原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会(第26回) 議事要旨

2024/08/13  文部科学省 

原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会(第26回) 議事要旨

1.日時

令和6年6月13日(月曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

1.核不拡散・核セキュリティに関する最近の取組等について
2.JAEA/ISCNにおける今後の取組等について
・ISCNの最近の動向/取組について
・ISCNの今後の取組について(ロードマップ(人材育成・技術開発))
3.有識者ヒヤリング(内閣府 直井原子力委員会委員)
・核セキュリティ全般、人材育成、技術開発、国際動向等について

4.議事要旨

【池尻室長補佐】 定刻となりましたので、ただいまより第26回核不拡散・核セキュリティ作業部会を開催いたします。本日は御多忙にもかかわらずご出席いただきまして誠にありがとうございます。今回の作業部会におきましては、オンラインにて開催いたします。これに関連した確認事項がありますので、議事に入る前までに事務局にて進めさせていただきます。
まず、オンライン開催に際しましての留意事項をご説明いたします。一つ目、委員の皆様におかれましては、現在、遠隔会議システムWebex上で映像及び音声が送受信できる状態となっております。ご発言される場合は挙手ボタンを押していただくと挙手マークが表示されますので、順番に指名いたします。もう一度ボタンを押すと挙手マークが消えますので、御発言を頂いた後は挙手ボタンを押して手を下ろしてください。
二つ目、会議中にビデオ映像及び音声が途切れている場合、その時間帯はご退席されているものとみなします。遠隔会議システムの接続の不具合等が生じた際は、随時、事務局宛にお電話にてお知らせください。
三つ目、傍聴される方におかれましてはビデオ映像及び音声をオフとしてください。議事進行の妨げとなる行為を確認した場合は遠隔会議システムからご退席いただきます。
四つ目、議事録につきましては事務局にて会議を録音し後日議事録を作成いたします。事務局以外の会議の録画及び録音はお控えください。以上が本日の進行に当たっての留意事項となります。
本日の議題は、お手元の議事次第に書かれているとおり、(1)核不拡散・核セキュリティに関する最近の取組等について、(2)JAEA/ISCNにおける今後の取組等について、(3)有識者ヒヤリング(内閣府 直井原子力委員会委員)、(4)その他となっております。
最後に、事務局より本日の出欠と配付資料の確認をいたします。本日は全9名の委員のうち9名全員にご出席いただいておりますので、定足数である過半数を満たしております。加えまして、議題2の発表者として国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 核不拡散・核セキュリティ総合支援センターの井上センター長、野呂室長、山口室長、議題3の発表者として内閣府原子力委員会の直井原子力委員会委員にもご出席いただいております。なお、事務局として文部科学省からは河原企画官(原子力国際協力担当)、室長補佐の私、池尻が出席しております。
続いて、本日の配布資料ですが、今回は委員の皆様及び傍聴の登録をされた方宛てに、事前にメールにて配布資料をお送りさせていただいております。会議中、遠隔会議システム上でも資料を表示いたします。本日の配布資料は、資料1、核不拡散・核セキュリティに関する最近の取組等について、資料2、JAEA、ISCNの最近の動向、取組について、資料3、JAEA、ISCNにおける技術開発、人材育成等の今後の取組について、資料4、核セキュリティをめぐる現状とISCNへの期待(有識者資料)、参考資料1、第12期 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会委員名簿、参考資料2、同原子力科学技術委員会運営規則、参考資料3、今期の主な論点となっております。資料の欠落等がありましたら事務局までお知らせください。また、議事の途中でもお気付きの点がございましたら、お申し付けください。
それでは、これから議事に入りますが、運営規則第5条、会議の公開の規定に基づき、本会議及び会議資料は公開といたします。また、同規則第6条に基づき、本日の議事録につきましても後日ホームページに掲載いたします。事務局からは以上でございます。ここからの進行は出町主査にお願いしたいと思います。それでは、出町主査、よろしくお願いいたします。

【出町主査】 承知いたしました。東京大学の出町でございます。本日は委員の皆様、御多忙にもかかわらず全員の皆様にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。また、本日もいくつか議題を用意させていただいておりまして、ISCNから井上センター長、あと野呂室長、山口室長にもご出席いただきまして、心より感謝を申し上げます。また、有識者ヒヤリングで内閣府の原子力委員の前センター長でいらっしゃる直井様にもご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
では、早速ではございますが、本日の議題に入らせていただきたいと思います。まず議題1でございます。お手元の核不拡散・核セキュリティに関する最近の取組についての資料の方を事務局さんからご説明いただいてよろしいでしょうか。

【河原企画官】 出町主査、ありがとうございます。文部科学省の原子力国際協力担当の企画官をしております河原です。よろしくお願いします。私の方からは前回の部会以降、今年に入ってからの核不拡散・核セキュリティに関する政府側の主な取組と動向について御説明したいと思います。
まず1枚めくっていただきまして、今年4月にワシントンで開催されました日米首脳会談における成果文書の概要です。具体的な記載は赤字の通りですが、両首脳が京都大学の臨界集合体実験装置(KUCA)、JAEAの材料試験炉臨界実験装置(JMTRC)の高濃縮ウランを米国に返還したこと、更には近畿大学教育研究炉の低濃縮ウラン燃料への転換と、所有する高濃縮ウランを米国に返還するという新たな共同のコミットメントを歓迎したという記載が成果文書に盛り込まれております。近畿大学の研究炉につきましては、2年前の2022年6月に日米の両政府間で意図表明文書を締結したことを指しています。文科省とDOE/NNSAは、日米の首脳会談における成果文書の公表に合わせまして、JAEA/JMTRCからの高濃縮ウランの返還を歓迎する旨のプレス発表をしております。その具体的な内容を次の3頁目に載せております。
また、続いて4頁目、試験研究炉における拡散抵抗性の向上に関する日米協力ということでPro-Xと書いていますが、Proliferation Resistance Optimizationの略で、試験研究炉の設計段階から核拡散抵抗性の概念を導入することを目的としまして、米国のNNSAが2019年から開始した取組です。このPro-Xの日米協力に関して意図表明文書(SOI)を今年4月に締結しております。このSOIの概要ですが、1ポツにありますとおり、もんじゅサイトに設置予定の新試験研究炉において核拡散抵抗性を新試験研究炉及びその補助施設の設計段階に反映する機会を特定するということ。それから3ポツ目にありますとおり、アジア地域を含む新興原子力国における研究炉の核拡散抵抗性を高めるための共同のアウトリーチを特定するという内容になっています。実施機関につきましては、日本側はJAEA、アメリカ側は関係する国立研究所等を想定しております。このSOIにつきましては4月25日に増子文部科学審議官、アメリカ側がルビーNNSA長官との間で署名をいたしまして、翌26日にプレス発表しています。その内容につきましては次の5頁目に記載がございます。後ほどご覧いただければと思います。
最後に6頁目ですが、核セキュリティに関する閣僚級の国際会議(ICONS 2024)の結果概要を載せております。ICONSにつきましては、IAEAが主催する核セキュリティに関する閣僚級の国際会議ということで、4年に1回の頻度で開催されておりまして、今回が第4回目ということになります。参加国は130カ国以上が参加しておりまして、今年の5月(先月)にウィーンで開催されております。このICONSについては、外務省の辻󠄀副大臣が政府代表で演説されておりますが、その中で、JAEAの核不拡散・核セキュリティ総合支援センターISCNによる人材育成支援と技術協力をこれまで継続してきたこと。それから、補正予算でリニューアルしましたISCNのトレーニングセンターである実習フィールドの整備、また今年5月にIAEAの核セキュリティ教育ネットワーク(INSEN)への新規加盟、こうした取組によりまして人材育成機能を更に強化していくこと、また、我が国として引き続き人材育成に貢献していくことが述べられております。
続いて7頁目ですが、ICONSで共同議長声明もまとめられておりますので、関連する記載について簡単にご紹介します。まず2ポツ目ですが、人工知能をはじめとする新興且つ革新的な技術が潜在的な課題と利益をもたらすことを認識する。また3点目、キャパビル等を通じまして加盟国が効果的で持続可能な自国の核セキュリティ体制を確立し改善することを支援すると。また、4点目には、民生用高濃縮ウランの在庫量を任意にさらに最小化することを奨励する。また、5点目として、SMRを含む先進的な原子力技術及び原子炉について、核セキュリティへの配慮の重要性を強調する。また、6点目にはコンピューターセキュリティに対するサイバー攻撃からの脅威を認識するとともに、コンピュータセキュリティリスクに継続的に対処する必要性を強調する。また、7点目には、教育及び訓練の機会を通じ、核セキュリティ文化及び内部脅威の防止と緩和を強化する。こういった内容が共同声明でまとめられております。
これらの動向を踏まえまして、文部科学省としましては来年度の概算要求の内容を今後具体化していきたいと考えております。
参考としまして、残り8頁目・9頁目には、今年度の当初の核セキュリティ関連事業の予算の概要を載せておりますので、後ほどご参照いただければと思います。私からの説明は以上です。

【出町主査】 河原企画官、誠にありがとうございます。ただ今のご説明について、まず委員の皆様からご不明な点等ございましたらご質問いただければと思います。……特にないでしょうか。私の方から、まず、ICONSの方の会議で今回ISCNさんがINSENに加入したということが大きく書いてございまして、大変おめでとうございます。後ほど2番目の議題で御説明があると思いますが、INSENは核セキュリティの特に教育を、どちらかというと先進国側が他の国に対するセキュリティ教育の部分を支援するという体制です。その国際的な枠組みをIAEAの中で集まってやっているというのがINSENでございます。JAEA、ISCNさんはアジア周辺国を対象に同じような取組をずっと前からやっていらっしゃいます。むしろ遅過ぎたぐらいの加盟で大変喜ばしいと思います。これまでISCNが培っていただいた経験等が必ずINSENに大きく貢献できると思いますので、非常に期待しております。また、INSENの中でISCNさんが非常に大きな存在感を持っていただけますよう、ぜひ心より期待しております。まずこちらが1点目です。
2点目が、今核セキュリティ基金というものがございましたが、7頁目の一番下で、核セキュリティ基金は能登半島地震の時にも日本からもいくらか拠出させていただいています。こちらにつきましても適切に御判断された上で核セキュリティ基金をこれからやるということが明言されたということで確認いたしました。これは特にコメントではないです。

【河原企画官】 ありがとうございます。核セキュリティ基金につきましては、文部科学省から拠出金を出しておりまして、最後の9頁目に記載がありますが、IAEAの核セキュリティ局に対してISCNから継続的に専門家を派遣して、拠出金を支出していますが。今後INSENにも新しく加盟することでIAEAとの連携を更に強化していく必要がありますので、金銭的・人的な貢献も含めて検討していきたいと考えております。

【出町主査】 ありがとうございます。今回の加盟とこの基金をもって両面から今度は強いリーダーシップといいますか貢献をするということを世界に示せれば上々だと思います。委員の皆様、その他お気付きの点とかございませんでしょうか。コメントでも大丈夫です。

【井上委員】 井上と申します。大変ご丁寧な説明ありがとうございました。核不拡散・核セキュリティ関連業務で人材育成についてかなりの金額が割り振られている予算があるということなのですが、これは例えばトレーニングを実施するというところなのですが、どんなトレーニングをするのかとか、例えばどこの国の方を何名ぐらいというような具体的な目標値みたいなのはあるのでしょうかというのが質問です。それが去年と比較してどうなのかというところがお聞きしたいところなのですが。もしも今すぐ数字が出てこないということであれば今回ではなくて後でまた教えていただけたらというふうに思います。よろしくお願いします。

【河原企画官】 井上委員、ありがとうございます。御質問は人材育成についてどのくらいの規模感でどういう対象の人に実施しているかということでしょうか?

