岸田内閣総理大臣記者会見
更新日:令和5年6月21日
総理の演説・記者会見など
【岸田総理冒頭発言】
本日、150日にわたる通常国会が閉会しました。この間、世界で、また国内で、実に様々なことがありました。それら一つ一つに真摯に向き合い、また、お約束した政策の実現に、正面から向き合ってまいりました。
政府として提出した予算及び今国会への内閣提出法案60本中58本が成立するなど、過去10年の通常国会と比べてみても、高いレベルで堅実な成果を残すことができました。関係者の御協力に感謝いたします。
国会閉会という節目に当たり、一つ一つの政策もさることながら、私が内閣総理大臣として、今年の上半期、どのような思いで政権運営に当たってきたかについてお話をさせていただきます。
私たちは、何十年に一度と言われるような難しい課題が次々と複合的に生じる、その真っただ中にいます。G7広島サミットでも、時代の転換点、そして複合危機は、各国首脳に共通するキーワードでした。そうした中にあって、私はこの上半期、2つの思いを特に大切にしてまいりました。第1に経済成長への思い、第2に外交・安全保障への取組強化への思いです。
1つ目の思いは、30年間続いてきたデフレ経済、コストカット経済から脱却し、未来への投資によって成長する経済をつくり上げ、賃上げが当たり前となる経済に向けた道筋を着実にしたい、このチャンスを決して逃してはいけないということです。
岸田政権では、一昨年の政権発足以来、新しい資本主義を掲げ、賃上げを含めた人への投資と、官民連携による設備投資や研究開発投資の促進を二本柱の基本として、新しい資本主義実行計画、スタートアップ育成5か年計画、資産所得倍増プラン、そして、三位一体の労働市場改革の指針と具体的政策を着実に進めてきました。
特に、今年の前半は、こうした経済の好循環に踏み出せるかどうかの正念場だとの強い思いを持って、8年ぶりの政労使の意見交換の場の開催を始め、経済の好循環に向けた様々な働きかけを行ってきました。また、中小企業の人件費が円滑にコストとして大企業に転嫁できるよう、公正取引委員会の監視機能をフルに活用し、価格転嫁対策も強力に講じています。
こうした政策的対応もあって、足元では、全体で3.66パーセント、中小企業でも3.36パーセントという、実に30年ぶりの高い水準の賃上げや100兆円を超える国内投資など、企業の高い投資意欲の発揮、そして、33年来の高い株価水準など、日本経済には前向きな動きが着実に生まれています。
他方で、世界的にエネルギー・食料品価格が高騰する中、まだ賃金が十分上がっていない、生活は楽になっていないと思われる方も多いと思います。鍵となるのは、一過性でない、構造的賃上げです。新たな時代に合わせた学び直しを行うリ・スキリング、日本型の職務給の導入、成長分野への円滑な労働移動、この3つを三位一体の改革として進めていくことで構造的賃上げを実現していきます。
最低賃金についても、今年は全国加重平均1,000円を達成することも含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会でしっかりと議論いただきたいと考えています。また、この夏以降も着実に引上げを行っていくべく、1,000円達成後の方針についても議論を行っていきます。
同時に、価格高騰のショックを和らげるため、住民税非課税世帯等への給付金、ガソリン・電気・ガス価格の激変緩和対策といった、過去に例のないような措置を講じてきており、引き続き落ち着きを取り戻しつつある国際原油・ガス市場等の動向を踏まえつつ、国民目線に立った対応を進めてまいります。
改めて申し上げます。デフレ経済からの脱却、賃上げが当たり前となる経済に向けた道筋を着実なものとするため、今後もあらゆる施策を総動員してまいります。その際、今国会での成果を礎として、今後、次のような課題に真正面から取り組んでいきたいと考えています。
第1に、国内投資の活性化に向けた更なる取組です。
世界各国は、例えばGX(グリーン・トランスフォーメーション)の分野において過去に類を見ない、大胆な政策に着手しており、我が国でも150兆円規模のGX投資を官民で実現していくため、2つのGX法案をこの国会で成立させたところです。今後、この法律の下、例えば我が国が強みを持つ水素エネルギー活用の基盤を整えるとともに、水素と化石燃料との価格差に着目した支援制度等について、所要の法制度を早急に整備します。
