定例会見(2025年1月7日)結果概要
過去の知事記者会見の様子をテキスト版でご覧いただけます。
発表項目
年頭所感「ごちゃ混ぜ宣言!」
新年に当たって若干の所感を述べさせていただきたいと思います。
今年は本当に穏やかな新年でした。私自身も家族と共にゆっくりと過ごすことができました。その中でさまざまなことを考えたのですが、この年頭に当たって「ごちゃ混ぜ」という言葉をあえて強調したいと思います。
去年、私は本を出しました。津久井やまゆり園事件からの一連の流れを書いた本であり『嫌われた知事』というタイトルになりましたけれども、私自身がもともとつけていたタイトルは「ともいきはごちゃ混ぜから 津久井やまゆり園事件からの闘い」でありました。それが出版社によって『嫌われた知事』というタイトルになったわけでありました。
読んでいただくと分かるのですけれども、津久井やまゆり事件からずっと向き合ってきた中で、どうしてこういったことが起きてしまったのか。そういった中でやはりわれわれは「ともに生きる社会」を目指さなくてはいけないことを改めて確認し、「ともに生きる社会かながわ憲章」といったものを議会とともにまとめた。そして「当事者目線の障害福祉推進条例」も作った。それによってさらに、理念を現場で実現させようと一生懸命努力していたところでありましたが、なかなか簡単にはいかないところがある中で、どうしてこういうことになったのかという究極のところ。つまり重度の知的障害の方とわれわれは日常的に接する機会があまりなかったのではないかと思いました。
私自身を振り返ってみても、こういう仕事になって、またキャスター時代に取材で現場に訪れたときに初めて出会う存在であり、日常的な生活の中で普段から接する人ではなかった。だからどう接すればいいかがそもそも分からなかったというところが、振り返ってみても正直なところでありました。ですから虐待ということがいまだに行われているということはどうしてなのかといった中で、小さいときからある種、分離されてきた流れというものがつながっていたのではないかと強く思うようになりました。
もし小さい頃から、日常的にごちゃ混ぜ、つまり、障がいの程度にかかわらず、みんなが一緒になって生活する状態になれば、特別な目で見るということ自体がなかったのではないかと思いました。われわれはともに生きる社会を目指していきたい。ともいき社会を目指すのは、小さい頃からごちゃ混ぜで生活をしてくるということが大事なのではないかと思ったというのが、あの本でずっと振り返ってみた中での結論でありました。
ご承知のように今、中井やまゆり園で新たな闘いをわれわれは挑んでいます。虐待が少しなくなってきたという報告を受けてほっとしていたのもつかの間、外部のアドバイザーが入った現場というものは、医療の空白と言わざるをえないような状況であった。これに今メスを入れているところでありますけども、そういったものをしっかり実現させていくためにはやはり社会全体が、もともとごちゃ混ぜで進んでいくということが非常に大事なのではないかと思った次第でありまして、この年頭に当たって「ごちゃ混ぜ宣言!」といったものをしたいと考えたところでありました。
ちなみにこの絵は障がい当事者の方が書いた絵でありますけれども、まさにごちゃ混ぜを象徴するような絵だと思います。いろんな人がいて、障がい者の方もいらっしゃるし、車椅子の方もいらっしゃるし、いろんな人が楽しそうにみんなで生活をしている、こういう社会です。われわれのともいきアートが象徴するような、こういった世界をしっかりと実現していきたい。それが年頭に当たっての私の思いでありました。
大人気アニメ『はたらく細胞』とコラボした県の取組紹介!
