高浜発電所3号機の定期検査状況について(蒸気発生器伝熱管の損傷に関する原子炉施設故障等報告書の提出)

2022/05/13  関西電力 株式会社 

2 0 2 2 年 5 月 1 3 日
関西電力株式会社

高浜発電所3号機の定期検査状況について
(蒸気発生器伝熱管の損傷に関する原子炉施設故障等報告書の提出)


高浜発電所3号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力87万キロワット、定格熱出力266万キロワット)は、2022年3月1日から実施している第25回定期検査において、3台(A、B、C)ある蒸気発生器(SG)の伝熱管全数※1について渦流探傷検査(ECT)※2を実施しました。

その結果、A-SGの伝熱管2本およびB-SGの伝熱管1本に有意な信号指示※3が認められました。このうち、A-SGの1本は、高温側の 管板※4部に内面(1次側)からの割れとみられる信号指示で、残りの1本とB-SGの1本は、管支持板※5部付近に外面(2次側)からの減肉とみられる信号指示でした。これらのほか、A-SGの伝熱管1本の管支持板部付近に外面(2次側)からの微小な減肉とみられる信号指示(判定基準未満)が認められました。

その後、伝熱管の外面減肉については、小型カメラによる損傷箇所の 外観調査結果やSG器内から回収したスケール※6の性状等の調査状況から、前回定期検査時に実施したSG器内の薬品洗浄後も残存していた稠密なスケールがプラント運転中に管支持板下面に留まり、伝熱管と繰り返し接触したことで摩耗減肉が発生した可能性が高いと推定したため、引き続き、回収したスケールの形状や性状等の調査や対策等の検討を行うこととしました。

また、伝熱管内面に有意な信号指示が認められた原因は、既往知見で ある応力腐食割れと推定しました。 なお、本件による環境への放射能の影響はありません。

※1 過去に有意な指示が認められ、施栓した管等を除き、A-SGで3,272本、B-SGで3,247本、C-SGで3,261本、合計9,780本。

※2 高周波電流を流したコイルを伝熱管に接近させることで対象物に渦電流を発生させ、対象物のきず等により生じた渦電流の変化を電気信号として取り出し、きず等を検出する検査であり、伝熱管の内面(1次側)より、伝熱管の内面(1次側)と外面(2次側)の両方を検査している。

※3 割れを示す信号や20%以上の減肉を示す信号の指示。

※4 蒸気発生器内の伝熱管が取り付けられている部品。伝熱管と管板で、1次冷却材と給水(2次冷却水)の圧力障壁となる。

※5 伝熱管を支持する部品。

※6 2次冷却水に含まれる鉄の微粒子が、SG内に流れ集まって伝熱管に付着したもの。

(2022年3月30日、4月25日お知らせ済み)

当社は、これまでの調査結果や原因と対策を取りまとめ、本日、原子力規制委員会に原子炉施設故障等報告書を提出しました。

今後、原子力規制委員会が当該報告書の確認を行うことから、当社は、真摯に対応してまいります。

1.外面からの信号指示があった伝熱管の調査

伝熱管の外面減肉については、高浜発電所3号機および4号機の前回、前々回の定期検査においても同様の事例が発生しており、至近の調査の結果、原因はスケールによるものと推定しています。このことから、 小型カメラによる損傷箇所の調査に加え、改めてSG器内のスケールの形状や性状の調査および伝熱管の外観観察等を実施しました。 また、前回の定期検査において、スケールの脆弱化を図るために実施した薬品洗浄の効果について調査しました。

(1)信号指示が認められた箇所の外観調査

小型カメラを用いた外観観察の結果、有意な減肉信号指示が認められた伝熱管2本および微小な減肉信号指示が認められた伝熱管1本に、信号指示箇所の伝熱管の周方向に摩耗減肉とみられるきずを確認しました。

その大きさは、A-SGの伝熱管で、幅1mm 以下、周方向に約3mm~5mm、B-SGの伝熱管で、幅1mm 以下、周方向に約3mm であることを確認しました。

なお、きずの周辺にはスケール等の付着物は認められなかったものの、当該伝熱管周辺の管支持板下面に接触痕を確認しました。

(2)SG器内のスケールの残存状況等の調査

小型カメラを用いて、A、B-SGの管板から第7管支持板上面の調査を行った結果、スケールおよびスラッジ※7が残存していることを確認しました。 また、C-SGについても管板から第2管支持板上面の調査を行った結果、A、B-SGと同様に、スケールおよびスラッジが残存していることを確認しました。

※7 スケールが砕けて小さくなったもの。

(3)SGから回収したスケールの形状および性状の調査

A、B、C-SGの管板、第1管支持板および第2管支持板上面等に 残 存 し て い る ス ケ ー ル の う ち 、 比 較 的 大 き な も の を 選 定 し 、 約200個を取り出しました。