【井上委員】 そうです。拡大しているというようなイメージは持っておりますが。

【河原企画官】 人材育成に関しては主に2つのトレーニングコースを用意していまして、1つは核物質防護に関するトレーニングコース、それから国内計量管理に関するトレーニングコースの2種類を用意しておりまして、対象としているのはアジアを中心とした国々で、アジア以外の国もIAEA加盟国を含めて提供しております。
それから、人数の規模感に関しては、ISCNが主催して実施している主にアジア向けのトレーニングコースの人数としては年間50名程度を対象としています。この他、国内向けやIAEA主催のコースでISCNがホスト開催するトレーニングなどを含めますと、2010年のISCN設立以来、これまで100カ国以上、6000名以上に対するトレーニングを実施していることになります。後ほどISCNからも具体の説明があると思いますが、概要としては以上となります。

【井上委員】 どうもありがとうございました。トレンドとしてはだんだん拡大していっているというふうな理解でよろしいでしょうか。

【河原企画官】 そうですね。人数的に目覚ましく増加しているということはないと思いますが、一定レベルを維持できるように予算的には措置していますし、この資料に示していますように令和5年度と6年度で2500万円ぐらい増加していて、その中で新規としては技術開発のところでPu(プルトニウム)の核鑑識技術開発に向けた整備費が主な増要因になっていまして、人材育成についても併せて充実を図っているといった形でご理解いただければと思います。

【井上委員】 ありがとうございました。

【出町主査】 井上先生、ご質問いただきまして誠にありがとうございます。他の委員の皆様からはいかがでしょうか。私からもう1個だけ質問で、もんじゅサイトで新たな拡散に関する評価を行えるような研究が始まったというのが3頁目ぐらいにあったと思うのですが、後ほどISCNさんがご説明いただく魅力度評価に関連するものなのですか?

【河原企画官】 Pro-Xの取組についてはSOIに署名したばかりですので、今後具体の取組については引き続きNNSA側と協議していくことになります。その中で主として考えておりますのは、もんじゅサイトで新試験研究炉を今後設置していくにあたって、その設計段階から核拡散抵抗性のコンセプトを取り入れていくもので、魅力度評価の内容をそれに取り入れるかどうかも含めて今後の米側との協議次第と考えております。ISCNが関与するとしたら、むしろその3ポツ目のアジア地域を含む新興原子力国への共同アウトリーチの部分で、ISCNがトレーニングコースをアジア向けに提供しているわけですが、核拡散抵抗性強化の観点で米国と連携して今後どのような取組が成し得るかというところを今後具体化していければと考えております。

【出町主査】 よく分かりました。ありがとうございます。その他、委員の皆様いかがでしょう。黒﨑委員、お願いいたします。

【黒﨑委員】 黒﨑です。ありがとうございます。一つありまして、これの2頁目なのですが、要は低濃縮化事業、高濃縮ウランの返還というのは、もう国と国との約束事でもって行われている非常に大きな話なのだということを、もっといろんなところで示していただきたいと思っています。といいますのは、我々京都大学の複合原子力科学研究所でもこの臨界集合体実験装置の燃料を低濃縮化するということをやっているのですが、一体これは何のためにやっているのだというところがやはりいろんな人に分かっていただきたくて、当然こういう背景があってこその話で、我々からはアピールはしているのですが、やはり文科省さんの方からもこういう国レベルでの約束事の下で行われている話なのだということと、それと、それを実行することで非常に高く評価されているということをできればいろんなところでご発言いただければというふうに思っています。以上です。

【河原企画官】 黒﨑委員、ありがとうございます。ご指摘いただいた核不拡散・核セキュリティ強化への取組を対外的に示していくことは我々も重要という問題意識を持っておりまして、今回日米首脳の間での成果文書に記載されたということですが、今後もIAEA総会や国際的な場でこういった取組をハイライトできるように取り組んでいきたいと考えています。

【黒﨑委員】 ありがとうございました。よろしくお願いします。

【出町主査】 ぜひよろしくお願いいたします。上田委員、お願いいたします。

【上田委員】 ご説明ありがとうございました。私からは2点コメントございます。まず、今回のICONSですが、コンセンサスによる閣僚宣言が出されなかったことは残念ですが、共同声明に則りまして最高水準の核セキュリティの確保に向けた一層の取組が展開されるよう、文科省様におかれましては関係省庁とも連携の上、IAEA活動への協力やISCNを通じた教育、人材育成への支援等を引き続きお願いしたいと思っております。
2点目ですが、もんじゅサイトに設置する予定の新試験研究炉につきましては、現在詳細設計段階にあると承知しております。核拡散抵抗性の向上は日本の責任ある原子力平和利用に通じるものでありまして、国民の原子力理解の一助であるものと思いますので、新試験研究炉の特徴として広報いただければと思います。
一方で、拡散抵抗性を設計段階に反映する機会の特定作業は早めに実施していただきまして、建設スケジュールの大幅な遅延につながらないようお願いしたいと思います。私からは以上です。

【出町主査】 上田委員、誠にありがとうございます。2点のコメントを頂きました。文科省さんの方で重々把握されていると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。その他いかがでしょう。手を挙げていらっしゃる方はいらっしゃらないですね。よろしいでしょうか。それでは、次の議題2の方に移りたいと思います。「ISCNの最近の動向/取組について」という題で、まずは井上センター長から御説明をお願いしてよろしいでしょうか。