それでは記者会見の内容に入りたいと思います。
「大人気アニメ『はたらく細胞』とコラボした県の取組紹介!」についてです。
『はたらく細胞』は、白血球や赤血球など体内で働く無数の細胞を擬人化し、彼らが病原菌と戦う姿を描いた物語です。体の仕組みを分かりやすく、そして楽しく知ることができると、幅広い世代から支持されている作品で、とりわけ若い世代から非常に人気があります。
そこで今回、「再生・細胞医療」や「薬物乱用防止」について分かりやすく伝えるために、『はたらく細胞』とのコラボ企画を実施することにしました。
『はたらく細胞』は、医療関係者からも画期的で分かりやすいという声も聞かれ、学校現場では若者が身近に感じる教育素材として活用されていると聞いています。
『はたらく細胞』とのコラボにより、若い世代の皆さんに県の取組みや思いをよく理解していただいて、「自分のからだ」や「薬物の怖さ」について、自分事として考えるきっかけになることを期待しています。
具体的には、まず、「再生・細胞医療」の取組みについてです。『はたらく細胞』のキャラクターが県の取組みについて分かりやすく紹介しながら、「再生・細胞医療とは何か」を漫画で伝えるチラシを作成し、中高生が集まる県内のイベント等で配布します。
また、県のホームページに『はたらく細胞』のキャラクターが期間限定で登場し、「再生・細胞医療」の取組みを紹介します。
次に、「薬物乱用防止」についてです。悩みやつらい気持ちを抱えている若い世代の方が、薬物の誘惑に負けることが無いよう、「自分のからだや、これからの未来を大切にしてほしい」というメッセージを届けるため、『はたらく細胞』とコラボして薬物乱用防止に関する啓発を実施します。
まず、若い世代の皆さんにこのようなメッセージを届けるため、『はたらく細胞』のキャラクターによる15秒の動画を作成しましたので、その動画をご覧ください。
この動画は県内の映画館やみなとみらい線の駅ホームドアのデジタルサイネージでの放映を予定しており、本日から、かなチャンTVでもご覧いただけます。
また、『はたらく細胞』のキャラクターが「薬物乱用防止」について訴えかけるチラシや啓発グッズを作成します。作成したチラシや啓発グッズは、若い世代の方々が多く集まるイベントや県内の小学校等で実施する薬物乱用防止教室で配布します。
『はたらく細胞』の実写映画が昨年12月から公開され、連日大盛況と聞いています。県としても、このタイミングで『はたらく細胞』とのコラボ企画が実施できることは非常に嬉しく思います。今回のコラボを通じて、特にこれからの未来を担う若い世代の皆さんに、県の取組みや思いをしっかりと伝えていきたいと考えています。
知事出席主要行事
知事出席主要行事については、事前に送付した資料のとおりですが、そのうち、2件お知らせがあります。
1月16日(木曜日)に、「黒岩知事と当事者とのオンライン対話」を開催します。これは、対話のテーマに関連した当事者や関係団体と私が、少人数で、オンラインで意見交換を行うことにより、当事者目線の施策形成につなげていくものです。
今回のテーマは「地域公共交通の人材不足」です。少子高齢化などにより、神奈川県内の地域公共交通においても、人材不足は深刻な課題となっています。
当日は、どのように地域公共交通の人材不足を回避、解消できるのか、当事者と意見交換を行います。
今回は、全国ハイヤー・タクシー連合会の会長である川鍋一朗氏をはじめ、タクシー、バス、自動運転事業を牽引する皆さんや行政からは三浦市長の出席を予定しております。
また、YouTubeでもライブ配信を行い、ご意見を募集します。ぜひ、取材にお越しください。
次に、1月20日(月曜日)に、新庁舎5階第5会議室で開催される「神奈川政労使会議」に出席いたします。
この会議では、国、県、労働団体、事業主団体、事業者支援機関の代表者が集まり、県内中小企業の賃上げなどをテーマに話し合いを行います。
ぜひ当日は取材にお越しください。私からの発表は以上です。皆さんからのご質問をどうぞ。
質疑
年頭所感「ごちゃ混ぜ宣言!」について
記者: 冒頭、年始を迎えるに当たっての所感に言及いただきましたけども、ごちゃ混ぜというところの理念はよくわかったのですが、知事がおっしゃったように小さいときから、ごちゃ混ぜが当たり前にという環境を県として実現していくために必要だとお考えになるところ、この部分を少し詳しくお聞かせください。
知事: 具体的にはインクルーシブ教育をもっともっと推進していきたいと思っています。インクルーシブ教育というと、その逆は分離教育ということです。特別支援学校というものがあります。特別支援学校はハンディキャップを抱えたお子さん達に集まっていただいて、そこで教育を行うということ。インクルーシブ教育というのはまさに混ざり合うということです。神奈川県は現状で言いますと、おそらく全国の中でインクルーシブ教育が最も進んだ都道府県だと思います。それをさらに進めていこうと思って、海老名市教育委員会と神奈川県教育委員会とが組んで、フルインクルーシブ教育の模索も始めているところです。これはまさにごちゃ混ぜということです。こういったことが進んでいくと、重い障がいを持った人を特別な目で見ることがなくなってくるということを期待しているところであります。ですからこういった流れを作っていくということが、県の施策として進めていきたい大きな方向性だと感じています。