(スケールの形状)

各SGの第1管支持板および第2管支持板上面等から取り出した スケールは、主に多角型、長尺型に分類され、長さが最大のものは、前者が長さ約17mm、幅約10mm、後者が長さ約47mm、幅約4mm であり、大半のスケールは管支持板の流路穴よりも大きく、運転中に 管支持板下面の伝熱管の隙間に留まることが可能な形状でした。

また、これらのスケールについては、目視確認の結果、やや湾曲した形状をしており、そのうち各SGから取り出した9個のスケールにつ い て 3 次 元 測 定 器 等 に よ り 計 測 し た 結 果 、 直 径 約 2 2 . 3 ~ 22.6㎜の円筒状に沿った形状であり、伝熱管(円筒)の外径 (直径22.2㎜)に近いことを確認しました。

(スケールの性状)

スケールの化学成分分析を実施した結果、主成分はマグネタイトで、SG器内で発生するスラッジと同成分であることを確認しました。

スケール120個を対象に断面観察を行った結果、稠密層(密度の高い酸化鉄の層)が主体のスケールを42個確認しました。

また、スケール50個を対象(約 10mm×5mm 以上)に摩耗試験を行い、伝熱管とスケールの摩耗体積比を調査した結果、伝熱管の減肉量が スケール摩滅量よりも大きくなるスケールを1個確認しました。

なお、今回取り出したスケールについては、今後、追加の3次元 測定器等による計測、断面観察および摩耗試験を実施し、スケールの形状や性状に関する知見の拡充に努めます。

(4)SG器内の伝熱管表面の観察結果

SG器内のスケールの残存状況等の調査に合わせ、伝熱管の外観観察を行った結果、ほぼ全ての伝熱管は全面的にスケールに覆われていました。

また、一部の伝熱管は局所的にスケールが剥離した痕跡等も認められました。

これらの状況については、高温側と低温側(水平方向)、管支持板間(上下方向)において有意な差は認められませんでした。

(5)前回の定期検査における薬品洗浄の効果等の調査

(前回の薬品洗浄の結果)

前回定期検査における薬品洗浄時の条件を確認した結果、温度管理や薬品濃度管理(1回目:伝熱管の第3管支持板以下を薬品濃度3%で洗浄、2回目:伝熱管全域を薬品濃度2%で洗浄)が計画通り実施されていました。

また、薬品洗浄により、SG1基あたり約670㎏の鉄分を除去できていました。

この結果、伝熱管に付着したスケールが減少したことにより、熱伝達率が改善し、前運転サイクルでは主蒸気圧力が向上しました。

(薬品洗浄の効果)

工場において薬品洗浄の再現試験を実施した結果、スケール近傍に スラッジが存在する場合、薬品洗浄によるスケールの脆弱化効果が 低減することを確認しました。

また、SG器内の構成部品に大きな影響を及ぼすことなくスケールの脆弱化を図る薬品洗浄条件について検討した結果、薬品濃度3%でSG伝熱管全域の洗浄を2回に設定しました。

(6)SGの運転履歴調査

スケールの生成には、SG器内への鉄イオンや鉄微粒子の持ち込み量が関係していることから、運転時間や水質管理の履歴等について 調査を行いました。

(運転時間)

高浜発電所3号機のSGは、運転開始以降23.2万時間の運転を行っています。

また、前回および前々回の定期検査において伝熱管の外面減肉が 認められた高浜発電所4号機も前回の定期検査時点で22.2万時間の運転実績があり、大飯発電所3、4号機や蒸気発生器の交換を行った美浜発電所1~3号機、大飯発電所1、2号機、高浜発電所1、2号機よりも運転時間が長いことを確認しました。

(水質管理履歴)

2次冷却水系統は、溶存酸素、電気伝導率等を管理し、またpHを 高く維持することで給水設備からの溶出による鉄イオンや鉄の微粒子の持ち込みを抑制しており、これらの履歴からも水質管理に問題がないことを確認しました。

しかしながら、高浜発電所3、4号機は運転時間が長いことなどから、SG器内に持ち込まれた鉄分の積算量は、他プラントに比べ多いことを確認しました。

(長期停止の影響)

福島第一原子力発電所事故後、高浜発電所3号機は、2012年 2月に定期検査のため停止し、その後、2016年2月に発電を再開するまで約4年間、長期停止しています。その間、SG器内は、腐食防止のためヒドラジン水による満水保管にしていました。

この状態がスケールに与える影響を調査するため、SG器内から 回収したスケールをヒドラジン水に浸す試験を実施した結果、時間の経過とともにスケールを構成する鉄粒子が結合し粒径が大きくなることを確認しました。