【井上センター長】 ISCNの井上でございます。出町先生、ありがとうございます。次のスライドをお願いいたします。本日、ISCNの最近の動向といたしまして3点ご紹介をいたします。
まず1点目、IAEA核セキュリティ国際会議(ICONS 2024)の参加報告でございます。次の頁をお願いいたします。文科省さんの方から既にご紹介ございましたので少し端折りながら主なところのみご紹介いたします。下の方の矢羽根でございますが、このICONSの全体的な傾向としまして、小型炉SMRの規制ですとかセキュリティ・バイ・デザインですとか、あとサプライチェーンリスク、脅威としてのAI、あるいは防護のための技術としてのAI、それからサイバーセキュリティの文脈でのデジタルツイン等の新しい視点、こういった新しい視点、新しいセッションというのが目に付いたというのが一つの印象でございます。
もう一つは、放射性物質セキュリティ、それから人材育成(キャパシティビルディング)のセッションが非常に増えていることが一つの傾向として観察されました。それと、こういった国際会議ではよくジェンダーバランスというのが大きく取り上げられることが多いのですが、今回に関しましてはジェンダーに特化したものというのは余りなくて、むしろそれよりも若い世代に非常にハイライトしているというところが大きな特徴だったかというふうに感じております。次の頁をお願いいたします。
若い世代ということで一番目に付いたのが、このThe Nuclear Security Delegation for the Future(未来のための核セキュリティ代表団)といった取組が今回新しくございました。これはIAEAが次世代の核セキュリティ専門家を発掘して、その専門能力の開発に貢献するために立ち上げたイニシアティブという紹介がございましたが、24名の若い方が選抜されまして、このICONSの会議の前に既に核セキュリティの将来について議論し、最終的に会議で発表する声明文を起草するといった活動をされていたと聞いております。会議中はこういった未来のための核セキュリティ代表団の若い方たちがIAEAスタッフのアシスタントを務めながら会議の運営に携わっていらっしゃいました。次の頁をお願いいたします。
ISCNの出張者による技術セッションでの発表は6件ございまして、うち4件が人材育成に関するもの、それから2件が技術開発に関するものでございます。次の頁をお願いいたします。
出張者によるセッションチェアですとかパネリストとしての貢献というところでは、まず一つ目がサイドイベント。これはIAEA核セキュリティ支援センター(NSSC)ネットワークの理解増進のためのサイドイベントに協力・貢献をしております。参加者を4グループに分け、各々テーマにについてブリーフをいたしました。4つ目のジュニアプロフェッショナル育成プログラムというのを、これは私がワーキンググループAというところの議長をこの2年務めておりまして、その中で事務局と協力して他の加盟国とも合意形成を図りながら立ち上げることができたプログラムでございます。こういったものを参加者の方にブリーフする機会として行いました。
二つ目が先ほどからご紹介がありましたINSENのサイドイベントでございまして、今回ISCNがINSENに加盟をしたことから、このサイドイベントのパネリストに呼んでいただきまして、私の方から加盟をしたということ、それからINSENとの協力に対しての期待というものを表明させていただきました。また、このサイドイベント全体として学生さんへのアウトリーチに大変苦慮しているということが多く発言がございました。
三つ目が技術セッションでございますが、キャパシティビルディング(キャパビル)のためのインタラクティブな手法の活用というセッションでございまして、ただ、中身はここに書いてある国々が核セキュリティの抑止、検知、対応のうちの対応に係る部分のトレーニングや演習の良好事例の共有のセッションでございました。この中でアメリカのNRCの方が、国家による武力紛争等、DBTを超える攻撃を防止、緩和、対応する責任と能力は、米国の国防システムにある、規制当局や被規制者の役割ではないということを強調したというところが印象的でございました。次の頁をお願いいたします。
その他の技術セッションやサイドイベントでございますが、一つ目が国際的な核セキュリティにおける核鑑識の役割という技術セッションでございます。ISCNからも核鑑識技術開発の概要と成果を報告しておりますが、このセッションの中でISCNが開発したウランの年代測定分析手法、それからAIを用いた分析や非破壊測定を有効利用することにより、低コストな分析技術を使うといったこと、それから研究開発をベースとした能力整備・維持、大学や新興国への成果展開といったところに多く議論があったということで、ISCNが実施しているテーマの一部、アスタリスクが付いているものでございますが、これらは各国に先んじている印象がありまして、また、他国との共通点もあることから、ISCNの技術開発の方向性は正しいのであろうということを再確認したという報告を受けております。
二つ目が、武力紛争における核セキュリティ上の脅威への備えと対応というサイドイベントでございまして、特徴的でしたのはウクライナの電力会社であるEnergoatomの方が登壇されまして、二つ目のポツになりますが多くの産業が破壊され放射線源の安全確保が課題となっていると。ウクライナの核セキュリティ専門家たちは証言を集めたり論文を発表したりすることで国際社会に現状を訴え支援を求めていると。こういった攻撃や占領に対してIAEAの専門家による監視や2Sの相互依存性の認識等、国際的な協力も重要であるということがハイライトされております。次の頁をお願いいたします。
3番目としまして、SMRのセキュリティという技術セッションでございますが、IAEAの総括プレゼンの中で昨年発行するといわれておりましたSMRのセキュリティに関するTECDOCについては、今年の年末までにということで延期となったことが報告をされております。
また、四つ目でございますが核セキュリティ文化の技術セッションでは、ポーランドの発表者から放射性物質を使用する医療施設における核セキュリティ文化の自己評価について報告があり、この中でISCNからIAEAの核セキュリティ部にコストフリーエキスパートとして行っていた専門家の協力・支援に対する謝意が述べられたということがございました。
五つ目がIAEAのブースでございますが、サイバーセキュリティ事象の意識啓発を目的としたソフトウェアのデモンストレーションが行われておりました。ISCNでも今サイバーセキュリティトレーニングコースの開発をしているところでございまして、こちらを活用させていただくことを計画しております。次の頁をお願いいたします。
6番目がジェンダーに関するサイドイベントでございまして、5人のウィーンに駐在されている大使の方がパネリストとして登壇されております。この中で日本の海部大使から日本の核セキュリティのコアアセットであるISCNが2020年からアジア向けトレーニングの参加者を選抜するときに参加者の女性割合を応募者の女性割合よりも多くするということを行っておりまして、このことを通じてアジアの核セキュリティにおけるジェンダーバランスに貢献していることを紹介していただき、また、コンピテントな女性のノミネーションを期待するということを表明いただきました。次の頁をお願いいたします。
次にISCNのブースの出展でございます。VICの会議場ではないロビーみたいなところでございますが、そこにブースを出しまして、ポスターの掲示、それからISCNの広報用のビデオと、それから昨年度末にアップグレードを完了しました新ISCN実習フィールドのバーチャルツアーを制作してビデオをディスプレイに表示をして、来られた方に見ていただきました。来訪者は主に3日ちょっとの期間で203名の方に訪問していただきまして、アジアやアフリカの加盟国からの参加者、それからIAEAのスタッフの方も立ち寄ってくださいました。また、日本政府代表の辻󠄀外務副大臣、それから海部大使にもご訪問いただいております。成果としては、人材育成支援、技術開発を広く周知できたのではないかというふうに考えております。また、訪問された方々から具体的なニーズ、リクエストを伺うことができました。次のスライドをお願いいたします。
本ブースに来られた方からあったリクエストを表にしております。この中にはISCNの支援対象国もありますが、そうでない国もありますので、支援対象国については2カ国間協力も視野に入れながら検討していきたいと思っておりますし、また、IAEAのINSSP(統合核セキュリティ支援計画プログラム)というものがございまして、そこの担当官とも連携をして、特に支援対象国ではない国に対してはIAEAトレーニングに含める等、働き掛けをしていきたいというふうに考えております。次の頁をお願いいたします。
二つ目の話題でございます。INSENでございます。次の頁をお願いします。冒頭ご紹介ございましたが、INSENはIAEAや大学等の教育機関だけでなくて研究機関もメンバーとなっております。現在73カ国222組織が加盟しているということでした。日本からは東京大学、東京工業大学は既に加盟をされております。また、米国のDOE/NNSAといった国の機関、それからその傘下の国立研究所、アメリカの核セキュリティ支援センターであるY-12も加盟しております。INSENでは教育カリキュラムや教材、それからアカデミアにおける核セキュリティ関連研究についての情報交換という活動がなされておりまして、具体的には年次会合と作業部会会合というのを各々年に1回1週間ずつ行っております。これらは毎年ウィーンで開催するか、コロナの時期はオンラインでの開催だったと聞いております。昨今、特にEUからの拠出金が減っているということがありまして、今年の年次会合の開催費が捻出できないことから、今年はオンライン開催になったとのことでした。あと、作業部会会合については8月にウィーンで開催の予定です。次の頁をお願いいたします。
ISCNにとってのINSEN加盟の意義でございますが、人材育成支援事業のメリットとして、これから新しくカリキュラム開発を行うものについては教材レビューですとかカリキュラム開発、それからインストラクターの養成等をINSENのメンバー国と共同で行うことができれば、より高品質な事業を提供できるというメリットがございます。また、IAEAの核セキュリティ分野の協働センターに指定されております関係から、このINSENの活動を通じてIAEAの貢献の範囲を広げることができると考えております。次の頁をお願いいたします。
今後のINSEN加盟後の活動と活動予定でございますが、5月に正式に加盟いたしました。ICONSの期間中は、一番下の矢羽根になりますが核セキュリティ部署のBuglova部長と、それからINSENの担当官ともサイドミーティングをそれぞれ実施しておりまして、来年の年次会合を日本でホスト開催できないかという議論をしております。今年のINSENの会合には参加をいたしまして、情報収集、それから調査、調整を行っていきたいと思います。来年Annual Meetingを日本で開催できた場合でございますが、5日間の会合の1日は日本の関係者との交流プログラムですとか、ISCNで行っています夏の学校プログラムとの連携を図る等のことをしたいということを考えておりまして、今後期待される活動としても、INSENメンバーを招いて日本の大学の関係者と連携したシンポジウムを国内開催するですとか、日本の大学における核セキュリティ教育を盛り上げていく、あるいはカリキュラム開発を行うといったことを考えております。また、そういったことを通して核セキュリティ・核不拡散分野や原子力分野へのSTEM人材の確保につながればというふうに考えております。次の頁をお願いいたします。
ISCNの実習フィールドの開所式の概要でございます。次の頁をお願いいたします。ISCN実習フィールドでございますが、2012年度より核物質防護実習フィールド(PPフィールド)とバーチャルリアリティシステムというのを我々は使っておりまして、これらは国内外の規制の向上、あるいは現場での核不拡散・核セキュリティ強化を支える重要なトレーニング施設でございます。令和4年度の第二次補正予算を文科省に措置いただきまして、経年劣化対策、それから近年の新たな脅威に対するトレーニングニーズに応えるために、PPフィールドの建屋を更新してPP棟とバーチャルリアリティ棟の二つの建屋を設置いたしました。また、模擬中央警備監視所(CAS)設備を更新し、800 m離れたところに設置しておりましたバーチャルリアリティシステムを更新して、このフィールドと同じ敷地の中のVR棟に移設をいたしました。これにより、PPを含む核セキュリティと、それからVRを使った保障措置のトレーニングの演習等が同じ敷地内でできるようになりましたので、名称もISCN実習フィールドと改修いたしまして、関係機関を招いて開所式を行いました。行ったのは5月10日の午後の2時間を使いまして原子力委員会、文科省、外務省、それから原子力規制庁さんに参加をしていただきました。次の頁をお願いいたします。
式次第でございますが、開会挨拶、それから来賓の御挨拶と、このフィールドの概要と今後の活用について御紹介をした後に、テープカット、写真撮影、それから施設を視察いただきまして、その後意見交換をさせていただきました。最後は閉会挨拶という形の流れでございます。次の頁をお願いいたします。
来賓いただきました方々の御挨拶の概要ですが、原子力委員会の直井委員からは、ISCNが新たなフェーズに入りアジア地域の核セキュリティ強化に更なる貢献をすることを期待しているということを述べていただきまして、文科省の河原企画官からは、文科省が関係省庁と連携してISCNの活動を支援し、核不拡散・核セキュリティの向上に貢献していくという表明を頂きました。また、外務省の林審議官からは、このISCN実習フィールドの拡充が最近の新たなニーズに応えるものであり、ISCNの事業は東南アジア諸国をはじめ世界の核セキュリティ人材の育成により一層資するものとなるというエールを頂きました。以上でございます。ありがとうございました。

【出町主査】 井上センター長から3件のISCN側における活動について、まずICONS、それからINSEN関連、後はISCNの実習フィールドが改修していたのがようやく開いたということで、その3件についてご説明いただきました。誠にありがとうございます。委員の皆様、ご質問等ございませんでしょうか。井上先生、お願いいたします。

【井上委員】 井上センター長、素晴らしい発表、いろいろな成果の報告をありがとうございました。私からはいくつか質問がありまして、最初から行きますと4頁・5頁の辺りなのですが、4頁のところで若い世代の育成というのが書いてありまして、私もこれは本当に同感しております。それを踏まえて5頁目に未来のための核セキュリティ代表団とありまして、こちらには24名が選抜されたと書いてありますが、これは日本からの人というのも今後の選抜の可能性等はどんなふうにお考えなのでしょうかというところをまずお聞きしたいなと思っております。

【井上センター長】 ありがとうございます。この24名の中には見たところ残念ながら今回日本人の方はいらっしゃらなかったということで、アジアからも少なかったように思います。いつの段階でどういうふうにこの募集があったのかというのを私の方がつかみ切れておりませんので、4年後に向けて情報をちゃんとキャッチして、日本からも誰か出ていけるとよいなというふうには思っております。

【井上委員】 ありがとうございます。こういうのがあるとすごく励みになるのではないかというふうに思っておりまして、これにはぜひ日本からもどなたか出ていただきたいなというふうに思っておりますということが一つと、それからINSENの件です。具体的にはスライド14なのですが、組織単位で加盟というふうになっておりまして73カ国222組織とあります。日本からは東大と東京工業大学が加盟しているということなのですが、これ以上に他の大学が今後加盟するということはお考えなのかなということが一つお聞きしたいところなのですが。これは素晴らしい取組だと思っておりまして。