記者: 今のお話と関連して、フルインクルーシブ教育を今海老名と先進的に進めているところですが、県として他の自治体にさらに広げる呼びかけという部分を今後やられていく予定はあるのでしょうか。
知事: まずは海老名市教育委員会が非常に熱心に取り組んでおられるので、ここで一つのモデルを示していきたいと思っています。この問題は丁寧に議論を進めなくてはいけないということを強く私自身が痛感をしているところでありまして、インクルーシブ教育を徹底的に進めていこうとするならば、特別支援学校はやめていくという方向性になります。ところが特別支援学校は現実問題として今、増えている。県も実は増やそうとしています。それは大変強い要望があるからです。私自身がインクルーシブ教育を進めていきたいということと特別支援学校を増やさざるをえないというのは全く矛盾した方向を歩んでいるという中で、非常に苦悶をしているところでもあります。ただ、特別支援学校を求める親御さんたちの声というのは、非常に現状では強いものがある。だからそれを無理に押し切ることはできない。その中でインクルーシブ教育のすばらしさといったものをみんなで体感できるような流れを作っていくということが非常に大事だと思っています。
記者: 今のお話の中で現状として、特別支援学校を求める声があるというところで、すでに副学籍の交流の制度などもあると思うのですが、そういったところも活用しながら、フルインクルーシブ教育につなげていくというような流れなのか、どのような流れを具体的に想像していらっしゃるのかをあわせてお伺いさせてください。
知事: 今、海老名市教育委員会と神奈川県教育委員会で具体的な作業を進めているところです。その中であらゆる選択肢があると思います。それを一つの形にして見せていくということによってみんなが考えるきっかけにしていきたいと思っています。
「大人気アニメ『はたらく細胞』とコラボした県の取組紹介!」について
記者: 『はたらく細胞』を通じて中高生に「再生・細胞医療」を知ってもらうことについて意義や影響を期待しているかお聞かせください。
知事: 現在、川崎市殿町地区で進めている「再生・細胞医療」の取組みは、多くの患者の皆様が未来に希望を持てる技術であり、こうした取組みを多くの県民に分かりやすく伝えることが課題でした。そうした中、今年度、鎌倉市からの交流職員が『はたらく細胞』の関連会社との調整経験があったことから、その職員を中心に交渉を行った結果、県の取組みにご賛同いただき、今回のコラボ企画にご協力いただけることになりました。また、薬物乱用防止の取組みについては、若者が「好奇心」などから安易に薬物に手を伸ばしている現状があることから、若者に自分事としてとらえていただく啓発方法について、広告代理店と検討してまいりました。その結果、若者にも親しみのあるアニメ『はたらく細胞』とコラボして、細胞を擬人化したキャラクターから、自分の体を大切にしてほしいというメッセージを伝えることで、より効果的に啓発していくこととしたものです。殿町地区を外から見て、明らかに新しい街が出来上がって変わったと感じると思うんですけれども、一体何が起こっているか、どういう研究が行われているか、なかなか皆さんには分かりにくいと思うので、こういった形で、若い人たちにも関心を持っていただいて、世界の最先端の研究、未来に大きな希望を持てるようなすばらしい研究が今進んでいるということを皆さんに理解していただくきっかけになればと思っています。
記者: 今映画が公開されていると思うんですけど、実際にご覧になられましたでしょうか。またご覧になっていれば感想をお聞かせください。
知事: 私も拝見をいたしました。非常に面白い映画でした。私自身が白血球、赤血球に人間が扮するということのイメージがなかなか見えなかったのですが、実に痛快な物語になっている。しかもそれが科学的、医学的な背景に基づいた形になっているということです。自分の体の中にウイルスが侵入してくる。それをしっかり守るのが白血球だ。どんどん増えて戦うのだ。そして赤血球が一生懸命酸素を運ぶのだという体の仕組みが非常に分かりやすい形で伝えられていて、人間の体の中のことを自分でしっかりと考える良いきっかけにもなる。それから非常に生活習慣が良くないお父さんも出てきますけれども、酒は飲む、たばこを吸うという健康によくない生活をしている人の体の中がどうなっているのかといった表現も、元気な人の体の中とは全然違う姿になっていて、そうなったら嫌だという気持ちになったら、皆さん一人ひとりが未病改善に努めていくというきっかけにもなるのではないかと思って、非常に私自身が感銘を受けた次第でありました。
東京都 無痛分娩費用の助成について
記者: 他の自治体の例で恐縮なのですけれども、東京都が無痛分娩に対して費用の助成をするという方針を固めたという一部報道があります。おそらく少子化対策の一環かと思うのですけれど、もしこちらの報道ご存じでしたら、知事のご所見などがあれば感想などをお聞かせいただけますでしょうか。