また、公共インフラや建築物の壁面などに貼り付けられる、ペロブスカイト型太陽電池など、日本発の新技術の開発を強く後押しし、欧米やアジアの国々と、普及や標準づくりの協力を進めていきます。
投資はGXにとどまるものではありません。半導体、バイオ、フュージョンエネルギー、AI(人工知能)など、年末に向けて、予算、税制、規制のあらゆる面で、世界に伍(ご)して競争できる投資支援パッケージをつくってまいります。
観光、インバウンドについては、2025年に向けて観光のV字回復を確かなものとするため、新時代のインバウンド拡大アクションプランに基づき、ビジネスや教育・研究、文化芸術・スポーツ等の広い分野で、市場規模を拡大していきます。
農林水産業についても、食料安全保障の確立を含めた新たな展開方向を取りまとめたところであり、農政の憲法である食料・農業・農村基本法の改正に向けて作業を加速し、農政を転換し、投資を促進していきます。
第2に、デジタルの力をフルに活用した令和版デジタル行財政改革です。
少子高齢化、脱炭素、安保情勢の変化など、新たな時代環境に適応していくために、政府の事業規模は、世界のどの国においても拡大しています。全体の公務員数を増やさずに、国民や事業者から見て、便利で使いやすい、効率的な行政に組み直すための改革が不可欠となっています。今、世界的に求められているのは、筋肉質の組織を持ちながら、広範な機能を担う、小さくて大きな政府です。
国を頂点とする上意下達の仕組みを、国がデジタルによって地方を支える仕組みに転換する。国が共通のデジタル基盤を設計し、その上で、住民や事業体と直接の接点を持つ自治体やNPO(特定非営利活動法人)が、一人一人にきめ細かいサービスをスピーディーに行う。デジタル技術の広がりがなかった昭和の時代の行革は、中央省庁再編、民営化、地方分権などでした。令和の時代に求められるのは、デジタルの力を全面的に活用し、個々の国民に個人レベルできめ細かく対応することを最優先にした抜本的な改革です。
このために、ユーザー視点に立って制度や組織を一体的に変える。また、国と地方の役割を再定義していく。政権の優先課題として、こうした令和版デジタル行財政改革に挑戦をしていきます。
こうした取組を進める上で大きな役割を担うのは、デジタル社会のパスポートであるマイナンバー、マイナンバーカードです。今国会で成立した改正マイナンバー法は、このデジタルパスポートを推進するものです。
マイナンバーについては、今週に入っても、健康保険証、年金情報に続き、障害者手帳情報について、個人情報の照合ミスにより、マイナンバーの紐(ひも)づけに誤りがある事案が確認されました。
こうした事態を重く受け止め、本日、政府内にマイナンバー情報総点検本部を設置し、マイナンバー制度を所管するデジタル庁、対象となる情報を多く所管する厚生労働省及び自治体との連絡調整を担う総務省が連携して、政府全体で総点検と再発防止を強力に推進することといたしました。私から、国民の不安を払拭するため、コロナ対応並みの臨戦態勢で、政府横断的に取り組むことを指示いたしました。
その上で、改めて次の3点について、河野大臣及び関係大臣に指示いたしました。
1点目、マイナンバーに関する手続について総点検を行います。一連の誤り事案が確認された関連データだけでなく、個人情報保護の重要性を踏まえ、マイナポータルで閲覧可能となっている全てのデータについて、本年秋までをめどに総点検を行います。
2点目、再発防止を徹底するため、マイナンバーの確認、氏名・住所・性別・生年月日の4情報を全て照合する手続への統一など、マイナンバー登録に係る政省令の見直しを本年秋までをめどに行います。
3点目、来年秋の保険証廃止への国民の不安を重く受け止めており、現行の保険証の全面的な廃止は、国民の不安を払拭するための措置が完了することを大前提として取り組みます。その際、来年秋に廃止することを予定していますが、法律に規定されているとおり、その後最大1年間、2025年秋まで、猶予期間として、発行済みの保険証を使えることとしています。この期間を活用して、国民の不安を払拭してまいります。
デジタル社会への移行のためには、国民の信頼確保が不可欠です。一日も早く国民の皆様の信頼を取り戻せるよう、政府を挙げて取り組んでまいります。