【井上センター長】 ありがとうございます。それは各大学さんが決められることですけれども増えていただけるように、盛り上げていきたいと考えております。ただ、ISCNは設立当初より核セキュリティ支援センター(NSSC)ネットワークに軸足を置いて活動しているわけですが、昨今NSSCネットワークとINSENネットワークのインターフェースというところをもう少しやりましょうというイニシアティブがございまして、それが我々がINSENに加盟するきっかけの一つになっております。NSSCとして大学の教育のサポートといいますか、日本ももっと盛り上げていく契機にしたいというふうに思っております。

【井上委員】 ありがとうございます。それとあと2025年開催はぜひできたらというふうに思っております。期待しております。以上です。

【井上センター長】 ありがとうございます。2025年の開催につきましては文科省さんからもご支援いただいておりますので、うまく調整していきたいと思っております。

【井上委員】 大変楽しみにしております。

【出町主査】 井上先生、ありがとうございます。続きまして、私の画面上の順番で、すみません、小澤委員からご質問、コメントを頂いてもよろしいでしょうか。

【小澤委員】 ありがとうございます。小澤でございます。丁寧な説明でよく分かりました。更にもう一つ深く掘ってもっと理解を深めたいと思って、三つほど質問させていただきたいと思います。9頁目の上の方にSecurity of Small Modularとあって、内容はSMRに係る核セキュリティの特徴、SMRの核セキュリティ上の課題や考慮事項の分析というのが書いてありますが、先ほどの文科省さんの説明の中でも、ICONSの共同声明の中で小型モジュールを含む先進的な原子炉技術及び原子炉と特徴的なところで特出ししていると思うのですが、このSMRの特徴というのは一体どういうところに核セキュリティ上の特徴があるのかというのを教えていただきたいのが一つ目ですが、一つずつでよろしいですか? では、お願いします。

【井上センター長】 ありがとうございます。SMRの核セキュリティ上の特徴ですが、小さいということと、あと今非常に多くの炉型が検討されておりまして、その中では伝統的な水を冷却材と使うものもございますし、一方、Molten Saltですとか革新炉に分類されるようなものもございます。そういった何を燃料に使うかというところも核セキュリティ上は少し変わってくるかと思いますが、何よりも小さいということもありまして、例えばアジアで見ますと遠隔地、街から遠く離れたところですとか離島への設置というのを導入、あるいは海上浮体式といったものも検討されていますので、そうなると陸上に今まで建設されてきた発電所のようなものとは核セキュリティ上、例えば遠隔地ですと対応に係る警察部隊ですとか、そういった部隊の人的リソースを配慮しなければいけないですとか、核セキュリティ上はそういった今までと違う分析と評価が必要になるかというところはございます。

【小澤委員】 ありがとうございます。もう少し深く整理すると、一つは炉型の問題で、軽水炉の大きい小さいというよりは新しい型式のものをどういうセキュリティで守るかというのが一つあるかと思います。小さいというのは単なる大きい小さいというよりは使い方の問題と理解いたしましたが、そういうことでよろしいですか?

【井上センター長】 はい。使い方と今度は設置する場所(ロケーション)が核セキュリティ上の一つのポイントになるかというふうに考えております。

【小澤委員】 なるほど。今までずっと大型炉、小型炉路線が多かったと思うのですが、比較的限られたプレイヤーだったのが、SMRとこういうのが流行ってきた瞬間プレイヤーがものすごく多くなってきたと思うのですが、そういうところはいかがなのでしょうか。

【井上センター長】 おっしゃるとおりで、ベンダーといわれるところも非常にたくさん手を挙げているのが現状でございまして、だからこそIAEAのTECDOC等でそういったSMRのセキュリティをどう考えて、どう評価して、どう設計に取り組んでいくのか、国としての核セキュリティ体制にどう組み込んでいくのかという一定の方向性が出てくれることを待ち望んでいるところがございます。

【小澤委員】 そうすると周知というのが一つのキーワードになってくるということですね。ありがとうございます。二つ目は、簡単な質問になってくるのですが、14頁目から始まる教育の関係なのですが、最近人材育成ネットワークの方で戦略ロードマップが公開されて、私は中身を確認している最中なのですが、その大きい枠の中でこのセキュリティというものなのか、あるいは特徴的で尖り過ぎていて別のところにもあるのか、戦略の中の位置付けというのはどんなところにあるのでしょうか。

【井上センター長】 そちらの戦略ロードマップの方は私は余り深くインボルブされていないので明確なところは今申し上げることは難しいのですが、まず、我々がINSENに加盟したのは、先ほども申しましたように我々が10年以上前から活動しているIAEAの核セキュリティ支援センターネットワークとINSENとのインターフェース活動というのが始まった中で、では我々もINSENにも入って、それは我々のメリットにもなるし、IAEAへの貢献にもなるし、また、日本の核セキュリティの大学での教育ですとか核セキュリティ文化の浸透に役に立つかというところを期待して入っておりますので、うまくそういった戦略ロードマップですとか、あと文科省さんがやっていますANECという枠組みもございますので、そういった枠組みとうまくコラボしながら効率的に良い活動ができればというふうに思っております。

【小澤委員】 ありがとうございます。インボルブはともかく何かつながっているような印象を受けました。最後の質問ですが、18頁目にある実習フィールドの開所式、おめでとうございます。いろいろこの分野の技術とか人材の裾野を広げていこうという方向性がある一方で、核セキュリティという機微な部分があるかと思うのですが、この施設の運用としてのオープン度合い、例えば一般の見学もウェルカムですとか、あるいは限っていますよみたいな、そういう運用の仕方というのはどうお考えなのでしょうか。

【井上センター長】 基本的にこのフィールドに置いています設備が原子力発電所のPPに使われているものと同じものですので、一般の方にどんどん来てくださいという性質のものではございません。核セキュリティ関係者、原子力関係者の方には見学とかトレーニングとか短い演習ですとか、そういったところで活用していただく施設だと思っております。また、新しいトレーニングコースの開発にも寄与していくという方向で考えております。

【小澤委員】 よく分かりました。ありがとうございました。

【出町主査】 ありがとうございます。続きまして、中熊委員、お願いいたします。

【中熊委員】 電事連の中熊でございます。先ほどの井上委員の質問にも少し似ているのですが、先ほどの質問への回答の中で、未来のための核セキュリティ代表団には日本の方がいらっしゃらなかったということなのですが、そもそもこのICONSに日本の若手とかがどのくらい参加しているのか、ISCNさん以外のところではどのくらいの日本人の方というのも参加されていたのでしょうか。

【井上センター長】 参加者というところでは参加者名簿をよく見ていないので分かりませんが、アブストラクトを出しても全てが採用されているわけではないそうで、アメリカのあるところでは出したら全落ちしたという組織もありまして、そういった関係もあるのかと思いますが、日本からの発表者というところではISCN以外は規制庁さんの方がいらっしゃったぐらいかと思います。

【中熊委員】 ISCNさんのブースに来訪されている方の中でインドネシアの学生さんみたいな方が書かれていたりするのですが、なかなかそういう学生さんなどが参加するようなチャンスというのはそういう意味では可能性として余りないような会議体だと思ってよいのですか?

【井上センター長】 実は途上国の方は若い方が非常に多くいらっしゃっていまして、それはIAEAがファンドしているのと、それから例えばアメリカですとかEUが独自にファンドをして参加をさせているケースが結構多いみたいです。アフリカとかアジアの方が多かったというのはそういうことなのかなと思います。タイ等は5、6人の、学生さんではないですが割とこの原子力業界に就職をして2年目か3年目かの随分若い方が数人グループでお見えになったりもしていて、伺うとそういったところからのファンドで来ているということでした。

【中熊委員】 こういう会議に行って参加して知見を広げるのは非常に学生さんにとっては有効な気がしていて、以前この作業部会でも国内のセキュリティ人材をどう育てるのかみたいな話が議論されていましたが、文科省さんがお金を付けて出町先生の研究室の学生さんを何人か派遣するとか、そういうのがもしあればよいなというふうに思って質問させていただきました。
あともう何点かあるのですが、一つはISCNの実習フィールドなのですが、これは海外の方も含めて、あるいは国内の人間もここではいろいろ研修をさせていただいたりしていると思うのですが、ほぼもうフル稼働しているようなイメージなのでしょうか?

【井上センター長】 一日朝から夕方まで稼働しっぱなしということはないのですが、やはりメンテナンスですとかそういった活動も必要です。今年3月末に開所して4月から使いはじめておりますが、例年よりは稼働率が高いなという印象を持っております。やはり関係者の方の見学が増えております。短い演習をさせてくれないかという話も少しずつ増えておりまして、割と稼働率が上がっております。

【中熊委員】 無知で大変恐縮なのですが、日本の事業者なども結構ここは使わせていただいたりしているという理解でよろしいのでしょうか。

【井上センター長】 国内事業者さん向けのトレーニングというのもやっておりますし、個別でトレーニングではないにしても見学に来られる事業者さんもいらっしゃいます。

【中熊委員】 ありがとうございます。あと一点、これは出町先生に聞いてみたいのですが、このINSENに東大が加盟しているということで出町先生も関与されているかと思ったりするのですけれども、これの活用とか、その有効性みたいなのはどんなふうに出町先生の目から見えていらっしゃるのかというのを教えていただければと思うのですが。

【出町主査】 有効性という意味では、私の見方が偏っているかもしれませんけれども、どちらかというとこれから核セキュリティを始めなければいけない国々に対する教育の教材とかそういうシステムを支援するというのが一つの大きな目的であるのがINSENかと思っております。そういう意味では日本からは東大としてはどちらかというと個人的な参加という形でやっておりました。東大全体を挙げてではなくて。分からないのですが。そういう意味で力不足を感じておりましたので、今回ISCNさんが組織としてご参加されたことを非常に喜ばしく思っております。

【中熊委員】 分かりました。ありがとうございます。以上です。

【出町主査】 ありがとうございました。続きまして、上田委員、よろしくお願いいたします。

【上田委員】 井上センター長、ご説明ありがとうございました。私からは2点コメント、1点質問がございます。まずINSENへの加盟によりまして一層の国際貢献に期待したいと思っております。加盟後の活動予定の中でINSENの年次会合を来年の8月ごろに日本で開催提案とございますが、核セキュリティ関係者による被爆地訪問等は大変意味のあることだと思いますので、この実現に向けてご尽力いただければと思います。
2点目ですが、核物質防護実習フィールドがリニューアルしましてISCN実習フィールドとして生まれ変わったことで一層の人材育成等への貢献を期待したいと思っております。原産協会がオンラインで発信しております6月6日付けの原子力産業新聞でそのリニューアルについて紹介させていただきましたので、御参考までにお伝えいたします。
最後の一点は質問なのですが、御発表資料の4頁のところに新たなセッションとしてサプライチェーンリスクというのがあるのですが、核セキュリティにおけるサプライチェーンリスクとはどういうものか教えていただくことは可能でしょうか。よろしくお願いいたします。

