日本の経営コンサルティングのパイオニアである株式会社タナベコンサルティング(本社:東京都千代田区・大阪市淀川区、代表取締役社長:若松 孝彦)は、全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者・担当者などを対象に実施した
「2024年度 長期ビジョン・中期経営計画に関する企業アンケート調査」の結果を発表します。
1.調査結果サマリー
(1)上場企業の56.4%が「長期ビジョンを構築している」と回答。一方、非上場企業は27.4%という結果となりました。また、「中期経営計画」に関しては、上場企業の9割以上が「策定している」と回答しました。
(2)45.7%の上場企業が、「長期ビジョンと合わせてパーパス・MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定/見直しを行った」と回答しました。
(3)コーポレートガバナンス・コードにおける課題では「資本コストを踏まえた事業ポートフォリオマネジメント」や「中核人材における多様性の確保」の回答が約半数となりました。
2.アンケート詳細
(1)64.3%の企業が長期ビジョンを構築していないものの、上場企業は半数以上が構築。
長期ビジョン(2030年以降)の構築状況については以下のような結果となりました。全体の64.3%の企業が長期ビジョンを構築していないという結果ですが、上場企業と非上場企業の長期ビジョンの構築状況を示したグラフを見ると、上場企業の方が非上場企業に比べて長期ビジョンを構築している割合が多く、56.4%と半数以上の企業が構築していることが分かります。変化の激しい時代において、目指すべきゴールを明確に描くことの重要性が高まっていることがうかがえます。
(2)長期ビジョン構築の目的は、約9割の企業が「企業の将来における戦略的方向性を定める基盤とするため」と回答。
長期ビジョン構築の目的については、昨年度と同様に9割近くの企業が「企業の将来における戦略的方向性を定める基盤とするため」と回答しています。
次いで「社員の一体感・モチベーションを向上させるため」という回答が65.1%、また「長期経営計画と連動するビジョンの構築により、収益・財務構造の変革を促すため」という回答が61.1%となっており、いずれも昨年から10ポイント以上の増加が見られました。これにより、長期ビジョン構築による社員の意識改革や経営の変革への目的意識の高まりが見て取れます。
(3)4割以上の上場企業は、長期ビジョンと合わせてパーパス・MVVを策定/見直す。
企業の存在意義を表すパーパスとMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)について、長期ビジョンと合わせた策定および見直し状況を新たにお聞きしました。上場企業と非上場企業の策定および見直し状況を見ると、上場企業の方が割合が多く、4割を超える企業が策定および見直しを行っていることが分かります。長期ビジョンとパーパス・MVVは密接に関連しており、長期ビジョン構築のタイミングがパーパス・MVVの策定および見直しの絶好の機会と考える企業が多いことがうかがえます。
(4)上場企業は9割が中期経営計画を策定も、非上場企業は7割以下。
中期経営計画の策定状況については、上場企業は9割以上が中期経営計画を策定していますが、非上場企業では7割に満たない状況にあり、結果に開きが見られました。多くの企業が中期経営計画を策定しており、企業経営における中期的な方向性の重要性が広く認識されていることが見て取れます。
(5)中期経営計画を策定していない理由は、「今まで策定したことがないため」が最多に。
中期経営計画を策定していない企業に対して、策定していない理由についてもアンケートを行いました。最も多い理由は「今まで策定したことがないため」(32.8%)という慣習によるもので、次いで「策定する組織・メンバーが社内に存在しないため」と「時間的な余裕がないため」がそれぞれ24.1%を占めています。「策定する組織・メンバーが社内に存在しないため」という回答の割合は昨年度と比較して半減しており、多くの企業が策定できる人材の獲得に動いたことが推察されます。しかし、「漠然と必要性を感じていないため」(8.6%)という回答は一昨年、昨年と比較して減少しており、中期経営計画の必要性を感じながらも策定できない要因の一つは社内のリソース不足であることがうかがえます。
(6)コーポレートガバナンス・コードにおける課題では「資本コストを踏まえた事業ポートフォリオマネジメント」、「中核人材における多様性の確保」が約半数。
コーポレート・ガバナンスとは、企業が株主をはじめ、顧客・従業員・地域社会などの立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味します。また、実効的なコーポレート・ガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものがコーポレートガバナンス・コードです。