第3に、少子高齢化、人口減少社会への対応です。
2030年までが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスです。先日の会見で詳しくお話ししたとおり、不退転の決意をもって、経済成長と少子化対策を車の両輪としてスピード感を持って実行に移していきます。
そして、さらに、女性、高齢者の活力発揮に取り組んでまいります。人口減少社会を迎えている中で、女性、高齢者の方々に活力を発揮していただくことは、ますます重要になっています。
先般、「女性版骨太の方針2023」を取りまとめました。女性がライフプランに合わせて、多様で柔軟な働き方ができるような環境の整備、男女間の賃金格差の是正、いわゆるL字カーブの解消、企業等での登用促進などに全力で取り組んでまいります。
また、国民全体の関心事であり、特に高齢者や御家族の皆様にとって切実な課題である認知症への対応については、政府を挙げて、そして国を挙げて、先送りせず、挑戦していくべき重要な課題であると考えています。今月成立した認知症基本法も踏まえて、日本の新たな国家プロジェクトとして取り組んでまいります。
以上、私がこの上半期に特に大切にしてきた経済成長への思いについて述べました。
次に、私が上半期に特に大切にしてきた思いの2つ目は、外交・安全保障への取組強化への思い、すなわち、国際社会における我が国の存在感を引き上げ、我が国の安全と国民の命を断固として守り抜いていくということです。
今、世界では、国連安保理の常任理事国が隣国を武力で侵略するという想定外の事態が起こっています。北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、頻度、内容ともに各段に深刻化しています。日本を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑な環境にあります。ウクライナは明日の東アジアかもしれない、そうした強い危機感から、私は、3月21日、ウクライナを訪問しました。そして、ゼレンスキー大統領と共に、力による現状変更は決して許されないというメッセージを国際社会に訴えました。
また、5月には、議長としてG7広島サミットを開催し、平和国家・日本の意欲と覚悟を全世界に発信いたしました。G7の存在意義を大いに発揮し、グローバルサウスとの関与、ウクライナとの連帯に加え、国際社会の在り方そのものへの根本的な強いメッセージを発信する場となったと確信しています。
G7のみならず、各地域からの招待国との間でも合意した、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を確保し、日本の国益を増進させるための外交を今後とも積極的に展開いたします。
来月、諸般の事情が許せば、リトアニアで開催されるNATO(北大西洋条約機構)首脳会議に招待されているため出席し、そしてベルギーにおいて日・EU(欧州連合)首脳会談を行います。そして、その後、中東のサウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、カタールの3か国を訪問する予定としています。そして、秋以降はG20(金融・世界経済に関する首脳会合)ニューデリーサミットや国連総会、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会合、日・ASEAN(東南アジア諸国連合)特別首脳会議など、グローバルサウスを含む国際的パートナーと連携する機会が続きます。
また、中国との間では、建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていくため、私自身も含め、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を図っていきます。
さらに、北朝鮮との間では、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたいと考えています。拉致問題の解決に向けて全力で果断に取り組んでまいります。
あらゆる外交手段をフル活用し、国際社会の平和と安定に貢献していくとともに、日本にとって最もふさわしい形での国際秩序の維持・強化に努めてまいります。