【井上センター長】 ありがとうございます。核セキュリティ一般的なという視点の観点になりますが、例えば核セキュリティの核物質防護システムというのは非常に重要なシステムであって、外からのインターネット等にはつながらない独立のネットワークで運用しているのですが、そこの設備の機器のサプライチェーンというのがやはり非常に大事になっております。信用のおけるルートで信用のおけるものを入れないと、そこにウイルスが例えば入っていってそれが独立したネットワークに持ち込まれると、これは非常に大変なことになりますので、そういった意味でも信頼できるサプライチェーンというのに支えられて核セキュリティは健全でいられるという観点がございます。

【上田委員】 ありがとうございました。

【出町主査】 上田委員、よろしいでしょうか。ありがとうございます。続きまして、黒﨑委員、お願いいたします。

【黒﨑委員】 ありがとうございます。私の方からは情報提供で、先ほどの議論の中でSMRと核セキュリティとか規制のところが少し議論になっていまして、最近実は結構面白い論文がScienceの方で出ていまして、それはいわゆるSMRは20%未満のウラン燃料を使うということでHALEUというふうに我々は呼んでいるのですが、20%未満であれば核兵器に転用できないだろうという、それが当初からの見込みでもって20%未満のHALEU燃料というルールが定められていて、それでもってこれからのSMRはHALEU燃料を使っていこうというような議論に今なっているのですが、一方で、そうはいってもそれなりに量を集めるとやはり20%未満といえども核兵器になるのではないかというような議論がつい最近起こっているようです。といいますのは、いわゆる20%未満のウラン燃料というのは、うちの研究所にもあるのですが、いわゆる試験研究炉のような本当に小さい原子炉用の燃料というところであれば、いわゆる量を稼ぐという意味ではそんなに重要ではなかったのですが、SMRとはいえそれなりのボリュームがありますので、試験研究炉とは違うもっと大きなものになりますので、やはりそういったSMRなどにHALEU燃料を使っていくというのは本当に核セキュリティの問題を考えたときにこのままでよいのかという、そういう問題提起の話です。非常に面白い論文なので、文科省さんの方には論文そのものを送ったらまずいのでURLだけ送っておきます。以上です。

【出町主査】 黒﨑委員、ありがとうございます。センター長に今のコメントに対する御回答を、お答えするのは難しいかもしれませんが、何かございますか?

【井上センター長】 その論文は斜め読みはして認知はしております。丁寧には読んでおりませんが、HALEUとはいえ核爆弾になるのではないかというのは、1 tぐらい集めるというふうな文言があったかと思うのですが、そういったウランは当然のことながらIAEAの保障措置下にあるというのが非核兵器国の平和利用の大前提でございますので、そうしますと、濃縮ウラン、低濃縮ウランは当然のことながら計量管理の対象になっておりますので、1 tのHALEUを核拡散上、爆弾への転用も保障措置で検知をされてしまうことになりますし、爆弾ともならずともフィズルといわれるような核セキュリティ上のリスクも若干あるシナリオがありますが、それにしてもやはり計量管理の下で管理されているものを、そうそう盗まれたり転用されたりということは、検知はタイムリーにできるものなので、アメリカの論文ですので少し前提条件が違うかというのが私の第一印象でございました。

【黒﨑委員】 ありがとうございます。

【出町主査】 ただ今の御意見につきまして、他の委員の方々からも何か御発言はないですか?

【黒﨑委員】 すみません。論文が出たのは先週の話で本当についごく最近の話ですので、議論がこれから進むものだと思っています。単なる話題提供ぐらいで思っていただければと思います。以上です。

【出町主査】 ありがとうございます。黒﨑委員がおっしゃったようにSMRであろうとはいえ、慢心せずに計量管理は従来通りしっかり行っていただくことと、外からの盗取の可能性も無きにしもあらずということで、検知の方につきましても慢心せずにやるのが大事だという啓蒙かと思います。ありがとうございます。では、布目委員、お願いいたします。

【布目委員】 ありがとうございます。井上さん、どうもありがとうございました。実習フィールドが新しくなったということで、おめでとうございます。こういうフィールドは非常に大切だと思っており、12年の運用の末今回やっと新しくなったということですが、今のお話の中にもSMRなどどんどん新しいものに対応していかなければならなくなっていくわけです。この次の頁に今後の活用というような御発表があったようですが、明確に今後どのように施設設備として更新をしていくのか。その辺のところをきちんと明確にされているのかどうか。特にVRなどは、使っていると本当にすぐ陳腐化してしまったりしますので、そういうところの更新であるとか、後は新しい技術に対応するためにどういうところを新しくしていかなければならないのか。これは文科省さんの予算との関係もあるかと思いますが、補正予算などに頼るのではなくて、本予算の中にそういうところもきちんと入れ込んで進めていただけるとよいのではないかと思います。よろしくお願いいたします。

【井上センター長】 ありがとうございます。今回は補正で大きな予算を文科省さんには尽力いただきまして、お陰様で建屋を整備することができましたことは本当に感謝しております。保守計画含めて今後の利用計画でございますが、まだバーチャルリアリティシステムの一部については更新できていないものもありますので、こういったものについては引き続き文科省さんの御支援を頂きつつ予算措置して整備していきたいと思っております。その他の例えばセンサーですとかカメラ類につきましてですが、これらの長期修繕計画というものを我々は作っておりまして、それにのっとって着実に計画的に更新・整備を行っていく予定でございます。利用計画につきまして、新しい技術はいろいろ出てきてはおりますが、あくまで新しい技術を使うことが目的ではなくて、やはりトレーニングのための施設でございますので、発電所等での導入が始まったものについては、このフィールドでの導入も併せて考えて計画に入れていきますし、例えばトレーニングに使えるような新しい技術というのもありますが、そこは技術の成熟具合を見定めてから導入していきたいというふうに考えております。

【布目委員】 分かりました。ありがとうございます。

【出町主査】 ありがとうございます。では、東北大学の高橋委員、お願いいたします。

【高橋委員】 東北大の高橋です。ご説明ありがとうございます。今の布目委員からのお話にも出てきたVRを使った実習、非常に私も興味があるのですが、これは言える範囲で結構なのですが、どういうところをVR化して今実際に実習でやっていらっしゃるかというのをぜひ教えていただければと思うのですが、いかがでしょうか。よろしくお願いします。

【井上センター長】 ありがとうございます。今の私どものバーチャルリアリティシステムは、まずハードウェア的にはCAVE方式と申しまして正面・横・床という3面スクリーンに3Dで映像を投影する方式を採用しております。それからコンテンツでございますが、三つの施設を作っておりまして、原子力発電所、それから研究炉施設、それから燃料製造施設の三つの施設をサイバー空間に構築をしていると。それぞれ例えば発電所にも核物質防護システムがありまして、核物質防護システムの全体像を参加者の方に見ていただけるというものとか、そのセンサーの位置を変えたりということもカスタマイズできるようにはなっております。研究炉施設はトレーニングの中での演習教材として使っております。また、保障措置のトレーニングでも例えば発電所のコンテンツであれば、発電所の中の燃料、新燃料が発電所に届いて、燃料交換をして、使用済燃料プールに保管されて、時が来たら搬出されるという燃料のフローを見たり使用済燃料の検認というIAEAの保障措置上重要なポイントについてはどのようなことが行われるのかというのを見せるということができると。そういったコンテンツも様々用意をしております。

【高橋委員】 具体的に見ることができないものをVR空間上で見るというのは意味があると思うのですが、そうはいってもやはり単にVRだからそれで見せればリアルなものが見せられるという訳ではないと思います。そちらのシステムの詳細は分からないですが、一般的にVRを使った教育システムというのは学習効果があるとはいいながら、それが本当に実証されているのかという点に関しては分からない面もあるので、VRの特徴を有効に活用していただければと思います。よろしくお願いします。

【井上センター長】 ありがとうございます。VRを見せることが目的なのではなくて、私たちのトレーニングは割とグループ演習でお互いに議論しながら、インストラクターが議論を盛り上げながら進めるという手法を重要視しております。ですので、この3面スクリーンにしたのもそのためでございまして、グループ演習でVRを使って、そこで議論しながら学んでいく、自分のものにしていくというような使い方をしております。

【高橋委員】 分かりました。ありがとうございます。

【出町主査】 ありがとうございます。井上センター長、私も2点ほど小さい質問をしてよろしいですか。ICONSに関する質問で、最初の4頁目ぐらいに何かデジタルツインに関することが書いてあったと思うのですが、デジタルツインの新しい視点というのは具体的にどんなことなのか教えていただきたいなと思いまして。

【井上センター長】 ありがとうございます。このICONSの中での視点というのは、例えば原子力事業者などがデジタルツインを活用して何らかの業務あるいは調査を行ったときに、デジタルコンテンツになりますから、それのサイバーセキュリティというものを考慮する必要があるという観点でございました。

【出町主査】 なるほど。DXではなく、デジタルツインに対するセキュリティということですね。了解しました。あともう一つは、7頁で対応に関する考え方は米国とそれ以外で違ったということなのですが、米国の言い分は多分あるのかなと思うのですが、他の国はどういう視点で対応をやっていらっしゃいましたか。

【井上センター長】 このセッションでは主に対応に対するトレーニングの経験の共有でして、アメリカもNRCの方もNRCが行ったその対応のトレーニングの紹介をした後で、このスライドでこういう文言をわざわざおっしゃったというのが印象的でしたので、ここに載せさせていただきました。他の国がこのDBTを超える事象についてどういう対応をしているかという議論が特にあったわけではございません。

【出町主査】 承知しました。ありがとうございます。その他、委員の皆様から御質問等はいかがでしょうか。せっかくの機会でございますので。よろしいですかね。センター長も大変だったと思いますが、たくさん詳細にご説明いただきまして誠にありがとうございました。

【井上センター長】 どうもありがとうございました。

【事務局】 すみません、事務局からなのですが、大変議論が盛り上がっているところ申し訳ないのですけれども、時間が30分ぐらい押していて、時間がありますので説明の方を少し端的にしていただけるようにお願いしてもよろしいでしょうか。申し訳ないです。

