『業種別IT投資/デジタルソリューション市場 2024年版』まとまる(第24080号)

2024/08/29  株式会社 富士キメラ総研 

『業種別IT投資/デジタルソリューション市場 2024年版』まとまる(2024/8/29発表 第24080号)

IT・DX関連の投資額を業種別に調査

■2028年度予測
■IT投資額は26兆4,447億円 内DX関連は6兆8,730億円(DX比率:26.0%)
デジタルイノベーションの実現や人手不足などの対策として、DX関連の投資が活発化
  • 金融業 システムのモダナイズ化が加速
  • 物流/運輸業 バリューチェーン全体の投資期待
  • 建設業 政府主導でデジタル化推進
  • 不動産業 法改正対応などで電子化進展

マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋 TEL:03-3241-3490 社長:田中 一志)は、深刻化する人手不足の解決、生成AIの活用、DXの広がりなどから拡大が予想される、国内産業におけるIT投資額を調査した。その結果を「業種別IT投資/デジタルソリューション市場 2024年版」にまとめた。
この調査では、国内産業を9業種に分類し、IT投資やその中でのDX関連投資の動向、企業規模別や分野別の需要把握に加え、各業種で利用される業種特化型のデジタルソリューション53品目の市場を分析した。

■調査結果の概要
■国内IT投資額

コロナ禍で先送りになった投資の再開や半導体関連での大規模投資、インバウンドを含めた人流の回復などを背景とする設備投資の拡大によりIT投資額は増加している。従来型IT投資は既存システムのダウンサイジングやクラウド化もみられるが、人手不足への対応やコスト削減を目的とした効率化が進められることで安定した推移が続くとみられる。また、デジタルイノベーションの実現や人手不足解消などを目的としてDX関連の投資が活発となり、2028年度のIT投資額は26兆4,447億円が予測される。
業種別では、投資額が大きいのは製造業で、次に金融業が続く。製造業では、製造DX推進とサプライチェーン関連のIT投資が増えており、今後は生成AI関連での投資増加が期待される。
分野別では、業務システム系はDXの足固めとしての需要が堅調である。営業・マーケティング系は顧客接点の多様化への対応や営業の量/質向上を目的に投資が進み、特に小売/卸売業や金融業で高成長が予想される。また、業務のデジタル化に伴い、サイバー攻撃が事業に与える影響度が高まるため、セキュリティ領域への投資も伸びるとみられる。
企業規模別では、大手企業はDX推進や業務効率化などにより伸びている。特に、物流/運輸業は2024年問題対策、製造業はスマートファクトリー実現に向けた投資が進展している。中堅・中小企業はITリテラシー向上に加え、大手よりも事業への影響度が高い人手不足対策を目的としたIT投資が増えている。
■DX関連投資額
2023年度2028年度予測2023年度比
DX関連4兆1,316億円6兆8,730億円166.4%
IT投資額に占めるDX比率18.9%26.0%
国内のIT投資額のうちDXに関連したものは、2023年度で4兆1,316億円となった。企業や社会が抱えるさまざまな課題解決を目的として、業種を問わずDX関連への投資が増加しており、大手企業のみならず中堅・中小企業へと裾野が広がっている。今後もデータ活用による経営管理の高度化、新規ビジネスの創出、現場課題の解決に向けたDXの投資などが増加していくとみられる。2028年度には6兆8,730億円が予測され、IT投資のうち26.0%がDX関連になるとみられる。
■注目業種
■金融業
2023年度2028年度予測2023年度比
IT投資額3兆7,500億円4兆4,940億円119.8%
DX関連7,200億円1兆1,680億円162.2%
コロナ禍を経て業務のデジタル化が進んでおり、現在は、業務の自動化や効率化、脱店舗化に向けたIT投資が増えている。また、勘定系システムなどメインフレーム基盤を提供するベンダーの事業撤退や料金の値上げなど、ベンダー側の動きも活発化している。これに伴い、ユーザーは他のメインフレームベンダーへの移行やクラウドも含めたオープン化に向けた検討を進めており、メインフレームのモダナイズ化や、将来的には基幹システムのSaaS化が進むとみられる。
DX関連では、デジタルバンキングなど金融サービスの多角化対応、ブロックチェーンなどの技術を活用した、より安全・安心な金融取引の実現などに向けた投資が増えるとみられる。
■物流/運輸業
2023年度2028年度予測2023年度比
IT投資額8,867億円1兆847億円122.3%
DX関連3,000億円4,650億円155.0%
ほかの業種と比較しIT投資は遅れていたものの、2024年問題に伴う人手不足、ドライバーの属人化/高齢化などから車両運行管理システムや配車計画支援システムといった業務システム系のソリューションや物流企業と荷主企業間の情報連携を目的としたコミュニケーションツールなどの導入が増加し、投資額が増えている。
近年は走行データの収集/分析による運転効率の向上やラストワンマイルDXを中心としたDX関連の投資が増加しており、収集データを基にAIによる配送計画立案の自動化や高度化、バース予約の効率化が行われている。将来的には、小売業における需要予測システムとのデータ連携や共同配送の強化に向けた物流プラットフォームの活用が拡大することで、事業者間、サプライチェーン全体での業務効率化が図られると予想される。
■建設業
2023年度2028年度予測2023年度比
IT投資額5,740億円6,933億円120.8%
DX関連600億円1,250億円2.1倍
建設業は、デジタル化が遅い業界であったが、国土交通省が公共事業では建設プロジェクト全体の業務効率化を可能とするBIM/CIMの原則適用を指針として出すなど、デジタル化を強く推進する動きがみられる。また、2024年問題への対応や建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及など、業界全体のイメージアップを目指しさまざまな施策が進められている。
現時点では、大手企業を中心にデジタル化が進んでいるが、中長期的には中堅・中小企業を含め業界全体に浸透していき、IT投資が増えていくとみられる。特に、現場作業者を効率的に配置するための遠隔操縦や省人化を目的とした自動操縦など、建機をはじめとした建設現場のデジタル化、スマート測量などDX関連の投資が増加するとみられる。
■不動産業
2023年度2028年度予測2023年度比
IT投資額2,842億円3,687億円129.7%
DX関連530億円900億円169.8%
大手企業ではIT投資が進んでいるものの、中小企業では紙ベースでの業務も多くみられた。コロナ禍を契機にデジタル化が進展し、入居申し込みや契約の電子化、不動産賃貸業務を中心に電子化が進んでいる。業務自体は汎用性が高いことから中小企業ではSaaSの利用が進展しており、大手企業でも法制度への対応やシステム刷新を契機にSaaSへの移行がみられる。
デジタルでの業務完結を目指し、DX関連を含めてIT投資の増加が予想され、DX関連では、大手デベロッパーによる物件の付加価値向上に向けたIoTの活用やスマートシティへの投資、アプリを通じた新規ビジネス創出なども期待される。
内容の詳細につきましては『業種別IT投資/デジタルソリューション市場 2024年版』をご覧ください。
■報道関係のお問い合わせは
富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3241-3473(窓口:富士経済グループ本社 広報部)

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