積極的な外交活動の展開によって、その裏付けとなる防衛力の整備も重要です。一昨年から議論を積み重ねてきた防衛力の抜本的強化も併せて進めます。5年間で43兆円の防衛予算確保や防衛産業の基盤を強化する法案も、今国会で成立いたしました。断固として、あらゆる事態から国家、国民を守り抜いてまいります。
岸田政権は、先送りできない課題に一つ一つ結果を出していくことを使命としています。そうであるからこそ、私自身は、今年の夏、再度、政権発足の原点、政治家・岸田文雄の原点に立ち返って、できる限り全国津々浦々の皆様の現場にお邪魔して、改めて皆様方の声を伺うことに注力していく所存です。「信なくば立たず」。私が一昨年の8月、総裁選挙に出馬する際に述べた言葉です。その言葉を胸に、今年下半期の政権運営にも全力で当たってまいります。
最後に、これから自然災害が多発する季節を迎えますが、近年、災害が激甚化・頻発化する傾向にあります。皆様には、政府や自治体の発出する情報などに基づき行動していただければ幸いです。政府としても、線状降水帯発生情報の早期発出、ダムの事前放流など、引き続き防災・減災、国土強靱(きょうじん)化を全力で進めてまいります。
以上、冒頭発言とさせていただきます。ありがとうございました。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、これからプレスの皆様より御質問いただきます。
質問される方は挙手の上、指名を受けてからお近くのスタンドマイクにお進みいただき、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、1人1問、御質問をお願いいたします。
それでは、まず、幹事社から御質問いただきます。
では、日経の秋山さん。
(記者)
日経新聞の秋山です。よろしくお願いします。
マイナンバーのトラブルについては、先ほど総点検や再発防止策について説明されましたが、2024年秋の健康保険証の廃止については反対意見が多いのも事実です。こうした反対意見に対しては、どのように答えていきますでしょうか。
また、今国会で取り沙汰された衆議院解散を見送った判断の理由と、今後、衆議院の解散時期を検討するに当たって何を考慮するのかを教えてください。自民党役員の任期満了に伴う内閣改造、党役員人事をいつに予定しているのか。また、その際、茂木幹事長ら注目となる顔ぶれについての処遇をどのように考えているのかも併せてお答えください。
(岸田総理)
まず、最初のマイナンバーについての御質問ですが、一連のマイナンバーの紐づけ誤りを重く受け止めています。本日、政府内にマイナンバー情報総点検本部を設置し、政府全体で、マイナポータルで閲覧可能となっている全てのデータの総点検を行う。そして、今後、新たな誤り事案が生じないようにするための仕組みをつくっていく。そして、国民の不安払拭のための丁寧な対応を行う。こうしたことを強力に推進することといたしました。
特に健康保険証との一体化については、来年秋の保険証廃止への国民の不安を重く受け止めており、現行の保険証の全面的な廃止は、国民の不安を払拭するための措置が完了することを大前提として取り組んでまいります。そのため、来年秋までにデータの総点検と修正作業、そして、窓口負担の取扱いなど窓口対応の円滑化、そして、マイナンバーカードや資格確認書の取扱い環境の整備、これらの措置を完了させてまいります。
新型コロナ対応で明らかになった、諸外国に比べて遅れている我が国のデジタル化を推進し、本人の受診履歴に基づく質の高い医療を実現するとともに、医療機関、保険者を含め、効率的で持続可能な医療を実現していくためには、現行の保険証を廃止し、IC(集積回路)チップつきの新たな保険証に移行する必要があると考えています。
そして、もう一つの解散・総選挙あるいは人事に関する質問ですが、先日、あれは13日の記者会見でありましたが、私は解散について問われて、岸田政権は先送りされてきた困難な課題に答えを出していくことが使命と覚悟し、政権運営をしてきた、そして、解散・総選挙についても、こうした基本方針に照らして諸般の情勢を総合して判断していく、こうお答えいたしました。