【出町主査】 承知しました。ありがとうございます。それでは、ISCNさんの野呂室長と山口室長からロードマップの御説明についてお願いしてよろしいでしょうか。

【野呂室長】 承知いたしました。ISCNの野呂でございます。私からは人材育成に関するロードマップにつきまして、できるだけ手短にご紹介させていただきたいと思います。次のスライドをお願いいたします。
ISCNの人材育成支援事業でございますが、こちらは私たちのトレーニング等を通じまして、アジアの国々自らが自分たちで核不拡散・核セキュリティ分野の人材育成を行えるようになることを目指しておりまして彼らのトレーニングを提供するだけではなくてアジアの国の核セキュリティトレーニングセンターの設立、運営の支援ですとか、地域での連携の構築を支援したりすることもやっております。また、ISCN自身がこの分野の人材育成支援のアジアにおけるハブになることを目指しております。これらの活動を通じまして、アジア全体として核不拡散・核セキュリティの向上に貢献して、それがひいては日本の国益にも資する、そんなアウトカムを目指して人材育成支援事業を行っております。次のスライドをお願いいたします。
これらのアウトカムを得るためにはやはり効率的、また、ニーズに合ったトレーニングの提供というものが必要になってまいりますが、先ほどのお話の中にもありましたが、トレーニングのニーズ自体というものもどんどん変化するものです。ISCNは、先ほどセンター長の井上から報告しましたように、ICONSですとか、また、IAEA協働センターとしての活動を通じてですとか、様々な機会でこのニーズの聴取、ニーズの把握というものに努めておりまして、今私どもが認識している高いニーズというものをこちらのスライドに記載しております。いくつかご紹介したいと思いますが、放射性物質セキュリティ、センター長の報告にもありましたが、医療用ですとか工業用の線源、そういったもののセキュリティですとか、新型炉の新規導入に伴う核セキュリティや保障措置の視点を考えていくといったことに対するニーズですとか、また、昨年2023年12月に日-ASEAN友好協力に関する共同ビジョンステートメントというものが発出されておりますが、その中においてもやはりこの日本とASEANの国々に対しても日本からの支援というものを一層やっていくというようなコミットメントがされております。ISCNは、このアジアの一員として同じアジアの国々に寄り添った支援の継続強化というものをしていきたいというふうに考えております。次のスライドをお願いいたします。
2010年の設立以降、この人材育成支援事業はずっと行ってきたのですが、詳しくロードマップについてここから御説明をしていきたいと思います。発足当時はこのIAEAですとかアメリカ等と共同にトレーニングを実施しながら、自立的に日本の特徴を付加したトレーニングの開発、実施というものを目指してやってまいりましたが、設立から12年を超えまして、今はこの一番下に書いてあるフェーズに入っておりまして、新しいトレーニングの提供ですとか高品質のトレーニングのためのツール・手法開発等ということを考えております。詳細につきましてはその次のスライドでご紹介したいと思います。次の頁をお願いします。
こちらが今後数年間の人材育成支援事業のロードマップでございます。大きく3つの段に分けてございまして、1つ目が、先ほども話で出ておりましたがトレーニングを効果的に進めるにあたって必要となるこのトレーニング設備、ISCN実習フィールドです。昨年度かけて拡充をしましてISCN実施フィールドとして今年度より運用開始しておりますので、この実習フィールドのハード的な更新、また、VRコンテンツ等のソフト的な更新というものを計画的にやっていきたいと思っております。先ほどご紹介したISCNが把握しているニーズに沿って開発、実施していきたいと思っておりますが、例えば来年度ですと、まだ残っておりますバーチャルリアリティの経年劣化対応を進めていく、また、核物質防護のためのセキュリティの設備の更新というものも進めていく。そして数年後には、ハードの更新だけではなくてソフトの新しいコンテンツの開発、そんなものを進めていきたいというふうに思っております。
真ん中の段の新規トレーニング開発実施ですが、こちらも先ほどのニーズ、また、ICONSで得た知見も踏まえまして、新しくトレーニングを開発していくものです。トレーニングは開発してすぐに実施をできるものもあれば、また、開発に時間を要するものもありますので、どこのタイミングでどのトレーニングコースができるかということを細かくお示しすることが難しいのですが、例えばサイバーセキュリティですとか、国内向けのトレーニングにおいて教材を改訂して、より国内の参加者の方々にイメージしやすい、分かりやすい教材を目指すものであったり、訓練のためのテーブルトップエクササイズといわれるような机上演習のやり方を教えるトレーニングの開発をしていったりということを考えております。また、RIセキュリティ、放射線源のセキュリティについては、おそらく今後も長いスパンでニーズがあると思われますので、こちらについても開発を随時進めていきたいと思っております。
また、真ん中の新規トレーニングの青いところの一番下にはINSENの加盟、星印で2024年に示しておりますが、今年度INSENに加盟をしましたので、大学の支援のために教材の開発というものを進めて、また、その教材の外部提供というものも計画的にやっていきたいと思って予定しております。
一番下の段には、トレーニングツール、手法の開発及び新規技術のモニターとありますが、トレーニングの際には様々な演習を行うのですが、その演習に用いる映像教材であったり、演習の開発であったりというものが一番下の段に書いてあるものです。提供するトレーニングに合わせて、やはりこのツールですとか手法の開発というものもやっていかなければいけませんので、そちらも計画的にやっていきたいと思っております。最近は特に保障措置関係のトレーニングでいろいろと充実化させておりますので、保障措置の演習開発ですとか、eラーニングですとか、そういうものがこちらに記載されています。
後は、2026年ぐらいから線を引いているのですが、ARシステム検討ということを書いてございますけれども、先ほども委員からご発言いただきました新しい技術というものも出てまいりますので、それがトレーニングに資するものになるかというと、やはりそういった動向のモニターというものも必要だと思っております。そしてそれがうちのトレーニングに使えるかどうかという見極めもしていかなくてはいけませんので、そういうものもこのロードマップには含めております。
また、先ほど来このニーズが変わってくるというふうに申し上げましたので、この国際動向ですとか、相手国のニーズですとか、そういうものに鑑みて、このロードマップは毎年見直して事業を進めていきたいというふうに考えております。次のスライドをお願いいたします。
最後に、今年度の取組、考えているハイライトにつきまして簡単にご紹介したいと思いますが、昨年度に整備しましたISCN実習フィールドを用いまして、サイバーセキュリティコースの開発を進める予定にしております。また、ニーズ調査と海外機関との連携も強化していきたいと思っておりまして、今は特にコロナ禍で中断していたような連携のための会合を再開するというようなことも計画をしております。IAEAの支援というものもIAEA協働センターとして活動しておりますが、その支援というものも積極的にやっていきたいと思っておりますし、また、このIAEAの日中韓トレーニングセンターもございまして連携をしておりますので、そちらも進めていくということです。更には関係省庁との意見交換、情報交換をして、日本の政策、日本の方針というものとISCNの事業というものの連携強化というものも図っていきたいと思っておりますし、先ほどロードマップで少し触れましたトレーニングツールの開発、今年度は保障措置のビデオ教材ですとかeラーニングの運用といったものを考えております。次のスライドをお願いします。
こちらは先ほどICONS参加報告と、また、INSENへの加盟ということはご報告ありましたので、時間の都合上こちらは割愛をいたします。
次のスライドはこのフィールドですが、そちらにつきましても説明はあったのですが、このように現在建物の中の写真をお見せしておりますが、今までなかった教室が新たに加わったことで、より効率的な時間配分のカリキュラムによってトレーニングが提供できるようになっておりますので、それを生かして効果的なトレーニング、高品質なトレーニングの提供というものを拡大していきたいというふうに考えております。以上でございます。

