リチウムイオン電池用超イオン伝導性電解液のPoCに成功、実用化に前進 [旭化成株式会社]

2024/06/07  旭化成 株式会社 

  • プレスリリース

リチウムイオン電池用超イオン伝導性電解液のPoCに成功、実用化に前進

低温下での出力向上と、高温下での耐久性向上の両立を可能に

2024年6月7日
旭化成株式会社

旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎、以下「当社」)は、このたび、当社が開発した超イオン伝導性電解液(以下「本電解液」)を使用したリチウムイオン電池(以下「LIB」)のコンセプト実証(以下「PoC」)※1に成功したことをお知らせします。
本電解液は、溶媒にアセトニトリルを含むことで既存の電解液では実現困難な高いイオン伝導性を有しており、当社独自の電解液組成調合技術※2と電極/電解液の界面制御技術※3により、現行LIBの課題である「低温下での出力向上」と「高温下での耐久性向上」の両立を実現しました。これらは、出力向上・急速充電などを可能とし、電動自動車等における搭載電池の削減や電極の厚膜化による電池の容量アップおよび低コスト化に貢献します。

  • 「2023年12月21日開催のマテリアル領域説明会資料(無形資産のさらなる活用に向けて)より抜粋」

    本電解液の特長と顧客提供価値

LIBは、一般的には10~45℃程度の温度範囲内での使用が推奨されていますが、近年、電動モビリティや電力貯蔵システムの多様化、また世界各国におけるLIBの需要拡大に伴い、低温および高温下で使用するニーズが高まっています。しかし、低温下では、電池容量及び出力の低下、長い充電時間が問題であり、高温下では、電池の劣化が加速され、寿命が短くなる問題があります。

当社は、アセトニトリルの高い誘電率と安定性に着目し、2010年より当社名誉フェローの吉野彰※4が率いる吉野研究室で本電解液の研究開発を開始しました。独自の電解液組成調合技術と電極/電解液の界面制御技術により、低温下で高い電池性能を維持するとともに、高温下でも高い耐久性を有する電解液を実現しました※5

  • リン酸鉄(LFP)系円筒電池で実施した低温作動性と高温耐久性の評価結果

実用化に向けたPoCは、リン酸鉄(LFP)系円筒電池にて実施され、マイナス40℃の極低温でも高い出力で動作し、かつ60℃の高温でも高い充放電サイクル耐久性を有することが実証されました。今後、自動車メーカーやLIBメーカーとの連携を強化し、2025年の実用化を目指します。

当社は、顧客との共創において研究開発の段階から技術供与やコンサルティングを通じて収益化を目指していくような新たな取り組み『テクノロジーバリュー事業開発』を進めています。当社は、今回のPoC成功を契機に、本電解液の技術をLIBメーカーに広くライセンスすることにより、LIBの高性能化とコストダウンおよび低炭素社会に貢献してまいります。

ご参考

以上

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