会期末に一部野党に内閣不信任案提出の動きがあり、内閣が重要法案としています防衛力抜本強化のための財源確保法の成立が不透明な状態となっていました。そうした動きを背景として、国会の情勢をよく見極めたいと申し上げたところです。15日には重要法案としている財源確保法の成立のめどが立ったと判断し、一貫して申し上げてきました先ほどの基本姿勢に沿って、この国会での解散は考えていない、不信任が提出されたら即刻否決するよう幹事長に指示をした、こういった次第であります。
そして、今後の解散や役員人事などについての御質問については、これはいずれも先ほど申し上げました岸田内閣の基本姿勢、先送りできない困難な課題に一つ一つ答えを出していく、この基本姿勢に照らして判断していく、これに尽きると思っております。現時点でこれ以上申し上げることはありませんが、この基本姿勢に基づいて御指摘の点についても考えていきたいと思っています。
以上です。
(内閣広報官)
続きまして、幹事社、篠原さん。
(記者)
テレビ東京、篠原です。よろしくお願いします。
冒頭発言について確認したいのですけれども、健康保険証の廃止についてなのですが、最大1年間の猶予を活用して、不安を払拭するということでしたけれども、来年秋の保険証の廃止という大方針自体は、これはスケジュールとして変わりないということなのでしょうか。
加えて、もう一点お伺いします。岸田総理、任期中の憲法改正を掲げていますけれども、先日の衆議院憲法審査会で自民党の上川陽子議員は、これは来年9月を想定したものではないのだとの認識を示しました。岸田総理の言う任期中の憲法改正とは、来年9月までの現在の総裁任期期間ではなくて、2期目の総裁任期も想定したものなのでしょうか。この点の認識をお願いいたします。
(岸田総理)
まず、質問の1点目については、マイナンバーについては、先ほど来申し上げているように、健康保険証との一体化、来年の秋を目指して作業を進めていく、その際に国民の不安の払拭を完了することが大前提であると申し上げております。従来の方針の下に取組を進めていく、そのように申し上げた次第であります。
2点目については、憲法改正についてスケジュールをどう考えているかということですが、これは自民党総裁選挙において、私は総裁任期に憲法改正を実現したいと申し上げたわけであります。自民党総裁選挙において、任期中に憲法を改正する、その目の前の任期において憲法を改正するべく努力する、そういった思いを申し上げたと私は考えております。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、これから幹事社以外の方から御質問をお受けします。
平本さん。
(記者)
総理、日本テレビの平本です。
1点、冒頭の発言で気になったのが、今正にまた原点に戻るという言葉をおっしゃっていましたけれども、国民の声を聴くということですけれども、今日の会見でそれを言ったというのは、原点に戻らなければいけない、最近、国民の声を聴けていないという面が総理自身感じることがあったからなのでしょうか。その1点、気になったのでお伺いしたかったのと、あと、今日の会見、上半期の振り返りが多かったですけれども、下半期についての見通しをどのように考えているのか。上半期は異次元の少子化対策であったり、G7サミットであったり、政策課題が非常に多く続いた時期だったと思います。下半期は、一体岸田政権は何を一番重視して課題解決に取り組むのか、あと、その実現に向けた戦略というものがあればお聞かせください。
(岸田総理)
1点目については、国民の声を聴く、これは私が政権をスタートさせる段階から重視してきた姿勢であります。そして、国民の声を聴きながら、最後は決断をしなければいけない、政策課題において結果を出すためには決断をしなければいけない、この繰り返しであったと思います。国民の声を聴くことの大切さ、また、決断することの難しさ、こういったものを次々と感じる、こうした月日であったと思います。ただ、改めて今、国会が閉会した、これから今年の後半、下半期を考える際に、この原点であります国民の声を聴くということの大切さ、これをいま今一度かみしめて、声を聴き、そして、先送りできない課題に一つ一つ結果を出していく、こうした取組を続けていきたい、こうした思いを改めて申し上げた次第であります。
