宇宙での物理現象をデジタル上に再現する技術の共創により、誰もが宇宙開発に参入できる未来へ
株式会社スペースデータ(本社:東京都港区、代表取締役社長:佐藤航陽、以下スペースデータ)は、株式会社ギャラクシーズ(本社:東京都豊島区、代表取締役:内山泰伸、以下ギャラクシーズ)と、誰もが宇宙開発に参入でき、誰もが宇宙を利用できる「宇宙の民主化」を目指して、宇宙の物理現象をデジタル上に再現する技術の共同開発と社会実装に係る共同研究契約を締結した事をお知らせします。
ギャラクシーズは、国内外の大学や国立研究所の第一線で活躍する物理学および人工知能分野の科学者集団です。ギャラクシーズが保有する自然現象を高精度で再現する物理シミュレーション技術を、スペースデータが開発する「バーチャル国際宇宙ステーション(ISS)」および「太陽系デジタルツイン」上に統合する事で、デジタルツインは高精度の三次元空間情報のみならず、物理現象の設計・実行環境としても進化します。これまで専門家のみがアクセスできた「宇宙物理の知」を民主化し、誰もが宇宙開発に参加できる未来を目指します。
背景
スペースデータは、デジタル技術で宇宙をインターネットのように身近にすることで、誰もが宇宙開発に参加できる未来を目指しています。スペースデータが開発する「バーチャル国際宇宙ステーション(ISS)」は、ISSの3Dモデルや実際のISS船内の環境をデジタル上に再現しています。国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力を受け、微小重力環境や気流などの宇宙ステーション特有の環境を、デジタル上に忠実に再現しています。「太陽系デジタルツイン」では、月や火星などの多様な物理環境を持つ天体をデジタル空間上に再現することを目指しています。
一方、ギャラクシーズは、極めて現実に近い仮想現実の中で豊かな社会活動を実現するために必要な技術の開発に取り組んでいます。国内外の大学・国立研究所の第一線で活躍する物理学および人工知能分野の研究者により、自然現象を高精度で再現するシミュレーション技術で豊富な実績を有しています。
この度、ギャラクシーズが保有する物理シミュレーション技術を「バーチャル国際宇宙ステーション(ISS )」「太陽系デジタルツイン」内で新たに提供することで、これまで専門家のみがアクセスできた、「宇宙物理の知」を民主化します。
事業提携の対象例
1.微小重力下での流体・剛体相互作用シミュレーション技術
国際宇宙ステーションや月、火星など、異なる重力環境では流体の特性が大きく変化します。水や空気などの流れのある「流体」と金属のように固い「剛体」が互いにどのように影響を及ぼし合うのかをコンピューターシミュレーションによって解析します。この技術により、宇宙船や宇宙基地の設計解析、水循環装置を含むトイレやシャワーなどの水関連設備の設計・運用解析、さらには宇宙実験の事前検証を可能にします。
微小重力下(ISS船内)における、GPU化されたDivergence-FreeなSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法を用いた流体および剛体シミュレーションの例を一部動画でご紹介します(シミュレーション結果をBlender で可視化しています)。我々のシミュレーションは、任意の形状の剛体と、さまざまな物理特性を持つ流体を扱うことが可能です。この技術は、広告、エンタメ、ゲーム開発から宇宙関連プロジェクトや研究開発案件に至るまで幅広く対応します。ご興味をお持ちの方や共同研究をご検討の方は、下記の連絡先までお気軽にお問い合わせください。
表面張力依存性の比較
上:表面張力が大きい場合。下:表面張力が小さい場合。衝突速度と水の総量は同じ。
https://www.youtube.com/watch?v=8o4aHrF0MCs
https://www.youtube.com/watch?v=G9J9TMqr_2M
空間に固定された剛体(Int-Ball)と流体の相互作用の例
上下で衝突速度と表面張力は同じだが、水の総量が異なる。
https://www.youtube.com/watch?v=4eWJYifxFQw
https://www.youtube.com/watch?v=0NGSNEvD3qY
2.宇宙放射線のシミュレーション技術
宇宙空間には高エネルギーの宇宙放射線が飛び交っています。地球では大気がこれを遮断していますが、人工衛星の軌道や月面では、宇宙放射線は宇宙機の電子機器や材料に深刻な影響を与える可能性があります。その結果、誤動作や破損、材料の劣化を引き起こすことがあります。宇宙放射線のシミュレーション技術を活用することで、設計の最適化や材料選定が可能になることで、ミッションの成功率を向上させることができます。また、この技術は月探査など、人類が宇宙に長期滞在する際のミッション設計や安全性評価にも応用可能です。
3.AIを活用した物理シミュレーション
高度な物理シミュレーションは高い精度を持つ一方で、計算コストが非常に大きいという課題があります。この課題に対処するため、精度をできる限り維持しつつ計算コストを削減する方法の一つとして、機械学習をはじめとするAI技術の活用が注目されています。ギャラクシーズは、第一原理に基づく物理シミュレーションを実行するだけでなく、そのシミュレーション結果をAIの学習データとして活用することで、物理シミュレーションの高速化を目指しています。
宇宙開発・宇宙利用に必須の「物理学」の知の民主化により、誰もが宇宙開発に参加可能な未来を創る