知事: 子ども目線の政策を進めようということで、去年の暮れに高校に行って、高校生と直接お話をしたことがありました。その時のテーマが、高校生でこういう議論するのは面白いなと思ったけれども、少子化対策ということだったのです。皆さんどのような思いを持っていますかといった中で、女子高校生が「出産というのは痛いのではないか。それが怖い」という言い方をしていました。そのときに彼女から「無痛分娩に対して行政が補助してくれればいいのだけど」という、高校生がそういった提言されるということについて、私もびっくりした次第でありました。そういった中で、無痛分娩の補助をすればどんどん出生率が上がるのか、そのあたりをもう少し検討しながら、われわれもやるべきだと考えればやるし、しばらく様子をみたいと思います。
年頭所感「ごちゃ混ぜ宣言!」について
記者: 「ごちゃ混ぜ宣言!」ですけど、きょう宣言したということで、どう県民に広げていくかとか、宣言しただけではなかなか広がらないと思うのですが、そのあたりはどうお考えですか。
知事: これは突然、唐突に宣言しているわけではなくて、今までずっとやってきていること、ともに生きる社会を実現していくという流れの中での一つの表現だとお考えいただければと思います。われわれはずっとこれを目指しているわけです。そして、当事者目線の障害福祉ということを実現していくということが、どうなっていくのかといった中で、今までは、例えば、中井やまゆり園にしても、施設の中でずっとある種、生活をしていた人たちが外へ出て、地域の皆さんと交流、接する中で、少しずつ皆さんの表情にも変化が出てきたということを見せ続けていますから、こういうことを続けているというのは、要するにどういうことかというのが「ごちゃ混ぜ」という言葉で表現されるものだということでありますので、宣言して終わりではなくて、いろいろな場面で「ごちゃ混ぜ」という言葉を使っていきたいと思っています。
記者: ごちゃ混ぜを目指す上で、一方で特別支援学校を求める声が親御さんから強いということは、これはどういう要因でそうなっていると考えているのでしょうか。
知事: 特別支援学校の場合は教員の数が多くて、手厚い支援が受けられるんです。それは親御さんにとっては安心だということ、その気持ちはよく分かります。それは要するに分離教育です。世界の障害者権利条約の中で、基本的には、ごちゃ混ぜにしていこうという大きな方向性も出ているんですけれども、日本は、特別支援学校を増やしているという現状について、国際社会からはおかしいのではないかと指摘をされているんです。本来ならば、インクルーシブ教育をどんどん進めていくということは権利条約にも合致した内容になるはずですけれども、なかなか簡単にはいかないという中で、少しずつインクルーシブ教育を進めながら、最低限、特別支援学校を維持する、拡大もせざるを得ないというところのせめぎ合いをまだ当面続けなくてはいけないのかなというのがちょうど現状です。
記者: インクルーシブ教育について、神奈川県が全国で最も進んだ県だとおっしゃられていましたが、どのあたりが進んでいるのでしょうか。
知事: これはデータを持って言っているわけではなくて、この問題に対して非常に見識のある伊藤穣一さん。彼はこういった問題に積極的に取り組んでいるのですけれども、彼のネット番組から声かかかったのです。彼はネットの専門家でもありますので、インクルーシブ教育を調べてみると、日本でのインクルーシブ教育において圧倒的に神奈川の話が出てくるので、彼自身が「神奈川はインクルーシブ教育の最先端自治体ですね」と言ってくださったことを受けて、私がその言葉を使わせていただきましたけれど、データを持っているわけではありません。
記者: 知事が目指すフルインクルーシブ教育というのは、基本的にどの学校でも障がい児の方、障がいのある方、程度がどのような方でも受け入れられるような学校を作っていくということなのでしょうか。
知事: そういうことです。われわれは、例えばこの間「ともいきシネマ」といったものをやりましたけれども、医療的ケア児のお子さんたち、そして親御さんたちに映画館に来ていただいて、映画を観ていただきましたけれども、本来どの映画館でも、皆さん入れるはずなのですけれども、やはり、機械を装着している、呼吸器をつけている方は機械の音がする。それから、突然大きな声を発する子もいる。そうすると気を遣って、普通の映画館には入れないという現状を聞いたので、あえてわれわれは「ともいきシネマ」というものを実現したわけです。だから「ともいきシネマ」で描かれた世界観が、本来は「ともいきシネマ」は一般の方も入っていいとは言いながらも、最初ですから、ほとんど障がい者の方が多かったのですけれども、普通に入って、声を出す人がいても当たり前、そんな世の中にしていきたいと実は思っているのですけれども、学校でそういう状況ができればいいなと思っているのです。ただこれはやはり、時間がまだかかりそうな感じはします。
(以上)
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