そして、後半の方の質問は、ちょっと私の言い方が不十分だったのかもしれませんが、上半期とともに下半期、これから取り組みたい課題として幾つか申し上げたと思っております。国会での成果を礎として、今後以下のような課題に取り組みたいということで、1つは国内投資に向けた様々な取組、2点目として令和版のデジタル行財政改革についても取り組みたい、そして、3点目としてこども・子育て政策、これは骨太の方針に、今後の大きな枠組みは示したわけでありますが、これを進めていくこと、これもこれから引き続き努力しなくてはいけない課題でありますし、それに加えて、女性や高齢者の皆様の活躍、こうした環境を整備したい、さらには、国民的に大きな関心事であります認知症への取組、これも日本の新たな国家プロジェクトとして取り組みたい、こういったことを先ほど申し上げたつもりであります。これは正に今年下半期に向けて取り組むということを申し上げたつもりでありました。ですから、改めてちょっとそれを整理した上で、今の御質問のお答えとしたいと思います。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、その次、鈴木さん。共同。
(記者)
共同通信の鈴木です。
内閣改造・党役員人事について、基本姿勢に照らして判断していくというお答えでしたが、基本的なお立場として、昨年の改造と同様に、政権の骨格というものは維持されるとお考えなのでしょうか。
また、物価高対策に苦しむ国民生活を下支えする、あるいは構造改革を政権として進めていくという観点から、秋の臨時国会に向けた補正予算案の編成、これは検討されているのでしょうか。
(岸田総理)
まず最初の人事についての質問ですが、今現在、まだ人事、時期等について、全く具体的なものを考えているわけではありません。よって、まずは引き続き、先ほど申し上げているように、先送りできない様々な政策課題を前に進め、結果を出していく、これに専念してまいります。そして、これらの進み具合を見ながら、こうした結果を出すためにはどういった人事を考えるべきなのか、こういったことを考えていく、これが順番だと思っています。よって、骨格を維持するかどうかという御質問でありますが、まずは政策を進めて結果を出していく。結果を出していくためにどういった人事・布陣を考えるべきなのか、この順番で考えていきますので、その人事の内容については、今、何か申し上げるものは持っておりません。是非、政策を進めながらしっかり考えていきたいと思っています。
それから、もう一つは、補正予算等について考えているかということでありますが、これも今は補正予算について具体的に考えているものではありません。これは正に経済の状況、今後の物価動向ですとか国民生活、あるいは事業活動の状況をしっかり見ながら、それに必要に応じて適切に対応していかなければならない。そして、そういった考え方の中で補正予算が必要なのかどうか、これを考えていかなければなりません。
いずれにせよ、昨年来、様々な物価高対策等を講じてきました。経済対策を講じてきました。これを今、発動しているところでありますので、こうした経済、こうした様々な政策の効果、さらにはエネルギー市場、国際的なエネルギー市場等も今、大きく変化しています。こういった状況もしっかり見極めた上で、更なる経済対策、すなわち補正予算が必要なのかを判断していくということなのだと思います。
是非、まずは、今用意した様々な経済政策を発動する、そして、状況をしっかり見極めること、これに専念していきたいと思います。御質問の補正予算等については、その結果を見極めた上で判断していきたいと考えています。
以上です。
(内閣広報官)
ニニヴァッジさん。
(記者)
ジャパンタイムズのニニヴァッジと申します。よろしくお願いいたします。
ウクライナ戦争についてお聞きします。戦争が勃発して以来、日本はG7と足並みをそろえて、ウクライナ側に経済的、人道的な援助を与え続けてきました。一方、紛争が長期化する中、平和を導くには日本がどのような役割を果たしていくつもりなのか。また、日露間には数多くの未解決の課題が残っていることも踏まえて、ロシア側にどのように働きかけていく考えなのか、それの見解をお伺いいたします。
(岸田総理)
おっしゃるように、ロシアによるウクライナ侵略に対して、日本はG7あるいは同志国と協力しながら、強力なロシア制裁とウクライナ支援を行ってきた、こういったことでありますが、御質問は、今後、平和に向けて日本がどんな役割を果たすべきなのか、こういったことだと思います。その点については、まず基本的に大事な考え方としては、ウクライナが侵略を受け、そして、懸命に祖国を守る努力をしている中、和平等に係る条件ですとかタイミングについては、侵略を受けているウクライナの人々の意思、これを抜きに決めるべきではないと考えます。
