リチウムイオン電池1本でも高速・明瞭に印字できるサーマルプリントヘッドを開発
小型・軽量化と省エネ化に貢献する1セル駆動サーマルプリントヘッドの新ソリューション
2023年12月27日
<要旨>
ローム株式会社(本社:京都市)は、高性能印字と約30%の省エネを実現した、リチウムイオン電池1セル(3.6V)駆動の新構造サーマルプリントヘッド「KR2002-Q06N5AA」を開発しました。
新製品は、サーマルプリントヘッドの構造を抜本的に見直しました。蓄熱層であるグレーズ*1 の設計を最適化したほか、特殊低抵抗発熱体を採用するとともに、発熱体上の保護膜構造も変更しました。これにより、発熱した熱量を感熱紙や転写リボンといった印字メディアに効率よく伝達できます。また、ドライバICと配線構造の改善により、デバイスに供給される電力を効率よく熱エネルギーに変換することで印字効率を向上しました。伝熱および電力の高効率化を同時に図ったことで省エネルギー化も達成しました。
これらの改善により、リチウムイオン電池2セル(7.2V)駆動タイプの従来品と同等の印字速度と印字画質をリチウムイオン電池1セルで実現しました。また1セル駆動サーマルプリントヘッドの従来品に対して、印字に必要な印加エネルギーを約30%削減することに成功しました。これらの特長から、新製品はサーマルプリンタ機器の小型・軽量化と省エネ化に貢献します。
新製品は2023年12月より月産5万個の体制で量産(サンプル価格1,000円/個:税抜)を開始しています。生産拠点はROHM Electronics Dalian Co., Ltd.(中国)となります。
<背景>
近年、物流の増加に伴う物流用モバイルラベルプリンタや電子マネー決済の普及に伴う決済端末の重要度が高まっています。モバイルラベルプリンタや決済端末などのモバイル型サーマルプリンタにおいては、印字速度と印字品位の関係からリチウムイオン電池2セル駆動タイプが主流となっていました。
リチウムイオン電池1セル駆動にすると、プリンタを小型化・軽量化させることができ、同時に省エネ化も可能になります。一方で、印刷速度が遅くなることやバッテリーの持続時間が短くなるためリチウムイオン電池1セル駆動化は課題となっていました。そこで今回リチウムイオン電池1セル駆動でも2セル駆動と同様に印字出力できるサーマルプリントヘッドを開発しました。
ロームは今後も高画質、高速印字、高効率化を実現したサーマルプリントヘッドのラインアップを拡充していきます。
<アプリケーション例>
物流ラベルプリンタ、在庫管理端末、決済端末用レシートプリンタ、POS(Point Of Sales)プリンタ
<用語説明>
- *1) グレーズ
- セラミック基板と配線の間に設ける蓄熱層(グレーズ)のこと。サーマルプリントヘッドに使われるセラミック基板は放熱性が高いことから、抵抗体の発熱後すぐに放熱される。この放熱を抑制するために蓄熱層が設けられている。
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