高浜発電所3号機では、他の発電所と同様に、定期検査毎に管板上の清掃(スラッジランシング)を行い、スケール等を回収しています。

長期停止前後の定期検査における回収量を調査した結果、長期停止前はSG3基から約13kg のスケール等を回収しましたが、長期停止後の前回定期検査時には約20kg と増加していることを確認しました。

これらのことから、長期停止に伴い、スケールの粒径が大きくなることで、伝熱管との接触面積が減少し、プラントの運転等に伴い伝熱管から剥離しやすくなったものと推定しました。

(7)異物混入の可能性の調査

SG器外の系統を対象に、SGブローダウン系統およびタービンサンプラインの仮設ストレーナ等の開放点検を実施した結果、異物は 確認されませんでした。

また、小型カメラによりSG器内の管板から第7管支持板の間の 調査を行った結果、異物は確認されませんでした。

(8)減肉メカニズムの検討

工場における再現試験等の結果、SG器内の2次冷却水の流れにより、スケールの形状によっては管支持板下面に留まることを確認しました。

また、伝熱管がプラント運転に伴い振動することでスケールと繰り返し接触し、摩耗減肉が発生することを確認しました。

2.内面からの信号指示があった伝熱管の調査

内面からの信号指示が認められた伝熱管については、信号指示の場所が高温側管板部上端付近であり、従来と同様に応力腐食割れと考えられるため、過去の調査結果や運転履歴の調査を実施しました。

(調査結果)

高浜発電所3号機では、2000年の第12回定期検査以降、これまでの定期検査の中で、伝熱管24本に高温側管板拡管部で損傷が確認されており、原因は、SG製造時に伝熱管内面からローラ拡管※8を実施した際に伝熱管内面に局所的に生じた引張り残留応力と運転時の内圧および温度環境が相まって生じた応力腐食割れであると推定されています。

今回の有意な信号指示も、高温側管板部のローラ拡管上端部付近において、伝熱管の軸方向に沿った内面きずを示しており、過去の事例と 特徴が類似していることを確認しました。また、1次冷却材の主要パラメータである温度、圧力、水質について調査を行い、これまでの運転実績の中で、過大な応力を発生させる温度、圧力の変化はなく、水質も基準値の範囲内で安定していたことを確認しました。

なお、高浜発電所3号機では、2001年の第13回定期検査において、伝熱管の高温側管板拡管部内面にショットピーニング※9を施工し、伝熱管内表面の引張り残留応力を改善しています。しかしながら、この施工では、伝熱管内表面近傍(深さ約0.2mm まで)の引張り残留応力は改善されますが、これより深い部分では効果が小さいことが知られています。

このため、ショットピーニング施工時に、渦流探傷検査の検出限界未満(深さ約0.5mm 未満)の微小なきずが既に発生していた場合、時間の経過とともにきずが進展する可能性があると推定しており、高経年化技術評価でも当該箇所での応力腐食割れの検出が否定できないとしています。今回の損傷についても、このような応力腐食割れが進展し、 検出されたものと推定しています。

※8 伝熱管内部に機械式ローラを通すことで伝熱管を押し広げて、伝熱管と管板を接合させる工程。

※9 伝熱管内面に小さな金属球を高速で叩き付けることにより、伝熱管内面の引張り残留応力を圧縮応力に改善する工事。

3.推定原因

伝熱管の外面減肉が認められた原因は、これまでの運転に伴い、伝熱管表面に生成された稠密なスケールが前回定期検査時の薬品洗浄の後もSG器内に残存し、プラント運転中に管支持板下面に留まり、その スケールに伝熱管が繰り返し接触したことで摩耗減肉が発生した可能性が高いと推定しました。

また、伝熱管内面に有意な信号指示が認められた原因は、既往知見である応力腐食割れと推定しました。

4.対策

(1)外面からの摩耗減肉(洗浄条件の検討)

今回の調査結果を踏まえ、薬品洗浄前にSG器内のスケールおよびスラッジを可能な限り除去するため、小型高圧洗浄装置を用いて 管支持板の洗浄を実施します。

その上で、SG器内のスケールの脆弱化を図るため、前回より薬品量を増やした条件(1回目、2回目ともに伝熱管全域を薬品濃度3%で洗浄)で薬品洗浄を実施します。

(2)内面からの応力腐食割れ

今後も、定期検査毎に実施する渦流探傷検査により、伝熱管内面からの応力腐食割れを早期に検出します。

(3)伝熱管の施栓

きずが認められた伝熱管4本については、高温側および低温側管板部で閉止栓(機械式栓)を施工し、使用しないこととします。

以上

公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2022/pdf/20220513_1j.pdf

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