宇宙開発や宇宙利用を推進するためには、地球とは異なる環境下での物理現象への深い理解と、それに対応する技術が不可欠です。これまで、宇宙物理現象の知識は物理学の中でも一部の専門家のみがアクセス可能なものでした。しかし、「バーチャル国際宇宙ステーション(ISS)」や「太陽系デジタルツイン」を通じて、これらのシミュレーション環境を全世界に提供することで、さまざまな産業が宇宙事業へ参入する道を切り開きます。
また、デジタル空間上で宇宙環境や物理現象を再現することにより、宇宙産業への参加ハードルを大幅に下げ、新たなビジネスチャンスを創出します。この革新的な技術は、宇宙開発をより身近で多様なものに変える可能性を秘めています。
スペースデータ最高科学責任者(CSO)兵頭龍樹 博士のコメント
地球を飛び出すと、地球の日常では想像もつかない世界が広がっています。例えば、月面では地球上の約200倍に相当する放射線被ばく線量が観測されることがあります。また、気温は夜間にはマイナス170度、昼間には110度に達するなど、極端な環境変化が発生します。近年、宇宙利用や宇宙進出は世界的に加速していますが、適切な知識と準備が欠けていれば、取り組みが大きな失敗に終わる可能性があります。このような課題に対応するため、スペースデータとギャラクシーズの協働を通じて、私のような惑星科学者が持つ宇宙環境の知識を誰もが利用可能な形で提供したいと考えています。この取り組みを通じて、宇宙産業の裾野を広げ、新しい挑戦を支援していきます。
兵頭龍樹 博士 プロフィール
パリ大学・神戸大学で博士号を取得後、宇宙物理・惑星科学・惑星探査の専門家として、NASA・ESA・JAXAの世界三大宇宙機関の惑星探査計画に従事。パリ大学と東京科学大学(旧・東京工業大学)の研究者を兼任。理論とコンピューターシミュレーションを駆使して惑星系や小天体の進化を解明。NatureやScienceなど最高権威の科学出版社にて多数の論文を発表。日本惑星科学会「最優秀研究者」、JAXA「国際トップヤングフェロー」、S-Booster2023「最優秀賞・NEDO賞」など受賞。
ギャラクシーズ代表取締役(CEO)内山泰伸 博士のコメント
太陽系デジタルツインは、宇宙開発、宇宙産業、教育といった多岐にわたる分野で大きな意義を持つ取り組みです。科学研究のために高度化されてきた物理シミュレーション技術や、急速に進化するAI技術により、太陽系デジタルツインの可能性が大きく広がります。無限とも言える可能性のある分野で、「宇宙の民主化」という素晴らしい理念を持つスペースデータと共同研究できることにワクワクしています。
内山泰伸 博士 プロフィール
立教大学大学院人工知能科学研究科教授・株式会社ギャラクシーズ代表取締役。東京大学大学院理学研究科物理学専攻で博士(理学)の学位を取得。スタンフォード大学・SLAC国立加速器研究所Panofsky Fellowなどを経て、現職。NatureやScienceなどの国際学術誌に高エネルギー天文学の論文を多く発表。2018年に株式会社ギャラクシーズを創業し、AIとVRの社会実装を推進。2020年の人工知能科学研究科開設を主導し、現在まで研究科委員長を務める。
「バーチャル国際宇宙ステーション(ISS)」について
「バーチャル国際宇宙ステーション(ISS)」は、2025年11月より、ゲームやエンターテインメント、教育での利活用を見込み、世界最大のゲームプラットフォームであるSteam(R)において、全世界への無償配布を行っています。
今後、宇宙ロボットや宇宙ステーションのシミュレーション機能を付加することで、宇宙機開発のツール、宇宙実験のツールとして活用する事も計画しています。今回の事業提携は、次なるステップに向け第一歩です。
バーチャル国際宇宙ステーション(ISS)
https://spacedata.jp/business/space-digitaltwin
ギャラクシーズについて
株式会社ギャラクシーズは、国際コラボレーション経験豊富な科学者集団です。AI・機械学習・データサイエンスの先進技術を組み合わせ、社会課題の解決に取り組んでいます。先端的な人工知能技術や物理シミュレーションを活用することで、極限まで高めた仮想現実に係るVR技術や事前現象を高精度で再現するシミュレーション技術で豊富な実績を有しています。
法人概要
社名 :株式会社ギャラクシーズ
代表 :内山泰伸 博士(理学)
所在地:東京都豊島区南池袋1-1-11 カドラービル 202
資本金:1,730万円
事業内容:社会課題の解決のための人工知能・データサイエンス技術の研究開発
URL :
https://www.galaxies.co.jp/
スペースデータについて
スペースデータは「宇宙」と「デジタル」の融合を目指した研究開発を行うスタートアップです。人工衛星・宇宙ステーション・月面探査といった宇宙分野の技術と、AI・3DCG・デジタルツインといったデジタル分野の技術の融合を目指す研究を進めています。「新しい宇宙を作る」をビジョンに掲げて、革新技術の発明・特許化・実用化を行っています。
法人概要
社名 :株式会社スペースデータ
代表 :佐藤 航陽
所在地:東京都港区虎ノ門 1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 15階
資本金:15億1300万円
目的 :宇宙開発に関わる投資と研究
URL :
https://spacedata.jp
本件に関するお問い合わせ
下記のお問い合わせフォームからご連絡ください。
https://spacedata.jp/contact