まずは一刻も早くロシアの侵略を止めることが重要だと思いますが、ウクライナの人々の思い、考え、これをしっかり考える、こういった意向に沿った形で和平を考えていく、こうした姿勢は重要であると思います。
そして、和平については、様々な国、関係者が様々な提案をしています。この提案の中身についても、今申し上げたように、ウクライナの人々の意向をしっかり尊重した上で具体的な和平の形を考えていく、こういった姿勢が重要だと考えており、こういった考え方に基づいて、各局面で日本として貢献していかなければならないと思いますし、それから、今年いっぱいは、日本はG7の議長国でありますので、G7の議論もリードしていかなければならない、このように思います。
そして、もう一つは、ロシアに対する働きかけということについて御質問がありました。ロシアとの関係については、まず、引き続きウクライナ侵略に対して毅然(きぜん)と対応していくことが重要であると思っておりますが、同時に、漁業などの経済活動といった、日露が隣国であるがために対処する必要がある事項があります。こうしたことについては、我が国外交全体において何が国益に資するかという観点も考えつつ、適切に対応していかなければならないと思っています。その上で、北方領土問題に関しては、領土問題を解決して平和条約を締結する方針、これは堅持していきたいと考えています。
以上です。
(内閣広報官)
次に、横山さん。
(記者)
ブルームバーグの横山です。
先ほどのお話の中にもありました外交問題について、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。今週月曜日に、アメリカのブリンケン国務長官が、中国の習近平国家主席と面会いたしました。緊張関係にあった米中関係ですが、このところ改善に向けた動きが見られます。これを受け、岸田首相は、両国との関係、とりわけ日中の関係性について、改めてどのようにあるべきとお考えでしょうか。また、首相御自身も近いうちに中国への御訪問を検討されているか、お聞かせいただけますでしょうか。
(岸田総理)
まず、米中両国の関係の安定、これは国際社会にとって極めて重要な課題であると考えます。その上で、両国の関係についてどう考えるかということですが、まず、日米関係について申し上げるならば、日米同盟はインド太平洋地域の平和と安定のための礎であり、バイデン大統領との間においても累次にわたり、安全保障や経済にとどまらず、あらゆる分野で重層的な協力関係を強化していく、こうしたことを確認しています。
そして、一方、日中関係については、昨年11月に日中首脳会談を、私は習近平国家主席との間で行いました。その際に、日中関係を将来に向けて前進させていこうという前向きなモメンタムを感じたわけですが、このモメンタムを是非維持しながら、我が国として主張すべきことは主張し、そして、中国に対し責任ある行動を求めつつも、対話、これはしっかりと重ねて、気候変動を始めとする共通の課題については協力していく、こうした建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていく、これが基本的な方針です。
私自身の訪中については、現在、何も決まったものはありませんが、今、申し上げたように、引き続き私自身も含めてあらゆるレベルで緊密に意思疎通を図っていくことは重要であると思います。その中で、私の訪中についても考えていきたいと思っております。
日本としては、引き続き同盟国たる米国との強固な信頼関係の下に、協力を進めつつ、中国に対して大国としての責任を果たしていくよう働きかけていく、これが日本の基本的な方針であります。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、大変恐縮ですが、この後の外交日程との関係で、あと2問とさせていただきます。
では、七尾さん。
(記者)
ニコニコ、七尾です。よろしくお願いします。