【出町主査】 野呂室長、誠にありがとうございます。

【事務局】 このまま山口室長から技術開発の方の御説明もお願いできますでしょうか。

【出町主査】 山口室長、お願いいたします。

【山口室長(ISCN)】 山口でございます。技術開発の方のロードマップについて説明させていただきます。次の頁をお願いいたします。技術開発に関する基本的な考え方なのですが、これについてはこれまで本作業部会の方で議論いただいた方向性のとおりでございます。基本的にはニーズに基づく技術開発、それからニーズがあれば何でもやるということではなく、この分野の我々の強みを生かした技術開発というものを進めていくと。具体的には、課題やニーズのうち比較的規模の大きく、且つその技術的な習熟度が低いもの、こういうものがISCNとして取り組んでいくべきものであるというところで、これまでのプロジェクト、それから現在行っているプロジェクトも比較的そういう領域のものになっております。次の頁をお願いいたします。
現在行っている主な技術開発になりますが、これは何度か出ているのですが簡単に説明させていただきたいと思います。まず上段の核鑑識技術開発、核物質が不法取引等の犯罪現場で押収された場合に、その核物質の由来がどこなのか、どういうプロセスを通って来たのか等を特定していくというものになります。上段真ん中は物質の魅力度評価に係る研究でございまして、核物質自体が持つ魅力度を下げていければ核セキュリティに有益なのではないかというようなもの。それから右につきましては、いわゆるソフトターゲットと呼ばれる大規模イベント、スポーツイベントや、大型の商業施設などに核物質が仕掛けられたという場合にどうやって見つけていこうかという技術開発になります。課題につきましては大きく二つに分かれておりますが、両方ともアクティブ中性子非破壊分析というものになりまして、左側については遅発ガンマ線分析というもの、それから右側については中性子共鳴非破壊分析になっていきます。これらは技術の習熟度は全然違うのですが、使用済み燃料等の高線量の核物質含有物質中の核物質といったものを非破壊測定で測ろうというものになります。次の頁をお願いいたします。
これは技術開発のロードマップになっていくのですが、核鑑識につきましてはこれまで核鑑識の技術の高度化、それから革新的な技術、現在は社会実装に向けた基礎的技術の実用化であるとか課題についてどうやって解決していくかというもの、それから、核放射線テロ後の核鑑識の技術、こういったものを進めているという状況でございまして、今年度からPuの核鑑識というものについても着手を始めているというところでございます。
その次に、アクティブ中性子非破壊技術開発につきましては、各星がいくつか出てきていると思うのですが、こういうタイミングでチェック・アンド・レビューを図っていくということで、いわゆるフェーズごとにある一定の目標を定めてやっていくというところでございます。二つの大きなプロジェクトについても来年度で一旦成果を取りまとめましてチェック・アンド・レビューを行っていくということにしております。
上の遅発ガンマ線分析につきましては、主に欧州委員会のジョイントリサーチセンターと共同研究をやっておりまして、先方の再編等の関係から1年延ばすか伸ばさないかという検討を行っているところでございます。
下段の中性子共鳴非破壊分析につきましては、これは出口よりは少し離れてサイエンス寄りなものになっていくのですが、これにつきましても現在行っているものについて来年度で一旦取りまとめて、これにつきましてはもう1フェーズぐらい続けて開発を行っていくという予定にしております。
その次の魅力度評価研究につきましては、これまで盗取に関する評価というものを行っておりまして、昨年度の終わり辺りから今度はサボタージュに関する評価というものを進めているところでございます。これについてもアメリカと共同研究を行っており、来年度ぐらいで一旦取りまとめを行う予定にしております。それから、応用研究といたしまして新型革新炉であるとかSMRであるとか、こういったものに応用していけないかというところで検討を進めているというところでございます。
広域かつ迅速な核放射性物質検知技術開発につきましては、昨年度で前のフェーズが終了ということになっております。昨フェーズにおきましては各要素技術について開発を行いまして、昨年度それを仮に組んでみるというところまで進んでおります。今フェーズは今年度から始まったのですが、今フェーズにおきましては昨フェーズ開発しました技術を組み合わせてネットワーク化して、今フェーズの終わりの2027年度には大体の絵姿というものを見せていけるかと思っております。その後、まだその開発要素があるということであれば継続をする。それから、そこで例えば開発業者さんと良い関係が構築できれば、商品化のためのフェーズに移行していくということになります。
それから最後なのですが、新規プロジェクト検討というところで、ずっと点線を引っ張っているところでございますが、各プロジェクトにおいてもやはり終わりがある程度見えているところでございます。この後どういうことをやっていくかということについていろいろな検討を行っていると。まだ具体的にどれを行うという段階ではありませんが、予断を持たず、あらゆる可能性について検討するというところで、今まで開発したものの応用であるとか、核拡散抵抗性の関係であるとか、SMR、それからBeyond DBT、幅広に検討していくというものでございます。次の頁をお願いします。
社会実装の将来像というところで、まず核鑑識技術につきましては、現在国レベルでの核鑑識ラボというものはございません。ただ、そういう段階になったときには我々の核鑑識技術というものを提供できるのではないかと考えております。それから、日本はやはりPuを平和利用していくという数少ない国でありますので、こういった特徴を生かしてPuの核鑑識能力というものを保有すべきというところで、その準備を進めているというところでございます。
アクティブ中性子技術開発につきましては、上段は遅発ガンマ線分析に係るものなのですが、やはりこれは将来の革新炉サイクル等、そういうところに存在する高線量核物質といったものの測定に使えることを目指してやっていくと。それから、中性子共鳴につきましてはまだまだすぐ使えるという段階ではございませんが、先ほどと同じように革新炉サイクル等の核物質に使えるのではないかというところ。それから、もう一つは小型化に全振りした技術開発もやっておりまして、そちらも、例えばどこかに持っていけるとか、そこまで小型化できればまた違う使い道ができるのではないかというふうには考えております。
それから魅力度研究につきましては、今まで盗取であるとかサボタージュに関する評価というものを行ってきました。その評価手法を実際にSMRとか革新炉とかに展開していければ核セキュリティ対策が最適化できるのではないかと。制度的な問題はあるのですが、将来的にはこういうところに貢献できるのではないかというふうに考えているところでございます。
それから広域モニタリング関係につきましては、これはイメージつきやすいと思うのですが実際にものが仕掛けられたような状況になったときに貢献できるような技術というものを目指して開発していくというところでございます。次の頁をお願いします。
今まで話したこととほとんど同じなので、この頁と次の頁も飛ばしていただいて、10頁目、今年度どういう取組をしていくかというところになりますが、基本的には現状の取組を継続するということでございます。核鑑識技術開発につきましては、先ほどもありましたとおりICONSの方で我々の取組を報告させていただきました。その中で我々の方向性というのはある程度正しいのではないかというふうに感じた次第でございます。それから、Puの核鑑識に着手したとこというところでございます。アクティブ中性子非破壊測定技術開発につきましては、実装型の遅発ガンマ線分析につきましては現在装置の方の特性分析であるとか計算コードの辺りの開発を継続しているところでございます。中性子共鳴につきましては、昨年度実験の方を行いまして、例えば遮蔽材に隠された核物質を見つけるであるとか、測定したサンプルの定量的な量を、例えばウランが何グラムあるとか、そういった評価もできないかというような基礎試験の方を行っておりまして、そういう評価手法というものを今検討していると。それから、我々は卓上型と呼んでいるのですが、小型化に全振りした開発というものも継続しているというところでございます。
広域モニタリング技術開発につきましては、今フェーズから新たなネットワーク技術というものを用いて遠隔試験というものを実施していくということにしております。魅力度評価研究につきましても、先ほどあったようにICONSの方で報告をさせていただいています。それから、現在行っているサボタージュ評価手法、それからこれまで行った盗取の評価手法、これの統合であるとか、それから応用研究、SMRや革新炉への適用というものの検討を行っているというところでございます。以上でございます。ありがとうございます。

【出町主査】 誠にありがとうございます。ただ今ISCNさんにおけます教育と技術開発に関する御説明を頂きました。委員の皆様から御質問、コメント等ございましたらお願い申し上げます。

【事務局】 事務局です。すみません、部会の時間も大分押しておりますので、もしよろしければ委員から頂けるコメントにつきましては後日事務局にメール等でお知らせいただくか、あるいは次回の部会で少し時間をとってご議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。この場で特に確認しておきたいものに限ってご質問いただければと思います。

【出町主査】 委員の皆様、大変申し訳ありません。私の司会の不手際でございまして時間が大幅にオーバーしております。今の文科省事務局さんからの御提案のとおり、もしこの御説明つきまして質問とコメントがございます場合はメールベースで頂くということでもよろしいでしょうか。ありがとうございます。特に反対意見はないようですので、御提案通りにさせていただきたいと思います。誠にありがとうございます。申し訳ございません。では続きまして、次の議題で、大変お待たせいたしました。原子力委員会の直井委員から有識者ヒヤリングを頂きたいと思います。直井様、よろしいでしょうか。

