機能安全規格「ISO 26262」準拠、 次世代自動車のカメラモジュール向けPMICを開発
異常状態通知機構に対応したPMICでは業界最小※ の3.5mm角サイズを達成
2022年5月20日
※2022年5月20日現在 ローム調べ
<要旨>
ローム株式会社(本社:京都市)は、ADAS(先進運転支援システム)などで搭載が進む車載カメラモジュール(以下、車載カメラ)に向けて、ISO 26262※1、ASIL-B※1に準拠したPMIC※2 BD868xxMUF-C(BD868C0MUF-C、BD868D0MUF-C)を開発しました。
新製品は、機能安全に関する厳しい対象項目に対応可能なため、ADASを搭載する次世代自動車で求められる安全設計を容易にします。また、車載カメラに必要な電源4系統(DC/DC※3:3系統、LDO※3:1系統)を3.5mm×3.5mmパッケージに内蔵しており、異常電圧検知やI2Cによるフィードバックなどの異常状態通知機構を搭載するPMICでは業界最小サイズを達成。従来品と比べて、部品点数を3点、実装面積を25%削減可能なため、車載カメラの小型化に貢献します。さらに、広範囲な出力電圧設定やシーケンス制御設定が可能であり、メーカー各社のCMOSイメージセンサごとに異なる要求に対応できるため、開発工数の削減に貢献します。
新製品は、2022年4月よりサンプル出荷(サンプル価格:700円/個:税抜)を開始しており、2022年8月から当面月産50万個の体制で量産を開始する予定です。生産拠点は前工程がローム浜松株式会社(浜松市)、後工程がROHM Electronics Philippines, Inc.(フィリピン)となります。
なお、派生機種のBD868A0MUF-C、BD868B0MUF-C、BD868C1MUF-Cも順次展開予定です。
<背景>
近年、ADASの進化に伴い、自動車1台あたりの車載カメラ搭載数は増加しています。同時に、車載カメラの故障は、重大事故にもつながるため、事故の未然防止に寄与する機能安全の考え方を導入することが、ますます重要になっており、自動車・車載電装メーカーはもちろん、半導体など高度な電子部品を提供するメーカーにも、国際的な機能安全規格「ISO 26262」への対応が求められています。
ロームは、2018年にドイツの第3者認証機関であるTÜV RheinlandからISO 26262の開発プロセス認証を取得。また、2021年に機能安全をサポートする製品により、ユーザーやシステムの安全・安心・快適に貢献するためのブランド「ComfySILTM」を立ち上げました。新製品は、ComfySILTMブランドの中でも、ISO 26262対応プロセスに準拠していることを示す、最上位グレードの「FS process compliant」に対応した製品であり、次世代自動車の安全性向上に貢献します。
<製品ラインアップ>
新製品は、ISO 26262、ASIL-Bに準拠した4機種(BD868A0MUF-C、BD868B0MUF-C、BD868C0MUF-C、BD868D0MUF-C)に加えて、ASIL対応が不要なユーザー向けにISO 26262非準拠のBD868C1MUF-Cもラインアップ予定です。
品番 | 電源電圧(V) | 発振周波数(MHz) | 動作温度(℃) | 出力電圧精度(%) | 項目 | DC/DC出力 | LDO出力 | 機能 | ISO26262対応 |
---|
DC/DC1 | DC/DC2 | DC/DC3 | LDO | 保護機能 | スペクトラム拡散機能 |
☆BD868A0MUF-C | 4 ~ 18 | 2.25 | ー40 ~+125 | 2 | 出力電圧(Typ.)(V) | 3.7 | 1.1 | 1.8 | 3.3 | ✓ | ✓ | ✓ |
出力電流(Max.)(A) | 2.0 | 1.2 | 1.0 | 0.3 |
☆BD868B0MUF-C*1 | 出力電圧(Typ.)(V) | 3.7 | 1.1 | 1.8 | 3.3 | ✓ | ✓ | ✓ |
出力電流(Max.)(A) | 2.0 | 1.2 | 0.4 | 0.3 |
BD868C0MUF-C*2 | 出力電圧(Typ.)(V) | 3.3 | 1.2 | 1.8 | 2.8 | ✓ | ✓ | ✓ |
出力電流(Max.)(A) | 2.0 | 1.2 | 1.0 | 0.3 |
☆BD868C1MUF-C | 出力電圧(Typ.)(V) | 3.8 | 1.1 | 1.8 | 3.3 | ✓ | ✓ | ー |
出力電流 (Max.)(A) | 2.0 | 1.2 | 1.0 | 0.3 |
BD868D0MUF-C*2 | 出力電圧(Typ.)(V) | 3.3 | 1.2 | 1.8 | 2.8 | ✓ | ✓ | ✓ |
出力電流(Max.)(A) | 2.0 | 1.2 | 1.0 | 0.3 |
- *1:BD868B0MUF-Cは、寒冷地仕様のカメラモジュール用として、ヒーター用ドライバー信号を出力可能
- *2:BD868C0MUF-CとBD868DOMUF-Cは、同等スペックだが、シーケンス制御設定が異なる
- ☆:開発中
<アプリケーション例>
リアビューカメラ、周囲監視用カメラ、ドライブレコーダー、ドライバーモニタリングシステム など
<ComfySILTM(コンフィシル)ブランドについて>
ロームは、製品によって社会システムの安全・安心・快適に貢献できるように、機能安全を設計するお客様など、ステークホルダーに向けてComfySILTM(コンフィシル)ブランドを立ち上げました。 この、ComfySILTM、機能安全に向けた、ComfySILTMの思想に準ずる製品に与えられるものであり、自動車分野のみならず産業機器分野の機能安全も視野に入れています。
ComfySILTM 特設サイト:https://www.rohm.co.jp/functional-safety
※ComfySILTMは、ローム株式会社の商標または登録商標です。
<用語説明>
※1) ISO 26262、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)
ISO 26262は、2011年11月に正式発行された車載電子制御の機能安全に関する国際規格。車載電子制御において故障のリスクを算出し、そのリスクを軽減する仕組みを機能のひとつとしてあらかじめシステムに組み込む「機能安全」を実現するための開発プロセスを標準化したもの。車両の構想からシステム、ECU、組み込みソフトウェア、デバイス開発、およびそれらの生産・保守・廃棄に至るまで、車両の開発ライフサイクル全体が対象となる。
ASILはISO 26262で定義された4段階のリスク分類であり、リスクレベルが高いほど機能安全に対する要求値が高い。
※2) PMIC(パワーマネジメントIC)
複数の電源系統を内包し、電源管理、シーケンス制御等を行う機能をワンチップに搭載したIC。DC/DCやLDO、ディスクリート部品などを、個々に使って回路構成することに比べて、スペースや開発工数等を大幅に削減できるため、近年では、車載機器、民生機器を問わず、複数の電源系統を持つアプリケーションで一般的なデバイスとなっている。
※3) DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)、LDO(Low Drop Out レギュレータ / 低飽和レギュレータ)
どちらも電源ICの一種で直流(DC)から直流へ電圧を変換する機能を持つ。DC/DCコンバータは、スイッチングレギュータとも呼ばれ、スイッチングにより出力電圧を生成する。一般的に電力変換効率に優れ、電圧を下げる“降圧”、電圧を上げる“昇圧”が存在する。
一方LDOは、リニアレギュレータと言われる区分に該当し、抵抗の分圧により出力電圧を生成する。DC/DCコンバータなどのスイッチングレギュレータと比較して、降圧のみだが回路構成が簡単でノイズが少ないなどの特徴を持つ。
この件に関するお問い合わせはこちら