |
小児医療センター |
令和5年度 |
令和4年度 |
増減 |
令和5年度 |
令和4年度 |
増減 |
令和5年度 |
令和4年度 |
増減 |
令和5年度 |
令和4年度 |
増減 |
令和5年度 |
令和4年度 |
増減 |
ヒヤリ・ハット (インシデント)
事例
|
0 |
1,292 |
1,277 |
15 |
162 |
131 |
31 |
346 |
293 |
53 |
398 |
539 |
-141 |
386 |
314 |
72 |
1 |
1,984 |
1,940 |
44 |
506 |
605 |
-99 |
729 |
664 |
65 |
323 |
305 |
18 |
426 |
366 |
60 |
2 |
932 |
888 |
44 |
301 |
258 |
43 |
389 |
421 |
-32 |
119 |
116 |
3 |
123 |
93 |
30 |
3a |
109 |
113 |
-4 |
27 |
20 |
7 |
28 |
31 |
-3 |
23 |
28 |
-5 |
31 |
34 |
-3 |
小計 |
4,317 |
4,218 |
99 |
996 |
1,014 |
-18 |
1,492 |
1,409 |
83 |
863 |
988 |
-125 |
966 |
807 |
159 |
医療事故 (アクシデント)
|
3b |
46 |
17 |
29 |
12 |
1 |
11 |
30 |
13 |
17 |
1 |
2 |
-1 |
3 |
1 |
2 |
4a |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
4b |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
5 |
1 |
1 |
0 |
※1
|
0 |
1 |
0 |
1 |
-1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
小計 |
47 |
18 |
29 |
13 |
1 |
12 |
30 |
14 |
16 |
1 |
2 |
-1 |
3 |
1 |
2 |
合計 |
4,364 |
4,236 |
128 |
1,009 |
1,015 |
-6 |
1,522 |
1,423 |
99 |
864 |
990 |
-126 |
969 |
808 |
161
|
※心臓血管センター レベル5事案について
医療法上の医療事故に該当すると判断し、医療事故調査制度に基づき医療事故調査・支援センターに報告のうえ、医療事故調査委員会を立ち上げ、原因究明・再発防止のための検討を行いました。
当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったもの。
|
ヒヤリ・ハット事例及び医療事故の定義
日常の診療過程で患者に影響を及ぼすことはないもの又は軽度な影響にとどまるが、医療従事者がヒヤリとしたり、ハッとした事例
疾病そのものではなく、医療に関わる場所で、医療の過程において患者に影響を及ぼした事象
医療行為や管理上の過失の有無を問わず、下記に掲げる場合を含む
- 死亡、生命の危険、病状の悪化等身体的被害並びに苦痛及び不安等の精神的被害が生じた場合
- 患者が転倒し負傷した場合等、医療行為とは直接関係しない場合
- 注射針の誤刺等により、医療従事者に被害が生じた場合
- 院内感染が生じた場合
- 医薬品の盗難又は紛失等、人身事故につながる可能性のある場合
- 無断離院、対人暴力、器物破損等が発生した場合
※医療過誤
医療事故の一類型であって、医療従事者が負うべき業務上の注意義務に違反し、患者に被害を発生させる等、医療事故の発生の原因に、医療機関又は医療従事者に過失があるもの
2 レベル別報告割合
3 内容別報告割合
- 内容別では、県立病院全体において「観察(構成比:12.9%)」、「ドレーン・チューブ類の使用・管理(構成比:10.6%)」「検査(構成比:10.3%)」の順に報告が多くなりました。
- 病院別では、心臓血管センター及びがんセンターにおいては「検査」に関する報告が最も多く、精神医療センターにおいては「観察」が、小児医療センターにおいては「ドレーン・チューブ類の使用・管理」に関する報告が最も多くなりました。
報告内容及び具体的事例
内容 |
具体的事例 |
観察 |
皮膚の損傷・発赤・床ずれ等を発見した、患者の暴力行為や器物損壊があった等 |
ドレーン・チューブ類の使用・管理 |
患者が自分でチューブ類を抜いた、点滴治療の際に血管の外に薬が漏れた等 |
検査 |
薬の内服や食事を控える指示を患者が忘れ検査が遅れた、検査を受けずに帰宅した等 |
4 医療事故等のレベル区分及び公表基準
(1)群馬県病院局医療安全管理に関する規程による取り扱い
医療事故等のレベル区分及び公表基準一覧
区分 |
レベル |
継続性 |
程度 |
