さまざまな“消費現象”の実態を事実データで検証していく実証企画
話題の消費行動を
カタリナマーケティングジャパンが集積する実購買データ*1で“市場で何が起きているのか”をひもとく当企画。ジェンダーレス消費・ワンプレート冷食に続く第三弾では、コロナ禍以降注目を集める
睡眠改善食品カテゴリをクローズアップ。ブームの火付け役となった乳酸菌飲料にとどまらず、メーカー各社は「睡眠の質向上」などを謳う商品を続々投入。さらなる拡大が見込まれる睡眠改善食品カテゴリについて市場の状況やユーザーの属性、ニーズなどを2022年9月~2024年9月の間でスーパー/総合スーパー/ドラッグストアにおける消費の実態を明らかにする。
*1カタリナネットワーク内年間12兆円規模のID-POSデータ
睡眠改善食品市場は金額ベースで昨対143%に成長!勢い止まらず!
直近1年間とその前の1年間のPOSデータを比べると(図1)、睡眠改善食品は販売金額、購買者数、一人あたり購入金額、SKU数(商品数)の指標で大きく成長しており、睡眠改善食品のニーズの高さが現れている。またSKU数が+37.4%と、睡眠改善市場に続々と新商品が投入されていることから、メーカーの期待の高さがうかがえる。一方で、”機能系”市場をリードしていた「脂肪対策」カテゴリの昨対を見ると(図2)金額は-2.4%、SKU数は+2.7%と小幅な推移に留まる。
市場の牽引役は87%を占める「乳酸菌飲料」、ブランド別ではヤクルトのY1000が大幅成長
前年と比較して大きく成長している睡眠改善食品は、
その87%を「乳酸菌飲料」カテゴリが占める。乳酸菌飲料内をブランド別に分解するとヤクルトのY1000が金額構成比80%(図4)となって、市場全体の成長を牽引している。また睡眠改善食品市場全体としては、豆乳や甘酒、ノンアルコール飲料でも関連商品が当年に新たに発売されており、今後ジャンルの裾野が広がる可能性も秘めている。
ニーズは「育児疲れ対策」!? 睡眠改善食品購買者のライフスタイルの変化
当年に睡眠改善食品を定期的に購入し始めたヘビーユーザーが、睡眠改善食品を購買し始めると同時期に、他にどのようなカテゴリの購買量を増やしたのか調査した。どんぶり御飯の素などの時短関連食品(緑)が、一般来店者よりも有意に伸びていることから、
日々時間に追われているユーザー像が見て取れ、少しでも睡眠の時間を確保したいというユーザー心理も推察できる。またベビーフードなどの乳幼児/育児用の食品(ピンク)も伸びており、育児によるライフスタイルの変化に伴う
育児疲れへの対策ニーズが睡眠改善食品の売上向上に寄与していることが考えられる。
睡眠系では伸び顕著!市場全体では伸び悩んだヨーグルトドリンク、復活なるか
ヨーグルトドリンクのカテゴリは市場全体としては前年比95% (金額ベース、図6)となっておりやや不調とも取れる一方、
睡眠系に限ったヨーグルトドリンクは前年比390%の成長となっている。「睡眠改善」が、成熟を迎えたかのように感じられたカテゴリに新たな成長兆しをもたらす可能性が見て取れる。
睡眠系ヨーグルトドリンクの好調を支えるのは日清ヨークの新商品「ピルクル ミラクルケア」だ(図7)。が、既存商品であるよつ葉の「北海道のむヨーグルトドリンク」も金額を伸ばしており、新規性に支持が集まっただけではなく、カテゴリ全体が盛り上がっている可能性もある。
ヤクルト本社 磯貝 征志氏「好調ヤクルト1000シリーズ、睡眠改善市場は『未だポテンシャルあり』」
磯貝 征志(いそがい まさし)
株式会社ヤクルト本社 業務部企画調査課 係長
新卒で株式会社ヤクルト本社に入社。国内飲料食品事業にて、主に量販店チャネルの営業担当として従事。営業担当時代に留め型商品の開発等に携わり、現部署に至る。現在、「Yakult(ヤクルト)1000」「Y1000」のブランド戦略の立案・推進に取り組む。
株式会社ヤクルト本社業務部企画調査課の磯貝征志氏によれば、睡眠の質全体に満足できていない人は2200万人ほどいると言われているとのこと。そのなかにあって現在の
Yakult1000、Y1000は「薬やサプリメントではなく食品であるため、取り入れるのに心理的なハードルが低く、多くのお客さまに機能を体感いただき支持をいただいている」と説明する。また「店頭商品であるY1000は主なターゲットであるビジネスパーソンに向けて、通勤中などの外出時でも飲んでいただけるよう、背の高いパーソナルタイプの容器を採用したことも支持をいただいた1つの要因となっている。生産体制も整って、店頭への安定供給ができるようになった」とし、「
ヤクルト1000シリーズは1日あたり300万本販売されており好調。しかし睡眠でお悩みの方が国内に2200万人いることから、さらなるポテンシャルがある市場だと考える」とした。
総括:「睡眠改善」という製品特徴が消費者から支持され、市場の成長を支えている
コロナ禍を経て、睡眠に関する消費者の関心が高まり、火付け役となったヤクルトのY1000を中心に、多くの商品が登場し、
成熟していたカテゴリも含めて活況を呈している。支持する消費者は、ただ時短やパフォーマンス改善を求める層にとどまらず、育児世帯の「育児疲れ対策」ニーズも満たしていることが分かった。
乳酸菌飲料やヨーグルトドリンク以外にもさまざまなジャンルから睡眠改善の効果をもつ商品が登場しており、「睡眠改善食品」全体がどのような広がりを見せるのか注目していきたい。