本設問は上場企業を対象としたもので、上場企業が抱えるコーポレートガバナンス・コードにおける課題は昨年と変わらず、「資本コストを踏まえた事業ポートフォリオマネジメント」や「中核人材における多様性の確保」が半数近くを占めています。また、「株主との対話を促進するための体制整備・情報開示」(20.7%)が昨年と比較して増加しました。
3.専門コンサルタントによる総括・提言
(1)デフレ経済からインフレ経済の転換期に、長期ビジョンを構築する
多くの企業が長期ビジョンの必要性を認識しながらも構築できていないことから、組織としての未来創造機能の強化が求められます。現在は、デフレ経済からインフレ経済への転換期にあります。インフレ経済における経営の要諦は、「コストを抑え、回転率で利益を出す」モデルから、「投資をし、付加価値を上げて利益を出す」モデルへの転換です。そのためには、長期的な視点で事業、組織、人的資本、DXなどの戦略と投資のデザインを描くことが重要です。
(2)長期ビジョンと連動した中期経営計画を策定する
今回のアンケート結果をみると、長期ビジョンを策定している企業の割合と中期経営計画を策定している企業の割合に乖離が生じていることが分かりました。タナベコンサルティングでは、長期ビジョンと中期経営計画は互いに連動し、一貫している必要があると提唱しています。中期経営計画を単体で策定するのではなく、長期ビジョンと合わせて策定することが重要です。
(3)次世代幹部候補を策定段階から参画させることで、組織基盤の強化と推進力を向上する
次世代幹部メンバーが長期ビジョンの構築とその推進に参画することで、自社の成長機会を創出し、その成果が次の世代の事業を育てることや組織基盤の強化に繋がります。そのことを理解した上で、主体となるメンバー編成の決定を行っていただきたいと考えます。
〈総括 執筆者プロフィール〉
株式会社タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
エグゼクティブパートナー 森田 裕介
大手アパレルSPA企業を経て、当社へ入社。ライフスタイル産業の発展を使命とし、アパレル分野をはじめとする対消費者ビジネスの事業戦略構築、新規事業開発を得意とする。理論だけでなく、現場の意見に基づく戦略構築から実行まで、クライアントと一体となった実践的なコンサルティングにより、成果に導くとともに経営者人材を創生していくことを信条とする。
4.関連リンク
・「2024年度 長期ビジョン・中期経営計画に関する企業アンケート調査」資料ダウンロードページ
URL:
https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/document/detail67.html
・当社メディア『TCG REVIEW』(「2024年度 長期ビジョン・中期経営計画に関する企業アンケート調査」リポート)
URL:
https://review.tanabeconsulting.co.jp/column/pick-up-topics/50214/
5.調査概要
[調査対象] 全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者・担当者など
[調査期間] 2024年9月17日~2024年10月7日
[調査エリア] 全国
[有効回答数] 計490件(上場企業140社・非上場企業350社)
※各図表の構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
タナベコンサルティンググループ(TCG) について
TCGは、1957年に創業し、67年の歴史と実績を有する日本の経営コンサルティングのパイオニアです。「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という経営理念のもと、現在地から未来の社会に向けた貢献価値として、「その決断を、愛でささえる、世界を変える。」というパーパスを定めています。
大企業から中堅・中規模企業、行政/公共のトップマネジメント(経営層やリーダー)を主要クライアントとし、創業以来17,000社以上の支援実績を有しています。
経営コンサルティング領域として、戦略策定(上流)から現場におけるDXなどの経営オペレーションの実装・実行(中流~下流)まで、企業経営を一気通貫で支援できる経営コンサルティングモデルを全国地域密着で構築しています。そして、「All for Client Success-すべてはクライアントの成功のために」という徹底したクライアント中心主義のもと、個社ごとの経営課題に合わせて複数名のプロフェッショナルコンサルタントを選定してチームを組成する「チームコンサルティング」を提供しています。
〈経営コンサルティング領域〉
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