内容 |
公表基準 |
重大事案(※注) |
重大事案以外 |
ヒヤリ・ハット事例 |
0 |
|
|
エラーや医薬品・医療用具の不具合が見られたが、患者等には実施されなかった |
|
包括公表 |
1 |
なし |
|
患者等への実害はなかった(何らかの影響を与えた可能性は否定できない) |
|
包括公表 |
2 |
(一過性) |
軽度 |
処置や治療は行わなかった(観察の強化、バイタルサインの軽度変化、安全確認のための検査などの必要性は生じた) |
|
包括公表 |
3a |
(一過性) |
軽度 |
軽微な(簡単な)処置や治療を要した(消毒、湿布、鎮痛剤の投与など) |
|
包括公表 |
医療事故 |
3b |
(一過性) |
中等度~高度 |
濃厚な処置や治療を要した(バイタルサインの高度変化、人工呼吸器の装着、手術、入院日数の延長、外来患者の入院、骨折など) |
|
包括公表 |
4a |
(永続的) |
軽度~中等度 |
永続的な障害や後遺症が残ったが、有意な機能障害や美容上の問題は伴わない |
|
包括公表 |
4b |
(永続的) |
中等度~高度 |
永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容上の問題を伴う |
個別公表 |
包括公表 |
5 |
死亡 |
|
死亡(原疾患の自然経過によるものを除く) |
個別公表 |
包括公表 |
(※注)明らかに誤った医療行為が原因となって発生した場合など
(2)群馬県立病院医療事故等公表基準による取り扱い
- 包括公表 対象事例について、当該年度1年分を一括して翌年度に公表する。
- 個別公表 対象事例について、群馬県立病院医療事故等公表基準により個別に公表する。
<参考> 各病院における医療安全に係る活動事例
県立4病院では、ゼネラルリスクマネージャーを中心に、院内医療安全管理委員会や下部組織の各種委員会において事例分析や対策の立案を行い、日々、医療安全対策を実施しています。令和5年度の活動事例は次のとおりです。
(1)心臓血管センター
医療安全推進週間(全部署職員参加で5S活動の実施)
毎年、全部署が「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ・習慣化」の5S活動に取り組んでいる。5S活動は、行動が継続されなければ意味がないため、時間や労力をかけずに誰でも実施可能な方法や工夫を行い、職場の安全性確保に繋げている。
各部署の取組の成果発表は、動画を作成し、職員に対しては電子カルテ内に、患者・ご家族様に対しては外来待合室で、医療安全推進週間に動画放映をした。各部署の工夫を凝らした発表により、院内では「他部署を知る良い機会になった」という感想も聞かれた。また、院外の方にも当院の安全活動を知って頂く機会となった。
(2)がんセンター
集合訓練の取組(救命処置編)
急変時の緊急対応訓練は毎年実施しているが、コロナ禍では大人数の対面研修や訓練の開催が困難であったため、看護師中心の訓練が主で、コメディカル(医師・看護師以外の医療従事者)の参加機会は少なかった。しかし、医師や看護師が迅速に対応できる環境が整っていても、急変事案発生時にはコメディカルも緊急対応に関わる可能性がある。
COVID-19が5類となった令和5年度は、院内リスクマネジメント委員会が主体となって、集合研修を再開した。BLS訓練(心停止や呼吸停止などの緊急事態における基本的な救命処置を習得するための訓練)やICLS訓練(心停止などの急性心疾患に対する初期対応の訓練)を複数回開催した。コメディカルを含め、訓練を受けたスタッフが自らの部署で救命処置について啓発と実践を進めている。
(3)精神医療センター
KYTの取組
KYT(危険予知トレーニング)とは、まだ発生していないが、状況に潜んでいる、目には見えていない危険を察知する能力(=リスク感性)を高めるための訓練である。KYTを展開することで導き出された複数の対策の中から、「私たちはこれで行こう!」という取組を決めて実践した。危険を予測して対処することで医療安全活動に役立てている。
(4)小児医療センター
Team STEPPS(R)導入に向けた取組
安全な環境づくりとチーム医療の推進をめざし、連携・コミュニケーション力の強化を図る目的でTeam STEPPS(R)のコミュニケーションツールを活用した取り組みを行った。
「言い合える環境づくりをしよう」をテーマに、各部署で振り返りやカンファレンスの際に「デブリーフィング(情報共有とフィードバック)」を行い、スタッフ同士で気づきなどを話すことが定着した。また、「チェックバック(再確認)」の強化に取り組み、連携・コミュニケーションが円滑に行う手段としてヒヤリハット事象の削減にも繋がった。
今後は他職種間や患者家族も含めて、Team STEPPS(R)コミュニケーションツールを活用していく。
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