拉致問題の解決に向けました北朝鮮との交渉再開についてお聞きします。岸田総理は、5月27日に初めてハイレベル協議に言及されたと思いますが、29日にはそれに呼応するかのように、北朝鮮の外務省次官が談話を出したと思います。これまで総理は、冒頭言われたように、ウクライナ電撃訪問、ゼレンスキー大統領のG7広島サミットの参加を実現されてきました。改めて、拉致問題の解決に向けた、冒頭ございましたけれども、日朝首脳会談の実現への決意はいかがなものか。そして、その実現可能性について、これまでより踏み込んだお考えを是非お示しいただきたいのですけれども。
(岸田総理)
まず、従来から申し上げているように、我が国としても、北朝鮮に対して対話の重要性を強調し、働きかけを行っているところであり、引き続き更に働きかけを行っていきたいと思っています。
我が国の北朝鮮への対応については、従来から申し上げておりますように、日朝平壌宣言に基づき、核・ミサイル・拉致、こうした諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算し、そして日朝国交正常化の実現を目指す、こういったものであります。その中にあって、とりわけ拉致被害者御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題、これはひとときもゆるがせにできない人権問題であると認識しています。引き続き全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するべく、全力で果断に取り組んでまいります。
その上で、日朝間の懸案を解決し、両者が共に新しい時代を切り拓(ひら)いていくという観点からの私の決意を、あらゆる機会を逃さず、金正恩(キム・ジョンウン)委員長に伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を行っていきたいと考えております。相手のある話でもあり、こうした基本方針に基づいて取り組んでいきたい。今日申し上げるのは以上であります。
(内閣広報官)
それでは、石井さん。
(記者)
北海道新聞の石井と申します。お願いします。
半導体政策についてお尋ねします。政府は次世代半導体の国産化のため、北海道千歳市に建設するRapidusに3,300億円の支援を決めています。政府のデジタル産業戦略において、北海道にどのような期待をされているのか、また、巨額の公費を投じることになりますが、かつて政府主導で失敗した過去の二の舞になるおそれはないのでしょうか。
(岸田総理)
まず、次世代半導体は、AIや自動運転など、次世代のデジタル技術を支えるキーテクノロジーであると考えています。産業競争力強化の観点だけではなく、GXあるいは経済安全保障のためにも、最先端の半導体技術の産業基盤をしっかりと国内に確保することが不可欠であると考えています。
今、過去の失敗について御指摘もありましたが、かつてこの半導体産業政策においては、我が国は研究開発支援に注力しましたが、量産化支援が不十分であったという指摘があります。また、諸外国が積極的に投資支援を行う中で、我が国は適切かつ十分な政策を講じなかったという指摘があります。また、戦略的な国際連携という視点が欠けていた、こういった指摘もありました。反省すべき点も多かったと認識しています。今般のRapidus社の次世代半導体プロジェクトは、まず、米国や欧州等との国際連携の下で量産化まで見据えたものとなっています。進捗を十分に確認しながら、過去の反省もしっかり踏まえて、政府として適切にサポートしていきたいと思います。
Rapidus社が拠点を構える北海道は、自然が豊かであり、広大な土地を有しています。シリコンバレーのような世界最先端の研究者を呼び込める大きな可能性を持っていると認識しています。また、経済安全保障やレジリエンスの観点からも地理的優位性は高いと考えています。Rapidusプロジェクトを起点に、国内外から北海道へ世界最先端の半導体関連企業やデジタル産業が集積すること、これを期待しており、政府としては必要な支援を講じてまいりたいと考えております。
以上です。
(内閣広報官)
以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
大変恐縮ですが、現在、挙手いただいている方につきましては、本日中に1問、担当宛てにメールでお送りください。後日、書面にて回答させていただきます。
御協力ありがとうございました。