【直井委員】 原子力委員会の直井でございます。本日はこういう機会を頂きまして誠にありがとうございます。それでは、核セキュリティをめぐる現状とISCNへの期待ということでお話をさせていただきます。すみません、見にくいかもしれませんがレジュメに沿って説明していきたいと思います。まず、核セキュリティ全般においては新たな脅威として、この間のICONSでもサイバーセキュリティ、AIやドローンというところが出てきました。これは今規制当局とサイバーセキュリティのトレーニングの開発とか、それからIAEAでもいろんなソフトウェアの公開などもされていますので、ぜひISCNでトレーニングしていっていただきたいなというふうに思います。ドローンについては、特にアメリカの国立研究所がこのトレーニングについては得意としておりますので、アメリカの国研と共同でカリキュラムを開発するということがよいのではないかというふうに思います。
二つ目の矢羽根で、原子力施設への武力攻撃についてロシアのウクライナ侵略ということでザポリージャ原発が今占拠されているのですが、これに関連するところです。これに対処します国際的、また、国内の枠組みに対する理解というのは非常に重要になってくると思います。一方で、国際社会がこういう中露と米欧が分断しているような状況では原発を守るための新たな国際的な枠組みを作るというのはなかなか難しいような状況になっていると思います。それから、様々なシンクタンクですとかが提言だとか研究成果を発信していまして、補足資料で紹介しています。ISCNでも今政策研究としてロシアのウクライナ侵略に起因する核不拡散・核セキュリティへの影響と対応策という検討をされていますので、こういった成果にはぜひ期待をしたいと思います。
核テロの脅威がこのロシアのウクライナ侵略でもって高まっておりまして、しっかりと対応していくということが重要になっております。それから、今回のロシアの武力攻撃を踏まえてIAEAの安全とか核セキュリティシリーズへの何らかの取り込みはあるのだろうかというところです。IAEAのグロッシー事務局長がこの武力紛争時に守られるべき7つの原則ですとか安全核セキュリティ確保のための五つの具体的な原則というのを提言しているのですが、いずれも例えば7つの原則については平時の原子力発電所では当たり前のことであって、また、Five concrete principlesの方でも、ほとんどの原則は武力攻撃時に限ったものということで、おそらくIAEAから出てくる新たなガイダンスというのは、武力攻撃のあるシナリオに沿ったときにどう対処すべきというようなガイドラインが出てくるのではないか、若しくはザポリージャ等にIAEAの職員を派遣して様々なミッションをやっていますので、そういうミッションを通じて得られたLessons Learned などがガイダンス、TECDOCというような形で出てくるのではないかというふうに思います。
次の頁ですが、Beyond Design Basis Threatへの対応というところです。これは井上センター長のお話の中にもありましたが、武力攻撃時の対応につきましてはもう国の安全保障の問題ですので、あくまで国が責任を負って、事業者の対応にはなりません。一方で、武力攻撃を受けた後でも発電所施設を維持・運営していくのは事業者なわけで、あらかじめ国と事業者の間でこういった状況になったときの何らかの準備・訓練等をしていくことは重要ではないかと思います。既に日本の原子力防災訓練は自衛隊も参加する、海保も参加する、規制庁も警察も参加するというような形でやっておりますので、既に日本ではこういうような対応が始まっているのではないかというふうに思います。
それから、人材育成のところに入ってまいります。この人材育成支援は、原子力平和利用を核不拡散・核セキュリティ規範をしっかり守りながらやってきた日本が貢献するということには非常に大きな意義があります。まずINSENへの加盟についてですが、INSENへの加盟はとてもよいことだと思います。既にISCNは何度もご説明ありましたIAEAのNSSCネットワークを中心的に支えておりまして、INSENへの加盟によってIAEAの協働センターとしてのISCNの更なる国際貢献が期待できるのではないかと思います。それから、特にINSENの実務者向けのコースの開発で貢献ができると思います。それから、井上センター長も御指摘されておりましたが、国内の大学が進めています先進原子力教育コンソーシアム(ANEC)との連携ができるということで非常によいと思います。このANECは今北大がキーになって北大のWebページにMOOCが公開されているのですが、実はそのMOOCの中に核不拡散とか核セキュリティという講義がないのですね。ぜひこのINSENを通じて得た情報に基づいてANECと連携していただいて、国内の大学のMOOCの中にも核不拡散とか核セキュリティといったテーマでの講義を入れていっていただければと思います。
それから、アジア向けの人材育成支援ですが、ニーズとしてはRIのセキュリティに対するニーズ、それからSMRだとか研究炉の導入に対して、その政策決定者ですとか事業推進者に対してSafeguards by DesignですとかSecurity by Designの概念の重要性をしっかりと植え付けるというセミナーなどをやっていくということが重要かと思います。特にこの二つ目にもお話しましたSafeguards by Design、Security by Designにつきましては、アメリカのPro-XですとかFIRSTというプロジェクトがございます。こういったところとうまく連携しながら共同でアウトリーチをするということがよいと思います。また、その技術開発をしている研究者、技術者に講義をしてもらうということも非常に質の高いトレーニングが提供できるよいことではないかというふうに思います。それから、マルチの枠組みのFNCA。このFNCAの中でも核セキュリティ保障措置プロジェクトというのがございまして、これはアジアの国々が一堂に会する非常に貴重な機会になります。メンバー国がどういった課題を抱えているとか、どういったニーズがあるという把握にも非常によいと思います。ですので、ISCNはこれまでもFNCAプロジェクトを下支えしていただいておりますが、引き続きやっていただきたいということと、このSafeguards by DesignですとかSecurity by DesignをこのFNCAのプロジェクトのテーマとするということも一つの案ではないかと思います。それから、NSSCの設立・運営はアジア地域において引き続き重要になりますので、ここもしっかりやってもらいたいと思います。
次の頁ですが、ISCNのトレーニングコース修了を登用の要件化という提案でございます。今オーストラリアではISCNがIAEAと共に開催しています保障措置関係のSSACのトレーニングコースの修了、これを国内のオーストラリアの保障措置査察官になるための要件としています。ですので、例えば核物質防護に関わる地域トレーニングコースも含めて、オーストラリア以外の参加者についても自国の査察官ですとか検査官に登用する際にISCNの提供するトレーニング修了が要件であるというふうにすることを推奨してはどうかという提案です。
人材育成の最後は、ISCNのインストラクターの養成と拡充ということです。ISCNが提供するトレーニングコースはIAEAやアメリカ、それから欧州といったところからも非常に高い評価を得ています。それはやはりISCNにしっかりとしたインストラクターやロジスティックスに対応するスタッフがいて、そのスタッフによってそれが実現できているというわけで、ISCNの人材育成というのは非常にキーになると思います。それで、提案は、ISCNに電力事業者さんから出向者を入れていただく、電力の発電所で核物質管理をやっている人にISCNに来てもらう、また、電力でこれから核物質管理をやろうとしている人にISCNに来てもらって、そういったキャリアパス化して、ISCNにとってはリソースの拡充が図れますし、電力会社等の出向者側にとっては専門家の育成ができるというWin-Winの関係になると思いますので、そんな枠組みを作って育てていくということが重要かと思います。
続きまして技術開発です。核鑑識技術開発につきましては、ロシアのウクライナ侵略の影響もあって非常にその重要性は増していると思います。そういった中で日本がPuに関わる核鑑識技術開発に着手するということは非常に重要なことだというふうに思います。実は2年ほど前の2022年2月に核兵器級のPuがタイのプーケットでスマグリングされるというところが摘発されて、実際にそのPuの分析等をアメリカの国研が行ったわけですが、そんな事案が発生しています。これはケースとしては非常に稀なケースなのですが、こういった技術をしっかりと持っているということが重要ではないかというふうに思います。
それから、技術開発の社会実装への期待です。アクティブ中性子非破壊分析技術開発におきましては、先ほど山口室長の方から御説明がありましたとおり、再処理施設の溶解液中の核分裂性の物質の比率の定量を目指して遅発ガンマ線分析の技術開発をやっていて、現在DD中性子源を使った小型化の開発が最終段階に来ていまして、実証試験における成功を大いに期待しているところでございます。これは最終的にはどこかの再処理工場で実際に実証試験をやらせてもらえるということが非常によいのではないかと思いまして、できれば日仏の再処理事業者ですとかEURATOMのSafeguards関係者へアプローチしてこの実証試験を実現してもらいたいなと思います。実は先月、在京のフランス大使館の原子力参事官が原子力委員会に来られた時も、実は私の方からISCNでこんな技術開発をやっているので、実証試験ができないかオラノにつないでくれというようなお話もさせていただいております。ぜひ実現できればというふうに思います。
中性子共鳴の方ですが、小型化へ向けた様々な技術開発をしていて、この小型化が成功すれば核セキュリティ事案発生現場にそういったものを持っていけるというところがありますし、核鑑識にも適用できるということで、ぜひ実現させてもらいたいと思います。この遅発ガンマ線分析ですとかNRTA技術開発につきましては、福島の燃料デブリの非破壊分析への適用も考えられますので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。
広域かつ迅速な核・放射性物質検知技術開発ですが、フィールド試験研究の段階に入ってきています。開発した装置ですとか模擬線源等を使って、例えばひたちなかの野球場など借り切って、IAEAやEC/JRC、DOE、国研等にも来てもらって立ち会ってもらいながら実証試験なんかをするということを企画したらどうかなと思います。こういった機会に技術的なワークショップなども一緒にやると非常によいのではないかなというふうに思います。
次の頁です。ベンダーとの接点というところです。ISCNが開発している技術開発は特殊な用途になるので物を作って数が売れるというような商品にはならないということで、商品化を受けてくれるような企業を見つけるのは大変だと思うのですが、引き続きSEECAT(テロ対策特殊装備展)などに出展をして、民間、ベンダーとの接点を続けていただきたいと思います。
最後に国際動向です。核不拡散・核セキュリティに関連する様々な国際動向があります。ここに列挙しておりますが、こういういろいろな動向に対してISCNが有する技術に根ざした核不拡散や核セキュリティのシンクタンク機能を活用していただいて、国内外の専門家・研究者と連携して、こういった国際動向が起こったときに、ではこれが核不拡散・核セキュリティにどういうふうに関連していくのだというようなところをぜひ分析して発信していってほしいなというふうに思います。これが、ISCNが国内外の評価を更に高めていくことになると確信しております。私の方からは以上でございます。ありがとうございました。

【出町主査】 直井原子力委員、誠にありがとうございます。多方面にわたる御提言を今後のISCNさんの活動に対して頂いたと思います。御存じのとおり直井委員は前のISCNセンター長でございますので、内側から見た視点も含めて非常に多岐に富んだ御提案を頂いたと思います。ただ今の御説明につきまして委員の皆様から御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。では早速、中熊委員、お願いいたします。

【中熊委員】 ありがとうございます。直井委員、ありがとうございました。面白いご説明だったと思います。一点我々へのきっかけを頂戴しておりまして、ISCNに出向者というような御要請。これは各社さんに問い掛けてみないとどういう反応になるか分からないですが、我々としても前向きに一度検討してみる価値があるかというふうに思っております。私は今電事連の原子力部長ですが、実は来週の月曜から東京電力に戻ることになっておりますので、後任に引き継ぎたいと思います。ぜひ具体的にこちらにオファーを頂いて、井上センター長の方からになるのかもしれませんが、議論をさせていただいた上で各社に議論してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。

【直井委員】 中熊さん、どうもありがとうございます。非常に力強い御意見を頂きまして、ぜひ井上センター長、よろしくお願いいたします。

【出町主査】 ありがとうございます。中熊委員、今回最後ということでございますが、少し早いですが委員の御退任の御挨拶を今頂くことは可能ですか?

【中熊委員】 では手短に。私は原子力部長を4年務めさせていただきまして、当初からこの作業部会に参加させていただいておりました。上坂先生が主査の頃から参加させていただいております。途中出町さんになりまして、出町さんは私は大学の同窓ですので何となく感慨深いものを感じるとともに、この作業部会に縁も感じながら参加させていただいたという次第です。なかなか私も勉強するばかりで貢献度は低かったとは思いますが、非常に得るものが多かったです。今後の業務に生かしてまいりたいと思いますし、引き続き作業部会が盛況であることを祈念しております。本当にどうもありがとうございました。

【出町主査】 中熊委員、4年間誠にありがとうございました。形は変わりますが今後ともぜひよろしくお願いいたします。では、続いて布目委員からお願いいたします。

【布目委員】 直井さんの御説明の中で核鑑識のところですが、ウクライナのこともありテロ対策の幅がすごく広がっていると思うのです。今JAEAさんの方でも警察等も議論しながらそういう技術開発をされているということですが、やはりウクライナのことなどを考えると防衛というような方面にももっと広げていくべきであると思います。防衛省とも幅広に、訓練だけではなくてこういう核セキュリティの面でも協力していく方がよいのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

【直井委員】 布目さん、どうもありがとうございます。これは井上センター長に答えていただいた方がよいのかもしれないのですが、実は今外務省の林審議官が防衛省から来られている方で、その縁で例えば防衛省からシンガポールと連携をして、テロが起こったときにどういうふうに放射性物質が沈着していくかというJAEAとの連携会議みたいなところで協力させていただいていますし、少しずつその防衛省関係ともコンタクトできるのではないかというふうに思います。

【布目委員】 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

【井上センター長】 JAEAとしても防衛装備庁さんとの協力という話もございますので、ぜひ機会を捉えて進めていきたいと思います。ありがとうございます。

【出町主査】 ありがとうございます。その他御質問等いかがでございましょう。すみません、私の方から直井様に一つだけ要望なのですが、先ほどISCNの修了を登用の要件にするということがあったのですが、これはむしろISCNさんに要望というよりもむしろ原子力委員会の方から規制庁さんの方に働き掛けていただくのがよいのかなと思ったりしますので、ぜひご検討いただければと思います。

【直井委員】 なかなか難しいとは思いますが、ありがとうございます。

【出町主査】 その他いかがでございましょう。よろしいですかね。もしまた後ほど御質問等が出てきました場合、先ほどの御発表と同様にメール等で事務局さんに送っていただく形でもよろしいでしょうか、事務局さん。

【事務局】 事務局です。それで問題ないです。よろしくお願いします。

【出町主査】 ありがとうございます。では、その形でよろしくお願いいたします。では、直井原子力委員、改めまして誠にありがとうございました。以上で本日予定しておりました議題は終了となるのですが、委員の皆様、その他御意見とか連絡事項等もしございましたらお願いいたします。特にないですかね。では、事務局さんにお返しいたします。よろしくお願いいたします。

【池尻室長補佐】 本日の作業部会の議事録案につきましては、出来次第メールにて確認依頼をさせていただきたいと思っております。確認が終わりましたらホームページ上でも公開させていただきます。次回の当作業部会の開催日程や内容については、出町主査とも相談させていただき別途連絡させていただければと考えております。御多忙のところ恐れ入りますが、委員の皆様におかれましては引き続き何とぞ御理解、御協力のほどよろしくお願いいたします。以上でございます。

【出町主査】 誠にありがとうございます。今日は私の不手際で後半の方は慌ただしくなってしまって申し訳ございません。改めてお詫び申し上げます。では、以上をもちまして第26回核不拡散・核セキュリティ作業部会を終了させていただきます。ご出席いただきまして誠にありがとうございました。

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